ボーナスに税金はかかる?手取りの計算方法と引かれる税金の詳細
はじめに
年に数回、会社からもらえるボーナス(賞与)。しかし、いざ受け取ってみると、支給されたはずの金額よりも少なくてびっくりした経験はありませんか?
この記事では、ボーナスにまつわるさまざまなお金の仕組みについてお伝えします。
ボーナス(賞与)の支給額と実際に受け取れる額はなぜ違うのか?
ボーナスの額面(総支給額)と、実際に受け取れる金額はなぜ違うのでしょうか。それは、毎月の給与と同じように、ボーナスからも税金などが引かれているからです。
この、額面から税金などを控除(天引き)した額のことを「手取り」と呼びます。明細では「差引支給額」として表示され、実際に受け取れるのはこの金額になります。
税金や色々な名目で引かれている
なぜボーナスまで高い課税を受けなくてはいけないのか、おかしい! という声もあるかもしれません。制度上、そのようになった理由については後ほど説明していきます。
ここからは、実際にボーナスから控除される以下の三つのお金について、具体的にどのようなものかを詳しく紹介します。
- 社会保険料
- 介護保険料
- 所得税
なお、住民税はボーナスにおいては非課税です。住民税は前年1年間の所得(収入から必要経費などを引いた額)を元に、決まった額を毎月の給与から引いていくので、ボーナスからさらに引かれる、ということはありません。
社会保険料
「社会保険」とは、病気やケガなどの不測の事態や、出産・高齢化・失業といったライフステージの変化に備えた社会保障制度です。加入者が保険料を支払い、それを財源として、いざという時に保険金を受け取ることができる「相互扶助」という仕組みで成り立っています。
ボーナスから控除されるのは「厚生年金保険」・「健康保険」・「雇用保険」・「介護保険」の四つの保険料です。「厚生年金保険」は60歳など一定の年齢(老齢)に達した際の生活、「健康保険」は業務外のケガ・病気や出産時などの医療、「雇用保険」は労働者が失業した場合や雇用の継続が困難な場合に、それぞれ備えるための保険です。
介護保険料
「介護保険」は、65歳以上の高齢者または40歳から64歳の特定疾病患者のうち、介護が必要になった人やその家族が、少ない負担でデイサービスや車いすのレンタルなどの介護サービスを受けられるように、費用を給付する仕組みです。
先述した三つの保険と異なるのは、入社時ではなく満40歳になった時に加入が義務付けられるという点で、以降64歳までは健康保険の保険料と一緒に介護保険料も納められます。介護保険の加入者には第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳から64歳まで)の分類があり、保険料は65歳以上になっても支払う必要があります。
所得税
「所得税」とは所得にかかる税金のことです。「所得」とは1月1日~12月31日の1年間の収入から必要経費、あるいは法律で定められた一定の控除額を差し引いた残りの金額のことで、企業に勤めている場合はこの「一定の控除額」=「給与所得控除額(みなしの経費)」を引いた金額にあたります。
所得税はその年1年間に「このくらい所得があるだろう」という見込みを元に算出するため、年末にならないと正確な金額が分かりません。そこで、おおまかな所得税をあらかじめ納めた後に、毎年11月頃に行われる「年末調整」で過不足分を精算する必要があります。
最終的には年末調整で
先述した通り、ボーナスや毎月の給与から引かれる税金は言わば「仮払い」です。年末に実際の所得が確定した後、その金額に応じて、払いすぎた分や少なすぎた分の税金を清算する作業が「年末調整」です。
ボーナスにおいては、支給の前月の給与を元に所得税が算出されます。そのため、例えば前月に残業が多く、普段より給与が高かった場合、年間所得から見ると支払う税金が高くなってしまうので、年末調整の際に払いすぎた分が戻ってきます。その他、前回の年末調整後に結婚、あるいは子供が16歳以上になった場合なども、所得税が還付されるケースに当たります。
一昔前はボーナスから控除される額が低かった?
ボーナスから引かれるお金について、「昔はもっと低かった」「今の控除額は高すぎる」という声を年配の方などから耳にしたことはないでしょうか。実際、ボーナスから引かれるお金は、かつてはもっと少なかったようです。今のようになった要因としては、ボーナスから引かれる社会保険料が「総報酬制」に移行したことが挙げられます。この「総報酬制」とは何か、ボーナスに適用されるようになったのはいつからなのかについて、説明していきます。
社会保険料がかかるように法律が改正されました
「総報酬制」は、2003年4月から施行された算定方法です。従来、社会保険料は月々の給与額に基づいて保険料を算出・控除していましたが、総報酬制ではボーナスを含めた年間の総報酬額に基づいて保険料を算出します。この改正により、毎月の給与およびボーナスに、同じ保険料率をかけた額がそれぞれ控除されるようになりました。
総報酬制に移行した理由は、「不公平を是正するため」です。総報酬制の導入以前は、ボーナスにほとんど課税がされていなかったため、給与を安い金額・ボーナスを高い金額にしてしまえば、会社も労働者も税金をあまり払わずに済んでしまっていました。これでは高い給与をもらっている人や、ボーナス制度のない会社にとって不公平です。こうした不公平を是正することを主な目的として、総報酬制が施行されることになったのです。
いくら引かれるのか金額を知りたい
結局、実際にもらえるボーナスは全体の何割ほどなのかと言うと、一般的な手取り金額の割合は額面の8割程度とされています。ですので、おおまかな手取り金額を知りたい場合は、総支給金額に0.8をかけることで目安を求めることが出来ます。
より正確な金額については、こちらの計算式を使うことで求められます。
- 手取り=ボーナス-(厚生年金保険料+健康保険料+雇用保険料+介護保険料+所得税)
以下より、各種保険料と所得税額を求める計算式をお伝えしていきますので、それぞれで導き出した答えを上記の計算式に当てはめ、自身のボーナスの手取り額をシミュレーションしてみてください。
社会保険料の計算
まずは、厚生年金保険料の計算式です。厚生年金保険の保険料率は、住んでいる場所や勤めている会社に関わらず、誰でも18.3%(2022年4月時点)となっています。保険料は会社と半分ずつ納めるため、最後に1/2をかけます。
- 厚生年金保険料=ボーナス(※1,000円未満切り捨て)×厚生年金保険料率×1/2
参考:全国健康保険協会|令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
次に、健康保険料です。健康保険料率は加入している健康保険組合や勤務地によって異なるので、加入組合のHPなどをチェックしてみましょう。保険料は会社と半分ずつ納めるため、最後に1/2をかけます。
- 健康保険料=ボーナス(※1,000円未満切り捨て)×健康保険料率×1/2
最後に、雇用保険料です。ボーナスの金額から1,000円未満を切り捨てず、そのまま計算します。雇用保険料は会社の事業内容によって保険料率が異なりますが、ほとんどの場合、0.3%(2021年4月時点)になります。
- 雇用保険料=ボーナス×雇用保険料率
介護保険料の計算
続いて、介護保険料の計算です。保険料率は健康保険と同様、加入している健康保険組合や勤務地によって異なるので、加入組合のHPなどを確認しましょう。保険料は会社と半分ずつ納めるため、最後に1/2をかけます。
- 介護保険料=ボーナス(1,000円未満切り捨て)×介護保険料率×1/2
介護保険は40歳から64歳までの人が加入するので、該当しない年齢の場合はこの計算の必要はありません。ちなみに、保険料は40歳の誕生日の前日が属する月の分から納めなければならないため、例えば5月1日生まれの場合は、4月分から保険料を支払う必要があります。
所得税の計算
各種保険料の計算が完了したら、最後にそれらを使って所得税の計算を行います。
- 所得税=(ボーナス-(厚生年金保険料+健康保険料+雇用保険料+介護保険料))×源泉徴収税率
源泉徴収税率は、ボーナスをもらう前月の給与から各種保険料を引いた金額と、扶養人数によって決まります。例えば前月の給与から各種保険料を引いた金額が25万円で、扶養家族の人数が二人の場合、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和3年分)」によると源泉徴収税率は2.042%となります。
参考:国税庁|賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和4年分)
所得税の計算が終わったら、先ほどの計算式に全ての答えを当てはめ、ボーナスの手取り金額を導き出してみましょう。
- 手取り=ボーナス-(厚生年金保険料+健康保険料+雇用保険料+介護保険料+所得税)
まとめ
いかがでしたでしょうか。ボーナスの額面と手取りの金額がなぜ違うのか、ボーナスから控除されたお金がどういった用途に使われるものなのか、そして、ボーナスに関するお金にまつわる制度の仕組みがお分かりいただけたのではないかと思います。
複雑でとっつきにくく見える社会保険料や税金の仕組みですが、知識を深め、正しく理解していけば、社会人としての今後のライフプランに役立つ大きな要素になるはずです。今回の記事が、保険や税金を始めとしたあらゆるお金の仕組みに対する理解を深めていくきっかけになれば幸いです。
最後のチェックポイント
- ボーナスの額面と手取りが違うのは税金や保険料が差し引かれているから
- ボーナスから控除されるのは厚生年金保険・健康保険・雇用保険・介護保険・所得税
- ボーナスにかかる税金の過不足は年末調整の時に清算される
- ボーナスの控除額が高くなったのは2003年4月から総報酬制が施行されたから
- 手取りの額はボーナスの額面から各種保険料と所得税を引くことで求められる
- ボーナスを通してお金への理解を深めれば、今後の生活にも活かせるはず