インフルエンサーマーケティングとは?メリットや成功事例を解説
はじめに
SNSが発達した現代、世間への影響力が大きい「インフルエンサー」と呼ばれる人々が登場しました。それにともなって、インフルエンサーを起用したマーケティング手法が近年盛んにおこなわれるようになりました。この記事ではインフルエンサーマーケティングとは何なのか、どういったことなのかといったことを解説します。あわせてメリットやデメリット、やり方、事例なども紹介します。
インフルエンサーマーケティングとは
SNSでフォロワーが多く、世間への影響力が大きい人物を「インフルエンサー」と呼びます。彼らを起用して商品やサービスを宣伝する手法が「インフルエンサーマーケティング」です。テレビや雑誌といったマスメディアで展開する従来のマーケティングと比較して、一段と消費者に寄り添った施策展開が可能です。趣味や好みが多様化した現代にマッチした新しいマーケティング手法として注目されています。
デジタルマーケティングとは基礎から解説!注目の背景や必要なスキル資格勉強方法までの記事では、SNSを使ったマーケティングを含むデジタルマーケティングについて詳細に解説しています。参考にしてください。
代表的なSNS
インフルエンサーが使用するSNSはいくつか代表的なものがあります。写真・動画共有SNSであるInstagram、動画投稿プラットフォームYouTube、140文字の投稿を共有するSNSであるTwitter、ショート動画特化SNSのTikTokなどです。インフルエンサーマーケティングではとくに若い女性の利用が多いInstagram、幅広い世代の男女が使うYouTubeが多く使われる傾向にあります。Twitterも幅広い年代に使われており、RT(リツイート)による拡散力が魅力です。また、10代~20代に人気のTikTokも注目を集めており、実際にマーケティング事例も増えてきています。
インフルエンサーの種類
インフルエンサーマーケティングにおいて、インフルエンサーはフォロワーの数によって分類されます。トップインフルエンサー(フォロワー数十万~百万以上)、ミドル(マクロ)インフルエンサー(フォロワー数十万)、マイクロインフルエンサー(フォロワー数万)、ナノインフルエンサー(フォロワー1万以下)と呼ばれるものです。芸能人やタレントといったトップインフルエンサーや、ジャンルのカリスマと言える存在のミドル(マクロ)インフルエンサーは大変フォロワーが多い人物です。フォロワーが多いほど世間への影響力が大きく、しかし同時にユーザーとの距離が遠くなる傾向にあります。比較的フォロワー数が少ないマイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーにおいては、全体的な影響力は小さいもののユーザーとの距離が近く、的を絞ったマーケティングができます。
インフルエンサーマーケティングを実施するメリット
個人の趣味や好みのあり方が変化し、情報のチャネルが多くなった現代では従来のマーケティング手法ではうまく機能しなくなった面があります。新しい手法であるインフルエンサーマーケティングには、従来のマーケティングにはない多くのメリットがあります。それぞれ解説しますので、みていきましょう。
従来の広告とは違った宣伝効果
従来のマーケティング、とくにマスメディアを使った商品広告は、消費者にとって押し付けられた印象が残るものでした。しかしインフルエンサーマーケティングでは、インフルエンサー自身がフォロワーに向けて広告施策をおこないます。もともとインフルエンサーについているフォロワーは彼らの“ファン”なので、商品やサービスの紹介をされても抵抗感が少なく、すんなり受け入れられることが多いです。インフルエンサーの集客力とフォロワーのコミュニティで広がる口コミから、商品やサービスの販売促進、ブランド認知の向上が見込めるのです。
多彩な施策の実施
インフルエンサーに商品の広告塔になってもらうだけでなく、インフルエンサーに実際の商品やサービスの感想を投稿してもらったり、コラボレーション商品を開発・販売したりするなどさまざまな施策を実施できます。これらを消費者からみた場合、フォローしているインフルエンサーの発信は信頼の置けるものですし、コラボ商品は趣味や好みに合ったものであることが多いということになります。つまり消費者の需要に対して効率よく商品やサービスの情報を多くのフォロワーに届けることができるのです。
コストの削減
マスメディアを使った広告掲載には膨大な費用がかかります。しかしインフルエンサーマーケティングでは、規模が小さめのインフルエンサーに依頼することにより費用を抑えられます。しかも前述の通り、的を絞ったマーケティングをおこなうことが可能であり、費用対効果も優れているのです。ただしこの場合、インフルエンサー自身の傾向や彼らのもつフォロワーの属性を勘案し、慎重に選定しなければよい結果に結びつかない可能性があることに注意が必要です。
細やかな集客、ブランド認知の向上
現代では個人の趣味や好みは細分化しており、それは集客やブランド認知の向上においても細分化した施策が必要であることを意味します。インフルエンサーには趣味や好みが共通したファンがすでについているのが特徴であり、マスマーケティングでは難しいとされる細やかな需要にアプローチが可能です。さらにマイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーではフォロワーとの距離が近いため、生の声を聞きとりやすく需要の把握がしやすいといったメリットもあります。
ブランディングとは?企業での意味や効果、戦略と使い方をわかりやすく解説! の記事ではブランディングの基本から実施方法、分析のやり方、戦略事例を知ることができます。あわせてご覧ください。
消費者に寄り添ったレビューによる宣伝
インフルエンサーにサンプルや本品を送付し、商品の特徴や使い心地をレビューとして投稿してもらうことができます。企業からの依頼による商品紹介は「PR」または「広告」などと表示する必要があるため、完全に口コミと同じというわけにはいきません。しかし、インフルエンサーは消費者の立場で正直にレビューや感想を発信する傾向があります。そのためフォロワーから一定の信頼を得ており、PRと表示しているレビューでも好感度のあがる宣伝となり得るのです。
SNSによる宣伝の拡散とUGCの活用
信頼されているインフルエンサーの投稿はフォロワーにより拡散され、多くの人にその内容が共有されます。また、これらの宣伝の拡散によりUGC(User Generated Content、一般ユーザーによって生成されたコンテンツ)の発生も期待できます。たとえばインフルエンサーが新商品のPR動画を発信し、フォロワーが追随して「話題の新製品を私も使ってみました! 」と次々に感想を投稿するような事例です。インフルエンサーによる宣伝の拡散と、それに影響されたUGC生成によるブランド認知の相乗効果が見込めるのです。
ネット販売の売上向上と分析
インフルエンサーが紹介した商品やサービスの投稿欄に購入のリンクがあると、フォロワーは投稿を閲覧後そのままそのリンクから購入ができます。これはユーザーにとっては大変便利です。また、どの投稿からの購入かというデジタルデータの収集が可能なため、どのようなマーケティング施策で効果があったのかという分析が容易になります。これは従来のマーケティング手法では「何を見て商品を知りましたか」といったアンケートを取らなければわからない内容であり、デジタルマーケティングの強みともいえます。
インフルエンサーマーケティングを実施するデメリット
これまでみてきたようにインフルエンサーマーケティングには多くのメリットがありますが、デメリットやリスクもあり、それらはかなり大きなものです。インフルエンサーマーケティング特有のデメリットについて解説します。
インフルエンサーの選定が難しい
インフルエンサーマーケティングではインフルエンサーの正直な投稿がフォロワーに好まれるので、PRを依頼する場合はインフルエンサーに裁量を持たせることになります。投稿の内容は完全には指定できません。したがってインフルエンサーマーケティングにおけるインフルエンサーの選定は、単純にフォロワー数が多いというだけでは決められません。現代の消費者は趣味や好みが多様化していることもあり、インフルエンサー自身の質や傾向、フォロワーの属性を見極めることも重要項目になってきます。フォロワーが多いインフルエンサーでも質が良くないとPRの効果が見込めないこともあるばかりか、悪い意味で話題になってしまい逆効果になる可能性すらあります。
炎上のリスクにつながる
悪い意味で話題になる、いわゆる炎上の可能性はSNSを使うにあたって完全には避けられません。できるだけ回避するには、インフルエンサー自身の倫理観やリテラシーの高さといった本人の資質に頼るしかないのが現状です。また、消費者は宣伝と知らされない宣伝、つまりステルスマーケティング(ステマ)を非常に嫌います。SNSの投稿はリアルタイムで拡散されるため、インフルエンサーの宣伝方法に問題があった場合、ただちに炎上するリスクが常につきまといます。SNSでの強い拡散力と引き換えの炎上リスクが、インフルエンサーマーケティングにおけるデメリットといえるでしょう。
コントロールできない場合がある
インフルエンサーマーケティングでは多数のメリットと引き換えに、常に炎上のリスクがつきまとうことは前項で解説しました。そして炎上したとしても簡単にコントロールできないことが多いでしょう。炎上したとき、インフルエンサー自身が事態の収拾をつけてくれるとは限らず、何かしらのアクションをインフルエンサーが起こしたとしても効果が出るか逆効果となるかは場合によります。これは他のマーケティング手法と比較しても大きなデメリットです。
インフルエンサーマーケティングのやり方
ここまでインフルエンサーマーケティングのメリットとデメリットについて解説してきました。それではインフルエンサーマーケティングを実際におこなうにはどういったやり方があるのでしょうか。インフルエンサーマーケティングの効果的な実施方法をご紹介します。
適切な目的の設定
まず、意識したいのは適切な目的設定です。なぜなら、目的によって起用すべきインフルエンサーが変わるためです。ブランドイメージ向上のためのアンバサダー起用は、イメージのいいインフルエンサーに依頼するのが適切といえます。キャンペーンの認知拡大には拡散力の強いインフルエンサーの協力を依頼すると効果が大きいでしょう。見込み客増加には質のいいナノインフルエンサーにレビューをお願いするのも効果のある施策といえます。これらの使い分けも必要となる場面もあるでしょう。施策を実施することで消費者の行動をどのように変えたいのか、という大きな目的の策定がインフルエンサーマーケティング成功の鍵です。
効果測定と指標
インフルエンサーマーケティングを含むデジタルマーケティングにおいては、何を見て購買に至ったかという消費者行動のデータを容易に取得できるという点が強みです。このデータを活用するためには、適切なKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)を設定するよう心がけましょう。インフルエンサーを起用する目的や使用するSNSによって設定すべきKPIは大幅に変わりますが、よく使われるKPIはいくつかあります。インプレッション数、エンゲージメント率、クリック率、CVR(成果率)などです。適切なKPIを設定したうえで効果測定・分析し、その結果を次のマーケティング施策に活かすことが肝要です。
7P分析の活用
サービスマーケティングのフレームワーク(理解するための枠組み)である「7P」という考え方を活用した7P分析という手法があります。自社商品・サービスの「4P」である「Product(商品)」、「Price(価格)」、「Place(流通)」、「Promotion(販売促進)」にサービス業の「3P」である「People(人)」、「Process(プロセス)」、「Physical Evidence(物的証拠)」を加えた7つの要素を分析するのが7P分析です。これを活用して効果的なインフルエンサーマーケティング施策に役立てることができます。
マーケティング用語解説 【4P分析とは?】の記事では7P分析の考え方の元となった4P分析の基本の考え方ややり方、実際の分析事例まで詳細に解説しています。あわせてご覧ください。
インフルエンサーと密に連携する
インフルエンサー自身に商品やサービスのファンになってもらうことも重要です。インフルエンサーマーケティングではインフルエンサーに正直な感想を発信してもらうことが重要ですが、それはインフルエンサーと企業との関係性が如実にレビューなどに現れるということでもあります。つまりインフルエンサーとの関係性はそのままマーケティング施策の質に現れるのです。インフルエンサーに実際の商品やサービスを使ってもらったうえでレビュー投稿してもらうことや、一緒に消費者が満足してくれるようなキャンペーンを考えていくことは有効だといえます。
インフルエンサーの選定方法
それでは、実際にどのようにインフルエンサーを選び、依頼を進めればいいのでしょうか。インフルエンサーに直接依頼する方法、ツールなどを使って探し依頼する方法、専門の企業にキャスティングを依頼する方法などがあります。
直接インフルエンサーに依頼する
インフルエンサーに直接コンタクトを取って依頼する方法です。DMを送る、プロフィール欄に記載されている連絡先に連絡するといった方法があるでしょう。依頼側とインフルエンサーの間に仲介を挟まないため費用を抑えることができ、スピード感をもって施策を展開できるメリットがあります。その一方で、インフルエンサーの質の見極めや施策立案、炎上対策、効果分析や期日管理といった仕事を自社で引き受けなければいけないデメリットがあります。また、必ず依頼を引き受けてもらえるわけではないことにも注意が必要です。
ツールやプラットフォームを使う
インフルエンサーと企業を結ぶマッチング型ツールやプラットフォームを使う方法です。プラットフォームに登録しているインフルエンサーに連絡を取ったり、ツールを使ってインフルエンサーを公募したりする依頼方法です。地道にインフルエンサーを探し出して連絡を取るより手間は減りますが、そのほかのメリットやデメリットについては直接依頼する方法と大差はないでしょう。これらのツールやプラットフォームを利用した場合は利用料がかかります。また、直接依頼やプラットフォームを使う方法は、依頼側にかかる労力が大きいため、インフルエンサーマーケティングのノウハウをきちんと持っていることを前提とする依頼方法です。
キャスティングを企業に依頼する
一般的に演劇やドラマなどの配役を決めることをキャスティングといいますが、インフルエンサーの選定もキャスティングと呼ばれ、手掛ける企業が増加しています。専属インフルエンサーを抱える事務所形態の企業と、キャスティングを代理でおこなってくれる企業に大別されます。どちらもインフルエンサー選定から施策提案・展開、炎上対策や分析といった手のかかる作業をキャスティング企業に一任できることがメリットです。企業専属のインフルエンサーを起用できたり、ニーズにマッチしたインフルエンサーを提案してもらえたりできるメリットもあります。しかし、依頼側とインフルエンサーの間に企業が入るため、スピード感が損なわれたり費用が膨れ上がったりすることがあるのがデメリットといえます。
キャスティング企業の種類
キャスティング企業はそれぞれの分野ごとに得意なジャンルが違います。インフルエンサーを総合的に抱える企業や、特定のジャンルに強いインフルエンサーをもつジャンル特化型、比較的フォロワー数の少ないインフルエンサーに特化したナノインフルエンサー特化型まで多岐にわたります。目的によって依頼する企業を選定するのが望ましいです。そのためにも前述の通り、インフルエンサーマーケティングをするためにはまず目的設定が大事です。
インフルエンサーマーケティングの成功事例
これまでインフルエンサーマーケティングの実施方法についてみてきましたが、実際のところどのような事例があるのでしょうか。SNSにおけるインフルエンサーマーケティングの成功事例は多岐にわたります。SNSが発達したため、ほとんどのジャンルの商品・サービスでインフルエンサーマーケティングは可能です。成功事例を紹介します。
1.美容系インフルエンサーとコスメブランド
美容系インフルエンサーとコスメブランドは、インフルエンサーマーケティングを実施するにあたり大変相性がいい組み合わせです。昨今、メイク初心者から上級者まで多くの人が、YouTubeやInstagramに投稿されたメイク方法や口コミを参考にしているからです。コスメヲタちゃんねるのサラさん、化粧品研究者のすみしょうさんなどといった、人気インフルエンサーによる企業のPR案件の成功事例があります。
2.ファッション系インフルエンサーとアパレルブランド
ファッション系インフルエンサーとアパレルブランドも相性がいいと言えます。Instagramのような写真を共有するSNSで投稿されたインフルエンサーの着こなしは、フォロワーに視覚で直接訴えることができます。また、流行に敏感なインフルエンサーが多いので、最新アイテムを使ったコーディネートの参考にする人も多いでしょう。ayakanekoさんとファッション雑誌とのコラボ企画や、げんじさんによるファッションブランドPRの成功事例などがあります。
3.旅行系インフルエンサーと旅行タイアップ
近年では旅行先や飲食店の目星をつけるのにInstagramを使う事例が増えているようです。そこで人気の旅行系インフルエンサーを起用した旅行タイアップが実施され、成功しています。世界の絶景を投稿するインフルエンサー詩穂さんと旅行専門誌のタイアップの成功事例があります。
Webマーケターとは?仕事内容/スキル・資格/未経験から目指すには? の記事ではWebマーケターについて基本的な解説から実際の仕事内容、目指し方を紹介しています。このお仕事に興味のある方は参考にしてください。
まとめ
SNSで重要な影響力をもつ「インフルエンサー」を起用した新しい手法がインフルエンサーマーケティングです。好みが多様化した現代に適切に情報を届けられる、イメージ向上といったメリットが多いのが特徴です。しかし、炎上の可能性といったデメリットも大きいため、適切な目標設定とインフルエンサーの選定を心がけてマーケティング施策を運用することが成功の鍵となります。インフルエンサーの選定には自力で探し出す方法と専門企業に依頼する方法に大別され、どちらも一長一短があります。実際にインフルエンサーとの協業によるPR施策の成功例が多数あり、インフルエンサーマーケティングは今後も多用されるでしょう。
最後のチェックポイント
- インフルエンサーマーケティングはSNSを使った新しいマーケティング手法である
- 趣味や好みが多様化した現代にマッチした新しい手法として注目されている
- インフルエンサーマーケティングはメリットが多いがデメリットも大きい
- フォロワーが膨大なインフルエンサーは影響力が大きい
- 比較的フォロワーが少なめのインフルエンサーはフォロワーとの距離が近い
- 目的にあったインフルエンサーを選び適切な運用をすることが成功の鍵である