企業を知るにはまず業界研究から始めよ!【やり方や選び方】
はじめに
就職活動において欠かせないプロセスとして業界研究があります。業界研究をすると様々な分野の企業についてその一端を知ることができます。業界研究は「ぜひ働きたい」と思える企業を探すためだけでなく、経済情勢や動向の流れをイメージとしてつかむためにも有益です。
業界研究をするにはまずなにから始めればいいのでしょう。この記事では業界研究のやり方、業界の選び方について解説しています。使いやすいツールについても具体的に紹介していますので、就職活動の参考にしてください。
業界研究とは
就職活動における業界研究は、まず広く業界ごとの特徴や傾向を把握し、そこから少しずつ興味のある業種を絞り込んでいきます。自分の目指す将来像に合う企業を見つけることが目的ですから、業界研究は自己分析とも重なります。
すでに何かの理由で憧れている業界や特定の企業がある場合でも、他の業界の特徴を知ることは無駄になりません。自分の就職活動の一環として業界研究をしてみるといいでしょう。強く興味を感じられるものだけでなく、避けたいと思うものにも自分を知るヒントがあります。業界研究は自分の特性を理解するためにも役立ちます。
業界研究イコール企業研究?
就職活動では「業界研究」と並んで「企業研究」も必要です。この2つには、業界研究は全体を見渡すように、浅くてもよいのでまずは広く眺め、企業研究では、特定の企業に焦点をしぼり深く調べていくという違いがあります。日本全体の地図からズームしていき、1つの建物を見つけるようなイメージで捉えるとわかりやすいでしょう。
なぜ必要?業界研究の目的とは
日本には実に264万社以上の法人があり、東証プライム上場企業だけでも2022年3月末現在2,176社あります。
そのなかで会社名を聞いたことがある、もしくは何かで見たことがあって知っているという企業はいくつあるでしょう。私たちの周囲にある物やサービスは、それを提供してくれている企業や組織によって成り立っていますが、企業名をはっきり答えられる人は少ないでしょう。
就職活動のスタート時点でも何となくイメージできる業界もあるでしょうが、それはその業界のある一面でしかないことが多いものです。業界研究を通してできるだけ多面的に業界調べを行い、最終面接に至るまでに情報を集める必要があるのです。
どの業界が向いているかを知る
業界研究のスタートは、どんな業界があるのかを調べることから始まります。「メーカーに行きたい」など、「向いている」と思っている業界や職種も、今見えている範囲内でのベストかもしれません。業界研究でこれまで興味のなかった業界にも範囲を広げると、今の時点でのベストよりさらに自分に向いている仕事が見えてくることが多いものです。
自分がやりたい職種が見つかり、職種を最優先に応募先を探したいと考える場合においても業界研究は必要です。「営業職」を例にとると、同じ営業という職種でもその業務内容や求められている人物像などには業界ごとに違った傾向が見られるからです。業界研究で自分に向いている職種も探せます。
志望動機や自己PRで強みをつくる
採用面接の場で「なぜ弊社を志望されるのですか」という質問に明確な動機を自分の言葉として語ることができれば、それは高いモチベーションを感じさせる「強み」となります。
応募する会社について「ぜひ御社の一員として」と志望するなら、その企業の情報だけでなく業界の中での位置づけ、業界全体の情勢と今後予想される展開などについての見方など、できるだけ多くの情報を調べたうえで面接にのぞみましょう。仕事に対する姿勢や意欲の高さに期待できる人材として、自己PRにも業界研究の成果が活かせます。
業界の視野が広がる
業界研究をすることで、様々な分野の事業を知ることができ視野が広がります。業界研究で身近にあるものがどのようにして生産されているのかを知ることで、暮らしを支えている企業の存在に気づくこともあるでしょう。
私たちは全く知らないものに憧れを抱くことは少ないでしょう。「ここで働きたい」と思える企業に出会うためには、まずその存在を知ることが重要です。業界研究で知った業界の中でさらに興味を感じる業種について詳しく見ていくと、スムーズに企業選びへとステップがつながります。
内定後や入社後のミスマッチ防止
入社後に実際の業務内容が企業選びの際に思い描いていたイメージと違うと感じて悩むことがあります。そのイメージとの差があまりに大き過ぎると、仕事へのモチベーションが保てず、離職にもつながりやすいのです。なかには内定後すぐに自分の希望との違いを感じ、内定辞退してしまったというケースもあります。
就職という自分の将来を左右する決定を、漠然としたイメージで進めることは後々、後悔を生むこともあります。採用する側・採用される側のどちらにとっても、最も避けたいのはこうしたミスマッチです。できるだけ実際の仕事内容の情報に触れ、イメージと内定・入社後のギャップをなくすためにもしっかりと業界研究・企業研究をして企業選びをしましょう。
業界研究のやり方と企業選び
業界研究の目的と重要性がわかったところで、なにから始めればいいのでしょう。やり方としては、まずは企業を大きなくくりで分けた「業界」について調べ、次に興味のある業種について検討していくという流れで把握していくのがよいでしょう。
「業界」と「業種」については、例として「製造業」という大きな業界区分の中に「食料品」「精密機器」という「業種」ごとの区分があると捉えます。「営業職」や「技術職」という「職種」から自分にあった仕事を探したい場合でも、業界研究を経て企業選びに入るといいでしょう。続いて具体的なやり方手順のステップや企業選びの方法について解説します。
やり方手順の5ステップ
業界研究で何をすればいいのか、その具体的なやり方について5つのステップに分けて手順を紹介します。それぞれのステップにかける時間はその業界への興味ごとに違ってきますが、最終的に「ここで働きたい」と興味を持った業界や、応募を決めた企業の分析に重点を置くとよいでしょう。
企業研究についてはこちらの企業研究のやり方(就職・転職活動での具体的な方法、どこまで?意味ない?の疑問に答えます)についての記事でも紹介していますので、以下のやり方手順と併せて参考にしてみてください。
1.業界を分析し、企業を絞る
まずは視野を広く持ち、このあと紹介する企業一覧も参考に、どんな業種があるのか確認から始めます。今まであまり興味がなかった分野も含めて、どんな事業内容の企業があるのか網羅的に見ておきましょう。
そこから興味のある業界を選んで分析していくのですが、自分がどんなところに興味を感じたのかも含めて分析するようにします。自分がある業種で魅力を感じた要素がわかると、同じ要素がある他の業種も候補となり得るため、企業における選択肢の幅が広がります。業界研究は自己分析のひとつであるというのは、このように研究と選択を通して、自分が求めているものをはっきりさせていく過程が含まれているからなのです。
2.2W1Hに基づき、ビジネスモデルへの理解
興味を感じる企業が見つかったら、ビジネスモデルを調べてみましょう。例をあげると「ある会社が海外から商品を仕入れ、それを加工して日本国内で販売し利益を得ている」という思考を簡単に図式化することで理解を深め、より詳細な流れを把握できるように調べていきます。
Why(なぜ) + What(何を) + How(どのように) という3つの観点から考える「2W1H」の思考法を取り入れ「なぜこの仕事をしたいのか」「この会社で何をしたいのか」「どのような働き方をしたいのか」を意識しながら企業のビジネスモデルを見ていくと、自分の希望との一致点・相違点が分かりやすくなります。
3.業界の動向、流れの把握
どの会社も景気の動向、消費者のニーズ、新たな環境基準など、あらゆる変化に対応して事業を行っています。そうした各企業の動向は、業界全体の流れとして見ると理解しやすく、今後の見通しもしやすくなります。
日本国内の企業も、国際情勢に対応したかじ取りをしています。情勢の変化で拠点の移転が続く時期や、新たな規制に対応するために業界全体が大きくシフトする時期などもあり、将来性を見定めるためにも業界研究が必須です。
4.それぞれの業界との比較
同じ職種でも業界ごとに比べることで特徴が鮮明になり、自分にとって働きやすい会社の条件が探しやすくなります。また同じ業界の中でも業種によって特徴があり、求められている人物像にも差がわかることもあるでしょう。
業界研究で、最初は視野を広く網羅的に見ていくことで会社選びをすすめ、他の業界との比較、同業界内での比較という2つの軸で、希望する会社を評価できます。
5.志望企業に受かるための選考対策
どの企業においても、求めているのは「入社後に貢献してくれる人材」です。新卒者に限らず、転職者にとっても採用は率先力も含むポテンシャルを見込んでの選考ですから「将来的に会社にとって良い影響を与えてくれる人材だ」と認めてもらえるような自己PRをする必要があります。
自己PRで大切なことは、企業と自分の目指すものとが一致しているという点を伝えきることです。自己分析で見えてきた自分とのマッチングが業界研究・企業研究のゴールであり、選考対策です。
企業選びのポイント
業界研究の中で興味のある企業が見つかったら、次にかならず確認しておくべき企業選びのポイントについて紹介します。入社後の『職場環境』は大変重要となる要素です。業界や職種を問わずできるだけ情報を集め、複数の企業を比較し、慎重に検討しましょう。
1.業界の特徴/企業規模
業界研究を通じて業界ごとの特徴を把握するなかで、企業規模にも着目してみましょう。いくつかの大企業とその関連企業でシェアを占めている業界もあれば、比較的小規模の企業が多い業界もあります。
通常期と繁忙期との業務量の差にも業界ごとの傾向があります。売上高、従業員数など公表されている情報は漏れなく確認し、興味のある企業の社員の男女比、年齢構成なども調べ、比較的転勤の多い業界や海外勤務の可能性も高い業界など、勤務地にも着目し検討しましょう。
2.社風/福利厚生
企業にはそれぞれ社風があります。「会社のカラー・カルチャー」と言い表されることもあり、同業種の企業でも違う社風を感じ、どちらかの企業によって魅力の差を感じることもあるでしょう。入社後に実感するものではありますが、OB・OG訪問の機会なども積極的に利用し、自分にとって働きやすいと感じられる社風の企業を見つけるようにします。
職場環境という点では、企業の福利厚生についても研究しましょう。住宅補助に代表される各種手当や企業独自の休暇制度、スキルアップにつながる研修への参加制度などについて確認します。給与以外にも充実した福利厚生を実施している企業の定着率は高いことが多く、職場環境を知る目安になります。
3.待遇/働き方
給与をはじめとする待遇は絶対に外せない条件です。給与体系は企業ごとに違い、初任給は高くないものの昇給が望める企業や、反対に初任給は高いが勤続年数ごとの昇給率は低い企業などさまざまです。また賞与(ボーナス)の実績も確認しておきましょう。ボーナスに法的な決まりはなく、企業それぞれの基準で支給されているため、ボーナスの制度がない企業もあります。
給与以上に働き方について考える人も多いでしょう。各地に拠点がある企業では、どのくらい転勤があるのか、社内での育休取得率はどのくらいなのかなど、職場の環境を知る要素ともなりますので、自分にとっての優先順位を明確にして確認することがポイントです。
ブラック企業の見分け方は、ブラック企業の特徴|入社しないために見分ける方法【失敗しない会社選び】についての記事で詳しく解説しています。絶対に避けたいブラック企業の特徴を知ることも企業選びの参考となるでしょう。
企業一覧を確認しよう
ここで企業一覧を確認しましょう。
「日本標準産業分類」では企業を産業別に20の大分類で分類し、この大分類の下に99の中分類、さらに小分類530……というように細分化されています。
以下では就職活動のスタートで広く分野別の企業の概略がつかめるように、この分類によらず、業界別にカテゴリー分けをして紹介しています。日本標準産業分類の詳細はこちらです。
まずは全体を眺めて、興味を感じる分野から業界研究を始めましょう。
1.メーカー
メーカーとは原材料から何らかの製品を生産している製造業の総称で、日本の主要産業の1つです。鉄鋼のように原料から生産にあたる企業や、各メーカーから調達した部品を使い製品化する企業など生産工程はさまざまで、医薬品の開発・製造から飲料、衣料品、人工衛星まで生産品の種類は多岐にわたります。たとえば半導体の製造には基材となるシリコンを製造する素材メーカーなど多くの企業の製品が不可欠で、メーカー間の取引も多いのが特徴です。
2.商社
商社は、商品を仕入れ、客先企業に販売することで企業間の取引の仲介をする企業です。特定の商品を取り扱う「専門商社」とそれ以外の「総合商社」とに分類され、小売業で販売している商品や、メーカーが製造に使う特定の原材料は、その調達の多くを商社に依頼しています。海外から調達するものも多く、為替の変動や国際情勢の変化にも対応が必要です。
3.小売業
消費者に直接商品を販売する小売業は、スーパー、百貨店をはじめ、食品、書籍、衣服、化粧品、眼鏡など身近に接する機会の多い業種です。最近ではコンビニエンスストアで一部、販売されている医薬品や、ドラッグストアで生鮮品を販売するなど、販売品目の区分けも変わりつつあり、実店舗だけでなくインターネットを利用した無店舗の小売りも増加しています。
4.金融
銀行をはじめ証券会社、保険会社なども金融機関にあたります。銀行は基本的に預金者から集めた資金を貸し出すことで利息を得ます。また、証券会社は証券売買の仲介手数料で利益を得るといった仕組みになっています。保険会社は生命保険と損害保険に分類され、『相互扶助』の精神によって運営されています。金融のグローバル化が進みつつあり、金融業界の中でもそれぞれの業種についての詳細な業界研究が必須です。
5.サービス
飲食・ホテル・観光・教育・人材・運輸・介護福祉サービスなど、あらゆる「かたちのない」サービスを提供している企業がサービス業です。対面でのコミュニケーションが基本のビジネスモデルですが、スムーズな運営のためのシステム作りなど幅広い職種が求められています。
6.マスコミ・広告
放送局・新聞社・広告代理店などの業界です。ニュースや広告もかつては主流だった新聞・書籍といった紙媒体での発信からインターネット媒体を主体としたものにシフトしつつありますが、『情報の伝達』という本質は変わっていません。Web広告でのマーケティング業務なども成長が見込まれています。
7.IT関連ソフトウェア・通信
ソフトウェアや通信に関する業務を主とし、企業の情報処理システムを構築するなどのサービスを提供している企業のことです。IT系の企業は専門的な知識を必要とする業種ですが、基本的な知識があれば企業によっては、入社後の研修を経て採用しているところもあります。
8.官公庁・公社・団体
国と各県・市などの地方公共団体に属する機関では営利を目的とした民間企業では行うことのできない公的な業務を主に行っています。これには国会や裁判所、日本銀行をはじめ、各地方の自治体、住宅供給公社、道路公社などが含まれます。こうした機関で働く人の身分は一般的に公務員または団体職員です。
業界研究に必要なツール
業界研究の目的とメリット、着目すべきポイントが分かったところで、効率的なやり方と利用できるツールについて紹介します。自分にとってのベストを探すために、できるだけ多くの選択肢から選べるとよいのですが、ともすると情報の海の中から目指す企業を見つけるような感覚におそわれるかもしれません。役立つツールを上手に活用しましょう。
業界研究シート/ノートの活用
業界研究ノートを作成し、情報を整理しましょう。いくつか興味のある業界ごとに研究ノートを用意すると、業界内での検討がしやすくなります。就職活動用に、項目を記入することで業界研究シートができるフォーマット作成サイトや無料で使えるテンプレートもありますので、使いやすいものを選んで記入してみるところから始めましょう。志望する企業が絞りこまれてきたら、項目を増やしてより詳細に情報を集めます。充実させたノートは、志望動機書類の作成に使えるなどの利点があります。
業界研究EXPO説明会/就活セミナーの受講
就職活動においては慣れない場所に行き、初対面の人とも顔を合わせる機会も増えていきますが、そうしたことに苦手意識を感じることもあるでしょう。就職活動の流れを肌で感じるという意味合いでは、就活に関するイベントには積極的に足を運びたいものです。
企業の合同説明会であるマイナビ転職主催の業界研究EXPOなどでは、会場に各企業のブースで直接企業の担当者から説明を受ける機会も設けられています。就活セミナーでは業界の動向や成長分野についての講演などもあります。最近ではオンラインで参加できるイベントもあるので、直接会場に行けない場合でも機会を活かしましょう。
就職/転職情報サイトで研究
就職活動のための情報サイトは必ず目を通すようにしましょう。就職・転職に関する情報が集約されており、業界の分類なども一覧として紹介されていますので、効率的に学べます。コンテンツ内で気になった情報はメモしておき、さらに調べることで知識がより補完されていきます。
経験者を対象とした同業種内での転職サイトなどからもわかることがあるので、特に志望している業界に関しては参考になるでしょう。
業界本などの書籍
インターネットでの情報収集と併せて、書籍も重要な情報源です。企業に関する書籍で特に有名なものとして『会社四季報』と『業界地図』が主な例です。業界本には専門的な内容もありますが、就職後にもつながる知識が得られます。
年に4回発行されている『四季報』は国内の全ての上場企業のプロフィールを見ることのできる書籍です。各企業の特色が紹介されているほか財務指標、株主比率、さらに「3年後離職率」まで多くの項目があり、2期先の業績予想まで掲載されています。
『業界地図』は業界ごとに企業の規模や売上高、業界内での各製品の順位などがより詳細に記された書籍です。グラフなどで図式化され、各企業の特徴と業界の流れを視覚的に知ることができるのが特徴です。
新聞/ニュースの活用
年々、社会の変化に応じて業界の情勢や動向も移り変わります。視野を広げるためにも日頃から新聞やテレビなど媒体を問わずニュースに目を通し、自分なりの感想や意見をメモ程度でいいので書き出すことを続けてみましょう。知っていることでも自分の言葉で話すことはなかなか難しいものですが、続けていると、面接で尋ねられたときにも落ち着いてしっかりと答えられるようになるなどのメリットがあります。
まとめ
業界研究は業界を研究しながら、自分自身を掘り下げて分析する過程です。こうした就職活動での試行錯誤はそのまま就職後の仕事に活きてくるでしょう。業界研究での優先順位を再確認し、共通する要素を探し、必要な情報を集めるということは実際の業務の中でも行われます。就活支援に関連するツールも積極的に活用して就職活動を成功させましょう。
最後のチェックポイント
- 業界研究は就職や転職活動に必須
- 業界研究は自己分析の1つでもある
- 業界研究は面接対策や選考対策にもなる
- 就活イベントやツールは積極的に活用しよう
- 就職サイトや書籍でも情報を集めよう