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コスパのいい年収は600万円前後?理由と節税対策をご紹介

date2024年07月18日
コスパのいい年収は600万円前後?理由と節税対策をご紹介
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はじめに

  • 独身者・既婚者問わずコスパがいい年収は600万円前後といわれている
  • 課税所得が10%なのも理由の1つである
  • 高年収の方ほど所得税が高くなるため年収のコスパも悪くなりがち
  • 高年収の方ほど控除や国の支援が受けにくくなる
  • 年収のコスパに限らず節税対策を知ることが大切

コスパのいい年収はいくら?

コスパとは「コストパフォーマンス:費用対効果」の略語で、「支払った費用に対して得られたものの割合」のことです。本来、コスパという言葉は「高い・低い」で表されますが、最近はコスパが高いことを「コスパがいい」、コスパが低いことを「コスパが悪い」などと表現する場合もあります。

この記事でご紹介する「コスパがいい年収」とは、給与の額面と手取りの差が少ない年収のことです。

「コスパのいい年収は600万円前後」といわれている理由

なぜ、「コスパがいい年収は600万円前後」といわれているのか、以下から理由を解説します。

独身者も既婚者も税金を抑えつつ国の支援を活用しやすいから

独身者、既婚者(共働き・片働き)を問わず、「年収600万円前後がコスパのいい年収」といわれています。理由は、各家庭の生活しやすいレベルの収入を維持しつつ、税金を抑えたり国の支援を活用したりできるためです。
たとえば、独身者の方は既婚者と比べて公的支援が少ないので、所得税や住民税を抑える必要があります。

また、既婚者で共働き世帯の場合は、夫婦で世帯収入を半分ずつ稼ぐよりも、どちらかの収入を抑える方が税金の負担も軽くなります。これは配偶者の収入が一定金額以下ならば、配偶者控除や配偶者特別控除を受けられるためです。子どもがいたりどちらかが専業主婦(主夫)であったりする場合は、公的支援や各種控除を活用できる年収の方ほどコスパがいいといえるでしょう。

課税所得の税率が10%だから

課税所得を算出する前に、以下の条件を知っておきましょう。

  • 健康保険料と介護保険料と厚生年金について

    健康保険料と介護保険料は年収からあわせて約10%引かれる
    厚生年金は年収から約20%引かれる
    ※あわせて約30%引かれるが労使折半なので自己負担は約15%

  • 雇用保険について

    年収の6/1000引かれる

  • 基礎控除額について

    年収によって異なる
    ※年収2,400万円以下の場合は年収から一律48万円が引かれる

給与所得控除

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限)

「コスパがいいのは年収600万円前後といわれている理由」を裏付けるために、給与収入が600万円の場合を想定して、課税所得が10%になるかどうかを計算します。

  • 給与所得控除額(給与の中で税金がかからない部分)

    600万円×20%+44万円=164万円

  • 差し引き給与所得

    600万円-164万円=436万円

  • 健康保険料・介護保険料・厚生年金(自己負担分)

    600万円×15%=約90万円

  • 雇用保険料

    600万円×6/1000=3万6,000円

  • 課税所得

    436万円-(90万円+3万6,000円+48万円)=295万6,000円

上記の式から年収600万円の課税所得の税率は10%だとわかります(下記表参照)。

所得税の速算表(平成27年分以降)

課税される所得金額(千円未満切捨て)税率控除率
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

引用:国税庁|No.1410 給与所得控除

引用:国税庁|【確定申告書等作成コーナー】-所得税の税率とは

なぜ課税所得の税率が10%だと年収のコスパがいい?

前項において、年収600万円の方は課税所得の税率が10%だとわかりました。

一方で、年収が100万円上がると(700万円になると)、課税所得は362万円8,000円(税率は20%)となります。年収700万円と600万円では税率の差が10%(20%-10%)もあるため、年収600万円の方は年収700万円の方と比べると税負担が軽く、「コスパのいい年収」ともいえます。

「年収が上がるとコスパが悪い」といわれている理由

年収が上がると「コスパが悪い」という意見も耳にします。
以下から、理由を解説します。

所得税の納税額が上がるから

所得税は「課税所得×税率-控除額」の計算式に当てはめると算出できます。

所得税は、年収が上がるにつれて適用される税率も高くなりますので、高年収の人ほど額面と手取りの差が大きくなりがちです。理由の1つには、所得税の「累進課税(超過累進課税)制度」が関係しています。
超過累進課税とは、「一定額を超えた金額のみ次の段階(税率は7段階に分けられている)の税率が適用されること」です。

詳しくは下記表をご参照ください。

所得税の速算表(平成27年分以降)

課税される所得金額(千円未満切捨て)税率控除率
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

所得税を求める場合は、上記表に記載されている通り、控除額を考慮しましょう。
たとえば、課税所得が「196万円」の場合、「196万円」すべてに「10%」の税率が適用されるのではありません。「195万円」までは「5%」の税率が適用されて、残りの「1万円」のみに「10%」の税率が適用されます。

引用:国税庁|【確定申告書等作成コーナー】-所得税の税率とは

年収が増えるほど基礎控除が減るから

2020年の改正により、基礎控除の額と給与所得控除の額が変更されました。

控除とは、簡単にいうと「収入から一定の金額を差し引くこと」です。控除額が増えるほど納税額は減ります。
基礎控除とは、所得控除の1つであり、主に所得税の額を算出するときに使用します。また、基礎控除はすべての納税者が対象です。

基礎控除の金額は以下の通りです。

基礎控除及び所得金額調整控除に関する改正

合計所得金額基礎控除
改正後改正前
2,400万円以下48万円38万円(所得制限なし)
2,400万円超 2,450万円以下32万円
2,450万円超 2,500万円以下16万円

改正前は一律38万円が収入額に関係なく控除されていましたが、改正後は年収に応じて基礎控除の額が変更されました。改正に伴い、年収2,400万円以下の方の基礎控除は一律48万円まで引き上げられましたが、年収2,400万円以上の方は基礎控除が徐々に引き下げられましたので、税負担が増えました。

引用:国税庁|Ⅰ 昨年と比べて変わった点

年収が850万円超の給与所得控除が減ったから

給与所得控除とは、勤務先から給料やボーナスなどをもらっている人が受けられる控除の1つです。年収2,400万円以下の方の基礎控除は10万円引き上げられましたが、同時期の法改正で給与所得控除が一律10万円引き下げられました。

以下の表をご参照ください。

給与所得控除

令和2年分以降平成29年分から令和元年分
給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額 給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで550,000円1,625,000円まで650,000円
1,625,001円から1,800,000円まで収入金額×40%-100,000円1,625,001円から1,800,000円まで収入金額×40%
1,800,001円から3,600,000円まで収入金額×30%+80,000円1,800,001円から3,600,000円まで収入金額×30%+180,000円
1,800,001円から3,600,000円まで収入金額×30%+80,000円1,800,001円から3,600,000円まで収入金額×20%+540,000円
3,600,001円から6,600,000円まで収入金額×20%+440,000円3,600,001円から6,600,000円まで収入金額×20%+540,000円
6,600,001円から8,500,000円まで収入金額×10%+1,200,000円6,600,001円から10,000,000円まで収入金額×10%+1,200,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限)10,000,001円以上2,200,000円(上限)

改正後の表を見ると、年収が850万円超の方は給与所得控除の上限額が195万円に引き下げられたことがわかります。

以下では、年収が900万円の方の場合、どれくらい税負担が増えてしまうかシミュレーションを行います。

  • 改正前

    給与所得控除額:900万円×10%+120万円=210万円
    差し引き給与額:900万円-210万円=690万円
    健康保険料・介護保険料・厚生年金(自己負担分):900万円×15%=約135万円
    雇用保険料:900万円×6/1000=5万4,000円
    基礎控除:38万円
    課税所得:690万円-(135万円 +5万4,000円+38万円)=511万6,000円

  • 改正後

    給与所得控除額:195万円
    差し引き給与額:900万円-195=705万円
    健康保険料・介護保険料・厚生年金(自己負担分):900万円×15%=約135万円
    雇用保険料:900万円×6/1000=5万4,000円
    基礎控除:48万円
    課税所得:705万円-(135万円 +5万4,000円+48万円)=516万6,000円

  • 改正前と改正後の課税所得の差

    516万円6,000円-511万円6,000円=5万円
    上記の式から年収が900万円の方の場合、約5万円課税所得が増えたことになります。

課税所得が大きいほど、所得税額の割合も大きくなるため、税負担が増えたといえるでしょう。

引用:国税庁|No.1410 給与所得控除

配偶者控除や配偶者特別控除などを受けられない場合があるから

「配偶者控除」や「配偶者特別控除」が受けられない場合もあります。「配偶者控除」も「配偶者特別控除」も税負担を軽減できる制度ですが、どちらも控除を受ける納税者の所得金額が1,000万円以下と定められているためです。

「配偶者控除」とは、配偶者の年間合計所得金額が48万円以下(年収103万円以下)の場合に受けられます。
※年収103万円の所得控除額が55万円のため、以下の式となるから
103万円(年収)-55万円:(所得控除額)=48万円:(合計所得金額)

また、控除を受ける納税者の所得金額と配偶者の年間合計所得金額によって、受けられる控除額が異なります。たとえば、年収が900万円以下の納税者の場合、配偶者の年間合計所得金額は38万円(老人控除対象配偶者の場合は48万円)です。

一方、「配偶者特別控除」は配偶者に48万円以上の所得があっても、合計所得が133万円以下であれば受けられます。配偶者特別控除の控除額は、納税者の年収によって38万円から1万円まで差があります。

住宅ローン控除を使えない場合があるから

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)が使えないケースも想定されます。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用した人の中で、一定の条件を満たした方に所得税から控除する制度です。また、前年分の所得税から控除できなかった場合は翌年の住民税から控除を行います。

住宅ローン控除は、合計所得が2,000万円以下と年収制限が設けられています(「特例居住用家屋・特例認定住宅等」は合計所得金額1,000万円以下)ので、年収が高い方には適用されません。

年収のコスパがいいか悪いかに限らず節税対策を知ろう

年収のコスパに限らず節税対策は大切です。
以下から節税対策を8つご紹介します。

生命保険・地震保険などによる所得控除を利用しよう

生命保険や地震保険などに加入すると、一定額の所得税控除が受けられます。会社員の方は年末調整、個人事業主の方は確定申告から、各控除の申請手続きが行えます。

2012年以降に保険契約を締結した方は、「新生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「新個人年金保険料控除」の3つの控除が対象です。2012年以前に、保険契約を締結した方は、生命保険料控除の取扱いや控除額が異なりますので注意しましょう。
また、地震保険控除を受けるには、火災保険とセットで加入しないといけません。

これらの控除を受けることで、納めた所得税から税金が還付されたり今後支払う所得税や住民税の負担が軽減されたりするので、節税効果が期待できます。

医療費控除を利用しよう

医療費控除とは、年間の医療費が一定額を超えた場合に、所得税や住民税の控除が受けられる制度のことです。医療費控除額は最高で200万円までです。

医療費控除の金額は「実際に支払った医療費の合計額」-(保険金などで補填される金額)-「10万円」で求められます。
ただし、「総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額の5%の金額」が適用されます。

セルフメディケーション税制を利用しよう

セルフメディケーション税制とは、健康の保持増進・疾病の予防など一定の取り組みを行っている方(自分や配偶者・親族)でかつ、一定の条件をクリアした方が受けられる制度です。年間で対象医薬品を1万2,000円以上購入した場合に、一定の金額の所得控除(医療費控除の特例)が受けられます。

医療費控除が「治療」するためにかかった費用への控除を意味するのに対して、セルフメディケーション税制とは「予防」するためにかかった費用への控除を意味します。

セルフメディケーション税制の控除対象となるのは、医療用医薬品やOTC医薬品(市販の医薬品)の購入者です。
セルフメディケーション税制は、医療費控除と同時に利用できませんので、控除を受ける前にはどちらを選択するか考えましょう。

所得金額調整控除を利用しよう

先述した通り、給与所得控除の上限が引き下げられたことにより、年収が850万円を超える給与所得者の負担が増加しました。

そこで、一定の要件を満たした方の負担を軽減するための措置として、「所得金額調整控除」という制度が新設されました。所得金額調整控除とは、所得税や住民税を計算する際にベースとなる「所得金額」の控除が受けられる制度のことです。

下記の2点のどちらか、または両方に該当する場合は所得金額調整控除が受けられます。

  1. 1. 本年の年収が850万円を超える給与所得者のうち下記のいずれかに該当する方
  2. 1-1.本人が特別障害者
  3. 1-2.同一生計配偶者または扶養親族が特別障害者
  4. 1-3.所得税を確定申告する年の12月31日時点で23歳未満の扶養親族がいる

  5. 2.給与所得と年金所得が両方ある方のうち、所得額の合計が10万円を超える方

扶養控除を利用しよう

所得控除の中には、扶養控除と呼ばれるものがあります。扶養控除とは、納税者に控除対象の扶養親族がいる場合、一定金額の所得控除が受けられる制度のことです。扶養親族は、前年の12月31日時点で配偶者以外の親族でかつ、16歳以上と決められています。

扶養控除は、親族の扶養に伴う納税者の負担を軽減するための措置です。扶養控除も「配偶者控除」と同じく、扶養親族の年間の合計所得金額が48万円以下(年収103万円以下)であれば受けられます。ただし、扶養者の年収に関係なく所得控除が受けられる点が「配偶者控除」とは異なります。

iDeCo(イデコ)を利用しよう

iDeCoとは、自分で設定した掛金を自分で運用して資産形成を行う私的年金制度の1つです。公的年金にプラスして受け取れる「もうひとつの年金」といわれており、税制優遇が受けられます。iDeCoの掛金は控除の対象となるため、所得税・住民税共に税金が軽減されます。金融商品を運用する際の運用益も非課税です。

また、iDeCoは受取時にも年金か一時金か受取方法を選択できます。年金として受け取るときは「公的年金等控除」、一時金として受け取るときは「退職所得控除」を受けることが可能です。

NISAを利用しよう

NISAとは投資で得た収益に税金がかからない制度のことです。少額から投資を行えるため、「少額投資非課税制度」と呼ばれています。

NISAとiDeCoはいくつか相違点があります。

  1. iDeCo

    税制優遇措置:掛金の全額所得控除・運用益が非課税・受取時の控除措置
    利用可能者:日本国内居住の20歳以上65歳未満の国民年金納付者
    受取方法:原則として60歳以降にしか受け取れない


  2. NISA

    税制優遇措置:運用益が非課税
    利用可能者:日本国内居住者
    受取方法:いつでも引き出し可能

加えて、NISAはiDeCoのように、職業や企業年金の有無により拠出の上限額が決められていませんので、iDeCoよりも自由に資産運用ができます。

ふるさと納税を利用しよう

ふるさと納税とは、自分の応援したい地方自治体に納税して返礼品を受け取る制度です。ふるさと納税では、自己負担額の2,000円を超えた部分に対しては所得税・住民税の寄付控除が適用されます。

ただし、収入や家族構成などに応じて寄付の上限額が決まります。上限額以上の寄附をした場合は、控除対象になりませんので注意しましょう。

年収のコスパのいい悪いに限らず新制度をチェックしておこう

2024年10月より、児童手当の所得制限がなくなります。
お子さんがいるご家庭の方は、以下もご参考ください。

2024年10月より対象者が拡充される「児童手当」

児童手当とは、児童を養育する方に手当を支給する制度のことです。
2024年7月現在、児童手当は子どもの人数と収入額に応じて一部、所得制限が設けられています。たとえば、扶養親族が3人(児童2人 + 年収103万円以下の配偶者の場合)がいて、年収が1,200万円以上ある方は児童手当の対象外です。

先月6月に、2024年10月より児童手当の拡充、12月より所得制限撤廃により全ての子育て世帯へ支給が開始される法案が可決されました。児童手当の所得制限撤廃におり、今までは児童手当の恩恵を受けられなかった方も今後は支援を受けられるようになります。

まとめ

「コスパがいい年収は600万円前後」といわれている理由を解説しました。理由の1つとして、年収が増えるほど所得税も増えるため、コスパが悪くなるといわれているからです。ですので、年収の高い方ほど節税対策を行いましょう。

また、児童手当の件のように国の制度が変わることもあります。今まで対象外だった方も、支援や控除の対象になる場合もありますので、日頃からこまめに国や地方自治体の情報をチェックしておきましょう。

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