ノーコードで開発!特徴やローコードとの違い、おすすめツールも解説
はじめに
ノーコードのアプリやツールが登場したことによって、これまで専門知識が必要とされていたソフトウェア開発やWebページ作成のハードルがぐっと下がりました。国内でも多様な企業がノーコードを取り入れて活用しています。今回はノーコードがどういったものなのか、メリット・デメリットやおすすめのアプリ・ツールについて詳しく解説します。
ノーコードとは?
ノーコードとは、ソースコードを直接書かずにアプリやシステム、Webサイトなどのソフトウェアを開発できるサービスのことを意味します。パーツの配置やテンプレートの選択など、画面操作で構築を進めていくので、視覚的・直観的にデザインすることが可能です。マウスの操作や文字入力といったパソコンの一般的なスキルを有していれば問題なく操作できるでしょう。GoogleやAmazonといった大手企業の参入もあり、ノーコード開発ツール市場は一層にぎわいをみせています。
ローコードとの違い
ローコードは最低限のソースコード作成でシステム開発などを可能とするサービスを指します。ノーコードとの大きな違いは、ソースコード記述の有無です。ローコードではソースコードの記述ができる分、独自の機能を持たせたり既存プログラミングにカスタマイズをしたりと自由度が上がります。従来のようにゼロから構築するよりも開発コストが減らせて、ノーコードよりも柔軟な対応が可能で拡張性が高いところが強みです。
ノーコードアプリ・ツールで何ができるか
コーディングの知識が無くても気軽にアプリ制作可能なノーコードアプリ・ツールですが、これらを使用してどのようなことができるのでしょうか。現在ノーコード市場にはさまざまなジャンルに特化したサービスが展開されています。例を挙げると、顧客・在庫管理や帳票出力といった業務改善に役立つアプリ開発、Webサイト・ECサイトの作成、スマホ向けアプリの開発およびリリースを行うことができます。新サービスだけでなく、既存ツールにプラグインをインストールすることによりノーコードで使用できるものも登場しています。
ノーコードが話題の理由
ノーコードが注目されているのには、IT人材不足の深刻化が大きく影響しています。AIやIoTの普及に伴いDX化が急務となり、専門知識が無くてもアプリ開発が可能となるノーコードが重宝されるようになりました。
また、AWS上で多数の認証に準拠して構築され脆弱性テストも行っているBubbleのように、セキュリティ面に力を入れているノーコードツールも多く、安心して利用できるというのも普及の理由といえるでしょう。クラウド型のサービスが主で導入コストも抑えられるとあって、今では国内外の幅広い企業がノーコードアプリ・ツールを取り入れています。
【プログラミング不要】便利なノーコード(&ローコード)とは?メリットや使い方を分かりやすく紹介【IT転職/未経験】では、ITサプリで配信したノーコード・ローコードについての情報をテキスト化しています。ぜひ動画も合わせてご覧ください。
ノーコードのメリット
ここではノーコードアプリやツールを使用することで得られるメリットについて紹介します。特に注目すべきは次の3点です。
- コーディングが不要になる
- コスト削減や時間短縮につながる
- 業務の要件定義が正しく反映されやすくなる
以下で詳しく解説します。
コーディングが不要になる
コーディングが不要で、非エンジニアでもアプリ開発やサイト制作が可能になったという点がノーコードを使用する最大のメリットといえるでしょう。テンプレートを選択したりドラッグ&ドロップで素材を配置したりといった簡単な操作で構築していくことができるので、プログラミングなどの専門知識が無くても開発に取り組めます。
コスト削減や時間短縮につながる
これまで外注していたアプリ開発やサイト制作もノーコードを活用して自社で行えるようになれば、コストや時間を大幅に削減できます。ノーコードアプリやツールはクラウド型のものが多く、ブラウザ上で開発を進められるため、設備投資も不要で導入コストが抑えられます。無料プランを用意しているサービスも多いので、使用感を確かめてから導入を検討できるのもメリットといえるでしょう。
業務の要件定義が正しく反映されやすくなる
業務担当者自身がノーコードで開発すればイメージ通りの仕様に仕上げることができるので、要件定義が正しく反映されやすくなるというのもメリットのひとつです。業務担当者からエンジニアに仕様を伝える際、認識のズレが生じて要件定義がうまく反映されないといったトラブルも防げます。開発後も現場主導で修正やカスタマイズを加えられるので、柔軟性のあるスピーディーな対応が取れるところも強みです。
ノーコードのデメリット
続いて、ノーコードのデメリットについて解説します。簡単な操作で構築可能な点が魅力のノーコードですが、カバーできない領域もあります。以下の3点に注意して、目的に合っているかどうかを判断してから導入を決めましょう。
- 機能に制限があり自由度が低い
- 大規模開発には不向き
- 海外製のサービスが多い
機能に制限があり自由度が低い
ノーコードの強みであるソースコードの記述が不要という点は、実装できる機能に制限が生まれてしまうという弱点でもあります。テンプレートや使用できる機能が決まっているので、ソースコードを書いて開発していく従来のやり方と比較すると、自由度や拡張性に差が出てしまいます。テンプレートや素材のデザインは使用ツールによって大きく変わるので、複数のツールを比較して検討しましょう。
大規模開発には不向き
決められた機能を組み合わせて開発をしていくノーコードでは、複雑な機能や独自システムの構築が難しいため、大規模開発には不向きです。複数のツールを組み合わせたりプラグインを追加したりして特化していない領域をカバーすることもできますが、通常のプログラミングでの開発よりも却って手間やコストがかかってしまわないか確認しましょう。
海外製のサービスが多い
ノーコードツールやアプリは海外製のサービスも多く、英語が苦手だと操作しづらいという難点があります。作業は感覚的に進められるのでメニュー表記が英語でもさほど気にならないかもしれませんが、問い合わせが必要になった場合は当然英語での対応となりますので注意が必要です。日本語対応をしているものや国産のサービスもありますが、選択肢が限られてしまいます。
IT業界は世界的にも成長が著しい業界で、テクノロジーの進歩に伴ってさらにニーズが高まっていくと予想されます。ノーコードで対応できるツールやプラットフォームの普及も進んでいますので、未経験からIT職への転向も十分に可能性があるでしょう。IT業界へのキャリアチェンジを考えている方は、以下の記事も合わせてご参照ください。営業職からのキャリアチェンジにおすすめ!営業経験を活かしながらスキルアップして稼げるIT業界とは
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ノーコードアプリ・ツールの種類
目的に合ったノーコードアプリ・ツールを選ぶためには、どのような機能のサービスがあるか知ることが大切です。この項目では、ノーコードの種類や選ぶときのポイント、カテゴリ別のおすすめアプリ・ツールについて詳しく紹介していきます。どれを選べばいいか迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
ノーコードアプリ・ツールを選ぶときのポイント
ノーコードアプリ・ツールを選ぶ際、まずは開発目的や抱えている課題が何かを整理しましょう。例えばアプリ開発をしたい場合、Webアプリかスマホアプリなのかで適したツールが変わります。目的に合ったツールを複数ピックアップしたら、バージョンアップやエラー発生時のサポート体制、ランニングコストについて比較します。無料プランがあれば、使用感を確かめてから本格的に導入するか検討するとよいでしょう。
ノーコードおすすめアプリ紹介
一般社団法人NoCoders Japan協会が公開しているノーコードカオスマップでは、ノーコード市場の企業やサービスがカテゴリごとに一覧としてまとめられています。ユーザの多様なニーズに応えるべく各社からさまざまなノーコードアプリ・ツールがリリースされていますが、ここではおすすめのものを一部紹介します。
アプリ開発
この項目では業務効率化に役立つアプリ開発ができるノーコードアプリ・ツールを紹介します。Excelやスプレッドシートといったビジネスシーンでも親しまれているツールと連携できるものもありますので、既存データを活かして業務改善へとつなげることもできます。
appsheet
appsheetはGoogleが提供しているノーコードツールで、社内のワークフロー改善や業務効率化向けのアプリ開発ができます。Excelやスプレッドシートを活用してアプリ開発したり、Googleのサービスと連携を取って自動化したりすることも可能です。既存ファイルを生かすことができるので、導入のハードルが低いのも大きなメリットといえるでしょう。
bubble
bubbleではドラッグ&ドロップで高度なWebアプリを開発することができます。利用ユーザは200万人超と世界でも有数のノーコードツールで、2022年7月にMicrosoftと提携を結んでいます。Webアプリ開発を得意とするツールですがスマホアプリやECサイトなどの製作も可能で、外部サービスの連携やプラグインによって幅広い機能を実装することができます。
Glide
Glideはアメリカで誕生したアプリケーション開発用ノーコードツールです。データベースをスプレッドシートで管理することができ、テンプレートも豊富に用意されています。シート名や項目がそのまま反映されてどの部分が対応してアプリ化されたのかがわかりやすいので、スプレッドシートを活用してアプリ開発をしたい方におすすめです。
kintone
kintoneはサイボウズ株式会社提供のクラウド型業務アプリ開発プラットフォームです。 案件管理や進捗管理、日報管理に活かせるアプリをノンプログラミングで作成することができます。ノーコードツールは海外製のものも多く、英語に慣れていないと操作しづらいものもありますが、こちらは日本製のサービスですので言語面でも問題なく使用できるでしょう。
アプリ開発(スマホ向け)
この項目ではスマホ向けアプリの開発ができるノーコードアプリ・ツールを紹介します。動画でチュートリアルを確認できたり日本語対応をしていたり、スマホ向けアプリの制作経験がない方も安心して開発を進められます。
Adalo
Adaloはスマホアプリ開発に特化したツールで、作成したアプリをGoogle PlayやApp Storeといったストアで配信することも可能です。チュートリアル動画がきめ細かでアプリ作成の流れがわかりやすいので、スマホアプリ開発が初めての方も気軽に取り組むことができます。メニュー表記は英語ですが、パズル感覚の簡単な操作で進められます。
Click
Clickはノーコード開発でDXを推進するNocode Japan株式会社がリリースしたツールです。デフォルト言語は英語ですが、日本語対応もしています。アップデートもこまめに行われていて、充実した機能がそろっています。開発画面右側のチュートリアルを見ることができるので、開発に慣れていない方も使い方を確認しながら進めることができます。
Webサイト制作
以下で紹介するのは、ノーコードでWebサイト制作が可能なサービスです。テンプレートや素材を組み合わせることでおしゃれなWebサイトを作ることができます。完成イメージや予算に合わせて適したツールを選びましょう。
studio
studioはオンライン上でWebサイトを制作できるサービスです。料金プランが複数あるので、まずは無料プランで使用感を確かめてみるとよいでしょう。無料で使える素材も豊富に用意されており、テンプレートと組み合わせてデザイン性の高いサイトを作成できます。サイト内のチャットは完全日本語対応で、操作で行き詰まったときも気軽に相談できて安心です。
wordpress
ビジネスシーンでもメジャーなwordpressも、プラグインをインストールすることでノーコードでの構築が可能です。HTMLやCSSといった知識が必要になる編集作業も、ドラッグ&ドロップで簡単にイメージ通りのページを作ることができます。有料版ではより多くのウィジェットが選択可能で、表現の幅が広がります。
ノーコードの活用事例
この項目では、ノーコードで開発したアプリをリリースしたりツールの導入で業務改善をはかったりといった、ノーコードを導入した国内企業の成功事例について紹介します。オンラインショップや検索アプリなど、このほかにもノーコードで開発されたサービスは多数存在します。日頃愛用しているアプリも、実はノーコードで制作されたものかもしれません。
活用事例・1
みずほ信託銀行ではkintoneを導入し、ノーコード・ローコード開発で信託銀行のシステム内製化をしています。従来紙やExcelをメインに手作業で行っていた業務を、情報共有基盤を整備することで業務負担の軽減に成功しました。現在200以上のアプリが開発され、施策に合わせた柔軟な業務改善が進められています。
活用事例・2
セラミック包丁をはじめ多彩な製品を取り扱う京セラ株式会社では、現場社員がノーコードで制作した棚卸リストが業務改善へとつながりました。棚卸リストはわずか数時間でアプリ化されて導入当日から運用を開始したという、現場主導のDX推進の好例です。スマホのみで棚卸業務が完結することで、業務時間短縮や紙コストの削減、人的ミスも減らせるといった効果が出ました。
活用事例・3
宮城県下で住宅の建築・販売をしている株式会社あいホームでは、スマホからVRで住宅展示場を見学することができるサービスを展開しています。このバーチャル展示場はBubbleを使用し、一ヶ月で制作されました。株式会社Francfrancと連携し、バーチャル展示場に置かれたインテリアを購入できるといった施策も行っています。
まとめ
ノーコードを利用することで専門知識を持たない人でもDX化が実現できるようになり、可能性が広がりました。2020年代からノーコード市場競争は激化が進み、多彩なサービスが続々とリリースされています。中には無料で使用できるものもありますので、ノーコードの便利さを実際に体感してみてはいかがでしょうか。
最後のチェックポイント
- ノーコードは簡単かつ直観的な操作でソフトウェア開発が可能
- プログラミング言語不要のため非IT人材でも利用できる
- 要件定義が正しく反映されやすく、時間やコスト削減になるのがメリット
- 海外製のものが多く、機能に制限があり大規模開発には不向きな点に注意
- 導入の際は目的や課題に合ったものを選び、サポート体制もチェックしておく
- 国内でもノーコードは業務改善やアプリ開発など幅広い場面で活用されている