ゲーミフィケーションの5つの要素と実施する際の注意点などの解説
はじめに
この記事では仕事や学習に応用できるゲーミフィケーションについて学んでいきましょう。導入の実例や、活用の際の注意点についても紹介します。ゲーミフィケーションを導入するということを、具体的にイメージするための助けとなれば幸いです。
ゲーミフィケーションとは
そもそもゲーミフィケーション(gamification)とは、英語のゲーム化を意味するGamifyから派生した造語です。主にマーケティングの分野で利用される手法のひとつです。以下で詳細について説明します。
ゲーミフィケーションの目的
ゲーミフィケーションでは、コンピュータゲームのゲームデザイン要素やゲームの原則を、ゲーム以外の物事に対してもあてはめます。目的は、ゲームに対しての熱意を学校教育や企業の研修・仕事にも向けてもらい、目標達成へのモチベーションを高めてもらうことです。更にこれらの効果が若い世代だけではなく年上の世代に対しても期待できる、という調査結果がATD(Association for Talent Development)Talent LMSのThe 2018 Gamification At Work Survey(2018年 仕事におけるゲーミフィケーション)で確認されています。
全世代に対して有効なことが確認できたこともあり、近年ますますゲーミフィケーションの導入が促進されています。
なぜ今注目されているのか
ゲーミフィケーションの広がりについて、大きな要因の一つと考えられるのは、スマートフォンの急速な普及です。
総務省の令和2年通信利用動向調査によると、スマートフォン保有世帯は2020年で86.8%となっています。2011年には大体30%でしたので、10年で約3倍に増加したことになります。
こうしたスマートフォンの普及が多くの便利なアプリケーション(教育・ビジネスの分野など)の開発につながり、そこで有効なゲーミフィケーションも注目されるにいたっているのです。
参考:総務省|令和2年通信利用動向調査の結果
ゲーマーの特徴4つ バートルテスト
ゲーミフィケーションを効果的に実施するために、バートルテストを理解しておくのがオススメです。バートルテストとは人がゲームに熱中するときの心理をタイプ別に分類したものになります。
イギリスのゲーム研究者であるリチャード・バートルが発案したもので、単独行動・集団行動のどちらを好むかと何に喜びを感じるかによってユーザーの種類を大きく4つに分けます
ここでは4つそれぞれの特徴について解説していきます。
1.Achiever アチーバー
1つ目はアチーバー(Achiever:英語でAchieve(達成)+er)で、単独行動を好み目標を達成することに楽しみを感じるタイプです。レベル上げに熱中したり、ゲームクリアやクエスト制覇などの課題に挑戦したりなど、クリアすることを最大の喜びとします。
このタイプには、次のステップを示し達成することでモチベーションをアップさせるゲーミフィケーションが有効でしょう。
2.Explorer エクスプローラー
2つ目はエクスプローラー(Explorer:英語でExplore(探索)+er)です。集団行動を好み新しい世界・知識の発見や獲得に喜びを感じるタイプで、新たな要素を発見することで満足感を得ます。周りに対して好奇心が強く、関わり合いを持ちながらゲームを進めたいと思っているのが特徴です。
新しいことへの挑戦を取り入れたゲーミフィケーションが効果的でしょう。
3.Socializer ソーシャライザー
3つ目がソーシャライザー(Socializer:英語でSocial(社会)+er)で、集団行動を好み他の人と協力することで喜びを得るタイプです。
このタイプは、ゲームをあくまで友達と遊ぶツールとみなします。友人やゲーム中で出会ったプレイヤーと協力して遊ぶことに楽しさを見出します。
プロジェクト内での交流や人間関係を良好にすることに有効な特徴と言えるでしょう。
4.Killer キラー
4つ目がキラー(Killer:英語でKill(殺す)+er)で、単独行動を好み競争要素に喜びを得るタイプです。訳すと暗殺者となり物騒ですが、単に競争を好み自分が優れていると感じることに喜びを感じます。典型例としては対戦格闘ゲームを好むプレイヤーでしょう。内外に対してアピールできる様なゲーミフィケーションが効果的です。
ゲームの設計 5つの要素
ゲーミフィケーションを実施するために重要な要素が5つあります。導入する前には、それぞれについてしっかりと検討して、効果を高めるよう設計していく必要があります。どのような要素が重要視されているのでしょうか。確認していきましょう。
1.目的
1つ目の要素は目的です。ゲーミフィケーションを導入することでユーザーにどのような行動を起こしてほしいのか?という点を明確にしておく必要があります。
たとえば自社の商品を購入するようになってほしい、SNSのフォロワーになってほしい、SNSで特定の商品について投稿してほしい、あるいは進んで勉強するようになってほしい、などです。
ゲーミフィケーションによってどのような行動を促すのかをしっかりと決めることは最重要です。
2.クエスト
2つ目の要素はクエストです。目的を明確にすることが出来たら、次はユーザーに目的の行動を起こさせるための方法を考えてください。これをゲーム的にいうならクエストになるでしょう。
最初はユーザーがクリアしやすい簡単なクエストを設定します。段階的にクリアが難しい課題を設定して、対象者のモチベーションを高い状態で維持し、続けて意欲的にクエストへ取り組んでもらうことが期待できます。小さなクエストからコツコツと、といった感じでいけばいいでしょう。
3.報酬(リワード)
3つ目の要素は報酬(リワード)です。苦労して多くのクエストを用意できたとしても、長くゲーミフィケーションを続けてもらうためにはクリアに対する報酬を用意しておくことが必要です。魅力的な報酬を用意すると、クリアが難しいクエストでも高いモチベーションを持って取り組んでくれるでしょう。報酬は3つに分類されます。それぞれ順番に見ていきましょう。
1.マネタリーリワード
金銭的な価値を得られるリワードです。クーポンやポイントなどは、報酬として一番よく使われます。持続的な効果を期待するよりも短期的な行動の促進に向いています。
2.インナーリワード
スキルアップや達成感など自己実現に類するものが得られるリワードです。自分自身の心の中で強く意味をもつ報酬になります。例として〇〇を達成できた、できなかったことができるようになった、などです。
3.ソーシャルリワード
承認欲求が満たされるリワードのことです。基本的に他者から承認されることが報酬です。他者との交流、あるいは賞賛や社会的地位の付与なども含まれます。また、誰かに見られているという期待値が高ければ取り組む意欲も更にわきやすくなるでしょう。
4.可視化
4つ目の要素は可視化です。ゲーミフィケーションにはレベルやスコア、称号・バッジ制度などで、自分の状態を把握する機能が必要になります。
クエストに対する達成率や、目標とすべき対象に対しての自分の位置づけなどを可視化することで、ユーザーのモチベーション向上につなげることができるのです。また、ランキング形式によって競争意識を刺激することもできます。現在自分自身がどの位置にいるのかを判断するために、情報は随時更新されることが重要です。
5.交流
5つ目の要素は交流です。同じ目的をもつ仲間と交流できる環境があることで、モチベーションの向上が期待できます。例としては、イベントの開催・掲示板の運営・SNSとの連携などです。
仲間と進捗度合いを比較しあうことが出来ますし、自分自身の成長度合いを知ることや、達成に向けて競い合わせること、あるいはユーザー同士が協力してクエストを攻略してもらうこともできます。交流のできる環境の提供は、利用者やコミュニティの活性化につながるため、重要といえます。
事例紹介
ゲーマーの大きな4分類、ゲーミフィケーションに必要な5要素をみてきましたが、ここでは実際の成功事例として企業活動・学習活動、2つの現場について紹介します。それぞれどのような取り組みをしているのでしょうか。
企業活動現場での導入事例
ここではくら寿司のケースを紹介します。
くら寿司ではビッくらポンという形でゲーミフィケーションを取り入れています。店のテーブルにある機械に食べ終わった皿を5枚入れると、備え付けモニターでいろいろなゲームに挑戦できるというものです。当たりが出ると、すしレーンの上部にある穴からガチャガチャのカプセルが出て商品を獲得できます。
ゲーム的な仕組みの導入で、お客さんに楽しんでもらいながら、空き皿が積み上がって邪魔にならないようにしてもらうことが実現できています。
学習現場での導入事例
ここではリクルートマーケティングパートナーズのスタディサプリという勉強支援アプリについて紹介します。
勉強支援アプリとは、動画見放題で小中高・大学受験・資格取得などに必要な科目の授業を視聴でき、例題や問題も解くことができるゲーム的な要素を備えたアプリのことです。
スマホやタブレットなどのIoT機器を使って、いつでもどこでも勉強に取り組むことができるので、ゲーム感覚で楽しみながら学習を進めることが可能です。
注意点
ゲーミフィケーションを導入する上で注意してほしいのは導入して終わりではなく、ユーザーにフィードバックをしてもらい、改善・継続していかなければいけないということです。
効果の高いゲーミフィケーションになるよう意識して、PDCA(Plan・Do・Check・Act)のサイクルを回していきましょう。
まとめ
ここまでゲーミフィケーションについて解説してきました。ゲーマーが何に楽しみを感じるか?というのは重要なポイントです。設計の前に、対象者について詳細に知っておく必要があります。
仕組みを設計するときには、5つの要素を入れるように工夫することが必要となります。また、導入した後も継続してPDCAサイクルを回していくことが肝要です。
最後のチェックポイント
- ゲーミフィケーションとはゲーム的な仕組みを他の物事に適応すること
- 対象者を明確に理解するためバートルテストの4分類を知るべき
- ゲーミフィケーションの設計には5つの要素を入れる工夫が必要
- 報酬は3種類に分けられベストミックスを工夫する必要がある
- 継続してPDCAサイクルを回さなければ高い効果は維持できない