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年末調整・確定申告の違いは?対象者やよくある疑問を解説

date2024年11月26日
年末調整・確定申告の違いは?対象者やよくある疑問を解説
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はじめに

  • 年末調整の対象者は給与所得者、確定申告の対象者はすべての人
  • 大部分の給与所得者は確定申告の必要がない
  • 一年間で一定以上の収入が発生すれば、どちらかが必要
  • 年末調整と確定申告の時期は異なる
  • 年末調整は企業の義務のため、従業員が要否を選べるものではない

年末調整と確定申告はどのような点が異なるのでしょうか。
この記事では両者の違い・それぞれの対象者・注意点などを解説します。

年末調整と確定申告の違い

年末調整と確定申告の違いを説明している図

「年末調整」とは、毎月の給与・賞与から差し引かれる源泉徴収税額と、本来納めるべき所得税額の差分を調整する手続きのことです。
手続きは、従業員(本来の納税者)に変わって、勤務先が税務署に税額の申告・納税を行います。年末調整を行うことで「課税所得(その年の税金の対象となる所得)」が確定されて、翌年6月以降に天引きされる住民税の額が決まります。

一方、「確定申告」とは、納税者本人が1年間の所得を税務署に申告して納税額を確定させることです。
年末調整とは異なり、税務署への確定申告・納税は納税者自身が行います。
年末調整と確定申告の違いを以下の表にまとめました。

年末調整確定申告
実施者所属企業納税者本人
対象者給与所得者すべての国民
対象の所得本年1月1日から12月31日までの合計所得金額毎年1月1日から12月31日までの1年の間に生じた所得
申告時期一般的には11月から翌年の1月あたりにかけて(翌年1月31日までに申告書などの必要書類を企業から税務署に提出する)翌年2月16日から3月15日までの間
受けられる控除下記4つ以外の控除が受けられる
  1. 医療費控除
  2. 雑損控除
  3. 寄附金控除
  4. 初回の住宅ローン控除
すべての控除

なんらかの事情で書類の提出が間に合わず年末調整が行えなかったときは、給与所得者自身が確定申告の手続きを行いましょう。

年末調整と確定申告・受けられる控除の違い

確定申告ではすべての控除を受けられますが、年末調整では受けられる控除と受けられない控除があります。以下からそれぞれ解説します。

年末調整で受けられる控除

年末調整で受けられる控除は以下の14種類です。

各種申告書受けられる控除の種類控除の内容
扶養控除等申告書を提出して受けられる控除扶養控除16歳以上の親族を扶養に入れている場合に受けられる控除
障害者控除納税者本人または同一生計配偶者、扶養親族が障害者である場合に受けられる控除
勤労学生控除納税者本人が勤労による所得を有する一定の要件を満たす学生、または生徒である場合に受けられる控除
寡婦控除納税者本人が寡婦である場合に受けられる控除
ひとり親控除納税者本人がひとり親である場合に受けられる控除
配偶者控除等申告書を提出して受けられる控除配偶者控除納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、合計所得金額が48万円以下の同一生計配偶者を有する場合に受けられる控除
配偶者特別控除納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、合計所得金額が48万円超133万円以下の同一生計配偶者を有する場合に受けられる控除
保険料控除申告書を提出して受けられる控除社会保険料控除社会保険料を支払った場合に受けられる控除
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済や個人型年金(iDeCo)などの掛金がある場合に受けられる控除
生命保険料控除加入している生命保険の保険料を支払った場合に受けられる控除
地震保険料控除地震保険料を支払った場合に受けられる控除
所得金額調整控除申告書を提出して受けられる控除所得金額調整
控除
年末調整の対象となる給与の収入金額が850万円を超える場合で、本人が特別障害者に該当する場合。または年齢が23歳未満の扶養親族、特別障害者である同一生計配偶者、もしくは特別障害者である扶養親族を有する場合に受けられる控除
基礎控除申告書を提出して受けられる控除基礎控除合計所得金額が2,500万円以下の納税者が受けられる控除(所得金額に応じて16万円~48万円控除される)
住宅借入金等特別控除申告書を提出して受けられる控除住宅ローン控除
(2年目以降)
自宅の購入にあたり住宅ローンを支払っている場合に受けられる控除(2年目以降が対象)

確定申告が必要な控除

確定申告が必要な控除は以下の4種類です。

確定申告が必要な控除

受けられる控除の種類控除の内容
寄附金控除ふるさと納税(ワンストップ特例を利用しない場合)や国や地方公共団体への寄附などを行った場合に受けられる控除
医療費控除納税者本人や同一生計配偶者、扶養親族の医療費が一定額を超えた場合に受けられる控除
雑損控除災害・盗難・横領などにより損害を受けた場合に受けられる控除
住宅ローン控除(初回)自宅の購入にあたり住宅ローンを支払っている場合に受けられる控除(初回のみ)

年末調整と確定申告の対象者

以下から、年末調整と確定申告の対象者の違いについて解説します。

年末調整の対象者

年末調整の対象者は原則として、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出しているすべての方です。

年末調整は従業員を雇用する企業の義務ですので、一部の条件に当てはまる方を除き、正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態を問わず実施しなければなりません。
つまり、「従業員が要否を選べるものではない」ので、年末調整は従業員の意思に関係なく基本的に毎年実施されます。

確定申告の対象者

確定申告はすべての人が行えます。
とはいえ、大部分の給与所得者の方はあえて行う必要がありません。

ただし、副業の所得が年間20万円を超える方は、年末調整の他に別途確定申告が必要です。
また、年間収入金額が2,000万円を超える高額所得者は給与所得者であっても年末調整が行われないため、確定申告が必要になります。
個人事業主・フリーランスなどの方は、年間の事業所得が48万円を超えない限り申告の義務はありませんが、事業を行っていることや売上額の証明に確定申告を行う方が多いです。

年末調整と確定申告を両方した方がいいケース

以下からは、給与所得者の方を対象に、「年末調整と確定申告を両方した方がいいケース」についてご紹介します。

年末調整では手続きできない控除を受けたい方

「寄附金控除」「医療費控除」「雑損控除」の3つは年末調整で手続きが行えません。
そのため、これらの控除を受けたい方は、年末調整の他に確定申告が必要です。

また、「住宅ローン控除」をはじめて受ける方も確定申告が必要です。
ただし、「住宅ローン控除」に関しては2年目以降から年末調整で対応できます。

1年間で6か所以上にふるさと納税を行った方

ふるさと納税を行う場合は原則として確定申告が必要です。

「ワンストップ特例制度」を利用すれば確定申告をしなくても寄附金控除を受けられますが、こちらの制度は、「1年間の寄附先が5自治体以内」と条件が定められています。
そのため、6か所以上にふるさと納税を行った方で寄附金控除を受けたい方は確定申告が必要です。

「退職所得の受給に関する申告書」を職場に提出しなかった方

前職の退職時に退職金を受け取ったものの、「退職所得の受給に関する申告書」を職場に提出しなかった方は、税金を多めに差し引かれている可能性が高いので確定申告をオススメします。

確定申告を行うことで還付金を受けられるケースがあるためです。

年末調整までに生命保険や私的年金などの証明書を用意できなかった方

「生命保険料控除」や「小規模企業共済等掛金控除」は、年末調整で控除が可能です。
ただし、年末調整の提出期限までに生命保険やiDeCoなどの証明書を用意できなかった場合でかつ、所得控除の適用を受けたい場合は、自分で確定申告を行う必要があります。

たとえば、年末に生命保険やiDeCoなどに加入した場合や、控除証明書を紛失して再発行中の場合は証明書が年末調整の後に届くこともあるため、あらかじめ期日までに用意できるかどうかを把握しておきましょう。

申請する控除から職場に個人情報を知られたくない方

所得控除の中には個人情報に該当するものがありますので、職場に知られたくない方は自分で確定申告を行いましょう。

たとえば、「寡婦控除」「ひとり親控除」「障害者控除」などは、適用を受けることで職場に自分の事情を知られてしまいます。
事情を職場に伝えず自分で確定申告する場合は、年末調整の書類の控除欄に「適用を受けたい控除」だけを記入するようにしましょう。

年末調整と確定申告の疑問・注意点

年末調整と確定申告の注意点や疑問を以下から解説します。

年末調整の申告書を提出しないとどうなる?

年末調整を受けるには、勤務先に必要書類を提出する必要があります。期日までに書類を用意できなかった場合は、年末調整が受けられません。
年末調整が受けられないことで発生するデメリットは下記の通りです。

  1. 年末調整が受けられないことで発生するデメリット
  2. 翌年の住民税が増える(各種控除が受けられないため、納める税金の額が上がりやすい)
  3. 概算で引かれている源泉徴収税額と、本来納めるべき所得税額の差分があった場合でも還付を受けられない
  4. 自身で確定申告を行わなければならず、不慣れな人ほど混乱する

確定申告をしないとどうなる?

期限内に確定申告ができなかった場合は、できるだけ早く期限後申告を行いましょう。
期限後申告とは、確定申告の期限を過ぎてから申告することです。

期限後申告ではペナルティとしていくつかの税金が加算されます。とはいえ、一部軽減される税金もありますので、早めの申告が大切です。

無申告を長期間続けていたり税務調査が入るまで自主申告をしなかったりした場合は、無申告加算税・延滞税の支払い以外にも、重加算税の支払いを求められるケースがあります。場合によっては、青色申告の承認が取り消される可能性もありますので注意しましょう。

確定申告書の作成には源泉徴収票が必要?

税制改正により、2019年4月1日以後に提出する確定申告書類には源泉徴収票の添付が不要になりました。

ただし、給与所得者が確定申告を行う場合、確定申告の書類に源泉徴収票の内容を転記する必要がありますので、手元に残しておきましょう。

年末調整と確定申告はどちらが優先される?

給与所得者が年末調整後に確定申告を行った場合は、確定申告の内容が優先されます。
年末調整と確定申告の両方を行っても税金が二重に取られることや、申請した控除が二重に適用されることはありません。

とはいえ、年末調整は企業の義務ですので、自分で確定申告を行う場合でも年末調整をしないという選択はできません。

年末調整が不要な年収は?

年収が103万円以下のアルバイト・パート勤務であれば、基本的に年末調整は必要ないといわれています。
給与所得者の場合、給与から給与所得控除と基礎控除を差し引いた金額に所得税が課税されます。給与所得控除や基礎控除は、高収入・高所得者ほど税負担が増加する仕組みです。

「給与等の収入金額」が162万5千円までの方の給与所得控除は55万円、「所得金額」が2,400万円以下の方の基礎控除は48万円です。つまり、年収が103万円の方であれば、「103万円-(55万円+48万円)」となり課税される所得税が「0円」となります。従って、年収103万円以下の給与所得者は所得税自体が発生しません。

ただし、勤務先が所得税の源泉徴収をしている場合や、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出している場合は、年末調整が必要になるケースがあります。不安な方は職場の方に確認しましょう。

確定申告が不要な年収は?

フリーランス・個人事業主の方で、事業所得が年間48万円以下の方は確定申告の必要がありません。理由は、「所得金額」が2,400万円以下の方の基礎控除が、48万円だからです。

給与所得控除は給与所得者にしか適用されませんが、基礎控除は誰にでも適用されます。
従って事業所得が48万円だった場合、適用される基礎控除は48万円のため、「48万円-48万円」となり課税される所得税は「0円」となります。

年末調整が受けられないケースとは?

年内に退職した方は年末調整を受けられない可能性が高いです。
「年末調整の対象者は、12月31日時点における在籍者」です。
従って、年内に再就職をしない限り年末調整が受けられません。そのため、自身で確定申告を行う必要があります。

ただし、12月分の給与を受け取った後に退職した場合は年末調整が受けられます。これは、退職した年に新たな給与を受け取れる可能性が極めて少なく、年間給与所得額がほぼ決定しているといえるからです。

複数の勤務先で働いている場合の年末調整の方法は?

複数の勤務先で働いている方でかつ、給与の合計が103万円超になる方は年末調整の際に注意が必要です。
複数の勤務先で年末調整を行った場合、控除が重複して適用される恐れがあります。

本来よりも少ない税金を支払っていることが発覚すれば、以後の税金を加算されるケースがありますので気を付けなければなりません。
もし、2か所以上の勤務先で年末調整をしてしまった場合は、確定申告をして正しい税金を納めましょう。

まとめ

年末調整の対象者と確定申告の対象者は異なりますが、一年間で一定以上の収入があれば、どちらかが必要になります。

また、年末調整と確定申告の時期は異なります。
適切な控除や還付を受けるには、各々の特徴や流れを知った上で、期限までに必要書類を準備しましょう。

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