年末調整とは?得られる控除や確定申告との違いを解説!
はじめに
- 年末調整は所得と税の過不足を調整する手続き
- 年末調整は企業が行い確定申告は個人が行う手続き
- 対象者にはパート・アルバイト・契約社員も含まれる
- メリットは複雑な手続きなしに納税額が計算されること
- 調整しきれない控除等を受ける場合には確定申告が必要
年末調整は、企業で働いている人が毎年11月頃より取りかかる、所得と税に関する大切な手続きです。本稿では年末調整の基本的な仕組みから確定申告との違い、対象者や必要書類、手続きの注意点などを詳しく解説します。
年末調整とは
年末調整とは、企業が従業員に支払った給与や賞与から源泉徴収(天引き)した所得税の年間合計額と、本来徴収すべき所得税の総額を再計算し、過不足を調整する手続きです。年末調整は毎年11月から12月にかけて行われ、これにより従業員は、納めすぎた税金があれば取り戻せます。
この手続きは所得税法第190条などを根拠として雇用主の義務とされており、企業が行った年末調整の情報は地方自治体とも共有されます。翌年の住民税もこの情報が基準となるため重要な手続きです。また会社員などの住民税は、企業が給与から天引きして市区町村に納付する「特別徴収」の形が取られます。
年末調整のメリット
年末調整のメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 複雑な手続きなしに納税額が計算される
- 税金に過払いがあった場合は還付(返金)が受けられる
- 年末調整で控除に漏れがあっても確定申告で修正できる
- など
年末調整に必要な提出書類
年末調整に必要な従業員の情報は企業ごとに取りまとめています。この方法は書類やデータなど企業ごとに異なりますが、通常は10月中旬頃からアナウンスが行われ、概ね11月上旬までに完了させる必要があります。次の項目で年末調整に必要な書類をまとめました。
提出書類の一覧
扶養控除等(異動)申告書 | 扶養家族がいる場合に提出します |
---|---|
基礎控除申告書 | 基礎控除を受けるための申告書です |
保険料控除申告書 | 生命保険料や地震保険料の控除を受けるために必要な書類です |
住宅借入金等特別控除申告書 | 住宅ローン控除を受ける場合に提出します |
※令和6年の企業側が行う源泉徴収事務には定額減税の処理が伴います。
年末調整と確定申告の違い
年末調整と確定申告は、いずれも所得と税を確定するための手続きですが、年末調整は企業が行うのに対し、確定申告は個人が行います。この違いについて、以下の項目で詳しく見て行きましょう。
年末調整は企業が行う手続き
年末調整は企業(つとめ先)によって行われる手続きです。企業は毎月、従業員の給与から所得税を源泉徴収しますが、これを年末調整で納付すべき正確な金額に調整します。基本的には企業に勤める従業員が対象となりますが例外もあり、その場合には確定申告が必要です。また年末調整には以下の所得控除が含まれています。
- 年末調整に含まれる所得控除
基礎控除
配偶者控除
配偶者特別控除
扶養控除
ひとり親控除
生命保険料控除
地震保険料控除
寡婦控除
社会保険料控除
小規模企業共済等掛金控除
障害者控除
勤労学生控除
2年目以降の住宅借入金等特別控除
確定申告は個人が行う手続き
確定申告は個人(納税者本人)が自ら行う手続きです。給与所得が2,000万円を超える人や、副業で複数の収入源がある人、年末調整で調整しきれない控除を受ける際などに必要です。確定申告が必要な控除には、以下のようなものがあります。
- 確定申告が必要な所得控除
医療費控除
寄附金控除
雑損控除
初回の住宅借入金等特別控除
年末調整の対象者
年末調整は、1年を通じて同じ企業で働いている、あるいは転職による採用後継続して年末まで働いている人が対象者です。但し「給与所得が2,000万円を超える」、「災害減免法による猶予や還付がある」人は対象外とされ、確定申告が必要です。対象外の例は後の項目で解説します。
会社員
基本的に会社員は1年間を通して同じ企業で勤務している、あるいは転職による採用後、継続して年末まで勤務している人となるため、年末調整の対象者です。
パート・アルバイト・契約社員
パート、アルバイト、契約社員の人なども対象者に含まれます。これらの条件について、以下にまとめました。
- 年末調整の対象者
1月1日から12月31日まで同じ企業で働いている人
転職による採用後、継続して年末まで勤務している人
年の中途で退職し、本年中に再就職しない人のうち①~④のような場合- ① 死亡により退職した人
- ② 著しい心身の障害により退職した人
- ③ 12月の給与を受け取って退職した人
- ④ いわゆるパートタイマーの退職で、年内の給与総額が103万円以下である人
(但し退職後本年中に他の勤務先等から給与支払いを受ける人は除く)
海外転勤等で非居住者となった人※
※非居住者とは、国内に「住所」も、1年以上の「居所」も有しない個人対象外の人は確定申告が必要
年末調整の対象にならない人は、所得と税の調整に確定申告が必要です。これには以下のような人が当てはまります。
- 確定申告が必要
個人事業主(自営業やフリーランス)
給与所得が2,000万円を超える人
2か所以上から給与の支払いを受けている人
災害減免法による猶予や還付がある人
継続して同一の雇用を受けない人(日雇い労働者など)
注:基本的な期間は2月16日~3月15日
年末調整と確定申告のまとめ
年末調整の注意点
年末調整を行う際は提出期限を守ることが重要です。期限を過ぎると控除が受けられなくなる可能性もあるため、扶養家族の収入情報など、必要な証明書類を早めに準備しておくことも大切です。以下で手続きの遅れや誤りに関する注意点を3つ紹介します。
書類の提出が遅れる場合はすぐに確認する
年末調整の担当部署は多数の重要書類とともに複雑な事務処理を扱います。そのため必要書類はできるだけ早く提出しましょう。それでも書類提出が遅れる場合は、気付いた時点ですぐに担当部署に相談してください。所轄税務署への提出前であれば調整が間に合うかもしれません。
年末調整が間に合わなかった場合は確定申告が必要
手続きが間に合わなかった場合は、確定申告で所得と税の調整が可能です。これを怠ると税法上の控除を受けられないまま税額が算出されるため、所得税や住民税が高くなってしまいます。確定申告の期間は翌年の2月16日~3月15日ですので、忘れずに手続きを行いましょう。
年末調整後さらに確定申告が必要になる場合もある
年末調整を行った人でも以下のケースに該当する場合には確定申告が必要になります。この場合は、年末調整後に企業から発行される源泉徴収票をもとに、確定申告を行います。
- 年末調整後さらに確定申告が必要になるケース
企業が行った年末調整の内容に修正する箇所(控除の漏れや変更)がある
20万円を超える副業による所得(事業所得等)がある
2か所以上の企業から給与がある
収入金額が2,000万円を超える
不動産や家賃収入などがある
災害減免法による猶予や還付がある
報酬等(出演料や原稿料など)の収入がある
課税される年金収入等が80万円(65歳以上は130万円)を超える
医療費控除がある
など
まとめ
今回は年末調整について、確定申告との違いや注意点を中心に解説しました。調整を受けるだけなら難しくありませんが、事務処理が年末の忙しい時期に進むため、必要書類は決められた期限内に提出できるよう、早めに準備することが望ましいと言えます。
年末調整は所得と税に関わる重要な手続きです。必要な書類を提出することで、所得に応じた税額に調整され、その情報から翌年の住民税額が決定されます。特に初めての機会となる新社会人や転職者は、早めに取り組むとよいでしょう。本稿が所得と税を理解する一助となりましたら幸いです。