ニューノーマルとは?意味、起きた変化と必要なスキルや課題を解説
はじめに
新型コロナウィルスが流行し 、生活やビジネスでの環境が一変するとともに「ニューノーマル」という言葉を耳にする機会が増えました。しかし「ニューノーマルってどんなこと」と聞かれると答えに詰まってしまう方も多いのではないでしょうか。この記事ではニューノーマルの言葉の意味から使われるようになった背景、生活やビジネスの何が変わったのか解説していきます。世の中の変化と共に必要になったスキル、ニューノーマルを推進していくうえでの課題と対策も紹介いたします。
ニューノーマルとは
ニューノーマルとは過去の常態(平常の状態)に戻ることのない新しい常態のことです。ここでは、ニューノーマルの言葉の意味をわかりやすく掘り下げます。また、いつからニューノーマルが提唱されるようになったのかも解説をしていきます。
言葉の意味
ニューノーマルを単語で分解すると「ニュー」(New)と「ノーマル」(Normal)になります。直訳では新しい常態・標準という意味です。世の中に大きな出来事が起き、その後生活様式や日常の標準が変化します。変化が大きかったり長引いたりすると、変化した状態からもとに戻ることができず、新たな生活様式や新しい日常の標準が定着します。今回のニューノーマルはコロナウィルスの流行という大きな出来事によってもたらされたと言えるでしょう。
ニューノーマルという言葉が使われるようになった背景
ニューノーマルという言葉が提唱されたのは実はコロナ禍がはじめてではないことをご存じでしょうか。1番はじめに提唱されたのは1990年代から2000年代初頭のITが普及しはじめた頃です。検索エンジンや携帯電話の広がりにより今までのビジネスモデルや経済の価値観が通じなくなりました。また、2008年に起きたリーマンショックの頃にもニューノーマルが提唱されています。その際は、世界的経済不況に 陥った原因が変わらなければもとの資本主義社会へ戻ることはないだろうと論じられました。
生活の変化
コロナウィルスが流行ったことで私たちの生活には変化が起きました。人と距離を取り、なるべく直接触れ合うことを避けることが推奨されています。日常生活ではどのような変化が起きているのか詳しく説明していきます。
ソーシャルディスタンス
人と距離を取って接することや大人数で集まらないといった、物理的に距離を取るソーシャルディスタンスが推奨されています。通常の会話をするときは、マスクをつけた状態で約2メートル離れると 感染予防ができるとされています。オフィスでは大人数が集まらないように出社日を減らし、人によって異なる出社日にしている企業が増えました。映画館やイベントホールの座席は観客同士の座席の距離を空け、収容人数を減らして営業している場所もあります。
外出を控える
緊急事態宣言により不要不急の外出を控える要請が出されました。それに伴い、業務ではリモートワークを推進する企業が増えました。里帰りや旅行などの遠出は避け、日常生活でも買い物は一度に まとめ買いするなど、外出を避け「ステイホーム」「おうち時間」といった家の中で過ごす時間が増加しています。リモートワークや自分の時間を充実させるためにインターネット環境を整え、インターネットサービスやサブスクリプションの利用を開始する人も多くなりました。
ビジネスの変化
人との物理的距離を保つことが日常の新しい定義となりつつあり、ビジネスの分野では非対面や非接触でのサービスが収益の拡大を見せました。社内での取り組みでは、業務のIT化や事業継続計画(BCP)の見直しを重要視する企業が増えています。ここではそうしたビジネスの変化について説明していきます。
非接触サービスの拡大
店舗でも人と接触を控える考えが広がっています。キャッシュレス対応の店舗では交通系を含むICカードでのタッチ決済が普及しました。また、バーコードを利用した決済も増加しています。ファミリーレストランや居酒屋では、店員を呼ばずに各テーブルに配置されたタッチパネルで注文をするシステムの導入をする動きも盛んです。一部のファストフード店ではアプリでのオーダーにより、レジに並ばず出来上がりのタイミングで商品を受け取れる仕組みができています。
eコマース(EC)サービスの拡大
外出時間が短くなり、百貨店などへ出向かず、家の中でECサービス(インターネットの決済を利用したサービス)を利用する人が増えました。ネットショッピングではパソコンやスマートフォン1つで注文をしたら後日家に届くところまで完結します。今までインターネット販売をしていなかった店舗や品物も新たに参入してきています。今後もネットショッピングだけでなく、フードデリバリーやサブスクリプションなど、ECサービス利用者の増加と共に新たなECサービスの拡大が進んでいくことでしょう。
業務のIT化
リモートワークやテレワークをきっかけに業務のオンライン化を進める企業が増えました。テレワークで必要となるWeb会議ツールや勤怠管理ツールの導入率が高まっています。業務の効率化という点では、ファイル共有ツールを利用することでどの場所にいてもファイルを見ることができるようになりました。また、リモート営業や会議が増えた今、名刺をクラウド上に保存して、企業の情報を一元管理し、営業に役立てるというツールも需要が伸びています。
業務のIT化の基本はこちらの記事DX(デジタルトランスフォーメーション)とは? 何かを、解説より詳しくご紹介しています。あわせてご確認ください。
事業継続計画(BCP)の見直しや重要性
BCP(Business Continuity Plan)は事業継続計画のことです。天災や人災、パンデミックなど危機的状況に対して企業の被害を最小限に抑え、早期復旧に努めて事業を継続させる計画のことを言います。コロナ禍以前と現在では経営状態のよい企業のBCPは大きく変わってきています。パンデミックが起き、補助金や助成金だけでは経営がなりゆかず倒産してしまった企業も少なくありません。未来予測が難しい今、これから何が起きるか予測して変化に対応できるBCPへの見直しが重要視されています。
働き方の変化
ニューノーマル時代になり、テレワークや業務のIT化を推進する企業が増えました。雇用形態もメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ移り変わろうとしています。ここではニューノーマル時代の働き方がどう変化しているのか説明していきます。
テレワーク・リモートワーク
パンデミックの影響により社内でクラスターが発生するのを防ぐため、出社を控えてテレワークやリモートワークを推奨する動きが全国で起こりました。テレワークやリモートワークでは、企業以外の自宅や移動先などさまざまな場所で業務ができます。テレワークを進めるにあたっては、業務のIT化や社員の就労環境を整えることが必然となります。出社が必要な業務がなくなった企業では、広いオフィスが必要なくなり手放した、という事例もあります。
オンラインでの会議や営業活動
直接人と会う機会が減り、多くの会議や営業活動が対面式からオンラインに移行しました。会議や打ち合わせに活用できるWeb会議ツールも複数の企業からリリースされ数多く存在します。オンラインでの営業活動は今までのように現場に足を運ぶ方法からWeb会議ツールを使用した方法に変化しています。オンラインでの会議や営業活動は、移動時間や会議室の準備が必要ないため比較的自由な場所と時間でできるのでスケジュールが組みやすく、次の商談の提示もしやすいのが特徴です。こちらが提示した資料を相手方がダウンロードして共有することもできるようになっています。
ジョブ型雇用の増加
今までのメンバーシップ型雇用では同期と一斉に研修をして、年功序列で昇格や昇給のあることが大半でした。ほぼ毎日出社をしているため、勤務態度や仕事が目に見えてわかり、そのおかげで雇用も成り立っていたといえます。しかし、テレワークが増えた今、現場での勤務態度や仕事ぶりを見ることができません。そのため専門性が高く結果を重視し、その人にできる仕事を任せるジョブ型雇用にシフトしてきています。
スキルの基本はスキルアップの疑問解決!そもそもの必要性から習得方法まで、より詳しくご紹介しています。あわせてご確認ください。
ニューノーマル時代に求められるスキル
ニューノーマル時代で生活や働き方が変わりました。業務のIT化やテレワーク、リモートワークが増えたことで求められるスキルにも変化が起きています。ここではどのようなスキルが求められるようになったか説明していきます。
オンラインでのコミュニケーションスキル
ニューノーマルのコミュニケーションでは、伝えたいことをわかりやすく伝える文章力や、相手の言葉を読み解くスキルが必要です。オンラインでのコミュニケーションはチャットやメールといった文章でのやり取りがメインです。手軽にやり取りできる分、迅速に返信をする必要があります。文章のポイントは、まず結論を頭に書き、短くまとめるよう心掛けると、自分の言いたいことが相手に伝わりやすくなるでしょう。それに加えて、 相手の文章からも言いたいことは何か、大事な部分はどこか理解できるとコミュニケーションがスムーズに進みます。文章力や読解力を上げるには、普段から本や新聞などの文章に触れて、その文章が言いたいことはなにかをまとめるようにすると伝え方や要約がつかめるようになるでしょう。
モチベーションを管理する力
テレワーク・リモートワークでは周りに一緒に頑張る同僚がいない中、1人で仕事へのモチベーションを保つ必要があります。しかし、高いモチベーションを維持し続けることは難しいです。
業務中のモチベーションの保ち方は1時間に1度5~10分程の休憩を挟むことをおすすめします。気持ちや頭のリフレッシュにつながり休憩後の仕事へのモチベーションが復活すると言われています。作業する場所に飲み物や簡単なおやつを用意して気持ちを切り替えながら業務に励むのもいいでしょう。
日常生活で心がけることは運動をすることです。1日に10分程度の散歩をするだけでもモチベーションが上がります。休日には仕事のことをまったく考えず完全にオフの状態にするとリフレッシュにつながります。
心身の健康を管理する力
自身で心身の健康を管理する力も、ニューノーマル時代には必要です。テレワーク中心の生活になると通勤をしなくなるため運動量が減ります。運動を怠ると体が硬くなり、集中力の低下にもつながります。日々適度な散歩や運動を行うことで心身のリフレッシュにもなり仕事の集中力が上がるでしょう。
Web会議やミーティングが無ければ仕事に向き合う時間も自己裁量になりやすいです。そうなると、仕事が終わらないからとご飯や休憩を挟まず続けることで、過労につながる恐れがあります。結果、精神にも悪い影響を与えてしまいかねません。仕事がたまっていても、休憩時間を決めて少しでも休むことで頭のリフレッシュにもつながり、仕事の効率を上げることができるでしょう。
セルフマネジメント能力
セルフマネジメント能力も、ニューノーマル時代に必要なスキルと言えます。従来の出社する勤務の場合は、近くに先輩社員がいるので自分の将来像を描きやすいです。仕事のやり方も、わからなければ先輩にすぐ聞くことができました。テレワークやリモートワークが中心の今、そばに先輩はいないことが多いのではないでしょうか。手本や指標となる人物がいないので自分の将来像が掴みにくく、 わからないことが出てきてもすぐに聞ける環境ではないため自分で考える必要があります。
将来像については、自己分析を行い、自分が今後どのようにしていきたいのかを考え、目標を立ててその達成を目指すことで見えてくる可能性があります。仕事に対しては、どう取り組んだら効率がよいか、仕事をしやすいかを考え、計画を立てて行動することが大切でしょう。
セルフマネジメントの基本はこちらの記事自己実現とは?マズローの欲求5段階説の活用法で、より詳しくご紹介しています。あわせてご確認ください。
トラブル解決力
リモートワークやテレワークで何かトラブルが発生した時に、すぐに相談できる人はいないことが多いでしょう。 最近はインターネット検索で答えが見つかることも多く、解決方法の手順を丁寧に解説しているサイトも多数あります。仕事をするうえで起きやすいトラブルや、解決のための思考方法についてはビジネス本などにも多くヒントがあります。上司に相談せずに行うと取り返しのつかないことになりかねない、というものでなければ自分で解決できる力を持つとよいでしょう。普段の業務中から、もしこの場でトラブルが起きたらどう対処するかを考えてみましょう。何パターンか予防策や解決策を考えておくといざ何か起きた時に冷静に対処できるはずです。
ニューノーマルを推進していく上での課題と対策
ニューノーマルに対応していくことは新しい時代に適応していくためにも大切なことです。今までと異なる常態のニューノーマルを推進していくうえではさまざまな課題もあります。ここでは課題と対策について説明していきます。
コミュニケーション不足
ニューノーマルな働き方で出社が減り人と顔を合わせて会話をすることが減りました。チャットやメールでの業務連絡が多くなった半面、人とのコミュニケーション不足に陥りがちです。コミュニケーション不足により仕事のトラブルを1人で抱えてしまうことや、個人的な問題を抱え込んでしまい仕事に影響を及ぼしてしまうことがあります。対策としてはチャットで気軽に会話ができる状態を作ることや、ミーティングのはじめや終わりに日常会話を心掛けることが挙げられます。
セキュリティの保持
ニューノーマルな働き方によりテレワークやリモートワークが増え、パソコンや機材を持ち出すことで情報を社外で取り扱う頻度が増えています。社外での情報の管理やセキュリティ対策を行っていないと、情報漏えいやパソコンへのウィルス侵入が起きかねません。対策としては外部のフリーWi-Fiを使用しない、セキュリティチェックを定期的に行う、情報を外部コピーしないといったセキュリティの保持に関するルールを作り、社員に周知させることが挙げられます。
労働環境の確保
テレワークやリモートワーク、業務のIT化といったニューノーマルな働き方を推進していくには労働環境の確保が必要です。社員が使う社外用のパソコンの配布やパソコンの設定、自宅のインターネット環境整備の準備が基本となってくるでしょう。現在の業務でPCに入れるソフトは何が便利か、その他に必要な物はあるか検討が必要です。現在ではリモートワークに移行しやすいツールがありますので、利用することでニューノーマルな労働環境の確保に近づけるでしょう。
人事評価
ニューノーマルな働き方の推進により、現場で仕事ぶりを見ることが減っている昨今では、仕事の成果に対して評価基準を取り入れている企業が多くなってきています。個人が所持している資格やスキルに合わせて、仕事の種類や量を割り当てる企業も増えてきています。企業によっては所持している資格に応じて手当がつく場合もあるでしょう。今までの年功序列の制度に比べて、年齢や社員歴関係なく個々で競い合える職場環境が作りやすいと言えるでしょう。
まとめ
コロナウィルスによってもたらされたニューノーマル時代の到来で、物理的に人との距離を取り外出を控えるようになりました。ビジネスシーンでは非接触での接客やオンラインでの会議、リモートワークが推進されています。チャットやメールでのコミュニケーションが増え、これまで以上の文章力や読解力が求められています。一人で作業することが増えたので、モチベーション管理能力や自身のマネジメント管理能力もあるとよいでしょう。必要とされる知識やスキルを身に着けて、これからのニューノーマル時代で活躍できる人材になっていきましょう。
最後のチェックポイント
- ニューノーマルとは新しい常態を指しもとの標準には戻ることができないという意味
- コロナウィルスの流行で生活様式やビジネスに大きな変化が訪れた
- ビジネスシーンでは非接触の接客や業務のIT化が進んでいる
- 非対面におけるやり取りの増加で新しいコミュニケーションスキルが求められている
- テレワークにより自身のマネジメント力や心身の管理能力が求められている
- 企業として推進していくうえで課題は残っているが解決策も増えてきている