組み込みエンジニアとは(仕事内容、年収、将来性、資格、未経験からの転職方法など紹介)
はじめに
エンジニア系の職種はWebエンジニアやセキュリティエンジニアなど、名前から業務内容がすぐわかりやすいものもあれば、「組み込みエンジニア」のような名前からではわかりにくいものもあります。エンジニア系の職種を目指す未経験者の人にもわかりやすいように、組み込みエンジニアとはどのような仕事をするのか、働くためにはどのようなスキルや資格が必要か、年収や将来性についてもあわせて解説します。
組み込みエンジニアとは
組み込みエンジニアとはまさにその名の通り、パソコンやスマートフォン、家電や自動車など、多くの製品に組み込まれている「ソフトウエア」を開発する役割がメインの業務です。
仕事内容とは
私たちの生活のなかで身近に存在する多くの製品は、ソフトウエアがあることでいろいろな機能を制御し、滞りなく使用することが可能です。ソフトウエアがあることで製品をより便利に、より快適にするシステムを開発し、製品に組み込んでいくエンジニアが「組み込みエンジニア」です。
組み込みエンジニアの仕事内容を簡単に説明すると、以下の5つにわかれます。
- 電子機器に搭載するスペック(機能)の検討
- システム設計
- ハードウェアやソフトウェアの設計
- ハードウエアへの実装
- クロスデバッグ(実際に使用する環境とは別の環境でバグやエラーを取り除いて修正を行う作業)やプログラミング、テスト
組み込みエンジニアは大きく分けると3つの分野にわかれます。私たちの身の回りにある家電製品やスマートフォンなどのシステム開発を行う「小型機器型組み込み系」、家のなかや会社、街のなかなどの公共施設でのネットワーク通信のシステム開発を行う「通信型組み込み系」、工場や発電所のような工業地帯でのシステム開発などを行う「プラント型組み込み系」。それぞれに特徴はありますが、どれも仕事内容の工程は上記の5つと同じ流れとなります。
年収はどれくらい
企業に勤めている組み込みエンジニアの年収は、一般的に20代で400万円前後、30代で500万円前後。40代になると600万円台を上回る人も出てきます。エンジニア職としてみると高額というわけではありませんが、一般的な会社員の平均年収よりは高くなります。専門知識や高い技術力が必要となるエンジニアですので、実力次第で年収アップは期待できるでしょう。
将来性とキャリアパスについて
家庭用・業務用を問わず、デジタル機器の普及は目覚ましく、組み込みエンジニアの仕事は増加する傾向にあります。並み居るエンジニア職のなかでも、組み込みエンジニアは慢性的な人材不足が叫ばれ、人材の確保に国や業界・団体などが動き出しているようです。それだけ必要性の高い職種であることがわかるでしょう。
企業や、関わっているプロジェクトによって年収や仕事内容にも大きな差があります。取得しているプログラム言語によっても左右される部分も大きいので、年収アップ・キャリアアップを目指すのであれば、C言語(プログラムを機械が理解できる言葉に置き換える「コンパイル」という行為をおこなうプログラミング言語)は確実にマスターしておきたいところです。同じような働きをする「アセンブラ」もマスターしておけばステップアップの基盤となるでしょう。
組み込みエンジニアに必要な資格
組み込みエンジニアには、必要となる資格はとくにありません。しかし資格があることで就職・転職時に、スキルや必要なプログラミング言語に対する習熟度をアピールすることも可能になります。就職してから資格取得を目指しても遅くはありませんので、将来のことを考えて資格取得を目指しておくといいでしょう。
ETEC
ETEC(組込み技術者試験制度)は組み込みエンジニアとして働く上で、どれだけの技術や知識を有しているかを評価する検定試験です。
ETEC | |
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運営会社名 | 一般社団法人組込みシステム技術協会 |
受験料 | クラス2(エントリレベル)15,000円/クラス1(ミドルレベル)20,000円 |
受験資格 | クラス2 とくになし/クラス1 クラス2試験で500点以上を取得していること |
受験時期 | 随時実施 |
出題数 | クラス2 120問(90分)/クラス1 90問(120分) |
回答形式 | CBT(Computer Based Testing)/四肢択一 |
合格率 | 非公開 |
取得レベル | クラス2は大学や専門学校卒業レベル・もしくは同程度の知識や技術のレベル。クラス1はクラス2で500点以上を取得していることが受験資格となる上位資格のため、中級以上のスキルがあると有利になるでしょう。 |
LPIC(Linux技術者認定試験)
LPICはLinux(WindowsやMacのようなOSのひとつ)の技術をどの程度習得しているかを測るための民間の認定試験です。Linuxのスキルがどれほどあるかの認定基準を測るもので、国際的にも認められている試験です。世界200カ国以上のエンジニアが受験するほど認知度が高いことでも有名です。
LPIC(Linux技術者認定試験) | |
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運営会社名 | NPO法人Linux技術者認定機関「LPI(エルピーアイ)」日本支部 |
受験料 | 15,000円 |
受験資格 | とくになし(LPIC-2認定を受けるにはLPIC-1認定を取得が必須) |
受験時期 | 祝日を除く、月~土曜日に随時実施 |
出題数 | 約60問(90分) |
回答形式 | CBT方式(マウス選択問題、キーボード入力問題) |
合格率 | 65~75%程度 |
取得レベル | 試験のグレードはLPIC-1~3の三段階にわかれており、それぞれに取得レベルは異なります。基本となる初級者向けのグレード「LPIC-1」は、Linuxの基本操作やシステムの管理がおこなえるレベルが求められます。Linuxディストリビューションの基本知識も必要となるでしょう。ただし必ずしも「LPIC-1」から取得する必要はなく、Linuxのシステムデザインやネットワーク構築における企画・導入・維持。トラブルシューティングやキャパシティプランニングができるレベルの求められる「LPIC-2」からいきなり挑戦しても構いません。ご自身の知識やスキルのレベルに応じて挑戦するランクを決めるといいでしょう。 |
基本情報技術者試験
エンジニア職を志す人の登竜門とも言われている国家資格、「基本情報技術者試験」。サーバーやプログラミング・ハードウェアなど、エンジニアが関わることになるIT知識を幅広くもっていることが問われる資格試験です。組み込みエンジニアにも活かせる資格ですので、できるだけ早い段階で取得することをオススメします。
基本情報技術者試験 | |
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運営会社名 | IPA(独立行政法人 情報処理推進機構) |
受験料 | 5,700 円 |
受験資格 | とくになし |
受験時期 | 年2回(春と秋)に全国で一斉実施 |
出題数 | 午前80問・午後11問(うち5問に解答)、ともに150分間(合計300分) |
回答形式 | 午前 小問形式/午後 大問形式 |
合格率 | 非公開(およそ20%前後・目安は午前・午後ともに60点以上) |
取得レベル | 基本的な知識を有するレベルが必要となりますが、合格率からみても難易度は高め。しっかりと事前に対策と勉強をおこない挑戦してみてください。 |
未経験から組み込みエンジニアになるには
組み込みエンジニアとして働きたい場合、未経験からでも就職や転職することは可能です。とくに「テスト業務」は未経験でも任されることが多い業務のため、テスト業務でコツコツと実務経験を積んでステップアップすることも珍しくありません。
また独学やスクールなどで知識を蓄えていたり、先に紹介した資格取得をしていたりなど、アピールできることが多ければ多いほど採用される確率は高くなります。慢性的な人材不足もありますが、意欲があり努力できる人は重宝される存在となるでしょう。
組み込みエンジニアにはどんな人が向いている?
組み込みエンジニアに向いている人の特徴は次の3つです。
ものづくりが好きな人
プラモデルや雑誌の付録など小さい頃からモノを作ることが好きだった人や、目の前にあるものがどのように作られどのようにして動いているのかなどに興味が強い人には、組み込みエンジニアという職はとても向いているでしょう。モノを作ることに直接的に関わっていける組み込みエンジニアは、まさに「モノづくり」の職人と言っても過言ではないからです。
影でみんなを支える「縁の下の力持ち」的存在が好きな人
モノを作って機械を動かす。これぞまさに組み込みエンジニア業務の本髄です。機械や家電など、人にとって大切な役割を果たすモノが、きちんと動くようにするという大事な業務を担うポジションにいながらも、表立った業務は一切ありません。組み込みエンジニアとは、まさに縁の下の力持ちな存在です。組み込みエンジニアがいるからこそ、私たちの生活は便利で豊かになっています。誰かを支える力強い存在になることを望む・好きな人にはうってつけの職種です。
几帳面な人、集中力が高い人
組み込みエンジニアの仕事は集中力を要する作業が多く、根気よく集中が途切れないようにおこなう作業がたくさんあります。また細かな部分に気がつく几帳面な人材も重宝されるでしょう。綿密な仕様書を作成するときも、几帳面に丁寧に、ムダなく正確な作業をおこなえる力は、組み込みエンジニアとして何より大事なスキルとなってくるかもしれません。
未経験から組み込みエンジニアになるために必要なスキルと習得方法
組み込みエンジニアになるためには、以下の3つに対するスキルを学んでおくと業務をスムーズにこなせるでしょう。
- C言語系に関する知識
- アセンブラに関する知識
- JAVA言語に関する知識
C言語系に関する知識
プログラミング言語のなかではメジャーで古くから存在するC言語。組み込みエンジニアではC系のプログラミング言語として、「C言語」と「C++言語」の2つが必須となります。いくつかあるプログラミング言語の基礎とも言われている言語ですので、ぜひ早い段階でマスターしておきましょう。C言語はさまざまなプログラミングのなかで使われる多様性を持ち、処理速度の速さが魅力です。
環境に依存しない「移植性」が高く、さまざまなハードウェアの動作環境に合わせて記述することもできます。「C++言語」はC言語を拡張したものです。「オブジェクト指向」と呼ばれるプログラミング言語で、モノとモノを組み合わせてプログラムを動かすときに用いられます。互換性が高いこともあり、C言語・JAVAとセットで使用することも多くなります。
アセンブラに関する知識
アセンブラもプログラミング用語のひとつです。組み込みエンジニアだけではなく、エンジニア職全般でC言語・JAVAとともによく使用される言語ですので、押さえておきたいですね。アセンブラをわかりやすく説明すると、プログラムした言語を機械などのモノが理解できるように翻訳する役割を担います。
機械を動かす言語は、「0」や「1」の羅列で組まれたパターンとなり、このままでは他のプログラミング言語では読み取れません。そのような場合に別のプログラミング言語に翻訳してくれます。機械語から別の言語に変換することはよくある工程のため、アセンブラ言語はぜひ身に付けておきたい知識といえるのです。
JAVA言語に関する知識
JAVAもプログラミング言語のひとつで、C言語に続いて世界中に利用者の多いメジャーなプログラミング言語です。過去にはあまり開発系のエンジニアが使用することは少なかったようですが、昨今事情が変化しており、ハードウェアの進化に伴って組み込み系のエンジニアが開発の際に使用することも増えています。
Webとの相性がいいJAVAは、スマートフォンのアプリやパソコンのゲーム・アプリなどの開発に重宝されています。JAVAはOS(AndroidやiOS、Macやウィンドウズなど)に依存しないため、1つのモノを作ると異なるOSでも同じように動作させることが可能な言語です。モノを作る・動かす組み込みエンジニアにとって、この汎用性・移植性の高さは必要不可欠な存在と言えるでしょう。
必要なスキルの習得方法
プログラミング言語の多くは、書籍やオンラインのサービスを利用し、独学でスキルを身につけることが可能です。ご自宅にパソコンがあれば、テキストやオンラインで提供されている問題を説いたり、実際に動作・テストを繰り返したりしていくうちに一定ラインの知識やスキルを取得することは可能です。専門のスクールなどで学ぶことでも新たな発見とも出会えるでしょう。
必須となる3つのプログラミング言語はメジャーな言語のため学びやすく、学ぶためのサービスも充実しています。ですので働きながら、就職・転職活動をしながらでも並行して習得することも可能です。
組み込みエンジニアへの就職、転職方法
未経験でも、スクールや独学で組み込みエンジニアとしてのスキルや知識を有していれば、その努力をアピールして就職・転職に活かすことは可能です。とくに習得しておきたい「C系言語」「アセンブラ言語」「JAVA言語」の資格をもっているなども強みとなるでしょう。その知識を武器に転職エージェントや、スクールなどの就職・転職のサポートを最大限に活用してみてください。慢性的な人材不足なこともあり、やる気と意欲が認められれば、未経験でも採用される可能性は高い職種です。
組み込みエンジニアのフリーランス
組み込みエンジニアとしてフリーランスで働く場合、どれほどのスキルと知識、実績をもっているかが大きく影響します。最初のうちは安価でもいいので、どんどん仕事を受けていきましょう。フリーで活動している実績がついていけば、年収1,000万円超えも夢ではありません。ただ最低でも実務経験3~5年は欲しいところです。「Lancers」や「CrowdWorks」などのクラウドソーシングサイトを利用したり、エンジニアがフリーランスへの転向を支援するサイト「Midworks」などを利用したりして、地道に案件獲得を目指していきましょう。
まとめ
モノづくりで私たちの生活を便利に、豊かにしてくれる縁の下の力持ち、「組み込みエンジニア」。モノづくりのプロとして威力を発揮できる組み込みエンジニアは、未経験からでも努力次第で挑戦できる職種です。さらなる高みを目指してスクールに行くもよし、ネット上でエンジニアの交流・学習ができるサイトや、未経験者を多く受け入れている教育体制のしっかりした企業に就職しOJTで学ぶという手もあります。
チェックリスト
- 組み込みエンジニアはモノを作ることに直接的に関わる「モノづくり」の職人
- 組み込みエンジニアになるにはC言語・アセンブラ・JAVAの3つの言語を身に付けよう
- 未経験者はテスト業務をおこないながらスキルアップを目指す
- 必要な資格はないが、資格があることでもっているスキルを判断してもらいやすい
- 必要なスキルはメジャーなものが多いので学びやすい