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ウェルビーイングとは?その重要性とメリットを解説

date2024年01月31日
ウェルビーイングとは?その重要性とメリットを解説
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はじめに

昨今、健康や幸福を指すウェルビーイングという言葉に注目が集まり、耳にする機会も増えているのではないでしょうか? 取り入れたいと考えつつも、具体的な方法がつかめないなど、疑問もあるかと思われます。本記事ではウェルビーイングとは何であり、どのような取り組みがあるのかを、詳しく解説します。これを機に、ぜひウェルビーイングを身近なものとしてください。

ウェルビーイングとは

ウェルビーイングとは

ウェルビーイング(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に満たされた良好な状態にあることを意味する概念で、広い意味での健康や幸福を指す言葉です。初出は1946年、WHO(世界保健機関)の設立に際して、その憲章の中で述べられました。

またウェルビーイングは全体的に良好な状態を指している点から、一時的・瞬間的ではなく、良好な状態を維持できることに、その特徴があります。

ウェルビーイングの類義語

ウェルビーイングは直訳すると、よい状態です。概念的な言葉のため、広い意味での健康や幸福を指しており、似た言葉も数多く存在しています。以下では、ウェルビーイングについて考える際、近い意味で聞くことの多い言葉を簡単に解説します。

類義語の一覧

ウェルビーイングの類語意味
ウェルネス
(wellness)
よりよく生きようとする生活態度
(ウェルビーイングに含まれる要素)
ウェルフェア
(welfare)
福祉や福利厚生
(ウェルビーイングを達成する手段)
クオリティ オブ ライフ
(Quality of life=QOL)
人生や生活の質
(ウェルビーイングを達成する手段)
ウェルビーイング経営パーパスにウェルビーイングを取り入れた経営、
パーパス経営の一形態
パーパス経営
(パーパスとは)
パーパスを理念に掲げた経営
(パーパスとは企業が重んじる価値観のこと)

ウェルビーイングを達成すべき目的と考えると、ウェルネスはウェルビーイングに含まれる要素であり、ウェルフェアやQOLはウェルビーイング達成の手段と言えるでしょう。

SDG’sとの関わり

2015年に国連で定められた持続可能な開発目標であるSDG’sには、17のゴールが設定されました。その目標の1つであるゴール3「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-being)」の中では、まさにウェルビーイングが目標として設定されました。

ウェルビーイングは現在も世界中の国や機関で研究されており、その注目度も上がっています。日本でも内閣府、厚生労働省、文部科学省らがウェルビーイングに関する取り組みに力を入れており、各地方でも多様な取り組みが行われています。参考として、下記は内閣府と富山県の取り組み事例です。

日本政府の取り組み事例として、内閣府ではウェルビーイングを経済財政政策に位置付けています。政府の政策運営に活かすため、国民の生活品質や満足度に関する調査や、関係府省庁と連携するための連絡会議を設置しています。

参考:内閣府|Well-beingに関する取組

地方自治体の取り組み事例として、富山県ではウェルビーイングを成長戦略の中心に位置付けています。十人十色の幸せの実感をスローガンにウェルビーイングへの理解を呼び掛け、県民生活に寄り添った指標づくりを行っています。

参考:富山県|ウェルビーイングの推進

ウェルビーイングが注目された背景

ウェルビーイングが注目された背景

ウェルビーイングは現在、国連をはじめ、さまざまな国や機関、日本の官公庁も取り上げるほど注目されています。ここではウェルビーイングが注目された背景4つを紹介します。

多様性の拡大

昨今の社会では多様な価値観や背景を持つ人材が増え、その能力を最大限に発揮するための取り組みが、重要課題となりました。このため企業経営においても、従業員の多様性に対応するため、環境整備の重要性が高まっています。

ウェルビーイングはその解決策として、従業員エンゲージメントと幸福感を向上させるとともに、企業の競争力を高め、イノベーションを生みやすい環境につながります。

少子高齢化による人材不足

国内では少子高齢化が加速し、将来的に深刻な人材不足に陥ることが予測されています。終身雇用の維持が難しくなり、若者を中心に価値観に合う組織を求めて転職することが一般化しました。企業においても、事業に貢献する人材の確保や定着は、大きな課題といえるでしょう。

企業は利益だけでなく、幸福を追求する姿勢として、産休や育休、介護への理解なども明確にする必要があります。ウェルビーイングへの取り組みによって、従業員やその家族を大切にする姿勢は、企業に対する従業員エンゲージメントを向上させ、従業員の定着につなげられます。

働き方改革や新型コロナの影響

2019年から始まった働き方改革では、残業時間の規制や産業医の導入、同一労働・同一賃金の適用などが定められました。また2020年に起こった新型コロナウイルス感染症の拡大は、行動自粛によるリモートワークの拡大をはじめ、社会生活や働き方を大きく変えるきっかけになりました。

これらの影響に対応するため、企業はテレワークや副業、従業員の子育てや介護への理解など、健康でやりがいを持って働くための対応が求められています。そして、これらを実現する解決策として、ウェルビーイングに対する注目が高まっているのです。

ムーンショット型研究開発制度

ムーンショット型研究開発制度は、人々の幸福(Human Well-being)に向けた、破壊的イノベーションの創出を目指す挑戦的な開発制度です。この制度では人々の幸福に向けて、さまざまな社会課題の解決を目指し、社会・環境・経済の3領域から9つの目標を設定しています。いずれもムーンショットと言える、革新的な研究開発を推進する国家の大型研究プログラムです。

人々の幸福に向けたムーンショット目標
目標1身体、脳、空間、時間の制約からの解放
目標2疾患の超早期予測・予防
目標3自ら学習・行動し人と共生するAIロボット
目標4地球環境の再生
目標52050年の食と農
目標6誤り耐性型汎用量子コンピュータ
目標7健康不安なく100歳まで
目標8気象制御による極端風水害の軽減
目標9こころの安らぎや活力を増大

参考:内閣府|ムーンショット型研究開発制度

セラクもITの分野から、ムーンショット型の研究開発としてバイタルプログラムと、みどりクラウドに取り組んでいます。以下にそれぞれを紹介します。

バイタルプログラムは、予防医療と健康維持を目的としており、簡単な健康アンケートを実施することで、個人と組織のメンタルヘルスを可視化できるツールです。セラクの従業員の多くはITエンジニアであり、顧客先でIT支援に取り組む従業員やリモートワーク従事者も多く、その心理的ストレスや、健康リスクに関わる本質的な課題を解決するために誕生しました。

参考:株式会社セラク|バイタルプログラム

みどりクラウドは、セラクが考えるスマート農業として「農業にITの勝つ力」をもたらし、総合的にサポートすることで生産者を支え、農業を強くするために開発されました。IoTの効果的な利活用をはじめ、生産者と実需者をつなぐサポートや、気象・市況・農薬情報の把握に役立つ営農支援サービスなどが、研究開発チームによって進められています。

参考:株式会社セラク|みどりクラウド

ウェルビーイングの要素や指標

ウェルビーイングの要素や指標

ここまでに、ウェルビーイングが広い意味での健康と幸福を指す言葉であると解説してきました。それでは、人はどのようなときに幸福を感じるのでしょうか? 以下ではウェルビーイングを実現・向上するために必要な要素や指標、考え方について触れていきます。

ギャラップ社の調査

ウェルビーイングに関する有名な調査の1つが、アメリカの世論調査研究所であるギャラップ社による調査です。世界的な調査やコンサルティングを行うギャラップ社は、毎年発表される世界幸福度調査にもデータを提供しており、ウェルビーイングを形成する5つの要素を示しています。この要素については以下の項目でより詳しく触れていきます。

ウェルビーイングを形成する5つの要素

ギャラップ社が示したウェルビーイングの形成要素を高めることで、ウェルビーイングを向上し、より充実した内容にできます。以下の表で、この5つの要素について解説します。

ウェルビーイングの5つの要素意味
キャリアウェルビーイング
(Career Well-being)
キャリアに対する納得感
仕事の経歴や役職のほか、家事や育児、ボランティア活動や趣味など
ソーシャルウェルビーイング
(Social Well-being)
社会生活の充実
家族や友人、同僚や上司などと社会生活上で良好な関係を結べているか
フィナンシャルウェルビーイング
(Financial Well-being)
経済的な健康
安定した収入や資産があるかなど
フィジカルウェルビーイング
(Physical Well-being)
心身の健康
身体的な健康や日々の前向きな気持ち、仕事に感じるやりがいなど
コミュニティウェルビーイング
(Community Well-being)
地域との適切な関わり
家族や友人、学校や会社など、自分が属するコミュニティと良好な関係を結べているか

ポジティブ心理学

ポジティブ心理学は、何が人生を価値あるものにするかについて、科学的に研究する学問です。その研究では個人の幸福と、組織・社会の幸福の双方に焦点を当てています。

またポジティブ心理学は科学的な研究で、エビデンスの活用を重要視しており、幸福やウェルビーイングを「PERMA(パーマ)」という尺度で測る特徴があります。

PERMA理論

PERMA理論では幸せを向上させ、不安・うつ・ストレスを減らすためのアプローチとして、ウェルビーイングの向上に関与する5つの指標を、以下のように定義しています。

PERMA理論の5項目意味
ポジティブエモーション
(Positive emotion)
前向きでポジティブな感情
うれしい・おもしろい・楽しい・感動・感激・感謝・希望など
エンゲージメント
(Engagement)
物事への没頭
仕事や趣味など、時間を忘れて集中し、積極的に関わっている状態
リレーションシップ
(Relationship)
他者との良好な関係
他者からの援助や、自分が誰かを助けたりするなど
ミーニング
(Meaning)
生きる意味や意義の自覚
自分は何のために生きているかの自覚、生きがいを持っているかなど
アカンプリッシュメント
(Accomplishment)
物事の達成感
仕事やプライベートの課題達成や、成功の喜びなど

フロー理論

フロー理論とは、高度なレベルの集中により、技術を習得し、成長させていく過程を理論化させたものです。一流のアーティストやアスリートが、どのような場面で幸福を感じるか追及する過程で、フローの状態が発見されました。

このフロー状態とは、我を忘れて物事に没頭する状態です。いわゆる「ゾーン」のことを指しており、非常に集中した状態と言えます。図解のように自らが持つ技術で、達成を目指せる高さの難易度に挑戦している時に、入りやすい状態であると判明しています。

フロー理論の説明図

フローの種類

フロー状態には、エンターテイメントや芸術鑑賞などに夢中になる受動フローや、仕事や趣味に没頭する能動フロー、また長さによる違いもあります。このフローの種類を以下の表にまとめました。いずれも人が幸福を感じる状態としてウェルビーイングと密接な関係があります。

フロー状態の種類
受動フロー受動的な行動から発生するフロー状態
テレビやラジオ、コンサートや映画など(受動的な没頭)
能動フロー能動的な行動から発生するフロー状態
仕事や勉強、スポーツやトレーニングなど(能動的な没頭)
マイクロフローごく短いフロー状態
歌唱や演奏、楽しい会話など(一時的な集中)
ディープフロー長く深いフロー状態
勉強や仕事、読書や映画など(仕事や趣味への没頭)

企業がウェルビーイングを導入するメリット

企業がウェルビーイングを導入するメリット

ウェルビーイングを導入することで、企業経営の面でも多くのメリットが得られます。ここでは、ウェルビーイングによる経営面でのメリットについて解説します。

生産性や創造性の向上

近年の心理学研究を通じて、やりがいや幸福感を持って働く人は、そうでない人より生産性や創造性が高いと判明しました。つまりウェルビーイングによる従業員の健康と社会的な充実は、企業における生産性や創造性を向上させるメリットにつながります。

多くの企業がウェルビーイングに取り組む理由はそこにあります。もちろん、ウェルビーイングだけでは達成できませんが、大きな要素であることは確かです。そのため企業活動にウェルビーイングを取り入れることは、価値のある取り組みと言えます。

従業員エンゲージメントの向上や離職率の低下

ウェルビーイングへの取り組みは、従業員個々人の健康のみならず、仕事のやりがいや働きやすさといった、ワークエンゲージメントにつながることも重要なポイントです。その取り組みの継続は、愛社精神や貢献意識といった従業員エンゲージメントの向上にもつながります。従業員エンゲージメントの高い企業は、長期に渡って活躍できる人材を確保できるでしょう。

このようにウェルビーイングの向上に取り組み続けることによって、企業は重要な資産と言える、経験ある人材を確保でき、離職率の低い環境を実現できます。

企業価値の向上と人材確保

企業がウェルビーイングに取り組むことで、必然的に長期に渡って活躍する人材が増えていきます。そのような企業では、従業員の家庭や健康の問題と、仕事の両立が大きな課題となるでしょう。しかし、ウェルビーイングの向上は、それらの解決にも寄与できます。

この姿勢は、従業員を大切にする企業というブランド力を生み出し、企業価値も高めます。またその企業価値は、新規の人材確保においても大きな要素となるでしょう。

ウェルビーイングを導入する際の注意点

ウェルビーイングを導入する際の注意点

ポジティブな内容の多いウェルビーイングですが、推進するためには注意すべき点もあります。社員の幸福と企業の利益が相反してしまうケースです。ウェルビーイングは推進することで長期的なメリットを得られますが、短期的には投資も必要となるため、利益を逃す可能性もあります。

そもそも企業が利益を上げられなければ、従業員を幸福にすることは難しいでしょう。利益を出すための活動と上手くバランスを取りながら、従業員やステークホルダーにとっての幸福を、追求していくことが大切です。

ウェルビーイングの推進や取り組みの事例

ウェルビーイングの推進や取り組みの事例

ウェルビーイングが注目され、推進される中で、新たに生み出されて耳にする言葉や取り組みも増えました。ここでは広く聞かれるようになった言葉や取り組みとして、健康経営とデジタルウェルビーイングについて解説します。

健康経営

健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営形態であり、要約すると健康こそが会社と社会の原動力と考える経営形態です。政府が定める成長戦略のひとつであり、経済産業省の推奨によって広く知られる言葉になりました。

参考:経済産業省|健康経営

政府や地方自治体の取り組み

ここでは健康経営の推進と取り組みの事例として、経済産業省の健康経営銘柄と、東京都の職域健康促進サポート事業を紹介します。

健康経営銘柄は、日本政府による国民の健康寿命の延伸に関する取り組みの1つとして、東京証券取引所の上場会社の中から健康経営に優れた企業を選定・紹介する制度です。

参考:経済産業省|健康経営銘柄

職域健康促進サポート事業は、東京都による健康経営推進を目的とした、東京商工会議所と連携した取り組みです。従業員の健康に配慮した経営の実施に向けた具体的な取り組みの支援が行われています。

参考:東京都福祉保健局|職域健康促進サポート事業

デジタルウェルビーイング

デジタルウェルビーイングは、心身共に健康で満たされた状態を指すウェルビーイングに、デジタルを加えた言葉です。デジタル機器への依存を防止し、適切な距離を保ちながら幸福を実現しようとする概念を指します。2018年のイベントをきっかけに、Googleによって提唱されました。

GoogleやAppleの取り組み

昨今の情報化社会は、インターネットやデジタル機器の発達で便利になった一方、スマホ依存やSNS疲れといった問題も生まれました。これらを防止するため、GoogleはAndroid OS9からDigital Wellbeingを、AppleもiOS12からスクリーンタイム、iOS15から集中モードを導入しました。これらは現在、デジタル機器との適度な距離を保つためのツールとして、OSに標準搭載されています。

まとめ

ウェルビーイングは健康や幸福を生み出し継続する取り組みであると同時に、SDG’sや拡大する多様性に対応するための重要な考え方です。企業経営でもウェルビーイングに取り組むことで、創造性や生産性を向上させるほか、離職率の低下や新規人材の確保など、さまざまなメリットが得られます。現在では、ウェルビーイングを向上させる多くの要素や指標が発見され、政府や地方自治体でも多くの取り組みが行われています。

このように、ウェルビーイングによって得られる健康と幸福は誰にとっても大切なものですが、その形は人それぞれのため決まった形はありません。取り組む人たちそれぞれが、ウェルビーイングの大切さを理解するとともに、自分にとって最善といえるウェルビーイングの形を理解することが大切です。

最後のチェックポイント

  • ウェルビーイングとは広い意味での健康や幸福
  • SDG’sや多様性の拡大を背景に注目度が高まった
  • ウェルビーイングを推進する取り組みも数多く存在する
  • 企業経営においてもウェルビーイングは多くのメリットをもたらす
  • ウェルビーイングが利益と相反しないような注意が必要
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