再就職手当とは?条件や受給額の計算方法を紹介
はじめに
- 再就職手当とは、失業後に早期の再就職が決まった場合にもらえる給付のこと
- 失業手当の受給資格をもつ人が、再就職手当を受け取れる
- 非課税で受け取れるうえ、再就職先からの給与も受け取れるメリットがある
- 再就職手当の受給額は「支給残日数×基本手当日額×給付率」で計算できる
- 満額受給を目的にして、自身と合わない企業に再就職しないよう注意しよう
「再就職手当」とは、失業手当の受給資格を満たしている人が早期に再就職した場合に支給される、失業等給付制度の一つです。退職や転職を考えている人は、知っておいて損のない制度と言えます。
この記事では、再就職手当のメリットや受け取れる条件、受給額の計算方法などをご紹介します。
再就職手当とは?
再就職手当とは、雇用保険に設けられた失業等給付制度の「就職促進給付」の一つです。失業手当(失業保険)の受給資格を満たしており、受給資格が決定されてから早期に再就職が決まった(または開業した)場合に、所定の手続きを行うことでもらえる手当です。ハローワーク祝い金とも呼ばれています。
再就職までの期間が短いほど支給額が多くなる、という特徴があるため、満額をもらうためにはできる限り早めの再就職が必要となります。
失業手当(失業保険)との違い
失業手当(失業保険)とは、失業状態にある求職者に対し生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にすることを目的とした「失業補償機能」を含んだ給付のことです。以下の3点をすべて満たしている場合に、受給資格があると見なされます。
- 失業状態である
- ハローワークに求職の申し込みをしている
- 退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が1年以上ある
(特定受給資格者等の場合は退職日以前1年間に6ヶ月以上)
再就職手当は、失業手当の受給期間中に再就職した場合に受け取れるものであり、受け取れるタイミングが違います。また、失業手当の受給資格がない場合は受け取れないため、ハローワーク窓口で確認するといいでしょう。
受給するメリット
再就職手当を受給するメリットとして、以下の4点が挙げられます。
- 非課税で受け取れる
- 再就職先からの給与支給も受けられる
- 受給後すぐに退職しても、返金不要
- 再就職先を退職しても、条件を満たしていれば再び失業手当がもらえる
非課税で受け取れるため徴収されることがなく、再就職先からの給与も受け取れるため、必要な準備などに充てることが可能です。受給後になんらかの理由で退職することがあっても、返金不要のため安心して受け取れます。また、退職後に必要条件を満たしていれば、再び失業手当を受け取れます。
回避しようのない理由で退職を選んだ場合でも、生活面の安定や求職活動資金に充てられるでしょう。
再就職手当を受給するための条件は?
再就職手当を受給するためには、決められた条件をすべてクリアする必要があります。条件が当てはまらない場合は、受給資格がないと見なされ、申請できません。
ここからは、受給するための条件を9つ、ご紹介していきます。
1.待期期間(7日間)を満了している
失業手当の受給資格が決定された日から、7日間の待期期間があります。この期間中に再就職した場合や、アルバイトやパートをしていて失業状態ではなかった場合には支給されません。同様に失業手当も受けられなくなる他、不正受給と見なされて罰則が適用される可能性もありますので、注意が必要です。
2.支給残日数が3分の1以上ある
失業手当には所定給付日数というものがあり、支給した日数を引いた残り日数のことを「支給残日数」と言います。再就職手当を受けるためには、この日数が就職日の前日までに3分の1以上残っている必要があります。所定給付日数が3分の1を下回っていた場合は受給できません。
所定給付日数の確認方法については、後の確認表でご紹介します。
3.再就職先と前職との間に関係がない
再就職先が、前職の企業・人事・資金・取引などと深い関係がないことを証明する必要があります。関係がないことの証明書類を、再就職先に作成してもらいましょう。
もし前職の関連企業や取引先に再就職した場合、条件対象外となる可能性があります。
4.再就職先で1年以上の勤務が確実である
再就職しても1年以内に退職する可能性が高い、または短期就業契約で再就職する場合は、手当の対象外となります。ただし、短期就業契約の場合は、契約更新の見込みがあれば再就職手当の支給対象となります。「原則更新」と記載されていない場合は、確認しておくといいでしょう。
5.再就職先でも雇用保険に加入する
原則として、再就職先でも雇用保険に加入する必要があります。試用期間を経て正社員になる見込みがある場合は、申告を忘れずに行いましょう。
6.過去3年以内に手当を受給していない
就職日前から過去3年間に、再就職手当や常用就職支度手当を受給していた場合、対象外となり申請ができません。常用就職支度手当とは、障がいや就業日の年齢などの理由でスムーズな就職が難しい人を対象に、対象の人物が安定した職業に就いた場合に支給される手当です。
過去に受け取ったことがある場合は、いつ受け取っていたか、最後に受け取った日はいつか、といったことを確認することが大切です。
7.受給資格の決定前に採用内定を受けていない
失業手当の受給資格決定前に、再就職先から採用内定を受けていないことが条件です。申請前に内定が決まっている状態では失業と見なされないため、受給の対象外となります。前職から離職する際に転職先が決まっていた場合も、同じく対象外となります。
8.給付制限中は職業の紹介元に制限がある
自己都合の退職した場合には、待期期間満了後も2ヶ月間の給付制限があり、期間中は失業手当の支給が行われません。また、給付制限のうち1ヶ月間は、ハローワークあるいは職業紹介事業者の紹介による就職でないと支給対象にならないため、注意しましょう。
9.支給決定日までに離職していない
再就職手当の支給決定日前に離職してしまった場合は、受給資格を失うため、支給対象外となります。受け取るためには、就職してから継続で勤務する必要があります。
再就職手当はいくら?計算方法は?
再就職手当の受給額は「支給残日数×基本手当日額×給付率」で計算できます。「支給残日数」とは所定給付日数の支給残日数のことです。離職理由や年齢、所定給付日数によって変わります。「基本手当日額」は離職時の年齢によって額や上限が定められており、毎年8月1日に平均給与額をもとに改定されます。失業手当申請時に受け取れる雇用保険受給資格者証に記載されているので、確認しましょう。
「給付率」は支給残日数によって変動し、支給残日数が3分の2以上ある場合は70%、3分の1以上3分の2未満の場合は60%とされています。支給残日数が3分の1を下回っていた場合は、支給されません。
計算する前に確認しよう
再就職手当がいくらもらえるのか、計算をする前に、上記でご紹介した3点がわかっているとスムーズに計算できます。
- 支給残日数
- 給付率
- 基本手当日額
「支給残日数」とは、所定給付日数から失業手当の受給期間を除くことで判明します。失業手当は、受給資格決定後に7日間の待期期間を待ってから支給が始まります。受給資格の決定後「何日目に再就職が決まったか」もしくは「受け取った失業手当が何日分か」を確認しましょう。
具体的な確認方法をご紹介します。
・所定給付日数が240日あり、受給資格決定日から45日目に再就職する場合
受給資格決定日から45日目に再就職が決まった場合は、前日までの44日間が失業手当の支給期間です。ただし、失業手当の支給までには待期期間があるため、前日までの44日間から待期期間の7日を引いた37日間が支給日数となります。
所定給付日数の240日から支給日数の37日を引くと203日ですので、支給残日数が203日とわかります。給付率は支給残日数によって決まり、今回の例では70%の給付率です。給付率の確認には、下の表を参考にしてください。
所定給付日数 | 支給残日数 | |
---|---|---|
給付率60%の場合 | 給付率70%の場合 | |
90日 | 30日以上 | 60日以上 |
120日 | 40日以上 | 80日以上 |
150日 | 50日以上 | 100日以上 |
180日 | 60日以上 | 120日以上 |
210日 | 70日以上 | 140日以上 |
240日 | 80日以上 | 160日以上 |
270日 | 90日以上 | 180日以上 |
300日 | 100日以上 | 200日以上 |
330日 | 110日以上 | 220日以上 |
360日 | 120日以上 | 240日以上 |
所定給付日数の確認表
所定給付日数は、雇用保険に加入していた期間、および離職理由によって変動します。それぞれの理由ごとに、所定給付日数の確認表をご紹介します。
・定年・自己都合の場合(一般受給資格者)
被保険者であった期間 | |||
---|---|---|---|
10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
・障害者などで就職困難になった場合
被保険者であった期間 | ||
---|---|---|
1年未満 | 1年以上 | |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 |
・倒産・解雇または有期契約の更新がされなかった場合
(特定受給資格者または一部の特定理由離職者)
被保険者であった期間 | |||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上 35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上 45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
45歳以上 60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上 65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
ご自身の離職理由がどれに当てはまるかわからない場合は、ハローワークの窓口で確認してみるのも一つの方法です。
【離職理由別】受給額の計算方法
所定給付日数の確認ができたところで、受給額の計算例を、離職理由別に2パターンご紹介します。
会社都合による離職の場合
会社都合による離職では、待期期間の満了日翌日から、失業手当の支給が始まります。失業手当は就職日の前日までが支給期間となりますので、日数の数え間違いに注意です。
受給額の計算例は、以下の条件で行います。
- 基本手当日額 4,000円
- 所定給付日数 270日
- 就職日 受給資格決定日から50日目
所定給付日数が270日で、受給資格決定日から50日目に就職した場合、失業手当の支給期間が42日となり、支給残日数が228日とわかります。所定給付日数の3分の2以上、180日以上残っていますので、給付率は70%です。
計算式は「支給残日数×基本手当日額×給付率=受給額」です。
当てはめていくと、以下のように計算できます。
228×4,000×70%=638,400
自己都合による離職の場合
自己都合による離職では、待期期間が満了しても2ヶ月の給付制限があります。給付制限が始まってから2ヶ月間は支給が行われないため、所定給付日数に変動はありません。
受給額の計算例は、以下の条件で行います。
- 基本手当日額 3,000円
- 所定給付日数 90日
- 就職日 給付制限期間中
給付制限期間中に再就職が決まった場合は、所定給付日数に変動はなく、支給残日数も同じ日数の90日です。支給残日数が全日残っているため、給付率も70%であるとわかります。
計算式は「支給残日数×基本手当日額×給付率=受給額」です。
当てはめていくと、以下のように計算できます。
90×3,000×70%=189,000
給付制限期間が始まってから1ヶ月は、ハローワークや職業紹介事業者からの紹介で再就職した場合のみ、支給対象です。再就職を焦って、対象外とならないよう気をつけましょう。
再就職手当の手続きの流れ
再就職手当を受給するためには、必要となる書類の準備と、そろえた書類をハローワークに提出する必要があります。
ここからは、手続きの大まかな流れを内容とともにご紹介します。
1.再就職先で「採用証明書」を記入してもらう
再就職が決まったら、再就職先に「採用証明書」の記入をお願いしましょう。「採用証明書」は失業手当を受け取る際に配られたしおりの中に含まれています。万が一紛失してしまった場合は、再就職先に申告してください。ハローワークのホームページからダウンロード・印刷することで記入できます。
本人記入欄を記入してからお願いするとスムーズです。
2.「採用証明書」をハローワークへ提出する
必要事項を記入してもらった「採用証明書」を受け取り、記入漏れがないかを確認してから、ハローワークの窓口へ提出します。その際は「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」も一緒に提出しましょう。
3.ハローワークで「再就職手当支給申請書」を受け取る
「採用証明書」を提出して、受給条件を満たしていると判断されると、ハローワークから「再就職手当支給申請書」が発行されます。この申請書を提出することで、受給条件の確認審査が行われ、要件を満たしていれば再就職手当が支給されます。
紛失しないように注意して取り扱いましょう。
4.再就職先で「再就職手当支給申請書」を記入してもらう
受け取った「再就職手当支給申請書」の本人記入欄を記入してから、再就職先に事業主証明欄の記入を依頼します。電子申請も可能ではありますが、発行された用紙を紛失しないように注意が必要です。もし紛失してしまった場合は、ハローワークや再就職先に連絡して、電子申請で届け出を行えないかどうか確認しましょう。
5.「再就職手当支給申請書」と「雇用保険受給資格証」を提出する
再就職先から記入済みの「再就職手当支給申請書」を受け取ったら、ハローワークの窓口に「雇用保険受給資格証」「失業認定申告書」とともに提出します。この時、前職と再就職先に関係がないことを証明する書類も必要となるので、事前に依頼して作成しておくといいでしょう。
手続きの注意点
手続きをする前に、支給残日数が不足していないか、再就職先が前職と関わりがないかを確認することが重要です。不足していたり、関りがあったりした場合は、受給条件を満たしていないと見なされ、対象外となります。再就職手当をもらうにあたって、失業手当は打ち切りになります。両方を受け取ることはできませんので、要注意です。
また、支給残日数が多いうちに再就職できると受給額が多いという利点もありますが、満額をもらうことを目的に就活して、自身と合わない企業に再就職してしまうことのないよう注意しましょう。
再就職手当をもらわなかった場合
再就職手当の受給申請は、就職日から1ヶ月の間に行う必要があります。就職日から2年間は申請が可能となっていますが、2年を過ぎると申請できなくなりますので、申請忘れにご注意ください。
ただし、再就職手当は「受給しなくてはいけないもの」ではありません。申請していないことでハローワークから催促が来ることもありません。必要のない人や、ハローワークに行って申請をするのが大変な人は、申請しなくても問題ありませんので、安心してください。
まとめ
失業状態にある人が、早期に再就職した場合にもらえる給付金として、再就職手当をご紹介しました。受け取るためには失業手当の受給資格があること以外に、いくつかの条件があります。すべての条件を満たしていなければ申請できないため、ご自分の状況と条件を照らし合わせて確認することをおすすめします。また、多く受給するために再就職を急いで合わない企業に就職してしまう、といったことのないよう、焦らずに求職活動を行いましょう。