サプライチェーンとは?社会人が知っておきたい知識を簡単に解説
はじめに
近年ではDXの流れを受けて企業側がビッグデータを分析し、消費者の需要や流行の予測を立てています。また、どのように商品が製造されて流通にまで至ったかを、きちんと説明できることがコンプライアンスの観点からも重要です。このような背景からもモノをつくる業界では、「サプライチェーン」という言葉が広く浸透しつつありますので、今回はサプライチェーンとは何かをわかりやすくご説明します。
サプライチェーンの意味
サプライチェーンとは簡単にいうと、製品やサービスが最終的に消費者に届くまでの一連の流れのことです。具体的には、原材料調達・製造・物流・販売の工程を経て消費者に渡るまでのプロセスを指し、サプライチェーンを一元管理して共有することをSCM(サプライチェーン・マネジメント)といいます。SCMが最適化されると消費者に「必要なときに」、「必要なモノを」、「必要なだけ」届けられる仕組みを確立できます。
SCMのメリット
SCM導入により仕入れから出荷までの全工程が最適化されて、無駄なコストや工程も削減できます。あらゆるデータの一元管理が可能になり、商品ごとに仕入れる量を調整できたり在庫状況や配送のタイミングを確認できたりするからです。また、原材料の調達先情報も一元管理できるため、環境にも配慮した「グリーン調達」が可能になります。
サプライチェーン全体において脱炭素に向けた取り組みを行っている企業もあります。どこの企業でも環境問題の関心は高まりつつあるので、グリーン事業やグリーン調達についても知識が必要です。以下の記事でも詳しくご紹介していますのでご参考ください。
脱炭素とは?脱炭素社会への課題と日本・世界の取り組みまで解説
SCMが注目されている理由
SCMという言葉は、1980年代前半に米国で生まれて、日本では2000年代初頭頃から注目されています。なぜ、注目されているのか主な理由を3つご紹介します。
グローバル企業が増えたため
インターネットが発達したことにより、仕入れから販売までの情報が世界中のネットワークでつなげられるようになりました。今日では、複数の国から部品を輸入したり複数の国を経由したりして製品をつくっているグローバル企業も増えています。
このように複雑に思える工程もSCMですべて一元管理することが可能なため、海外進出をしている企業ほど国際競争の中で取り残されないようにSCMを導入するケースが増えています。
企業の人手不足問題に対応するため
少子高齢化が進んでいる日本ではあらゆる業界で人手不足の問題が深刻ですので、少人数でかつ業務を効率よく進めるためにはサプライチェーン全体での情報共有が欠かせません。
たとえば、物流業界でもSCMによる体制の監視や改善などを行うことで、どこのポジションにどれくらいの人員が必要か把握できます。人員配置が最適になると、従業員の負担軽減や人件費の削減にもつながります。
インターネット普及によるECサイトの需要に対応するため
インターネットの普及によりECサイトで買い物をする人が増えました。また、新型コロナウイルスが蔓延してからは外出を控える人が増えたため、さらにECサイトの需要は増しています。
SCMを導入して小売事業者とメーカ・サプライヤーの間で情報共有を行い、需要変動への対策や顧客のニーズに対応する企業も増えてきました。
経営効率化を図るために企業資源を一元管理して、データを可視化する考え方は、SCMだけに通ずるものではありません。以下の記事では部門ごとのデータを一元管理できるERPのメリットをご紹介していますのでご参考ください。
ERPとは?基幹システムとの違いやERPに関わる職業までわかりやすく解説!
SCMの課題やデメリット
SCMが注目される一方で、課題やデメリットも存在します。以下から詳しくご紹介します。
サプライチェーンが閉鎖的になると情報を把握しにくい
特定のサプライヤー(原材料や部品の納品業者)との結びつきが強くなるとサプライチェーンも閉鎖的になり、消費者の需要に対応しにくくなる可能性があります。サプライヤーごとの価格や品質の比較ができず、交渉が難しくなる場合もあるからです。また、閉鎖的なサプライチェーンでは各工程の情報を把握しにくいため、問題点を見落としがちになるとも懸念されています。
消費者の需要に対応するためにはデザイン思考が大切です。「デザイン思考の特徴やメリットを、プロセスや事例と合わせて紹介」では、デザイン思考が注目されている理由やDXとの関連性もご紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
他部門との調整役が必要
サプライチェーンはすべて連動しているため、他部門との調整を行う企業やリーダーがいないと商品の欠品を招いたり生産ラインが止まったりするなど、トラブルが起こる可能性もあります。
また、余剰在庫を抱える原因にもつながります。各工程で無駄なコストがかかり商品価格に直結すると、顧客も離れていき利益を圧迫する可能性が出てくるからです。
想定外のトラブルには対応しにくい
昨今ではEC市場の拡大に伴いグローバル化への早期対応が求められているため、企業がサプライチェーンを管理・把握する範囲は以前よりも拡大しています。そのため、災害やパンデミックが起こったり生産ラインが止まったりするなどの想定外のトラブルが起こると、被害の規模も大きくなると予想されています。
サプライチェーンとDXの関係
製造業界や物流業界では、人手不足から従業員への負担が大きくなっています。その打開策として、「製造業DX」や「物流DX」が注目されていますので以下からご紹介します。
製造業DX
製造業DXとは、IT技術を活用して製造業界のデジタル化を促進することです。たとえば、すべての製造工程・既存のノウハウ・属人化していた技術などを電子データで一元管理することで、全従業員との情報共有が可能になったり作業効率のアップにもつながったりします。
製造業DXは、アナログ作業が多い製造業界の成長やサプライチェーンの改善にも期待できるため、多くの企業が注目しています。
国際競争に負けないためにもITによる業務効率化は必要です。今後はIT知識をもつ人材が重宝される時代になるともいわれています。新しいスキルを身につけるには「リスキリングとは?何を学ぶ?個人が行うメリットや注意点をご紹介!」をご参考ください。
物流DX
物流DXとは、IT技術を駆使してサプライチェーンを全体的に改善していく取り組みです。物流DXの主要な取り組みには配送効率化にドローンや自動配送のロボットを使うなどの「物流の機械化」と、運送状の記載や収受の電子化といった「物流のデジタル化」があります。
「物流の機械化」と「物流のデジタル化」を相互連携することで、作業プロセスの定型化や情報・コストなどを可視化できます。
製造業界や物流業界に限らずDXの推進は大切です。「無人コンビニ 無人店舗システムと日本の問題」では、無人コンビニの商品に電子タグを付けて情報を読み取り、商品の流通経路をサプライチェーンで共有する事例が掲載されています。興味のある方はぜひ、ご覧ください。
まとめ
この記事をご覧になった方の中には、製造業界や物流業界に興味がある方もいるかもしれません。サプライチェーンでは仕入れから販売までが一つの鎖のようにつながっているので、自分の興味のある業界だけではなく、他の工程を行う業界やDXとの関係を知ることも大切です。ぜひ、就活や転職の参考にこの記事を活用してください。
最後のチェックポイント
- サプライチェーンとは原材料調達から消費者に製品が渡るまでの流れ
- SCMを導入することであらゆるデータを一元管理できる
- SCMの目的は仕入れから出荷までの全工程を最適化すること
- 国際競争に勝つためにはSCMを導入する企業が増えている
- ECサイトの需要増加によりSCMは注目されている
- サプライチェーンはDXとも関係が深い