シェアリングエコノミーとは? 5つの領域解説から注意点と将来性まで
はじめに
近頃はシェアリングエコノミーという言葉を耳にする機会も増えているのではないでしょうか。シェアリングエコノミーとは実際にはどのようなものなのか、私たちの生活にどのように役立つのか、デメリットはないのか、この記事ではさまざまな角度からわかりやすくシェアリングエコノミーというものを見ていきたいと思います。
シェアリングエコノミーとは何か
私たちの身近なところにもいつの間にか存在するようになっているシェアリングエコノミーですが、そもそもどういったものなのでしょうか? その概要やどういったビジネスモデルなのか?という2つの点から解説していきます。
シェアリングエコノミーの概要
シェアリングエコノミーは英語でもsharing economyと言います。直訳すると共有経済であり、共有の社会関係によって統御される経済を意味します。遊休資産(スキルのような無形のものも含む)を貸出するビジネス形態です。さらにかみくだいていうと「モノや場所、スキルや時間などを個人間で共有する」ということになります。
新たな発想に基づいたビジネスモデル
従来のビジネスは企業や事業者が消費者にサービスを提供する「BtoC(Business to Customer)」の形態が主流でした。ところが近年では情報化社会の実現により個人同士で取引をする「CtoC(Customer to Customer)」 ビジネスモデルが急速に発展してきています。
スマートフォンのような手軽なデバイスを使って、消費者が所有するモノや空間に関する情報を簡単に公開し、消費者どうしで共有できるようになったのです。さらにはオンラインでの決済や評価制度により取引時の安心が担保されるようになりました。
なぜ今シェアリングエコノミー?
では、どうして今シェアリングエコノミーが注目されているのでしょうか? 2つほど理由があげられますので見ていきましょう。
人々の価値観の変化
1つ目は、人々の「所有すること」に対する欲求が、高度成長期の大量生産・大量消費時代を経た現代では薄れつつあり、「モノによる豊かさ」だけではなく「心の豊かさ」を重視する価値観が広がってきているからです。
1990年代以降の日本では、景気の低迷や雇用の非正規化が進み、節約志向の若い世代が増えました。加えて、世界のエコロジーやサスティナビリティといった潮流を背景に、モノを所有するのではなく、必要なときに使用できればよいという考え方が多くなってきています。
変化する時代へ迅速に対応
2つ目は、今が新たなニーズの生まれやすいニューノーマル時代だからです。
もともとシェアリングエコノミーは、従来のビジネスよりも社会の変化に柔軟に対応しやすい性質を持っています。企業は基本的には消費者と消費者をつなぐプラットフォームを用意するだけでよく、商品の在庫を抱えたり人材育成をしたりといったコストが不要なのです。
また総務省やデジタル庁、財務省など各省庁もシェアリングエコノミーを推進しており、これら政府の後押しもシェアリングエコノミーの成長を促しています。
シェアリングエコノミーのメリット
では、シェアリングエコノミーを利用するメリットとはどのようなものがあるでしょう。シェアリングエコノミーの利点を見ていきたいと思います。
遊休資産の有効活用
シェアリングエコノミーでは普段使っていないもの、余っていたものを貸し出したり売ったりすることで有効活用できます。家や車といったモノだけでなくスキルや時間など人的資産も活用できるのが特徴です。
また、新しいものを買わないようになったり、捨てるはずだったものを再利用したり、交通手段を共有するなど環境に優しい面も見逃せません。
リーズナブルな料金で提供、入手できる
提供者側は、すでに所有している資産を貸し出すだけなので初期費用がほとんどかかりません。また浮いている資産なので安価に供給する事もでき、ユーザー側はモノやサービスを比較的リーズナブルに取得することができます。
新しい消費の発掘で経済発展
シェアリングエコノミーで利用者の生活は便利になります。不便が解決されれば消費促進につながります。また、資産が共有・活用され新しい機会を創出し、経済効果を生む可能性もあります。
このように、シェアリングエコノミーが普及することが経済の発展に貢献すると考えられているのです。
シェアリングエコノミーサービス、5つの領域
シェアリングエコノミーは遊休資産の中身によって5つに分類されます。
1.モノのシェア
フリマアプリやレンタルサービスなどのシェアリングエコノミーがモノのシェアに当たります。
例:airCloset(エアークローゼット)
女性向けの洋服のレンタルサービスです。プロのスタイリストが利用者の好みやライフスタイル、悩みに合わせて洋服をセレクトします。買い物に行く時間や手間を省きたい、働く女性に利用されています。料金は月額定額制です。
コロナ禍でイベントが減り、ドレスや着物のレンタルは需要が落ち込んでいますが、外出せずに洋服との出会いを楽しめるairClosetのサービスは好調に推移しています。
2.空間のシェア
民泊、ホームシェアリング、駐車場シェアリング、レンタルオフィス・会議室、コワーキングスペースなどが空間のシェアに当たります。オフシーズンの観光ホテルや週末のオフィスなどを有効活用できます。
例:Airbnb(エアービーアンドビー)
Airbnbは、空いている家や部屋を貸したいホストと安く宿泊したいゲストとの間を取りもつ、インターネットを利用したマッチングサービスで、世界中で人気があります。
ゲストはコストパフォーマンスの高い宿泊所を見つけることができ、時には自炊したりホストとの交流を楽しめたりします。
3.移動のシェア
カーシェアリング、ライドシェアリング、シェアリングサイクルなど移動手段のシェアリングエコノミーです。交通機関の有効利用は省エネルギーや環境保護に直結するので今後が期待される分野だと言えます。
例:タイムズカー
タイムズカーは都市部で特に人気のあるカーシェアリングサービスです。ガソリン代、保険料、そして駐車場代が不要なため、コストをかけずに自動車を利用できます。インターネットで予約し、専用の駐車場に停めてある車をカードキーで開けて利用します。以前からあった移動のシェアとも言えるレンタカーよりも手軽に使えるのが魅力です。
4.スキルのシェア
家事・育児・知識など、人の持つスキルをシェアするサービスは今もっとも注目を集めるシェアリングエコノミーです。たとえば家族の介護などがあって普通の就職が困難な人が、すき間時間を利用してキャリアを積みお金を稼ぐことも可能です。
フリーランスの働き方に興味がある方はこちらの記事フリーランスになれる職種や仕事内容とは?仕事の探し方やお仕事テクニックからワーキングスペースまで全て教えます を、ぜひ参考にしてください。
例:クラウドワークス
クラウドワークスは、個人や企業が仕事を発注し、また請け負うことができるマッチングサービスです。Webデザイン、システム開発、ロゴ・イラスト作成、記事執筆、事務・データ入力、通訳・翻訳など業務は多岐にわたります。請け負う側は企業に属する必要がなく、単発で仕事をして報酬を受け取れるので副業に向いています。
例:Uber Eats(ウーバーイーツ)
街角で、大きなリュックを背負って自転車を走らせるUber Eatsの配達パートナーの姿を見かけたことのある人も多いのではないでしょうか。近年でもっとも普及したシェアリングエコノミーサービスのひとつとも言えるのがUber Eatsです。Uber Eatsは利用者とレストランをマッチングし、専用アプリで受けた注文を配達パートナーがレストランから利用者のところまで配達します。配達するスキルのシェアです。
5.お金のシェア
「お金のシェア」と聞いてもピンと来ない人でも、クラウドファンディングを連想してもらうと「ああ、なるほど」と思えるのではないでしょうか。
発信者の目的に共感、賛同する人たちが少しずつお金を出し合って大きな目標を達成するのがクラウドファンディングです。銀行からはなかなか融資を得られないような斬新なアイディアでも人々の力で現実化し、ヒット商品を生み出すこともあります。
例:Kickstarter(キックスターター)
Kickstarterは世界一の規模を誇るアメリカのクラウドファンディングサイトです。日本国内のクラウドファンディングと比べ「利用者が多く、賛同者(ファン)を集めやすい」「海外で成功するチャンスが巡ってくる」「多額の資金を必要とする大きなプロジェクトに挑戦できる」といった特徴があります。ビジネスはもちろんですが、デザイナーやアーティストが業界で成功するためにKickstarterのようなクラウドファンディングを利用するケースも増えています。
シェアリングエコノミー利用の注意点
手軽で、何かと便利なシェアリングエコノミーですが、利用時に「知っておくべき注意点」を3つ解説します。急速に成長するシェアリングエコノミーのデメリットや課題とは何でしょうか。
トラブルのリスク
シェアリングエコノミーは利用者、提供者ともに不特定多数とやり取りするのでトラブルが発生することがあります。
インターネットを通じたやり取りでお互いの顔が見えないのも不安要素のひとつです。利用者は「きちんとしたサービスを受けられるのか」、提供者は「ルールやマナーを守って利用してもらえるのか」が気になります。実際に一部ではトラブルも起きているようです。
これを防ぐために、プラットフォーマーは相互評価制度を取り入れているところが多いです。
保険/補償制度の不備があるかも!?
シェアリングエコノミーは新しい事業形態のため、何かあったときの保険や補償制度の整備が追い付いていないという現状があります。
これに対し、トラブルがあっても泣き寝入りするしかないという事態を防ぐために各種制度が整いはじめています。
法律の不備があるかも!?
保険や補償制度と同様に、法律全般の整備がまだ行き渡っていません。
法と法のすき間をかいくぐるようなサービスの提供を行う業者もいるため、早期の法整備が待たれます。
市場規模と将来性
シェアリングエコノミー協会が情報通信総合研究所と共同で実施した調査で、2021年度の日本のシェアリングエコノミー市場規模は過去最高の2兆4198億円です。今後コロナ禍が落ち着き、シェアリングエコノミーの認知度が上がれば個人・企業、両者に対して将来性は非常に高いと言えます。
また、既存産業への経済波及効果も高く、国内経済への好影響も期待されます。
まとめ
シェアリングエコノミーは景気がなかなか上向かない今の日本で注目の成長分野であると言えます。既存の枠組みにとらわれず新しい発想で誰でも参入可能なところが魅力的です。遊休資産の有効活用はSDGs(持続可能な開発目標)への貢献効果も期待されます。
誰もがシェアリングエコノミーを利用する側、提供する側になることができ、暮らしに欠かせないものになりつつあります。今後法整備が整えばさらに気軽にシェアリングエコノミーを利用できるようになるでしょう。
最後のチェックポイント
- シェアリングエコノミーは遊休資産の貸出しをするビジネス形態
- モノ、空間、移動、スキル、お金の5つの領域がある
- 所有より共有の方がユーザーに負担が少なく環境にも優しい
- 新しい分野なので法的に未整備な部分があるのが課題
- この先も大きく成長が期待されるビジネスモデル