グループディスカッションの進行役で高評価を得るコツとは?


はじめに
- 企業は、進行役のリーダーシップ力やコミュニケーション力を注視している
- 進行役の役割は、時間の管理や議論の方向性調整、メンバーと協力して結論を導くことである
- グループディスカッションは、自己紹介・役割分担・時間配分・方向性の設定・議論・結論だし・発表で進行する
- うまく進めるコツは、中立の立場、全員の意見の引き出し、軌道修正である
- 進行役は、簡潔にわかりやすく話し、相手の意見を否定せず、全員が納得する結論の取りまとめに徹する
就活の選考過程において、グループディスカッションを実施する企業が増えており、進行役(司会)を務めるためには、ポイントを抑えることが必要です。この記事では、進行役がアピールできるスキルや役割、進行方法などの、高評価を得るためのコツを紹介します。
企業がグループディスカッションを実施する理由
企業が採用選考にグループディスカッションを実施する理由は、応募者の多面的な能力を評価できるためです。とくに進行役は、グループ全体をまとめ、円滑な議論を促す役割を担うため、企業はその人物のチームでの振舞いと貢献度を重点的に注視します。
企業がグループディスカッションの進行役を評価するポイント
企業が進行役を評価するポイントは、進行役としての役割を果たし、結果を出せるかです。企業は、進行役の評価ポイントとして、以下のようなスキルに注視して能力を見極めています。
評価のポイント | 何を見られているか | |
---|---|---|
協調性 | 周囲と協力して物事を行う力 | 入社後、周囲の状況に合わせて協力できる人材かどうか |
傾聴力 | 周囲の話をよく聞く力 | 他の発言を正しく理解し、対応できる人材かどうか |
観察力 | 周囲の状況を見極める力 | 周囲の状況を正しく見極められ、自分のするべきことを判断できる人材かどうか |
コミュニケーション力 | 相手と円滑に意思疎通を図るための力 | 思いやりのある言葉選びと振舞いができ、周囲との良好な関係性を築けるかどうか |
リーダーシップ力 | チームや組織を導き、目標達成に向けてメンバーをまとめる力 | 性格や意見の異なる人たちをまとめ上げ、成果を導き出せるかどうか |
グループディスカッションの進行役の役割
進行役の役割は、単に議論を進めるだけでなく、グループ全体が効果的に機能するように導くことです。また、適切な進行は議論を深め、メンバー全員が貢献できる環境を作ることができます。
議論の方向性を調整する
企業に提示されたテーマに沿った結論を導くため、議論の方向性を調整します。議論の過程で方向が逸れないように、適切に介入し軌道修正する必要があります。このような場合も、発言内容を否定するのではなく、方法性に沿った別案の提案や違う切り口などを示して、方向性を修正することが大切です。
時間を管理する
限られた時間で、意見やアイデアを出し合い結論に達するためには、時間管理がもっとも重要になります。
タイムキーパー役がいたとしても、白熱する議論のさなか時間経過を言い出せないときもあるでしょう。進行役は時間経過の確認とグループメンバーへの共有を行い、全員が残り時間を認識することで、無駄な時間を省き効率的な結論を導くことができます。
全体の協力や協調を促す
進行役は、メンバー間の協力と協調を促す重要な存在といえます。異なる意見をもつメンバーが協力して共通の目標に向かうためには、活発に発言する特定の意見に偏らず、グループ全体の意見を引き出すことが必要です。進行役が協力的な雰囲気を作ることで、よりよいアイデアや解決策が生まれやすくなります。
結論を導く
限られた時間内に結論を導き出せることは課題達成という大きな評価につながります。出し合った意見やアイデアを整理して、全員で協議し納得できる形の結論を導くことが重要です。この際、論理的で明確な説明を心がけることで、メンバー全員が理解しやすくなります。進行役は、結論を出すプロセスを通じてリーダーシップ力を発揮し、グループ全体の目標達成をサポートしましょう。
グループディスカッションの進行方法
進行役は、以下の手順を参考に、効果的に議論を進行しましょう。

自己紹介を行う
まずは自己紹介からはじめます。氏名・大学名・専攻学部名まで伝えることで、グループメンバーはその人の得意分野を想像できます。メンバーが集まったところで「自己紹介からはじめましょうか。私は○○と申します。△△大学☓☓学部です。よろしくお願いします」などと会話のきっかけを作りましょう。硬すぎない口調で明るく自信をもって話すことで、共感を得られ進行役のポジションを確保します。
役割分担を決める
次は役割分担を決めます。誰も発言しないと進行が止まってしまうので、「はじめに役割分担から決めませんか」と声をかけてスムーズに進めましょう。司会・タイムキーパー・書記・発表者を決めることで、各メンバーが自分の役割に集中できる環境を整えます。ここで時間をとられてしまうと、議論を深めることが難しくなるため、メンバーの意見や希望を聞きながら、適切な役割を割り当てることがポイントです。
時間配分を決める
ここまでにかかった時間を考慮し、制限時間内に発表準備までの時間配分を共有します。時間配分の目安は、30分のグループディスカッションの場合、自己紹介5分、役割分担5分・意見やアイデアだし10分・まとめ5分・発表準備5分などです。時間配分を共有することで、各メンバーが今やるべきことを意識しやすくなります。
課題の方向性を設定する
グループディスカッションの初期段階で、議論の主題や目的を明確に定めましょう。これにより議論の迷走や脱線を軽減でき、参加者全員が同じ目標に向かって議論を進められる手助けになります。たとえば、ターゲットを絞ったり行動パターンを決めたり、目的を定めたりします。
例:新商品の販売促進案を提案ください。
ターゲット:この商品を多く購入するのは誰か
行動パターン:どのような方法で購入するのか
目的:どのような理由でこの商品を購入するのか
結論の方向:ターゲットが目的達成のため、この商品が最善だと示す内容にはどのような方法があるか
意見やアイデアを出しあう
方向性が定まったら、参加者全員にアイデアや意見を出しあうように促します。多角的な視点の意見が出るように、質問を投げかけたり発言しやすい雰囲気を作ったりして、意見を引き出しましょう。活発な意見が出ないときは、進行役が完璧な意見ではなく、きっかけとなるような意見やアイデアの一端を提案するなど、議論の活発化を図るように努めます。
結論を取りまとめる
議論の終盤は、出しあった意見やアイデアを基に結論を決めていきます。メンバーの合意の元、一つの意見にこだわらず、よい意見やアイデアを合わせるなど状況に応じた取りまとめが必要です。この際、参加者に結論の妥当性を確認し、意見を求めることで、全員が納得した上で次のステップに進むようにします。
発表準備と発表
プレゼンテーションの準備は、発表内容の整理と発表の順番や過程の解説、結論に至った理由などを簡潔にまとめます。発表者の熱意が伝わることも重要なので、練習を行いましょう。発表が成功することで、グループ全体の達成感や一体感を高める効果が期待できます。
グループディスカッションをうまく進めるコツ
グループディスカッションをうまく進めるためには、多方面に気を配り、補足や調整などさまざまな対応が必要です。以下のコツを活用することで、議論をスムーズに進められます。
すべての参加者の意見を引き出す
人前で発言することが苦手な人もいるため、このような人たちの意見も引き出す工夫が必要です。選択肢のある質問とその理由や、追加意見が出やすい問いかけをしましょう。たとえば、「A案とB案では、どちらがよいと思われますか?その理由も教えていただけますか」のように、具体的な問いかけの方が返答しやすい場合も多く、全員が安心して発言できる雰囲気を作り出します。
中立の立場を意識する
進行役は常に中立の立場を保ち、多角的に意見を出せるような気遣いが必要です。さまざまな意見やアイデアが出たときに、進行役が特定の意見に傾倒してしまうと、議論の流れがそちらに傾いてしまう場合があります。進行役は、強引な印象を与えたり有益な反対意見が出なかったりしないために、すべての意見を尊重し、議論が偏らないように注意しましょう。
軌道修正もさりげなく行う
議論が盛り上がると、とかく脱線しやすく議論の方向がずれてしまうこともあります。このようなときも、あからさまに軌道修正するのではなく、さりげなく戻すようにしましょう。たとえば、「○○の方向は議論が深まりましたので、こちらはどのようにしたらよいと思われますか」など、建設的な方向に導くような提案をすることで、活発な雰囲気を崩さない工夫が必要です。
グループディスカッションの進行役が注意すること
次はグループディスカッションの進行役が注意すべきことを見ていきましょう。振舞いや言葉づかい、手段や広い視点など、進行役が注意する点は多岐にわたります。代表的なものを紹介します。
進行役は主張しすぎず、取りまとめ役に徹する
進行役が自分の意見を主張しすぎると、他のメンバーは発言しにくい状況が生じるため、自己主張せずに、聞き役、取りまとめ役に徹します。意見が出ないときや、対極の意見に折り合いがつかないときなど、進行役が発言すべきポイントを見極めましょう。
多数決は行わない
グループディスカッションでは、多数決は避け合意形成を重視することが大切です。これにより、チーム全体の協力体制が強化され、よりよい結果を生み出せます。多数決は簡単に結論を出せる便利な方法ですが、否定的な意見をもつ人や納得できていない人にとっては、強引な手法となることを覚えておきましょう。
簡潔でわかりやすく話す
進行役は、簡潔でわかりやすい言葉選びと、メンバー全員に伝わる声量を意識しましょう。複雑な説明や専門用語を避け、誰にでも理解できる言葉で説明することで、全員が同じ理解をもって議論に参加できます。これにより、限られた時間でメンバー全員がやるべきことを理解し、グループディスカッションを効果的に進められます。
相手の意見を否定しない
進行役は、相手の意見を否定せず、全員の意見を尊重する姿勢が必要になります。否定的な態度は、参加者の意欲を削ぎ、議論の活発さを失わせる可能性があるからです。疑問がある場合は「○○が疑問に感じたのですが、何か対策はありますか」など、前向きに検討できるような質問を投げかけてみるとよいでしょう。
全員が納得する結論を出す
進行役は、全員が納得できる結論を導くことを目指しましょう。全員の納得が難しい場合も、丁寧に出された意見を整理して、すり合わせることで、参加者全員が同意できる形で結論をまとめます。たとえば、ひとつの意見やアイデアに、他の意見の一部を盛り込んで、よいとこ取りをするのも一案です。どの意見もよい案であることを伝え、感謝の気持ちを表すことで納得を得られる場合があります。
まとめ
グループディスカッションの進行役は、多方面の観察と気遣いや配慮が必要になります。大変な役ではありますが、リーダーシップ力とコミュニケーション能力を発揮する絶好の機会といえます。誠実に対応してグループをまとめ上げられると、高評価を得られるため、日頃からポイントを意識して練習しておきましょう。この記事を参考に、グループディスカッションの進行役として、よい結果を出せることを願っています。