再生可能エネルギーとは?メリットはあるのに普及しない理由も解説!
はじめに
「未来に向けて環境に優しい取り組みを行っていこう」という考え方は、世界共通認識になりつつあります。現在、次世代型のエネルギーとして注目を集めている再生可能エネルギーもその一つです。この記事では再生可能エネルギーの必要性や課題を、事例と共にわかりやすくご紹介します。
再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギー(自然エネルギー・グリーン電力)とは、自然由来の持続可能エネルギーのことを指し、「再エネ」という略称でも親しまれています。
再生可能エネルギーは「永遠に枯渇することのないエネルギー」、「利用頻度以上の速度で自然に再生するエネルギー」という意味をもち、対して化石燃料やウランのような限りがある資源を「枯渇性エネルギー」と呼ぶこともあります。
SDGsで掲げられる7番の目標である「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」にも通じていることから、世界でも重要視されているエネルギーです。
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再生可能エネルギーはなぜ必要?
地球温暖化や環境破壊のリスクを回避するためにも再生可能エネルギーは必要です。石油や石炭などのエネルギーを使用することで、CO2(二酸化炭素)をはじめとした温室効果ガス(GHG)が排出されると以下のような問題が出てきます。
- 気温の高い国で発生している伝染病患者の増加
- 動植物の減少および、それに伴う食糧難
- 氷河や氷床の解氷による海面上昇の結果、小さな島国の水没危機
こういったリスクを緩和するためにも再生可能エネルギーの必要性は増しており、世界規模での課題となっています。
再生可能エネルギー取り組みの歴史
再生可能エネルギーが意識されるようになった背景にはどのような出来ごとがあったのでしょうか? 以下からご紹介します。
日本はオイルショックがきっかけ
1973年、第4次中東戦争の勃発により、原油価格の高騰を招いた第一次オイルショックが起きました。
この混乱をきっかけに日本では再生可能エネルギーへの取り組みが本格化され、翌年の1974年にはエネルギーの長期的な安定供給の確保を目指す「サンシャイン(SS)計画」を発足しました。また、1980年にはサンシャイン計画の推進機関となる「新エネルギー総合開発機構」、(現在の「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」)と、再エネ研究の基盤となった「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」(代エネ法)が設立されました。
地球温暖化問題からCOPが発足
COP「締約国会議(Conference of the Parties)」とは、「気候変動枠組条約」の加盟国が、地球温暖化を防ぐための議論を行う場です。COPの最終目標は、地球温暖化防止のために温室効果ガスの濃度を安定化させることです。
主な決定事項に1997年、京都で開催されたCOP3(京都議定書)と、2015年フランス・パリで開催されたCOP21(パリ協定)が挙げられます。
温室効果ガスの排出責任は主に先進国にあるというCOP3に対してCOP21では、「先進国、途上国問わず世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えつつ、さらに1.5度未満を目指すこと」という目標を掲げました。
再生可能エネルギーの種類(発電事例)
再生可能エネルギーにはどのような種類があるのでしょうか? 発電事例をご紹介します。
太陽光発電
太陽光発電とは、太陽光パネル(太陽電池)を通して集めた太陽光を電気に変えるシステムのことです。
太陽光パネルは屋根や壁、窓などに設置できるため送電ロスが少なく、メリットの一つとされています。ただし、雨や曇りの日は発電量が少ないことや、設備費用が高いことなどの課題もあります。
ソーラーアップドラフトタワー
ソーラーアップドラフトタワー(ソーラーチムニー)とは、太陽熱を利用する発電所のことを指します。太陽光で熱せられた空気を煙突(チムニー)に集めて気流を発生させ、その気流によってタービン(液体がもつエネルギーを回転エネルギーに変換する機器)を動かし、エネルギーを発生させるというシステムです。
太陽光発電と異なり赤外線エネルギーの利用ができ、水が不必要なため砂漠でも建設可能という利点があります。
地熱発電
地熱発電とは、地下のマグマのエネルギーを利用して発電するシステムのことです。まず、地下1,000m~3,000m付近にある地熱貯留層に溜まった雨水を地中のマグマを利用して温めます。次に、地熱流体(高温・高圧の熱水、蒸気など)を取り出し蒸気と熱水に分けてから熱水を地中に戻し、蒸気のみをタービンで回して発電します。純国産のエネルギーであるため、世界情勢によって価格変動が起きにくいエネルギーです。
海洋温度差発電
海洋温度差発電は、太陽により温められた表層海水と冷たい深層海水との温度差をタービン発電機で変換する発電方式です。
現在は、表層海水と深層海水の温度差が年間を通じて平均20℃以上の地域のみが対象となっており、日本では沖縄周辺地域が該当します。
水温が急激に変わらないため発電量が安定しており、予測も簡単であることがメリットの一つです。
水力発電
水が高所から低所へ流れ落ちる力を利用して発電する方法を水力発電といいます。
水力発電所の中には「ダム式発電所」と呼ばれるものがあり、ダム式発電所では昼間に高所のダムの水を低所の発電所内へ向けて流し込み、発電所内の水車を回して発電します。一方、夜間はダムの水を貯水することも可能です。
波力発電
波力発電は、波のもつエネルギーを利用して発電する方法であり、一番メジャーなものは「振動水柱型波力発電」です。
振動水柱型波力発電は発電装置の中に海水が流れ込み、中の空気室で海面が上下に運動することで押し出された空気が、タービンを回して発電する仕組みになっています。タービンに直接波が当たらないため、腐食や故障しにくいのがメリットです。
風力発電
風力発電とは、大きな風車から受ける風の力を利用して発電する方法です。
風を受けて風車が回ると、発電機内の増速機と呼ばれる機械が風車の回転速度を上げます。そして、回転速度の上がったより強いエネルギーを、発電機に伝えることで電気に変換します。
再生可能エネルギーの中では、比較的コストを抑えられるという点がメリットです。
バイオマス発電
バイオマス発電は、木屑や可燃ゴミなどを燃やすときの熱を利用して電気を起こす発電方式のことです。
バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、化石燃料以外の動植物から生まれた資源のことを指します。植物は燃やすと二酸化炭素を排出しますが、加工前の植物が光合成により大気中の二酸化炭素を吸収するため、二酸化炭素の排出量は実質ゼロともいえます。
再生可能エネルギーの供給方法
近年では再生可能エネルギーの利用を促進するために、スマートグリッドが注目されています。スマートグリッドとはどのようなものか、メリットや仕組みをご紹介します。
スマートグリッドとは?
スマートグリッドとは、ネットワークや通信端末などのIT技術を組み込んだ次世代型の電力網のことです。元来の目的は大規模停電を防ぐためにアメリカで発案されたものであり、以下のようなメリットがあります。
- 電力の供給側と受給側がネットワーク上でデータの送受信が行えるため、供給側が電力需要をリアルタイムで把握できる
- 遠方からでも発電量や供給量を調整できるため、必要な場所に必要な電力を送れる
また、再生可能エネルギーは「発電量が不安定」なため、既存の電力網に組み込みにくい点が課題でした。しかし、スマートグリッドを用いることで電力需要に対して複数の電源から電力送信が可能になりました。
計画的な発送電に欠かせない機器
スマートグリッドはスマートメーターや、HEMS(Home Energy Management System:ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)と連携することで、計画的に発送電が行えます。
スマートメーターは、ネットワークを通じて家庭や地域の電力使用量を電力会社に伝えてくれる次世代型電力量計のことです。他方、HEMS(ヘムス)は各部屋における各機器の消費電力や、再生可能エネルギーによる発電量を確認できる機器のことを指します。
再生可能エネルギーのメリット・デメリット
再生可能エネルギーにもメリットとデメリットが存在します。
メリットだけではなく再エネが普及しない背景も知り、皆で解決策を考えていくことが大切です。
以下から再生可能エネルギーのメリットとデメリットをご紹介します。
- メリット
- 全国どこでも設備設置が可能なため国内エネルギーの自給率向上が見込める
- 永続的にエネルギーが供給でき全国どこでも電力が受給できる
- トラブルや災害が起きても最小限の被害で済み設備修理費用も安価
- 温室効果ガスを排出しないため化石燃料に代わる新たな製造産業が生まれる
- デメリット
- 天候によって発電量が不安定になる
- 発電コストが高い
- エネルギー資源の種類や発電所の設置に適している場所などを調べる手間やコストがかかる
- 従来の発電方法と異なるため発電規模の縮小や価格の高騰が見込まれる
環境に優しい再生可能エネルギーが普及しない主な理由には、発電量が不安定、さまざまな面でコストがかかるといった点が挙げられます。以下からはデメリットに加えた日本の課題と解決策をご紹介します。
デメリットに加えた日本の課題
日本で供給されているエネルギーの約8割は石油、石炭、天然ガスなどです。ただし、資源に乏しい我が国はそのほとんどを海外からの輸入に依存しています。また、2011年3月に発生した東日本大震災以降はエネルギー自給率が10%を下回っています。
さらに、震災の影響により定期検査で止まったまま再開の目途が立っていない原子力発電所が増えたことから、やむを得なくCO2の排出量が多い火力発電に切り替えられました。 そのため、2013年度には過去最高となる14億トンもの温室効果ガスを排出しました。
現状を打開するために日本が取った政策
再生可能エネルギーへの課題やデメリットを打開するために、日本が取った政策をご紹介します。
カーボンニュートラルを目指すと宣言
カーボンニュートラルとは、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロの状態にするという世界規模での目標です。2020年には日本政府も、カーボンニュートラルを目指すと宣言しています。
また、翌年の2021年には「2030年度のエネルギーミックス」が見直され「第6次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。
エネルギーミックスとは、さまざまな発電方法を取り入れ(ミックスして)社会に電力を供給する方法です。
第6次エネルギー基本計画では2030年を目標に、火力発電を76%から41%に減らして再生可能エネルギーの比率を36~38%に引き上げることや、CO2排出量を2013年度と比べて46%削減すること、将来的には50%削減を目指すことなどが目標とされています。
カーボンニュートラルと「3つの水素エネルギー」
近年ではカーボンニュートラルに向け水素エネルギーが注目されています。水素エネルギーの種類は大きく3つに分類されます。
水素エネルギーのメリットは、利用時にCO2を排出しないため環境負荷への低減を期待できる点や、地域の事業者が地域の資源から水素をつくることで地域産業活性化へつなげてくれる可能性と、エネルギーを貯蔵することで災害時にも有効活用ができるといった点です。
また、水素は燃料電池(水素と酸素を化学反応させて電気を起こす装置)を通して「電気」と「熱」、2つのエネルギーを供給できるため、エネルギーの有効利用ができます。
1.グレー水素
「グレー水素」は、石油・石炭・天然ガスなどの化石資源から抽出される水素のことです。グレー水素使用時にCO2は排出されませんが、元々の資源に炭素が含まれているため、水素を取り出す際には二酸化炭素が発生します。そのため、カーボンニュートラルの観点からは評価されておらず「グレー」の水素と表現されています。
2.ブルー水素
グレー水素生成時のCO2処理を行うと、「ブルー水素」になります。CO2処理方法の1つに、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)があります。CCSは「地中貯留」と訳され、CO2を回収して地中に留めておく技術のことです。
価格面で最も実現可能性の高い方法ですが、日本国内で適した土地が少ないことや、「永続的に、CO2が漏れることなく貯留され続けるかどうか」という疑念があります。
3.グリーン水素
再エネ由来の電気から水を電気分解して生成した水素を「グリーン水素」といいます。グリーン水素は燃焼時だけでなく、生産過程においても排気ガスやCO2を出さないので、脱炭素時代に向けてのクリーンエネルギーとして注目を浴びています。
ただし、水を電解するには多くの電力が必要です。そのため、電力コストを抑える方法の考案や電解をおこなう「水電解装置」の開発を進めていき、装置自体のコストを低減することも重要です。
FIT制度
2012年、再エネ発電の導入が進まないことから「再生可能エネルギー固定価格買取制度(Feed-in Tariff、略してFIT制度)」が定められました。FIT制度とは、電力会社が再生可能エネルギーを国が決めた価格で買い取るために、国民の電気料金から費用を徴収するという法律です。その費用のことを「再生可能エネルギー発電促進賦課金」、略して再エネ賦課金(ふかきん)といいます。
また、再エネの発電機材を購入した売電事業者は国や電力会社から認定を受ける必要があります。2017年のFIT法改正により、事業者自らの申請手続きが必要となりました。現在では、インターネットからの電子申請も可能です。
FIP制度
2022年4月に 再生可能エネルギー特別措置法が改正され、それに伴い市場連動型の導入支援(Feed-in Premium、略してFIP制度)が施行されました。
再エネ賦課金による消費者の負担の増大に加えて、太陽光発電の拡大により昼間の電力需要数が減少し、電力会社が固定価格で買電をするとロスにつながる課題が出てきたためです。
そこでFIP制度では、再エネの売電価格を固定価格から市場価格に変更しました。時間帯によって売電価格が変動するため今後、発電事業者は「いつ・誰に・いくらで再エネ電力を売るか」という判断が求められます。
ただし、FIT制度時と同程度の収益を見込めない可能性も懸念されているため、国は電力の需要数に応じて補助金(プレミアム)を出すと公表しています。
RE100とは?
2014年に発足したRE100には、現在24の国から356社が参加しています。RE100とは英語の「Renewable Energy 100%」の略称で、直訳すると「再生可能エネルギー100パーセント」という意味です。「事業で使用する電力を100パーセント再生可能エネルギーにする」という目標を掲げた企業のみが加盟しています。
RE100設立の意図は、電力需要側である企業が再エネの必要性を電力供給側(政府や電力会社、小売電気事業者など)に訴えることにより、需要を高めることです。需要が高まることで電力供給側は再生可能エネルギーの開発を進めることになり、政府や関係機関も新たな法令を作り出す必要性が出てきます。
企業自らが動くことで、「脱炭素社会」に近づくことがRE100の狙いです。
なぜ大手企業ほど取り組みが求められるのか?
今や、地球温暖化対策は世界的な取組みのため、とくに海外進出を行っている大手企業ほどRE100に加盟する傾向が強いです。日本からも66社が参加しています(2022年3月現在)。
また、近年ではESG投資Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)を重視している株主が多いこともあり、すでにヨーロッパでは化石燃料に投資している企業を投資対象から外す動きも見られます。
まとめ
再生可能エネルギーは環境に優しいエネルギーですが、なかなか普及しにくいのも現状です。しかし、限りある資源を使い続けることは不可能ですし、いつまでも枯渇性エネルギーに頼り切っていては「持続可能な社会」を実現できません。
今、世界中が「脱炭素化に向けて私たちにできることは何か? 」を合言葉に行動しています。環境や未来を考える際にはぜひ、再生可能エネルギーを取り入れることも選択肢の一つとして考えてみてください。
最後のチェックポイント
- 再生可能エネルギー(再エネ)とは、自然由来で持続可能なエネルギーのこと
- 再エネは地球温暖化を防ぐためにも有効
- 再エネは「永遠に枯渇しない」というメリットがある
- 再エネのデメリットは「発電量が不安定」「発電コストが高い」など
- カーボンニュートラルに向け水素エネルギーが注目されている
- 「脱炭素社会」を目指すことがRE100の最大目標