ライブコマースとは?メリット・デメリットから配信方法も紹介
はじめに
ライブコマースという言葉を聞いたことがありますか。ライブコマースという言い方では想像がつきにくいかもしれません。ライブ配信ツールを使って商品の売買を行う、という言い方をすれば見かけたことがある人もいるのではないでしょうか。
近年このライブコマースがアパレルブランドや百貨店を中心に広がりを見せています。この記事ではライブコマースが普及している背景からメリットとデメリット、配信を始める準備まで説明していきます。
ライブコマースとは
ライブコマースとは英語でlive commerceと表記します。ライブ(生配信)とeコマース(インターネットで商品を取引すること)を合わせた意味です。デジタルマーケティング(デジタルを駆使して広告や商品販売を行う手法)が普及したことにより、ライブコマースを始めるハードルが下がってきています。
デジタルマーケティングについてはデジタルマーケティングとは基礎から解説!注目の背景や必要なスキル資格勉強方法まででより詳しくご紹介しています。あわせてご確認ください。
ライブ配信とeコマースを足した仕組み
ライブコマースはライブ配信を利用したeコマースです。配信者が物品を用意して、カメラの向こうにいる視聴者へ商品のPRや説明を行います。生配信で行うことが多く、視聴者は物品を気に入ればその場で購入することが可能です。近年ではライブコマースに特化したアプリやツールが数多く存在します。このようなアプリやツールには、配信機能やネット販売用のショッピングカート機能が備わっており、1つのツールで配信から販売・購入まで可能です。
コマーサーの存在
ライブコマースの配信をするうえで出演者は欠かせません。ライブ配信アプリで人気の配信者(ライバー)を起用するのも一つの手段です。ライブコマースで活躍するライバーのことをコマーサーと呼びます。コマーサーに知名度があるため企業の顧客だけでなく、コマーサーのファンも配信を見に来てくれる可能性が高まるでしょう。
中国でのライブコマース
ライブコマースは世界に広がりを見せていますが、市場規模で世界トップクラスなのが中国です。中国はeコマースの市場でも大きなシェアを取っています。ここでは中国にライブコマースが浸透している理由を説明していきます。
ライブコマースが日常に溶け込んでいる中国
中国でのライブコマースの市場規模は右肩上がりで推移しています。これにはeコマースの市場規模も同様に推移している影響があります。中国では国内においても中国製品の安全性問題に不安を感じる人が多いです。企業の販売ページやライブコマースでの販売により「何を売るかよりも誰が売るか」で売り上げが変わるといわれています。ショッピングサイトのTaobaoやSNSサービスのTikTokが参入し、人気コマーサーになると1日で1億円以上売り上げる人も存在するようです。
日本でのライブコマース
日本でのライブコマースの市場は、中国に比べるとまだ大きなシェアは取れていないとされています。これには日本でのライブコマースの歴史が関係していると考えられます。日本でのライブコマースはどうなっているのか説明をしていきます。
2020年代より前のライブコマース
日本にライブコマースが入ってきたころは、現在とは異なり、テーマやブランドに沿った配信を行うコマーサーや企業が少なかったです。フリマアプリやSNSを使い、個人が配信を行うことは多くありましたが、視聴者の期待に応えられる配信者が、配信媒体やアプリを運営する企業の予想より少なかったのです。結果、売り上げが伸び悩み、サービス終了をする企業が相次ぎました。
当時の配信者や配信媒体では、テーマや内容にこだわるよりも物自体を売ることがメインになっていて、ターゲット層を定めにくく日本では失敗に終わることが多かったと言えるでしょう。
現在のライブコマース
おうち時間が増え、インターネットで買い物をする人が増加した影響もあり、各企業でeコマースの導入が進みました。eコマースの導入と共にライブコマースを導入する企業も増えています。特に、ショッピングサイトの楽天市場やアパレルのユニクロ、百貨店など販売をメインに行っている企業での参入が目立ちます。自社のお客さんをターゲットにするため配信者や配信媒体を決めやすく、視聴者への広告も打ちやすくなりました。社員が配信をするなど商品に詳しい人が配信できるのも現在のライブコマースの強みです。
向いている業種と商品
ライブコマースに向いている業種は販売業が中心です。ライブコマースは、配信を見ながら気に入った商品があれば買い物かごに入れて、ネット販売でそのまま購入できることが強みです。ライブコマースはアパレルやコスメ用品、家具家電、食品といったカメラ越しでもどのようなものか見ることのできる商品が向いています。色味や質感、使用方法、食べ物であれば、食感やにおいといった特徴を言葉にできる商品であると視聴者に魅力を伝えやすいです。視聴者が価値を理解できれば購入率も上がることでしょう。
ライブコマースのメリット
ここまでライブコマースについて説明してきましたので、ここからは、ライブコマースのメリットについて説明します。リアルタイムでコミュニケーションを取ることのできるライブコマースですが、配信者と、利用者が得ることのできるメリットをそれぞれ見ていきましょう。
配信者にとってのメリット
配信者にとってのメリットはリアクションが返ってきやすいところにあります。配信中にリアルタイムのリアクションが返ってくることもそうですが、SNSなどを使うことで利用者の反応を見ることができます。また、配信内容次第では自社のイメージアップにもつながるでしょう。
- 配信者にとってのメリット
- リアルタイムで利用者の反応を見ることができる
- ブランドや店舗の信頼度アップが期待できる
- アーカイブを残すことができる
リアルタイムで利用者の反応を見ることができる
生配信で行われることの多いライブコマースでは、利用者は顔を出さずニックネームや匿名でコメントができます。対面販売のときよりも素直なリアクションが現れ、リアルタイムで率直な反応が現れるため、利用者が自社ブランドや商品に持っているイメージをその場で知ることができるでしょう。また、生配信で出演者と利用者のコミュニケーションを取ることができるので、利用者が知りたい情報を即座に提供することが可能です。
ブランドや店舗の信頼度アップが期待できる
ライブ配信のメリットは商品の紹介だけでなく、実際に使用しているところを映すことで利用者の理解度を深められます。社員などその商品に詳しい人が説明を行い、利用者からの質問に丁寧に答えます。利用者のブランドや店舗スタッフに対するイメージが向上し、信頼度のアップにもつながるでしょう。商品やブランド、店舗スタッフへの信頼度が上がるとその商品に関するブランドや店舗にリピーターがつきやすくなります。
アーカイブを残すことができる
配信で使用するアプリやツールに、アーカイブ(投稿した過去の記録を保存しておくこと)機能が備わっていると、過去に配信した動画をアーカイブとして残すことができます。過去に配信した動画を見返すことで、反響が大きかった配信や商品が多く売れた時の配信を元に次回以降の内容を考えるヒントになるでしょう。
また、視聴者がアーカイブのページで過去に紹介した商品を気に入れば、その場で購入することができるので売り上げの向上につながる可能性があります。
利用者にとってのメリット
利用者にとってのメリットは配信をどこでも視聴できることです。また、リアルタイムで質問ができ、返答が返ってきます。アーカイブがある場合は生配信を見逃してしまっても好きな時間に見ることができ、気になる動画があれば繰り返し見ることが可能です。
- 利用者にとってのメリット
- 店舗に行かなくてよい
- その場で質問ができる
- アーカイブを繰り返し見ることができる
店舗に行かなくてよい
Web上で商品の購入を行えるので店舗に行く必要がありません。さらに、パソコンやスマートフォンで、自宅や外出先といった場所を選ばずどこからでも視聴ができます。配信アプリやツールには共有機能を持つものが多くあります。配信を見ていて友人や家族におすすめしたいなと思ったときには、SNSやメールにて配信動画を共有することも可能です。配信を共有することにより友人同士や家族で買い物をしている感覚が味わえるため、店舗に直接行く必要がなくWeb上で買い物が行えます。
その場で質問ができる
生配信にてやり取りが行えるので、商品に対しての質問がその場でできます。多くの場合チャットでのやり取りでニックネームを使用します。チャットとニックネームという匿名性のもと、対面では少し聞きにくいような商品のデメリットについても質問しやすいです。リアルタイムでのコミュニケーションが取れるので、質問した内容について配信者からの返事がその場で返ってきます。多くの疑問や質問についてはその場で解決できるでしょう。
アーカイブを繰り返し見ることができる
アーカイブを残している配信では過去の配信を見ることができます。生配信を見逃してしまった。最近見始めたけれど過去の特集や紹介された商品も気になる。気になる商品があったのでもう一度配信を見たい。といった場合に過去の配信を見て、気に入った商品があればその場で購入ができます。過去の配信動画のため、商品に関して質問やコメントをすることはできません。しかし、繰り返し見て商品説明やコメント欄を詳細にチェックすることが可能です。
ライブコマースのデメリットと対策
ここまでライブコマースのメリットを紹介してきました。ライブコマースにはデメリットも存在します。ここではデメリットの紹介とデメリットに対しての対策を解説していきます。対策を講じることでデメリットを強みに変えていけるようにしましょう。
配信の知識が必要
ライブコマースの配信を始めるには、配信中のトラブルに対処できる知識が必要です。使用するツールやアプリの知識、配信機材や通信に関しての知識も必要です。使用するツールやアプリについて調べることで、ツールやアプリ内でトラブルが起きた時に対処ができます。
機材に関しては、配信をするカメラ、マイクの使い方や長時間配信できる環境設備があるとよいでしょう。通信に関しては、Wi-Fiなど安定した配信を行えるネットワーク環境の設備があると望ましいです。
ネットワーク環境構築の知識に関しては、ネットワークエンジニアの仕事内容、やりがい、年収、将来性とキャリアパスについてで詳しく紹介しています。あわせてご確認ください。
アプリケーション構築の知識に関しては、アプリケーションエンジニアの仕事内容・必要スキル・年収から将来性までを解説しますで詳しく紹介しています。あわせてご確認ください。
視聴者の集客があるとよい
配信の設備が整ったところで、ライブ配信を見てくれる視聴者がいなければ配信をしても効果が上がりません。そこで、配信を見てくれる視聴者を集める必要があります。視聴者を集めるには自社のホームページやSNSを使い、ライブコマースを行う日時や内容の告知をします。このとき「拡散企画」をすると配信を行うことが広まりやすいです。生配信限定セールやプレゼント企画といった利用者が見たくなるような内容をアピールすると、視聴率が伸びやすくなるでしょう。
ブランドイメージを下げることがある
配信の準備や視聴者の確保ができたところで、配信の内容が利用者の期待に応えられなければ商品やブランドのイメージを下げてしまう可能性があります。出演者に商品知識が無く利用者の質問に答えられない、好感度の低いコマーサーを呼ぶ、夏のテーマなのにマフラーを紹介する、商品に統一性がない、といったことで利用者に悪い印象を与えてしまうことがあります。このようなことでは商品やブランドのイメージを悪くしかねません。商品やブランドのイメージを下げないように配信内容や出演者を考えるとよいでしょう。
ライブコマースの始め方・やり方
ここまでライブコマースの概要や歴史、メリット・デメリットと対策を説明してきました。ここからは始めるにあたり必要なものや、やり方を説明していきます。ライブコマースを始める参考にしていただければ幸いです。
- ライブコマースの始め方・やり方
- 配信のテーマを決める
- 配信者を決める
- 配信機材の準備
- 配信方法を決める
- トラブルが起きた時の対応マニュアルを作成する
配信のテーマを決める
配信のテーマを決めます。まず、季節や現在のトレンドに沿った販売の目玉となる商品やブランドを確定させます。購入の決め手になるおすすめポイントを押さえるとよいでしょう。おすすめポイントに沿った他の商品ラインナップを併せて配信のテーマにすると、一貫性が出て見やすい配信になります。定番商品やトレンド商品、季節の商品が目玉商品にしやすいでしょう。配信中のコメントを参考に次回以降のテーマを決めると視聴者の期待に沿った配信が行いやすくなります。
配信者を決める
配信のテーマが決まったら配信者を決めます。個人で配信をする場合には自身で行うことが多いでしょう。企業で行う場合には知名度のあるコマーサーやインフルエンサーを起用することもあります。知名度のある人をゲストに迎えることで、ファンの視聴率が上がりやすくなります。商品知識に富んでいる社員を起用すると商品への質問に対して詳細な返答ができるため、商品やブランドへの信頼度が上がるでしょう。好感度がある商品は売り上げも上がっていく可能性が高いです。
配信機材の準備
配信を行うにはスマートフォン1台でも可能です。しかし、精度の高い配信を行うにはカメラやマイク・照明・パソコンといった機材や安定したネットワーク環境があると好ましいです。性能のよいカメラを使用すると商品のアップや全体像を映しやすくなります。マイクがあると商品の音を拾いやすくなります。ネットワーク環境が安定していると、途切れずに配信を届けることが可能です。商品をよりキレイに見せるにはライトを照らし、商品を見やすいテーブルや背景があるとよいでしょう。
配信方法を決める
ライブコマースを配信するツールやアプリを決めます。さまざまなツールやアプリが存在していますが、配信を行うにあたり操作がしやすいか、販売を行う商品に適しているかを調べ、試しながら決定していきましょう。ライバーが多いアプリ上で配信をする場合は、アプリ内で有名なライバーを起用すると視聴率が上がりやすくなります。現在ではメタバース空間でのライブコマースを行う企業も増えてきています。アバターを利用して友人と買い物を楽しむ人も増えるかもしれません。
メタバースの詳細は【ITニュース】メタバースとは?仮想通貨?NFT?やり方は?分かりやすく紹介!【IT業界/転職】で詳しく紹介しています。あわせてご確認ください。
トラブルが起きた時の対応マニュアルを作成する
生配信にはトラブルがつきものです。トラブルが起きた時に慌てないようにトラブル対応マニュアルを作成しておくとよいでしょう。生配信で起きやすいトラブルには機材トラブルや視聴者からのコメントに詰まってしまうことが挙げられます。配信が止まってしまった場合はどうアナウンスするか、機材の確認はどこからするかを考えておくとよいでしょう。アンチコメントへの対応なども事前に考えて準備しておくと安心して配信ができます。
まとめ
ライブコマースはライブとeコマースを組み合わせたもので、アプリやツールを使いインターネットの生配信で配信中に買い物ができる仕組みです。日本において最初は失敗例も多くありましたが、近年では成功例も増えてきています。メリットとデメリットを理解することで便利に利用ができますし、配信の準備ややり方が分かれば個人や企業を問わず発信が可能です。
日本では特に個人が発信するライブアプリやメタバース空間での導入で、更にライブコマースが普及していくことでしょう。配信を行うのも利用をするのもますます便利になっていくことが考えられます。友人や家族と楽しむコンテンツの1つになっていくかもしれません。配信、利用共によりよい使い方ができるよう心掛けて利用していきましょう。
最後のチェックポイント
- ライブコマースとはライブとeコマースを合わせた仕組み
- ライブコマース導入初期の日本では失敗もあったが近年は成功例も増えている
- メリットはリアルタイムでのやり取りができるところ
- デメリットは配信内容次第でイメージダウンにつながる可能性があるところ
- 始めるには配信の知識が必要
- ライブコマースを始めやすいアプリやツールが出ている
- トラブル対処法を考えておくと安心して配信ができる