ChatGPTのプロンプトとは?作成のコツやテンプレートも紹介
はじめに
- ChatGPTのプロンプトとはAIに処理を促す質問や命令文のこと
- プロンプトを工夫して的確な指示を出すのが重要
- テンプレートを利用してプロンプトを作成するのもおすすめ
- 文章の要約や翻訳などさまざまな活用ができる
- プロンプトエンジニアリングとはプロンプトを作成する技術のこと
- サイバー攻撃によるセキュリティ面のリスクがあることを考慮する
ChatGPTの「プロンプト」とは?
プロンプト(prompt)は「促すもの」を意味する英単語で、コンピュータやAIへ入力や処理を促す文字列です。ChatGPTにおけるプロンプトとは、「2020年の芥川賞受賞作品と著者を教えてください」というような質問や命令文がプロンプトにあたります。
ChatGPTについて詳しく知りたい方は、チャットGPTとは?始め方、使い方から実際に使ってみた様子まで紹介の記事をご覧ください。始め方も画像付きで解説しています。
ChatGPTで効果的なプロンプトを作成するコツ
ChatGPTは質問に対して無難で標準的な回答をする傾向があります。自分が求めている回答を引き出すには、プロンプトに工夫を凝らして的確な指示を出すのが重要です。ここからはChatGPTプロンプト作成のコツについて解説していきます。プロンプトのコツをつかんで、ChatGPTを上手に使いこなしましょう。
具体的な指示を出し、条件をしぼる
プロンプトに具体的な条件や指示を盛り込むと、求めている情報にたどり着ける可能性が高まります。数値などの条件をしぼって質問するのも、有効なプロンプト作成のコツです。例えば「おすすめの観光地を教えてください」という質問では範囲が広すぎて漠然としています。「東京駅から片道2時間以内で行けるおすすめの観光地を教えてください。」と具体的な指示を出して条件をしぼると、自分の求めている内容に近づくでしょう。
表現方法を指定する
表現方法を指定すると、それに合わせた文章が生成されます。どういったシーンを想定しているのか、誰に向けた文章を作成してほしいのか、詳細な情報を入力してみましょう。例えば、以下のような指定が可能です。
記入例
「台風の影響で電車が遅延していて到着が遅れることを、取引先へ伝えるメール文を作成してください。」
質問・命令を重ねる
回答が不十分であった場合、質問を重ねることで理想とする内容へ近付けるかもしれません。初めにした質問には含まれていなかった条件や前回の回答でのポイントをプロンプトに記載すると、継続的な会話となって回答のブラッシュアップが期待できます。
記入例
「月が満ち欠けする理由を教えてください」 「月が満ち欠けする理由についてもう一度教えてください。ただし、文字数は150文字程度で、小学生にもわかるように教えてください」
役割を与えてなりきってもらう
職業や役割を設定してChatGPTになりきってもらうことで、良質な回答を得られるケースもあります。ある分野のエキスパートであると指示すると、ChatGPTが専門家になりきり詳細な回答が生成されます。
記入例
「あなたはイルカの調教師です。イルカショーで用いられる技や、調教の手順について教えてください。」
テンプレート利用もOK!フレームワークで効率アップ
ChatGPTプロンプトのフレームワークである深津式プロンプト・システムについて紹介します。NoteのCXOである深津貴之氏が考案したフレームワークで、上記で解説したプロンプト作成のコツがうまく盛り込まれています。テンプレートとして利用するのはもちろん、新たなプロンプトを作成する際の参考にするのもよいでしょう。
深津式プロンプト・システム 1
深津式プロンプト・システム 1は、マークアップ言語を用いたり指示文を追加したりして、適切な文章が出力されるよう工夫を凝らしたプロンプトとなっています。{}内の指定や制約条件を変更するだけで手軽に良質な回答を引き出すことが可能です。文章の作成や要約に効果的なフレームワークです。
テンプレート
# 命令書:
あなたは{プロの編集者}です。
以下の制約条件と入力文をもとに{最高の要約}を出力してください。
# 制約条件:
•文字数は300文字程度。
•小学生にもわかりやすく。
•重要なキーワードを取り残さない。
•文章を簡潔に。
# 入力文:
{入力文章}
# 出力文:
例として、「走れメロス」の冒頭文を要約してもらいました。
深津式プロンプト・システム 2
深津式プロンプト・システム 2は、プロンプトの最後に付け加えることで効果を発揮するフレームワークです。「このタスクで最高の結果を出すために、追加の情報が必要な場合は、質問をしてください。」と付け加えると、ChatGPTが理想的な回答を出すために不足している情報を返してくれます。質問を重ねていくうちにより高精度な回答へたどり着きやすくなるので、アイデア出しで特に役立つでしょう。
テンプレート
このタスクで最高の結果を出すために、追加の情報が必要な場合は、質問をしてください。
ChatGPTの活用例
ChatGPTはプロンプト次第で、多種多様な活用が可能です。以下に活用例を8つ紹介しますので、どのようなシーンで役立てられるのか参考にしてみてください。実際にChatGPTを使用した画像も掲載しています。
文章を要約する
元になる文章と、文章量や文体といった指示を出すことで文章の要約ができます。ニュース記事の概要をつかんだり、Webページのディスクリプションを作成したり、文章のポイントを抜き出してほしいときに便利です。
記入例
「」内の文章を3行程度に要約してください。
「アンガーマネジメントは、「怒り」という感情を否定するものではありません。また怒りをコントロールし抑えつけることとも異なります。
うまく怒りと付き合い、怒りの感情から起こるさまざまな後悔を減らすための心理トレーニングがアンガーマネジメントです。
当初は、犯罪者やDV(ドメスティックバイオレンス)等の矯正に活用されていましたが、2001年に発生した同時多発テロによる社会不安の増大を受け広く一般化しました。
現在では、子供の教育、子育て・介護に悩む人たちへのサポート、そして企業研修やアスリートのメンタルトレーニングに至るまで幅広く導入され、その効果が認められています。」
文章を校正する
文章の誤字脱字や表記ゆれのチェックを命令すれば、ChatGPTを文章校正や添削ツールとして活用できます。「添削した箇所もあわせて教えてください」とプロンプトに付け加えれば、間違っていた箇所を書き出してくれるので、チェックする際に便利です。
記入例
「」内の文章の誤字脱字や表記ゆれなどをチェックして、文章を校正してください。添削した箇所もあわせて教えてください。
「今年の夏も熱い日がつづいておりますが、ごきげんいかがですか。」
文章を翻訳する
ChatGPTは文章の翻訳にも役立ちます。プロンプトを入力する際は、どの言語に翻訳してほしいのか、どこからどこまでが翻訳してほしい文章なのかといった範囲指定を忘れずに行いましょう。
記入例
「」内の文章を英語に翻訳してください。「ChatGPTでは日本語を英語に翻訳することもできます。」
ビジネス文書を作成する
メールや報告書といったビジネス文書の生成も可能です。文章を作成する目的や誰に向けた文章なのか、何文字程度の文章にするのかといった具体的な条件を入れてプロンプトを作成しましょう。生成された文章を使用する際は、情報が合っているか・不自然な言い回しがないか、チェックすることを心がけましょう。
記入例
3月に退職する鈴木課長へ送る、送別会の案内状メールを300文字程度で考えてください。
英語の勉強に役立てる
英語の上達にもChatGPTを活用するのもおすすめです。チャットで英文ライティングの特訓に使用できるほか、Google Chromeの拡張機能を利用して音声でのやり取りができるようにすれば、英会話ツールへと早変わりします。「Voice Control for ChatGPT」をインストールすると画面下部にマイクが表示され、音声認識が可能です。
議事録を作成する
ChatGPTの開発元であるOpenAI社提供の音声認識モデル「Whisper」を使えば、音声データを文字データへと変換できます。Whisperで文字起こしした文章をChatGPTに入力して要約を指示すれば、スピーディーに議事録が作成可能です。対面での会議だけでなく、オンライン会議でも重宝します。
プログラムを作成する
使用するプログラム言語や目的をプロンプトに入力すれば、プログラムコードの出力もできます。問題なく動作するかは人力でチェックする必要がありますが、ソースコードを1から考えるよりも大幅に時間を短縮できるかもしれません。
記入例
プログラムコードを作成してください。HTMLとCSSを使用して、画面に直径100ピクセルの赤い正方形が表示されるコードを生成してください。
アイデア出しに役立てる
アイデア出しやブレインストーミングにもChatGPTが心強い味方となります。プロンプトを工夫して質問を重ねていけば、思いもよらぬ独創的なアイデアを提案してくれるかもしれません。
記入例
「雨の日に使える新しいレイングッズのアイデアを考えてください。ただし、既に発売されているものは除外してください。」
有料プランであるChatGPT Plusが気になる方は、ChatGPT Plusとは?ChatGPTとの違いをご参照ください。無料版との違いは何か、アップグレードの仕方を解説しています。
プロンプトエンジニアリングとは?
プロンプトエンジニアリングとは、ChatGPTなどのAIに命令・指示を出すプロンプトが作成される技術のことです。良質なパフォーマンスを発揮するための質問や指示を出すことを指します。プロンプトエンジニアリングによって、生成される文章や画像などのコンテンツのクオリティーを高めます。
プロンプトインジェクションとは?
プロンプトインジェクションは、悪意のあるプロンプトが用いられたChatGPTをはじめとするAIチャットボットへのサイバー攻撃のことをいいます。悪意のあるプロンプトで指示を出し、機密情報や個人情報を開示させたり、システム設定を不当に変更したりするのが目的です。本来の使用目的から大きく外れた質問を重ね、違法行為や危険な行動を提案させて、サービスの印象を著しく損ねるような回答が引き出される場合もあります。
プロンプトインジェクションに類似するセキュリティ攻撃
プロンプトインジェクションに類似するセキュリティ攻撃を3つ紹介します。ChatGPTをはじめとする新たなサービスは、便利で革新的である反面、セキュリティ面のリスクがあることを認識しておく必要があります。どのような攻撃手口があるか知っておくことは、セキュリティ対策への第一歩となるでしょう。
SQLインジェクション
SQLインジェクションは、Webアプリケーションの脆弱性を突いてデータベースを不正に操作する攻撃手段です。SQLとは国際標準化されているデータベース言語のひとつで、数多くのWebアプリケーションで使用されています。不正なSQLをデータベースにアクセスされてしまうと、情報漏洩やデータの消去・改ざんといった被害につながってしまいます。
クロスサイトスクリプティング(XSS)
クロスサイトスクリプティング(XSS)は、Webサイトに悪質なスクリプト(簡易プログラム)を埋め込み、ページを閲覧した不特定多数のユーザのブラウザ上で実行させる攻撃手段です。悪質なスクリプトを埋め込んだWebサイトから別のWebサイトにユーザを誘導して攻撃を行う、サイトをまたぐ(クロスする)ところから名前が付けられました。一例として、偽ページへのアクセスを促すポップアップ画面などがあげられます。
リモートファイルインクルージョン(RFI)
リモートファイルインクルージョン(RFI)は、Webアプリケーションにおける外部ファイル参照機能を悪用した攻撃手法です。悪質な外部ファイルを読み込ませることで、サーバやクライアントに不正な処理を実行させ、情報流失やWebアプリケーションの改ざんといった被害を引き起こします。用意されたコードによっては、サーバ上にないデータやコードを強制的に実行させられてしまうケースもあります。
検索エンジン大手のGoogle社ではGoogle BardというAIチャットサービスを提供しています。Google Bardとは?ChatGPTとの違いでは実際の使用画面や、ChatGPTと同じ質問を投げかけた結果を載せています。使い比べてみるのもおすすめです。
まとめ
ChatGPTで理想とする回答を引き出すには、コツを押さえた的確なプロンプトの作成(プロンプトエンジニアリング)が重要です。アイデア次第でさまざまな活用ができて非常に便利ですが、プロンプトインジェクションをはじめとしたサイバー攻撃によるセキュリティ面のリスクがあることも覚えておきましょう。仕事で利用する際は所属企業のChatGPT使用ルールやガイドラインを忘れずに確認し、個人情報や機密情報を入力しないよう注意しましょう。