アルムナイ採用とは?制度の意味とメリットデメリットを解説
はじめに
- アルムナイ(alumni)は卒業生を指す英語でビジネスでは企業の元従業員を指す
- アルムナイ採用は離職した企業の元従業員を再雇用する制度
- アルムナイ採用は少ないコストで有能な即戦力が期待できる人材戦略
- 誤解のないアルムナイ採用の推進には既存社員への配慮が不可欠
- 課題解決や柔軟さも必要だが企業ブランドの向上にもつながる制度
人材の流動性が高まり続けている昨今、企業の元メンバーを再雇用するアルムナイ採用が注目されているのをご存じでしょうか。アルムナイとは卒業生のことで、ビジネスにおいては企業の元メンバーを指しています。本稿では新時代の採用制度として注目されるアルムナイ採用について、メリットやデメリットと合わせて、その重要性を解説します。
アルムナイとアルムナイ採用
アルムナイ(alumni)とは英語で、学校や組織の卒業生や元メンバーを指す言葉です。これをビジネスの世界では、企業の元従業員を指してアルムナイ人材と呼び、彼らの再雇用制度をアルムナイ採用もしくはアルムナイ制度と呼びます。
アルムナイ採用の別名や類似の制度
アルムナイ採用は企業により、出戻りやカムバック、ジョブリターンなどの別名や、類似の制度が存在します。これらについて以下の表にまとめました。
アルムナイ採用の別名
出戻り制度・採用 カムバック制度・採用 ジョブリターン制度・採用 など | 基本的にはアルムナイ採用と同様に、離職した人材の復職を認める制度。企業によっては単に復職制度と呼ぶ場合や、介護や子育てなどの限定や条件が伴う場合もある |
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アルムナイ採用の類似制度
定年退職後再雇用 | 自社を定年退職した社員を嘱託等の条件で再雇用する制度。アルムナイ採用の一種 |
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リファラル採用 | 紹介者によって推薦された人材を採用する制度。リファラル採用はアルムナイよりも広い範囲の人材が対象となる |
正社員登用制度 | パートやアルバイトの勤務者や経験者を正社員として登用する制度。古くから存在する制度で、企業により条件やケースが異なる |
アルムナイ採用が注目される背景
近年アルムナイ採用が注目されるようになった代表的な背景に、少子高齢化の影響が挙げられます。これにより人材市場は売り手市場となり、優秀な人材の確保が難しくなりました。
これに対して元従業員であるアルムナイの再雇用であれば、新卒や転職の市場とは異なる層から採用できます。また履歴や個人情報も集めやすいため採用の手順や時間が短縮でき、自社の業務や企業文化にも精通していることから、トレーニングコストも削減できます。
アルムナイ採用のメリット
自社で働いていた経験を持つアルムナイには、即戦力化への期待をはじめ多くのメリットがあります。ここでは代表的なものから3点、アルムナイ採用が持つ大きなメリットを解説します。
既存のスキルセットが活用できる
アルムナイ人材は社外で経験してきたスキルだけでなく、自社で勤務していた当時の業務経験も活用できます。これにより教育コストや訓練時間を大幅に軽減でき、即戦力化が期待できます。
現場のコミュニケーションにも理解がある
アルムナイは企業の理念や文化を既に理解しているため、社内のさまざまなネットワークにも比較的容易に再接続できます。これにより現場定着にかかるコストも軽減でき、コミュニケーションの面でも早期の順応が期待できます。
アルムナイが持つネットワークも活用できる
アルムナイとの交流を保つことで、社外のアルムナイも、貴重な情報や人材のリソースとして活用できます。そして採用後には、アルムナイ人材が獲得した社外のネットワークとも、接続できます。これはアルムナイ人材が持つ知見や経験だけでなく、人材採用の面においても、さらに広範囲のつながりが得られる大きなメリットです。
アルムナイ採用のデメリット
一見して多くのメリットをもたらすアルムナイ採用ですが、この制度にはデメリットも存在します。ここでは大きく3点、アルムナイ採用が持つ代表的なデメリットを解説します。
再度の離職につながる可能性がある
例えば人間関係や既存の業務環境への不満など、過去の離職理由が再び問題となる可能性があります。これを避けるにはアルムナイとなる人材の離職時に、離職理由をしっかり確認することと、円満退職の実現が不可欠です。また社内においても課題があるようであれば、それを解決することも必要です。
既存社員への配慮も重要
一度辞めても再雇用が簡単だと思われたり、復帰した人材ばかりが重用されたりしては、既存社員のモチベーションが下がってしまいます。
これに対処するには、「一定年数の勤務歴」や「妥当と言える出勤率」など、再雇用への明確な基準が必要です。また採用後においても「役職採用への基準」や「管理職登用の条件」など、アルムナイへの明確な評価制度も必要です。これと同時に誤解を生まないよう、社内でも制度理解を進めるなど、既存社員への配慮が重要と言えます。
アルムナイ採用特有のコストがかかる
アルムナイ採用を実現するには、離職後のアルムナイとのつながりを保つ、専門人材の育成や窓口の設置など、アルムナイ採用に対応する特有のコストが必要になります。例えばアルムナイ専用のSNS開発やメールマガジンの運用、交流イベントやその準備、情報流出リスクへの対策などがそれに当たります。
企業側の課題
ここまでにアルムナイ採用のメリットとデメリットを解説しましたが、これらを踏まえて企業がアルムナイ採用を導入するためには、どのような課題があるでしょうか。ここでは大きく2点、アルムナイの送り出しと受け入れが持つ課題について解説します。
離職時のコミュニケーション
アルムナイ採用を活用するには離職者を気持ちよく送り出すこと、つまり円満退職が不可欠です。離職関連の手続きはもちろんのこと、離職理由についてもしっかり確認し、企業が解決すべき問題の把握に努める必要があります。これらをしっかりと実践し、アルムナイが将来的に戻ってきたいと考えられるよう、離職後もつながりを維持できるコミュニケーションが重要となります。
受け入れ態勢の構築
アルムナイ人材が納得して復職するためには、受け入れ態勢の構築も重要です。担当人材の育成や担当窓口の設置、制度づくりと社内外へのアナウンス、アルムナイとのネットワーク形成などがそれに当たります。また実際の採用業務では、これらの課題とともに、さまざまな人材に対応できるよう、変化に富んだ柔軟な対応が求められます。
まとめ
今回はアルムナイ採用について解説しました。アルムナイ採用は企業に多くのメリットをもたらしますが、有効活用するには制度の適切な管理と運用が必要です。人材の流動性が高まり終身雇用の前提が崩れた今だからこそ、アルムナイ採用は有益な人材戦略となり、実現できれば企業のブランドイメージも向上できるでしょう。
アルムナイ採用にはまだ課題が多く、柔軟な対応も必要となるため難しい取り組みですが、本稿がアルムナイ採用への理解を深め、業務で活用する一助となることを願っています。