ユーザビリティとは?UI/UXとの違いから必要な理由を解説
はじめに
ユーザビリティという言葉を時々耳にすることはありませんか。使いやすさを意味する言葉だと言われますが、この「使いやすさ」には深い意味があります。何をどのように使いやすくするのか、その結果、何が変わるのかを見ていきましょう。
ユーザビリティとは
ユーザビリティとは、「使いやすさ」や「使い勝手の良さ」を表し、オウンドメディアやアプリ開発などWeb制作をおこなう際や、製品を開発・製造する際に意識すべき重要な考え方のことをいいます。
たとえばユーザがサイトに入った時に、見やすい・操作しやすい・目的とする内容を探しやすい、さらに困ったときの解決もしやすいなどなど多角的に使いやすさを追求します。
はじめに2つの定義から見ていきましょう。
ユーザビリティの定義 ヤコブ ニールセン
ヤコブ ニールセンの定義 | |
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学習しやすさ | ユーザがシステムの使い方を簡単に学習でき、すぐに作業ができる |
効率性 | ユーザが一度学習したあとは効率的かつ高い生産性を望める利用ができる |
記憶しやすさ | ユーザがしばらく使わなくても、すぐに使い方を思い出せる |
エラー | システムのエラー発生率が低く、発生してもユーザの手で回復できる |
主観的満足度 | ユーザが個人的に満足でき、楽しくシステムを使い続けられる |
ユーザビリティ研究の第一人者であるヤコブ ニールセン博士の提案した定義です。ユーザが満足して使い続けるために、ユーザがサイトに入った時に、どのボタンをクリックするとどのような動きがあるのか簡単に視認できる構成にすること。また、同じ作業でもショートカットキーなどを設定し、経験者には効率よく作業できる工夫をすることなどが必要だとされます。エラーについても、起こさないに越したことはありません。発生した際にはユーザ自身で理由がわかり回復できる手段を提案することで、ユーザが途中で投げ出すことなく使い続けられる製品を作ることと提唱しています。
国際規格のISO 9241-11
国際標準化機構(ISO)の定義 | |
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有効度 | ユーザが目標を達成するうえでの正確さや完全さ |
効率性 | ユーザが目標を達成する際の正確さかつ完全さに要した資源 |
満足度 | 不快さがない、および製品使用に対する肯定的な態度 |
利用状況 | ユーザ・仕事・装置(ハードウェア、ソフトウェア、資材)、並びに製品が使用される物理的・社会的環境 |
国際標準化機構(ISO)の規格では上記の4つが定義です。ヤコブ ニールセンがWebサイトのユーザビリティを提案しているのに対し、国際規格では製品全般についての基準を設定しています。さまざまな利用状況においてユーザが満足できるように、有効性や効率性を考慮する必要があるとしています。
Web制作におけるユーザビリティの位置づけ
ユーザビリティは広い意味でも定義づけられていますが、ここではWebサイトやアプリ開発などWeb制作の視点で解説していきます。Web制作においてのユーザビリティとはどのような役割があるのかを見ていきましょう。
アクセシビリティとの違いは対象者
アクセシビリティとユーザビリティはどちらも使いやすさを示す言葉ですが、大きな違いがあります。
アクセシビリティとは高齢者やからだの不自由な方なども含めた広い範囲が対象者となります。機器を操作せずとも声に反応して目的のアプリやWebサイトが利用できるモノも増えました。これは若い年齢層から高齢者まですべてのユーザが対象といえるでしょう。
ユーザビリティの対象者は、そのWebサイトやアプリを利用したい人という限られたユーザになります。対象者にあわせた使いやすさには違いがありますので、Web制作においてターゲット設定も重要な要素になります。
UI/UXとユーザビリティの違い
UI(User Interface)とUX(User Experience)、どちらもWeb制作において欠かすことのできない要素です。それぞれとユーザビリティの違いや関係性について詳しく解説します。
ITエンジニアにもさまざまな職種があります。フロントエンジニアとは?未経験からの転職・年収・資格・今後の将来性とキャリアパスについて、この記事はサイトのレイアウトや動作などの視覚的な部分の設計・構築を担当するエンジニアの紹介です。ぜひ参考にしてください。
UIとユーザビリティ
UI(ユーザインタフェース)とは、Webサイトやアプリの画面上に表記されるボタンやメニュー・リンク・フォントの色やサイズなど、欲しい情報にたどり着きやすくするために必要な構成要素です。これをユーザビリティの視点で考えると、ボタンが押しやすく、ボタンであることがわかりやすい色や形をしているなどです。サイトの操作性を上げファンがとどまりやすくなり、繰り返し訪れるユーザも操作を思い出すための苦労を感じずに、欲しい情報にたどり着けるなどの、使いやすさがユーザの満足度アップにつながります。
UXとユーザビリティ
UX(ユーザエクスペリエンス)とは、Webサイトやアプリを利用したユーザがそこから得られる体験を意味します。たとえばショッピングサイトに入って、「欲しい商品がすぐに探せた」「送料や手数料などが自動計算されてわかりやすかった」などといった満足度につながる感情や印象も含まれており、利便性や使い勝手の良さがUXの向上につながります。
UI/UXともにユーザビリティ(使いやすさ)が高いことで、ユーザの満足度が上がり利用数の増加という、高いコンバージョンにつながるのです。
ユーザビリティ エンジニアリングとの違い
ユーザビリティに似たユーザビリティ エンジニアリングという言葉をご存知ですか。この言葉は主に医療分野で利用されています。医療現場で使用される製品は、使いやすいだけでなく高い安全性の確保が必要とされ、安全性を重視するためにあえて使いづらくすることもあります。満足度の視点を変えたユーザビリティのひとつといえるでしょう。
ユーザビリティが重要な理由
Webサイトやアプリ制作では、UIを使いやすく設計しUXが満足できることでコンバージョン率が上がり効果を発揮するといわれます。そのためユーザビリティは大変重要なポジションといえるでしょう。ユーザビリティが低いとユーザはストレスを感じ離脱してしまう可能性があります。
以下で重要な理由について詳しくご説明します。
ユーザビリティの必要要素
高いユーザビリティを可能にするための要素はいろいろありますが、ここでは代表的な4つの要素について解説します。効率・利用法・エラー・満足度どれもユーザが使いやすさや使い勝手の良さを求める要素です。それぞれを詳しく見ていきましょう。
効率的な利用ができる
効率的に利用できる代表的なものにショートカットキーなどがあげられます。他にも定期的に訪問するサイトやアプリなどの利用履歴が、見やすい場所にわかりやすいボタンで表示されていると、続きの操作が簡単にはじめられます。
また、複数のサイトを閲覧したい時や複数のファイルを同時に操作したい時に、アンダーバーなどに並んで表示されると効率よく操作することができます。利用者の習熟度や利用法にあったいくつかのパターンがあるとよいでしょう。
利用法を覚えやすい
一般的によく使われる操作方法に準じた画面構成が望まれます。左側の帯にサイト内に含まれるページ一覧がある。この表記は現在のサイトではなく外のサイトへ飛ぶ。このボタンのカタチは決定や次へ・購入などへ進む。など、利用するたびに利用法を確認しなくとも利用できる構成は覚えやすく利用しやすさにつながります。チュートリアルを一度経験したら次回からは迷わずに操作できるような設計がよいでしょう。
エラーの発生が少ない
ユーザにとってエラー発生は最も避けたい事象です。重要度のあまり高くないWebサイトやアプリなら、即離脱や再訪問も難しくなります。エラーの発生は極力少ないシステムの構築が重要でしょう。
実績を積み重ねたデータや重要度の高い場合は解消したいと思います。しかし、原因や理由・対処法がわからなければ解消できません。あらかじめ可能性のある発生理由を洗い出しマニュアル化したものが添付されるなど、ユーザ自身が解消できる手段も提示することが望まれます。
満足度が得られる
ユーザがWebサイトやアプリを利用する目的の多くは、自身の知りたい情報が欲しい、学びたいなどの知識欲と、そこでしか得られないおもいや経験をしたいという体験欲でしょう。これらの欲が満たされた時、人は満足度を得られます。その過程で使いづらさやトラブルが起これば満足はできません。高いユーザビリティの実現が満足度となりファンの獲得にもつながるでしょう。
ユーザにとって、さらに良いもの・もっと便利なものを追求し問題解決を目指す思考のプロセスであるデザイン思考について、こちらの記事デザイン思考の特徴やメリットを、プロセスや事例と合わせて紹介では、ユーザビリティに共通する内容が思考という視点で書かれています。あわせて参考にしてください。
ユーザビリティを向上させる評価方法
ユーザビリティを向上させるためには、ユーザの思考パターンや行動パターンなどユーザを知り理解する必要があります。そのための原則と調査の仕方そして評価基準について解説します。
ヤコブ ニールセンのユーザビリティ10の原則
- システムの状態の可視化
ユーザに今起きていることを目に見える形で知らせる
- 現実世界とシステムを一致
ユーザが慣れ親しんだ言語や現実世界の操作を利用する
- ユーザに制御の主導権自由を付与
ユーザが操作ミスなど間違いを自身で修正し回復できる
- 一貫性と標準性を保持
製品やサービス・サイト内で使用する色・形状・操作方法・フィードバックなどに一貫性を持たせ、広く一般的に使われている設計をする
- エラーを予防
ミスが起こらない設計をする、仮にミスが生じてもユーザが意図する操作を想定して正しい結果を返す
- 覚えなくても見て理解できるシステムにする
ユーザにヒントとなる情報を与え、記憶を思い出して操作できる設計にする
- 柔軟性と効率性の保持
初心者にはクイックスタート、経験豊富なユーザにはショ-トカットキーなどで効率的な操作ができるように、ひとつの製品で柔軟な操作ができる設計をする
- 美しく最小限のデザイン
ユーザに負担を与えないよう必要以上の協調や装飾は使わない
- ユーザ自身がエラーの認識・診断・回復を実行
ユーザにとって視覚的にわかりやすいエラーメッセージを表示することで、どうしたら解消できるか理解して実行できる
- ヘルプとマニュアルを用意
ヘルプやマニュアルへは簡単にアクセスでき、ユーザが求める内容を探しやすく、目的を解決するための方法や手段が記載されている
上記表はヤコブ ニールセンが掲げるユーザビリティ10の原則です。この原則が評価指標となり評価が行われますので、Webサイトやアプリ作成時には常に意識をする必要があります。どの項目もユーザ目線であることがポイントでしょう。
ヒューリスティック評価
ヤコブ ニールセン博士が発表した評価方法です。上記の10の原則にもとづいて専門家が評価範囲を設定し、経験則(ヒューリスティックス)をもとにユーザビリティの評価を行います。Webサイトやアプリを作成する機器やシステムからUIの問題点を抽出するため、比較的短時間でコストも抑えられる傾向があります。
評価後改善されたシステムが、実ユーザにとって本当に使いやすいシステムになっているかの確認は、ユーザビリティテストなどと併用して行いましょう。
認知的ウォークスルー
認知的ウォークスルーとはユーザになりきって評価する方法です。専門家が人の認知特性を理解した上で、想定されるユーザになりきってWebサイトやアプリを試し、使いやすさを評価します。認知特性とは、人がはじめてコンピューターに触れたとき、どのように情報を認識して、処理を行い、行動を起こすのかをモデル化したものです。このモデルにのっとってユーザになりきり、実際に操作を行い目的が達成できるかを調査していきます。
ユーザビリティテスト
ユーザビリティテストとは、ユーザに直接使ってもらい評価する方法です。そのWebサイトやアプリを利用することが想定されるユーザに、完成品もしくは試作品を実際に使ってもらい評価します。
ユーザビリティテストには2種類あり、目的に応じて使い分けます。
定性的ユーザビリティテストは、ユーザビリティの課題がどこにあるか、原因は何かを特定してUI改善のために使われる方法です。定量的ユーザビリティテストは既存のサイトやアプリについて、時間の経過とともに起こった変化や競合との比較など総合的な問題点の抽出に使われます。多くのユーザに参加してもらい実施されることが特徴といえるでしょう。
アクセスログ解析
アクセスログ解析とは、どの地域に住んでいる・どのような人(属性)が・どこから入り(流入経路)・どのデバイスを使用して訪問したか。利用頻度や興味のあるコンテンツは何かなどを調査する方法です。
対象となるWebサイトや、アプリを利用するユーザの属性に応じたデザインや機能・操作性などを変更でき、ユーザビリティを高める効果があるとされています。
また、Googleのサーチコンソールなどでは、ユーザの求める検索キーワードから要望の理解やサイトへの流入状況・ページの問題点を知ることも可能です。
ユーザを知り、動向を理解することからユーザビリティの向上を目指します。
ユーザビリティ評価を有効利用するために
ユーザビリティがどのようなものか、評価方法や使い方がわかったところで、これを有効に活用することのメリットも理解いただけたでしょう。以下では有効利用するための方法を解説します。
制作者はユーザに近づこう
ユーザビリティ調査によって、ユーザが欲するモノや行動パターン・思考パターンを知ることができます。この結果を製作者が、エンジニア目線・デザイナー目線で修正するだけでは解決しきれない場合があります。そもそもパソコン操作に慣れた人とそうでない人では疑問に思うこと、使いやすいと感じるポイントが異なることを意識しましょう。ユーザ目線で問題をとらえる必要があり、製作者はユーザに近づく努力が必要です。
YouTubeを記事にしたものです。初心者でもIoT機器は作れる!?必要なスキルや勉強方法【IT就活/転職】職種としては直接関係ありませんが、エンジニアになった経緯がわりとささいなことで、初心を思い出せる記事です。一読をおススメします。
ユーザビリティ デザインを意識しよう
ユーザビリティデザインというとUIの改善を思い浮かべる方も多いでしょう。もちろん見た目(画面構成)の見やすさ・使いやすさは重要です。操作性がよければユーザビリティの向上につながります。しかし、デザインの認識を見た目の印象だけではないと設定したらUXの重要性に思い至りませんか。UXデザインとはユーザの感情までを揺さぶる、ユーザを中心に全てが整えられた設計ともいえます。この2つのデザインがユーザの満足度を得られることが理想といえるでしょう。
まとめ
Webサイトやアプリ制作において、さまざまな角度からの使いやすさ(ユーザビリティ)の追求が、コンバージョンを向上させるために重要な要素であることはご理解いただけましたか。いいものだから伝えたい・広めたいという一方通行の発信ではなく、相手を知り理解して相手の求めるものをページに反映させることでユーザの満足度を上げる。そのために使いやすさの追求が必要といえるでしょう。
最後のチェックポイント
- ユーザビリティとは「使いやすさ」を意味する言葉。
- Web制作においてUI/UX構築の重要な要素。
- ユーザビリティの必要要素を満たすことでコンバージョンアップにつながる。
- ユーザビリティの評価方法を利用してユーザビリティを向上させる。
- ユーザビリティ評価を有効利用するために、製作者はユーザ目線を大切にしよう。