フリーランス・業務委託

開業届の屋号は必要?決め方と記入方法を解説

date2025年03月21日
開業届の屋号は必要?決め方と記入方法を解説
タグ:

はじめに

  • 屋号とは、個人事業主が使用する商業上の名前のこと
  • 屋号は開業届に必須ではない
  • 「○○会社」「○○保険」などは使用できない
  • 頻繁に変更すると、顧客や取引先の信頼を失うリスクがある
  • 屋号は、ブランディングを確立するのにも役立つ

屋号とは

屋号とは、個人事業主が使用する商業上の名前のことです。
屋号を申請する場合は、「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)に記入しましょう。
また、屋号は1つだけでなく、複数取得したり使い分けたりすることもできます。

商号・雅号との違い

屋号と似た言葉に「商号」「雅号」があります。
それぞれの特徴や違いを以下の表にまとめました。

項目屋号商号雅号
定義個人事業主がビジネスで使用する事務所や商店などの名称法人がビジネスで使用する名称。企業名の正式名称芸術家や文筆家が本名以外につける別名
対象者個人事業主法人・個人事業主個人(芸術家・著述家・芸能関係者など)
法務局への登記任意(開業届に記載可能)・個人事業主は任意
・法人は必須(法務局で登記が必要)
不要
使用制限・制約など自由に使用・変更できる使用・変更の際に一定の制約がある自由に使用・変更できる
銀行口座開設銀行によっては、屋号付き口座(個人口座)が開設できる。法人口座は開設できない法人口座名義に企業の商号名を使える雅号を屋号(商号)の一部として、口座名義に設定できる

たとえば、イラストレーターの方が個人事業主の場合、事業名につけるのが屋号で、活動名として使用するのが雅号になります。
また、屋号と商号は、どちらも事業を行う際に事業名・企業名として使用できます。
両者の違いは、登記方法や法的拘束力の範囲です。

開業届に屋号は必要?

個人事業主として開業する際は、税務署に開業届を提出する必要があります。
屋号を使用するタイミングは自分で決められますので、開業届提出後すぐに名乗らないといけないわけではありません。
また、屋号の記載は任意のため、空欄のままでも提出可能です。あとから設定・変更・抹消なども自由にできます。

屋号をつけるメリット・デメリット

開業にあたり、屋号を設定する場合は、開業届の屋号記載欄に記入しましょう。
以下では、屋号をつけることのメリット・デメリットを解説します。

屋号をつけるメリット

以下では、屋号をつけることのメリットを解説します。

  • 顧客に事業をアピールできる

    屋号をつけることによって、事業イメージが定着しやすくなり、集客や仕事の受注につながります。

  • 法人化する際に使っている屋号を商号として引き継げる

    法人化の際には、使っている屋号をそのまま商号として引き継げます。
    これまで積み上げてきた実績や信用などを失わずに、法人化できるのがメリットです。

  • 屋号付き銀行口座を開設できる場合がある

    屋号をつけることで、屋号付き銀行口座を開設できる場合があります。
    屋号付き銀行口座は、個人名義の口座よりも社会的信頼性が高く、顧客・取引先にも安心して利用してもらえます。
    また、口座開設時には屋号記載済みの開業届の控えを提示する必要があります。詳細は銀行ごとに異なるので、都度確認しましょう。

屋号をつけるデメリット

以下では、屋号をつけることのデメリットを解説します。

  • 屋号を選定する際に手間がかかる

    とくに、法人・企業に商号専用権・商標権を侵害したと見なされた場合、訴えられるリスクがあるため、被らないように注意しましょう。
    他の個人事業主と同一名称の屋号をつけることは、法的に問題ありませんが、トラブルに発展するおそれがあるため、重複は避けた方が無難です。

  • 屋号を途中で変更する場合は手間がかかる

    途中で屋号を変更する場合も手間がかかります。
    たとえば、取引先への通知や、金融機関での口座名義変更手続きが必要です。また、名刺を刷りなおしたりホームページを更新したりしなければならず、煩雑な作業が発生する可能性があります。

  • 屋号が単一・少数だと事業のイメージが限定されやすい

    屋号をつける目的は、自社がどのような事業を行っているかを、顧客・取引先に伝えるためです。
    ただし、屋号から想起できない事業を行っている場合、その事業は認識されにくいのがデメリットです。従って、仕事の受注が来ないケースも考えられます。

屋号の手続き・後日申請・変更・抹消方法

以下では、屋号の手続き・後日申請・変更・抹消方法について解説します。

手続き方法

開業届に屋号を記載して税務署に提出すると、屋号の手続き登録が完了します。

開業届に、屋号の記載は義務づけられていないため、決まっていない場合や記載したくない場合は、空欄で提出しても問題ありません。
また、複数事業を行っている場合、それぞれの事業に対して個別に屋号を取得できます。

後日申請・変更方法

屋号は開業届を提出したあとからでも申請できます。また、何度でも変更可能です。
確定申告書・決算書などを提出するときに、新しい屋号をそれらに記載して提出します。

屋号を新たに申請・変更する場合、開業届を再提出する必要はありません。
ただし、変更したことを記録として残しておきたい方は、再度開業届を提出しても問題ありません。
屋号付き口座を開設している場合は、銀行の名義変更手続きで新たな屋号に変更することも忘れないようにしましょう。

抹消方法

使用している屋号を抹消する場合、手続きはとくに必要ありません。屋号をなくしたい場合は、次回の確定申告や決算時に屋号を記入しないようにしましょう。

また、屋号の抹消時に、とくに留意すべき点はありません。

開業届に記載する屋号の決め方

以下では、屋号の決め方について解説します。

使える文字や決める際のポイント

基本的に、屋号は自由に決められます。屋号に使える文字や記号は以下の通りです。

  • ひらがな
  • カタカナ
  • 漢字
  • 数字
  • アルファベット
  • 6種類の記号(「,」「.」「-」「&」「・」「’」)

屋号を決める際は、わかりやすく、覚えやすいものでかつ、オリジナリティのあるものにしましょう。

屋号を決める際の注意点

以下では、屋号を決める際の注意点について解説します。

使用できない言葉を確認する

屋号には「会社」「法人」などの文字が含められません。理由は、企業以外の者が企業と誤認されるおそれのある名称を使用できないように、法律で定められているためです(会社法・第7条より)。

また、「○○保険」「○○銀行」「○○証券」「○○金庫」なども該当する事業と無関係であれば使用が禁止されています。
さらに、公序良俗に反するような文言(性的・差別的・反社会的な文言)なども避けるべきです。

会社法|e-Gov 法令検索

他の企業名や屋号と同一・類似しているものは避ける

屋号に法的効力はありません。
しかし、トラブルを避けるためにも他の個人事業主と同一または類似の屋号をつけることは避けましょう。

また、つけた屋号が法人・企業に商号専用権・商標権などを侵害したと見なされた場合、訴えられるリスクがあります。
そのため、屋号をつける前に、他社の屋号・商号と重複しないかどうかを調査しておきましょう。
手軽に調査したい場合は、インターネットの活用が有効です。

たとえば、検索エンジンで登録したい屋号を検索したり、法務省のホームページにある「オンライン登記情報検索サービス」を利用したりする方法があります。オンライン登記情報検索サービスは、無料会員登録後に利用可能となります。
以下に、法務省のリンクを載せて置きますので、ご参考になさってください。

法務省|オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について

屋号の変更は慎重に行う

屋号の変更は慎重に行いましょう。
屋号変更に伴い、手間や労力がかかります。

たとえば、名刺の刷りなおし・ホームページの情報更新・銀行口座の名義変更手続きなど、通常業務に加えて、煩雑な処理に追われるリスクがあります。また、顧客や取引先にも混乱や不信感を与えかねません。
屋号の変更回数に制限はありませんが、特別な理由がない限り、なるべく変更は避けましょう。

屋号をうまく活用しよう

屋号を活用してブランディングを確立したり、集客戦略を立てたりすることが大切です。
以下では、屋号の活用方法について解説します。

インパクトのある屋号をつける

屋号を活用したブランディング戦略の1つに、インパクトのある屋号をつけるという方法があります。インパクトのある屋号は、顧客や取引先の記憶に残りやすいという利点があります。

ただし、屋号をつける際はユーザ目線を意識することが大切です。
複雑なもの・読み方が難解なもの・長すぎるものなどは、避けるようにしましょう。

ネット検索で上位に表示されやすい屋号をつける

ネットやSNSから集客したり、検索エンジンで上位表示を目指したりする場合は、シンプルでわかりやすい屋号をつけるように意識しましょう。

また、Webサイトを開設する際には、屋号と同じドメインが取得できるかどうかを確認することも大切です。
ドメインとは、URLの「https://www.◯◯◯.com」の「◯◯◯」に該当する部分です。
ドメインを屋号と同じに設定することで、ホームページの認知度や信頼性が高まります。

屋号と店名は統一する

取引先や顧客の混乱を避けるためにも、屋号と店名は統一しましょう。

また、屋号には事業内容との関連性を持たせることが大切です。
たとえば、「○○ベーカリー」「○○デザイン」などは、一目で何の事業を行っているかわかりやすいため、ブランディングの確立や多くの集客にも期待できます。

まとめ

屋号とは、個人事業主が使用する商業上の名前であり、申請には開業届が必要です。
屋号はブランディングの確立や集客にも役立ち、基本的には、自由に決められます。

一方「○○会社」「○○保険」など企業を想起させる単語は使用できないため、注意が必要です。
また、頻繁に変更すると、煩雑な手続きが増えたり、顧客・取引先の信頼を失ったりするリスクがあります。

屋号をつけるかどうか迷った際には、メリット・デメリットを考慮して自分に合った方を選択しましょう。

IT業界に挑戦したい23年卒の方、私たちの仲間になりませんか?
【会社選びは、仲間探しだ】IT業界に挑戦したい23年卒の方、私たちの仲間になりませんか?
株式会社セラク 開く