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キャッシュレス決済を推進する理由と導入のメリットとは

date2024年01月29日
キャッシュレス決済を推進する理由と導入のメリットとは
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はじめに

キャッシュレス決済とは、現金を使用せずに、クレジットカードや電子マネーなどで支払いを行うことです。経済産業省が2018年に公表した「キャッシュレス・ビジョン」では、「物理的な現金(紙幣・硬貨)を使用しなくても活動できる状態」と定義されています。
最近ではプラスチックカードなどを使わず、スマートフォンを活用する傾向にもあり、キャッシュレス決済の形態は多様化していくと予想されています。
参考:経済産業省|キャッシュレス・ビジョン

キャッシュレス決済の普及状況

キャッシュレス決済の普及状況

一般社団法人キャッシュレス推進協議会が公表した「キャッシュレス・ロードマップ2022」によれば、2021年時点のキャッシュレス決済での支払額は全体の32%を超えており、2019年には26%、2017年では21%と、年々増加傾向にあります。
決済比率では、依然としてクレジットカードの使用率が高いものの割合は減少傾向にあり、代わりにコード決済やデビットカードの使用率が大きく伸びています。
参考:一般社団法人キャッシュレス推進協議会|キャッシュレス・ロードマップ 2022

キャッシュレス化が進む背景

キャッシュレス化が進む背景

経済産業省が2022年9月に公表した資料「キャッシュレス更なる普及促進に向けた方向性」によると、政府は「2025 年 6 月までにキャッシュレス決済比率を40%とすることを目指す」としています。2025年には大阪・関西万博が開催される予定となっており、その際の経済効果を狙ったものといえるでしょう。
しかし、国がキャッシュレスの普及を推進する理由は、経済効果だけではありません。推進する要因として主なものを4点、ご説明いたします。
参考:経済産業省|キャッシュレス更なる普及促進に向けた方向性

要因1 現金決済のコスト削減

現金決済インフラの年間コストの説明図
現金決済インフラの年間コストの説明図

先にも参考にした「キャッシュレス・ロードマップ2022」によると、現金決済のインフラ維持には年間で約3兆円のコストが生じています。主なコストは、銀行窓口の人件費やATMの設置費・維持費、現金の輸送費・供給費が挙げられています。その他にも店舗での現金関連業務の人件費も1兆円を超えており、現金決済を維持していくにはコストが経済効果を上回る負担となっているといえるでしょう。
これらのことから、キャッシュレス決済の普及・進展によるコスト削減が期待されています。

現金決済コスト削減の効果予想図
現金決済コスト削減の効果予想図

要因2 インバウンド対策

この場合のインバウンド対策とは、外国人の旅行客が訪れた際に現金に頼らない決済方法を用いて、経済効果を得ることです。
経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン(2018年4月)」によると、日本に訪れた外国人の約7割が「少額でもカード払いなどを利用可能な商業施設があれば、もっとお金を使った」との回答がありました。キャッシュレス決済の普及は、こういった外国人観光客の需要をつかむことで消費行動を促し、経済効果を得ることにもつながるでしょう。
参考:経済産業省|キャッシュレス・ビジョン

要因3 人手不足対策

日本は少子高齢化が進んでおり、今後もさらに進んでいくことが予想されています。それに伴って人手不足の問題が生じるため、労働力の確保が必要となります。また、限られた人手で生産性を維持していくための対策も、今後の重要な課題です。
キャッシュレス決済が普及すれば、レジ内の現金残高を確認する作業の軽減と同時に、スムーズな会計が可能になります。これにより、人手不足の問題解決だけでなく、生産性の維持・向上にもつながるといえるでしょう。

要因4 感染症対策

昨今、世界的に新型コロナウイルスが流行したことで、接客のある実店舗などでは感染対策が重要視されています。流通する現金は不特定多数の人が触ることから感染リスクがあるとして、レジ担当者が現金に直接触れる機会を減らすため、手袋の使用やセミセルフレジを導入することで対策を図った実店舗も多くなりました。
キャッシュレス決済が普及し、安定して利用できるようになれば、現金に触れずに会計などを済ませられ感染リスクの低減につながります。また、前述のようにスムーズな会計を行うことも可能ですので、無理なく感染症対策を図ることができるでしょう。

キャッシュレス普及への取り組み

キャッシュレス普及への取り組み

ここまでは、キャッシュレス化が進む背景について「コスト削減やインバウンド対策などの経済効果に直結するもの」と「人手不足や感染症対策などの社会的問題解決を図るもの」として、ご説明しました。ここからはキャッシュレス決済普及のため、国が取り組んできた政策についてご紹介します。

面的キャッシュレス・インフラの構築支援事業

こちらは2020~2021年に行われていた取り組みです。キャッシュレス化に取り組む地域団体(商工会議所・商工会、商店街振興組合など)に加入する事業者の内、下記2点の要件を満たすものを対象としていました。

  • 団体傘下の事業者が営む店舗の内、25件または4割以上が決済端末の新規導入・入れ替えを行う
  • 団体傘下の事業者が営む店舗の7割以上がキャッシュレス化を達成する計画を定める

要件を満たした団体には、キャッシュレス決済サービスの提供・決済が可能とする決済端末本体の無償提供や、関連ソフトウェアなどの導入に係る経費の2/3を最大として国が補助を行っていました。
参考:経済産業省|面的キャッシュレス・インフラの構築支援事業について

IT導入補助金

こちらの制度は、中小企業・小規模事業者向けにITツール・ソフトウェアの導入補助を目的としたものになります。支援内容としては、事業者の課題やニーズに合ったITツール(パッケージソフトの本体費用、クラウドサービスの導入・初期費用など)の導入補助や、ハードウェアの購入補助を行います。
また、申請可能な枠は「通常(A類型・B類型)枠」「デジタル化基盤導入枠」「セキュリティ対策推進枠」の3つが定められており、補助を受ける対象によって最大補助額が異なっています。

参考:一般社団法人 サービスデザイン推進協議会|サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト

日本政策金融公庫の低利融資制度

こちらは、キャッシュレスの推進に向けた環境整備の一環として行われている制度になります。キャッシュレス決済を導入する中小・小規模事業者の資金繰りを支援するため、日本政策金融公庫に創設されました。卸売・小売業、飲食業を含むサービス業を営む事業者、または該当事業者が属する振興組合・協同組合などが対象となります。
事業者によって融資額などに違いはありますが、導入段階の資金繰りの心配などの解決になれば、キャッシュレスが導入しやすくなり、さらなる普及につながるでしょう。
参考:経済産業省|日本政策金融公庫による低利融資制度

キャッシュレスの将来像に関する検討会

こちらは、キャッシュレス化の現状や社会的意義、今後の動向や想定される技術・環境変化などを見据えて、将来像と目標を検討するため、2022年の9月から始まった取り組みです。キャッシュレスの全体構造から目指すべき要件・新指標を定め、現状と比較して、見つけ出された課題解決のため対応策を検討しています。
11月に公表された資料によれば、社会情勢の変化や「2025 年 のキャッシュレス決済比率40%」の目標の先を見据えて、さらなるキャッシュレス決済の普及促進に向けた、議論・検討を行う取り組みを進めています。
参考:経済産業省|キャッシュレスの将来像に関する検討会

キャッシュレス決済導入のメリット

キャッシュレス決済導入のメリット

国がキャッシュレス決済を推進する理由は、先にご説明した背景と要因によるところが大きいといえるでしょう。それらを踏まえて、実店舗でキャッシュレス決済を導入しようとした場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを3つご紹介します。

現金管理の手間やリスクを低減できる

現金管理業務などの効率化とリスクを減らせることが、メリットとして挙げられます。レジ内の現金を確認する作業や売上の銀行入金作業などは、キャッシュレス決済の導入で作業の手間を減らすことが可能です。それに伴い、レジ関連の作業自体を効率化することも可能となります。また、釣銭の受け渡しミスや紙幣・硬貨の数え間違いなどのリスクを減らすこともできるでしょう。

購入履歴による分析や改善が可能になる

キャッシュレス決済を導入した場合、売上はデータでの管理が可能となります。購入履歴などのデータを元に売れ行きや在庫状況の把握が簡単に行えるようになります。また、データはリアルタイムでの把握も可能ですので、過剰在庫対策や分析・改善などの販売戦略にも利用できます。

販売機会の損失防止と拡大ができる

現金決済での買い物では、手持ちの金額が足りない場合にATMを利用する必要があります。もし近くにATMがなければ、買い物を諦めてしまうかもしれません。ですが、クレジットカードなどのキャッシュレス決済が可能であれば、その場での決済が可能になります。ATMを利用する手間や手数料の必要がなくなるため、店舗と顧客双方にメリットがあるといえるでしょう。
また、昨今では非接触型の決済が好まれている傾向があり、キャッシュレス決済が導入されていない店舗を避ける方もあります。導入することで販売機会の拡大を図ると同時に、販売機会の損失や、顧客の他店舗流出を防ぐことにもつながります。

キャッシュレス決済の導入方法

キャッシュレス決済の導入方法

キャッシュレス決済を導入するには、決済サービスを提供する事業者との契約が必須です。それに伴って必要となるものは、以下の3点です。

  • 契約に合わせた専用端末の導入
  • 契約した事業者への決済手数料の支払い
  • 決済を行うための安定したインターネット回線の設置・維持

端末の導入や決済手数料は、事業者との契約形態によってはコスト面が大きくなる場合がありますので、以下でご紹介する2つの契約方法での違いを参考にしていただければ幸いです。

決済事業者との直接契約

決済サービスを提供している会社と、個別に契約する方法です。この場合、契約ごとに専用端末を導入する必要があり、締め日や入金日などの売上管理も別になるため、手間がかかるというデメリットがあります。クレジットカードを例に挙げると、JCBとVISAの両方を使用できるようにする場合は「JCBとVISAそれぞれと個別契約し、端末導入までの手続きを行う」ということになります。
その反面、直接契約では仲立ち業者がいないため、中間マージンが発生しません。決済手数料によるコストが抑えやすい点はメリットといえるでしょう。

直接契約のイメージ図
直接契約のイメージ図

決済代行会社を経由した契約

キャッシュレス決済の代行会社、1社と契約する方法です。こちらの場合は1社との契約で複数の決済方法を導入することが可能になります。決済方法も電子マネーやコード決済など、多様化の傾向があるため、個別に契約するよりも運用や売上管理の手間を省くこともできるでしょう。
直接契約よりも手数料が割高になりやすい点はデメリットと言えますが、業務の効率化による人件費削減などが可能となるため、同時にメリットを生む可能性があります。

決済代行業者を経由したイメージ図
決済代行業者を経由したイメージ図

まとめ

キャッシュレス決済は現金を使用せず、クレジットカードや電子マネーなどを使用し支払いを済ませることです。最近では感染症対策などもあり、非接触型のコード決済の支払い比率が上がってきています。キャッシュレス決済が普及すれば、社会のインフラやインバウンド対策になるだけでなく、業務の効率化や現金扱いのリスクを減らすことにもつながります。また、買いたいものを見つけた時に手持ちが足りなくても買えることは、キャッシュレス決済の大きなメリットと言えます。事業者側から見れば販売機会の損失を防ぐことにつながりますので、キャッシュレス決済の導入および普及は、消費者と事業者の双方にメリットがあるのではないでしょうか。

最後のチェックポイント

  • キャッシュレス決済とは、物理的な現金を使用しなくても活動できる状態のこと
  • クレジットカード以外にも、非接触型のコード決済などの比率が伸びている
  • 普及すれば、コスト削減やインバウンド対策など、社会的な経済効果が見込める
  • キャッシュレス決済の導入方法は、直接契約と代行会社を経由した契約の2つ
  • メリットとデメリットは導入方法によって変わる

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