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プラットフォーム・エンジニアリングとは 基礎知識など

date2025年04月23日
プラットフォーム・エンジニアリングとは 基礎知識など
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はじめに

  • プラットフォーム・エンジニアリングとはアプリケーション開発者が使用する共通基盤を設計・構築・運用する手法
  • 明確で一貫性のあるAPI、セルフサービス・エクスペリエンス、モジュール型、組み込みの優れたプラクティス、整合のとれたガイドラインという5つの原理原則がある
  • 開発者の満足度を最優先することで負担軽減効果が得られビジネスの成功につながる
  • 実行には、オンプレミスとクラウドの組み合わせ・クラウド連携・DevOpsベースの自動化関連・IaCとそのバージョン管理・インフラセキュリティが必要

最近では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の向上を目的として企業がプラットフォーム・エンジニアリングを積極的に採用しつつあります。みなさんもこの機会に知見を深化させてみてはいかがでしょうか。

プラットフォーム・エンジニアリングとは

プラットフォーム・エンジニアリングとは、開発者がアプリケーションを効率的に開発・運用できるようにするための共通基盤(プラットフォーム)を設計・構築・運用するエンジニアリング手法のことです。そもそもITにおけるプラットフォームとは、アプリケーションやサービスを動作させる基盤のことで、4種類があります。

  • オンラインプラットフォーム

    インターネット上で情報やサービスの共有をするプラットフォーム

  • ソフトウェアプラットフォーム

    ソフトウェアやアプリケーションの開発・提供を支援するプラットフォーム

  • コンテンツ配信型プラットフォーム

    ユーザに文章や動画、音楽などのコンテンツを提供するプラットフォーム

  • クロスプラットフォーム

    異なる環境やデバイス間でコンテンツやアプリケーションが共有・利用できるようにするプラットフォーム

プラットフォーム・エンジニアリング 5つの原理原則

プラットフォーム・エンジニアリングをおこなうために不可欠な原理原則が5つ提言されています。それぞれについて解説していきましょう。

1 明確で一貫性のあるAPI

「明確で一貫性のあるAPI(Application Programming Interface)」とは、設計が洗練され、一貫性のあるAPIのことです。
具体的には、利用者が容易に理解でき、期待通りに利用できるAPIです。これを利用する開発者は機能を効率的に活用し、より迅速にアプリケーションを開発することが可能になります。
現代のIT開発において明確で一貫性のあるAPIは、効率的で信頼性の高いシステム構築の基盤となっています。

2 セルフサービス・エクスペリエンス

ここでいう「セルフサービス・エクスペリエンス」とは、ユーザが自身のニーズや問題を自力で解決できる体験のことを指します。開発者は必要なリソース・ツールを迅速かつ効率的に利用できるということです。
プラットフォーム・エンジニアリング実現のためには、ユーザがより主体的かつ効率的に、サービスを利用可能なように設計された仕組みや環境が必要になります。

3 モジュール型

プラットフォーム・エンジニアリングにおける「モジュール型」とは、システム全体を一枚岩ではなく独立・再利用可能な機能単位(モジュール)に分割する設計アプローチのことを指し、以下に記載する特徴があります。

  • 開発者の生産性向上

    必要なリソースをすぐに利用可能

  • システムの拡張が容易

    新機能を追加する際に、影響範囲を最小限に抑えられる

  • 保守がしやすい

    モジュールごとに更新・修正が可能

4 組み込みの優れたプラクティス

プラットフォーム・エンジニアリングにおける「組み込みの優れたプラクティス(Built-in Best Practices)」とは、開発者が特別な知識や設定をしなくても、デフォルトで推奨される一番よいやり方が適用される仕組みのことを指します。セキュリティ・パフォーマンス・信頼性・コンプライアンスなどにおいて、専門的な知識や細かな設定を必要とせずに最初から最適な状態を保てるようにするといった具合です。
より安全・高品質・効率的なアプリケーション開発をおこなえるようにする基盤となる重要な要素です。

5 整合のとれたガイドライン

プラットフォーム・エンジニアリングにおける「整合のとれたガイドライン(Consistent Guidelines)」とは、開発者が、統一されたルールのもとでインフラ・アプリケーションを設計・運用できるようにする指針を指します。
これらのガイドラインは、プラットフォームの設計・利用方法・セキュリティ・運用・開発プロセス全体にわたって適用され、プラットフォームの効率性・信頼性・セキュリティ・開発者体験を向上させます。

開発者の満足度を最優先する理由

プラットフォーム・エンジニアリングにおいては、開発者の満足度を最優先することが最終的なビジネス全体の成功につながります開発者がストレスなく効率的に作業できる環境を整えることで、開発スピード・品質・運用負担の軽減につながるためです。

  • 開発者体験の向上がビジネス成果に直結する
  • フラストレーションを減らしエンジニアの生産性を最大化する
  • 優秀なエンジニアの定着率を向上させる

プラットフォーム・エンジニアリングに必要なスキル・知識

プラットフォーム・エンジニアリングの実行に必要なスキル・知識を5つ解説します。エンジニアにはどのようなものが求められるのでしょうか。

1 ハイブリッド・テクノロジーへの適応スキル・知識

プラットフォーム・エンジニアリングを担うエンジニアに求められるのは「ハイブリッド・テクノロジーへの適応知識・スキル」です。ハイブリッド・テクノロジーとは、複数の異なる技術やシステムを組み合わせてあたらしい機能や性能を実現する技術のことです。常に最新のハイブリッド技術動向を把握することで、組織のデジタルトランスフォーメーションを成功に導くための重要な役割を果たします。
オンプレミスとクラウドの両方を理解し、それらを効果的に融合させる能力は不可欠な能力といえるでしょう。

2 クラウド連携のためのアーキテクチャ設定や構成スキル・知識

プラットフォーム・エンジニアリングを担うエンジニアは「クラウド連携のためのアーキテクチャ設定や構成スキル・知識」を求められます。
具体的には、オンプレミス環境とクラウド環境を効果的に統合し、組織のニーズに合わせたITインフラストラクチャを構築・運用するための専門的な能力のことです。多くの企業が採用しているハイブリッドクラウド戦略(オンプレミスとクラウドを組み合わせてITインフラを最適化する戦略)を成功させ、クラウドの利点を最大限に活用するためには不可欠な要素です。

3 DevOpsベースの自動化関連のスキル・知識

プラットフォーム・エンジニアリングでは、手動での管理を減らし、一貫性・再現性・スケーラビリティを確保するために、DevOps(システム開発手法の1つで、開発(Development)と運用(Operations)が協力して開発を進めること)の考え方を取り入れた自動化が不可欠です。また、DevOpsベースの自動化は単なるツールの導入などにとどまらず、組織文化・プロセスを変革してより効率的で革新的なソフトウェア開発・運用体制を構築するためにも重要な要素です。

4 IaCとそのバージョン管理のスキル・知識

プラットフォーム・エンジニアリングにおいてIaC(Infrastructure as Code)とそのバージョン管理は、インフラの構成と運用の効率化を実現します。IaCには以下の主な特徴があります。

  • 自動化

    インフラのセットアップをコードで記述し、自動構築

  • 一貫性化

    環境ごとの差異(設定ミス・手作業ミス)を排除

  • 再現性化

    同じコードを適用すれば、どこでも同じ環境を作成可能

  • スケーラビリティ

    クラウド・オンプレミスを問わず大規模環境も管理

  • 監査・コンプライアンス対応

    誰が・いつ・何を変更したかを追跡可能

また「なぜIaCのバージョン管理をおこなう必要があるのか」については以下の理由があります。

  • 変更の追跡

    誰が・いつ・どのような変更を加えたかを管理できる

  • ロールバック可能

    問題が発生した場合、以前の状態に戻せる

  • チームでの共同作業が容易

    Gitを活用してブランチ管理ができる

  • インフラの再現性向上

    同じコードを適用すれば同じ環境を作れる

5 インフラセキュリティのスキル・知識

プラットフォーム・エンジニアリングにおいて、インフラセキュリティは非常に重要です。システムの可用性やデータの機密・完全を確保するためには、適切なセキュリティ対策が求められます。
また、スキル・知識を習得後も常に最新のセキュリティ動向を把握することで、安全で信頼性の高いプラットフォームを構築・運用し、組織全体のセキュリティレベル向上に貢献します。

運用に必要なスキル・知識

プラットフォーム・エンジニアリングにおいて、プラットフォームを円滑に運用し安定したサービスを提供するために必要なスキルと知識も重要です。以下に記載する分野についてのスキル・知識がとくに求められるのでしっかりと身につけておきましょう。

  1. CI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery)への精通
  2. より早期での問題解決に向けたトラブルシューティング
  3. プロアクティブ(積極的または主体的な行動)な対応のためのモニタリング/可観測性
  4. 根本原因解析に向けたインシデント管理
  5. サービスリクエストの実現

まとめ

ここまで「プラットフォーム・エンジニアリングとは/基礎知識など」というテーマで解説してきました。
近年、企業のIT開発はインフラ管理やデプロイ(アプリケーションの機能やサービスをサーバ上に配置・展開し、利用可能な状態にする一連の作業のこと)の複雑さが増しており、こうした背景の中で注目されているのがプラットフォーム・エンジニアリングです。
開発者がアプリケーションなどを効率的に開発・運用できるようにするため共通基盤(プラットフォーム)を設計・構築・運用するエンジニアリング手法で、これにより開発チームの生産性を高め、運用負荷を軽減することが可能になります。
この記事を読んで、現在の開発環境の改善に役立つプラットフォーム・エンジニアリングについての理解を深めていきましょう。

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