【テンプレート付き】SWOT分析とは?わかりやすく解説
はじめに
自己分析などでよく『SWOT分析』という言葉をよく耳にする人も多いでしょう。もともとは企業が経営戦略や企業の現状を分析するために使われている分析方法です。1920年代より経営学者 ヘンリー・ミンツバーグ(Henry Mintzberg)が提唱され、のちにハーバードビジネススクールに在籍していたケネス・R・アンドルーズが執筆された著書により世界中へ広まったと言われています。その歴史は古く、100年以上経った今でもなお、ビジネスで広く使われている分析手法です。まさに経営戦略やマーケット戦略において重要というべきビジネスモデルの活用法です。
本記事では、SWOT分析とは何か? 定義や目的、活用事例などくわしく紹介していきますので、ぜひ、就職・転職活動に役立ててください。
SWOT分析とは? 読み方や意味について
マーケティング手法のひとつでもある『SWOT分析』とは、多くの企業の事業において、現状分析などに活用されるフレームワークです。読み方としては「スウォット」と言い表しており、「強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)」という意味があります。それぞれの頭文字を取って「SWOT」とされています。この4つの要素に分けて、分析を行っていくという活用法です。
SWOT分析表の見方・構成要素
上記のようにマトリクス(軸)表を用いて、SWOT分析における情報を内部環境と外部環境にそれぞれプラス要因になるもの、マイナス要因になるものについて、各マスの属性に合うように埋めていき、悩ませていた問題を解決に導いていきます。以下では上記の図を見ながら、4つの構成要素について具体的に見ていきます。
4つの構成要素
SWOT分析は内部環境と外部環境を横軸にプラス要因、マイナス要因を縦軸にかけ合わせた4つの構成から成り立っています。それぞれの4つの構成要素について以下を見ていきましょう。
- 【内部環境】
- S:強み(プラス要因)
- =個人や企業が強みとする目標を達成することで貢献し、プラス特質につながること
- W:弱み(マイナス要因)
- =個人や企業が目標達成する際、弱みとするマイナス特質が働きその障壁になりうること
- 【外部環境】
- O:機会(プラス要因)
- =自分や外部環境を取り巻く特徴のなかでプラス特質に働き、個人に成長機会を促すこと
- T:脅威(マイナス要因)
- =自分や外部環境が持つ特徴のなかで個人の成長を妨げ、脅威による影響を受けること
内部環境とは自分や企業を取り巻く原因をコントロールすることが可能な環境のことを指します。また、外部環境とは個人や企業から原因となるものをコントロールすることが不可能な環境のことを指します。
SWOT分析の目的
元々は企業の経営戦略策定方法やマーケティング戦略手法のひとつでもあります。SWOT分析の目的を十分理解しておかないと分析のやり方が不十分となり、事業戦略における課題をクリアすることは難しいでしょう。以下では事業戦略やマーケティング戦略を前提としたSWOT分析の目的について説明していきます。
- 企業における事業戦略の課題を解決する
- 組織を取り巻く目標設定
- 各々の社員の目標設定
以上の目的により、課題の現状分析や脅威となる要因、機会となる要因を探ることで、事業戦略やマーケティング戦略における計画を立案できるなどの効果をもたらします。
SWOT分析を行うメリット・デメリット
構成要素や目的を理解してきたところで、SWOT分析を行う上で生じるメリット・デメリットについてしっかり理解しておくことで分析する際の心構えができます。以下で具体的に説明していきますので、デメリットをよく理解した上でSWOT分析にのぞむと良いでしょう。
メリット
個人や企業がもつ『強み』『機会』に乗じて『弱み』や『脅威』の課題を洗い出し、より可視化していくことで幅広い視野に立ち、外部環境において障壁となる問題点を改善に導いていくことができます。外部要因にもしっかり向き合っていくことで、スムーズに個人や企業全体の新たな目標を立てられるとともにリスクの回避ができるだけでなく、自己分析の際にも自分自身のことに対し、見えなかった部分が発見できるなどの利点があります。
デメリット
SWOT分析ひとつのフレームワークだけでざっと現状把握が可能ですが、複雑で細やかな分析データを得られにくいといった欠点があります。4つの要素をただ、埋めるだけでは内容に偏りが発生してしまいかねません。また、はじめてSWOT分析に触れる人には内部環境(S:強み、W:弱み)と外部環境(O:機会、T:脅威)との区別がつきにくく、混同しがちです。慣れるまでに時間を要し、より経験を積んでいく必要があるでしょう。
SWOT分析のやり方
まず、どのような手順でSWOT分析に手をつけたらいいのか、具体的なやり方やポイントについて解説します。主に事業戦略やマーケティング戦略を目的としたSWOT分析ですが、就職・転職活動における企業探しを目的とした分析も可能です。以下では就職・転職活動を中心とした分析のポイントやその詳細を見ていきましょう。
分析のポイント
分析を行う際には時間と手間がかかるものです。分析を行う前に『何を何のために分析するのか、目的をはっきりと明確にする』ことが重要であり、作業をスムーズにするための事前準備が必要です。事前準備ができたのち、内部環境に外部環境から影響されるのを防ぐため、まず、最初に外部環境(O:機会、T:脅威)の分析から着手し、次に内部環境(S:強み、W:弱み)の分析に踏み込んでいくことがポイントです。以下では外部環境、内部環境それぞれの分析について具体的に説明していきます。
外部環境の分析
前述のとおり、外部環境(O:機会、T:脅威)から分析を行います。まず、企業や自分を取り巻く環境において、課題となる項目を決定します。項目を決めていく際に分析する目的や業界の業種ごとによって変わりますが、一般的な項目については以下が挙げられます。
- 興味のある企業と競合他社の動向
- 興味のある企業における市場規模や将来的な成長
- 興味のある企業の景気動向指数などの経済指標
- 法律や政治の動向や状況
上記のように項目を決めていきます。また外部環境の埋め方について具体例を挙げてみましたので、見ていきましょう。
- 【具体例】
- <O:機会>
- 景気変動や需要変化
- 市場規模などの将来的な成長
- 法改正などの変化
- 資格取得などスキルの機会がある環境
- <T:脅威>
- 競合店舗の縮小や立地の悪さ
- 競合他社の出現
- 原材料による価格の高騰
- AI発達による知識取得への不安
内部環境の分析
先に決めておいた外部環境(O:機会、T:脅威)をもとに競合他社の状況を客観的に判断しながら、内部環境(S:強み、W:弱み)の項目を決め、落とし込んでいきます。裏付けができる数値のデータなどがあると、より正しい分析ができ、自分に適した企業や職業が見つかるでしょう。一般的な項目については以下が挙げられます。
- 企業のブランド力や認知度
- インフラや価格・品質
- 提供するサービスや技術力
- 自分が保有するスキルや技術
- 自分が誇れる長所や強み
上記のように項目を決めていきます。また内部環境の埋め方について具体例を挙げてみましたので、見ていきましょう。
- 【具体例】
- <S:強み>
- 自身に開発スキルや技術力がある
- 興味のある企業が誇るブランド力と認知度
- 興味のある企業が提供するサービスの充実
- コミュニケーションスキルに自信がある
- チームと力を合わせて取り組む姿勢がある
- <W:弱み>
- リピート顧客獲得数の低下
- ITインフラの整備が不十分
- 専門知識を有する人材の不足
- 自分は後先考えず突っ走るなどの欠点がある。
クロスSWOT分析
分析のやり方やポイントをもとに4つの要素をそれぞれ埋めたのち、次のステップとして「どこに問題があるのか? 」「問題解決するにはどのようにしたらいいのか? 」というように課題を見出すためのオプションとして『クロスSWOT分析』を行います。
『クロスSWOT分析』とはSWOTで分析したものにそれぞれの項目をクロスさせて、より詳しく分析していくフレームワークです。この分析方法を活用することによって相乗効果を生み出し、企業や自分自身にとって脅威になる問題点に対し、最善の対策方法が見つかる可能性が高まります。
上記の図のように縦軸(内部環境)、横軸(外部環境)と4つのパターン(S:強み、W:弱み、O:機会、T:脅威)をそれぞれクロスさせるようにかけあわせて分析します。
『強み×機会(SO戦略)』を重視し、自分自身の強みである「チャンス」を成長機会に活かすことがポイントです。このように問題点や対策方法の見落としを防ぐなど、画竜点睛を欠くことがないための非常に優秀な分析手法と言えます。
覚えておきたいフレームワーク~PEST分析~
SWOT分析以外で活用されているフレームワークとして、『PEST分析』があります。アメリカの経営学者 フィリップ・コトラー教授がPEST分析を提唱したと言われ、マーケティング戦略で立案するのにこの分析方法が欠かせないことで有名なフレームワークです。PEST分析とは、「P:Politics政治的」「E:Economy 経済的」「S:Society 社会的」「T:Technology 技術的」それぞれの頭文字から取ったもので、この4つの観点からマクロ環境、いわゆる『外部環境』が企業や自分自身にどのような影響を受けるのかについて把握するための分析方法です。この分析方法を活用することによって世の中の動向を整理し、自分に適した企業であるかどうか、相関関係や仮説を立てやすくする効果があります。
PEST分析とSWOT分析の違い
SWOT分析とPEST分析について話してきましたが、この2つの分析はそもそも使う目的や要素が全く違うフレームワークです。また、それぞれの分析で割り出した成果物も異なります。では、それぞれの違いについて以下を見ていきましょう。
- 【PEST分析】
- 外部環境のみを分析するためのフレームワークである
- 外部環境を取り巻く要因を細かく分析する目的である
- 【SWOT分析】
- 内部環境、外部環境それぞれの要因を分析するためのフレームワークである
- 機会と脅威になる原因を突き止め、企業や自分の強みを活かして行く目的がある
以上のように全く異なる分析であることがわかります。またSWOT分析を行う際にオプションとして先にPEST分析をしておくことで、外部環境の詳細を割り出すことが可能です。
SWOT分析の活用例
事業戦略やマーケティング戦略、就職・転職活動に大きく貢献するSWOT分析ですが、いざ、実践にうつすとなると、ピンとイメージが湧かないケースも少なくありません。以下では企業と個人に分けて、それぞれSWOT分析の活用例を具体的に紹介しますので、参考にするとよいでしょう。
企業の場合
ひとつの企業を仮定としたSWOT分析の活用例を紹介します。
下記の図は仮に独自によるオリジナル製法で健康志向フードの冷凍弁当を提供している企業N社を対象とし、それぞれ4つの要素(S:強み、W:弱み、O:機会、T:脅威)を洗い出したものの事例です。
独身による食生活の偏りや夫婦共働きによる家庭内時間の減少により、健康志向フードへの関心が高まっていることから競合他社が増加するなど大きな脅威に不安要素が見られます。上記を見てみますと、自宅で調理する女性からの支持低下に関しては弱みの枠に入っていることがわかりますが、『独自技術によるオリジナル製法』は他の企業にない強みとなり、健康志向を損なわず手軽に食生活を保てるといったニーズに応えるべく、30~40代の男性を対象としたリピート顧客の獲得を増やすことで支持力を得る戦略を立てました。
このようなイメージで分析をたてることでマイナス要素に対し、柔軟に対応することができます。
個人の場合
企業の場合でのSWOT分析事例を紹介しましたが、就職活動や転職活動をする人が『自分に適した就職先を見つける』ことを目的としたSWOT分析も可能です。それによって、企業の情勢情報や自分がこの企業に適しているかどうかを再認識・再確認することで、就職・転職活動がスムーズにできます。以下、個人の場合について事例を挙げてみましょう。
上記の図からもわかるように、『コミュニケーション能力に長け、協調性が高い』という強み、『集中すると周りが見えなくなることや主張性に乏しいと』いった弱みを持っているパターンです。このように自分自身のことや自分を取り巻く不安要素について、S:強み、W:弱み、O:機会、T:脅威の枠をそれぞれ埋めていきます。そして、『内部環境のS:強み』、『外部環境のO:機会』を特に重視し、自分に適した企業や職種を見極めていきます。
就職活動や転職活動に欠かせない『自己分析』は面接時の自己PRに使えるなどの利点があります。SWOT分析以外の方法で自己分析についてこちらでも紹介していますので、内定につながる自己分析のやり方。誰でも無料で簡単にできる効率的方法の記事を参考にしてみてください。
テンプレートについて
上の図はSWOT分析のやり方に加味してクロスSWOTも同時に分析ができるテンプレートです。まず、外側の外部環境(O:機会、T:脅威)を埋めていき、内部環境(S:強み、W:弱み)を埋めます。続いて、内側のクロスSWOT分析の『強み×機会』『強み×脅威』『弱み×機会』『弱み×脅威』をそれぞれ埋めていく手順で分析していきます。無料でダウンロードできますので、さまざまな目的に応じて活用し、大いに役立ててください。
クロスSWOT分析テンプレートについては下記リンクよりダウンロードができます。
PowerPoint版はこちら
PDF版はこちら
まとめ
事業戦略やマーケティング戦略のみならず、個人の就職・転職活動に広く活用されているSWOT分析についてご理解いただけましたでしょうか。自分自身にとって絶好のビジネス機会を見つけていくためにまず、マクロ環境から分析し、自分自身の強みなどを多面的に把握していくことがポイントです。
また、就職活動や転職活動をしている人にとっても企業や職種の分析だけでなく、面接における自己PR作成についても非常に有効なフレームワークと言えます。時間と手間がかかる分析法ですが、何度も行っていくうちに就職・転職活動に大きな効果を発揮するでしょう。
最後のチェックポイント
- SWOT分析はS:強み、W:弱み、O:機会、T:脅威この4つの構成から成り立っている
- 最初に外部環境から順に分析していくことが重要ポイントである
- SWOT分析は新たな目標を立てることで企業や職業を決定しやすくなる
- クロスSWOT分析を併用することで相乗効果をもたらす
- 事業戦略だけでなく就職・転職活動をしている個人にも活用できる