ITインフラ 運用監視エンジニアが上流工程にスキルアップする方法
はじめに
運用監視業務はIT業界未経験の方が多く配属され、ハードウェアの基礎知識や各種操作スキルを学び、経験を積むことができます。ここからは、運用監視業務で培った経験とスキルをベースに、何をプラスしたらスキルアップ・収入アップに繫がるのかを考えていきましょう。
下流工程と上流工程のちがい
ITインフラの構築プロジェクト全体を見ると、要件定義⇒設計⇒構築⇒運用⇒保守といった工程に分かれます。この要件定義・設計・構築を「上流工程」、運用・保守を「下流工程」とするのが一般的です。
役割の違い
上流工程ではクライアントとのヒアリングを基に企画を練り、機器設定や開発予算・スケジュールを決め、設計・構築・プロジェクト管理などを行います。下流工程では上流工程で決定された仕様に基づき、システムの運用を行います。運用監視業務は情報の整理と問題の発見、情報のエスカレーション(報告、相談)が主になります。
収入の違い
下流工程では保有する資格や会社規模により多少の差はありますが、大体250~450万程の年収となり、勤続年数での上がり幅も少なめです。スキルアップし上流工程に進むと、設計・構築業務で400~550万円、要件定義業務では650万~と、工程が上位になるほど年収も上がってきます。この違いは、将来性・やりがい・プライベートの充実など、自身に大きな影響を与えるでしょう。
下流工程と上流工程それぞれ必要なスキルとは?
下流工程はIT業界未経験者でも参入しやすいことからわかるように、基本的な知識・技術力で対応できますが、上流工程では下流工程で得た豊富な経験とスキル、さらに資格の取得が必要となります。また、ビジネススキルも求められるので、紹介していきます。
下流工程では
下流工程で必要なスキルは、運用監視の基本となる、運用監視ツールを扱うスキル、サーバー・ネットワークの基礎知識、OS操作・コマンド操作スキル、サーバーの負荷分散スキルなどがあります。以下で主な2点について説明します。
サーバー・ネットワーク基礎知識
サーバーやネットワークの監視、障害対応が主な業務になるので、基本の基といったものです。また、ネットワーク機器についても同様で、サーバーの負荷分散作業にも役立ちます。CCNAなどの資格を取るのもよいでしょう。サーバーやネットワーク障害の原因を突き止める時など、それぞれの特異性を理解しておく必要がありますので、しっかりと身につけましょう。
OS操作・コマンド操作
サーバーやPC、社内システムのアクセス管理・アカウント権限管理・データのバックアップやセキュリティチェックなど、各OSに適した対応が求められます。また、障害対応時のログ調査ではコマンドライン操作も含まれます。多くの言語を知ることでスムーズな対応が可能になります。
上流工程では
運用監視業務で培った知識をベースに、CCNPやITアーキテクト、情報処理安全確保支援士などの資格を取得することでスキルアップしていきます。下流工程で培ったノウハウを上流工程でも生かし、更なる技術向上を目指しましょう。以下では、技術面以外に必要とされるスキルについて紹介します。
コミュニケーション能力
設計を行う際、最も重要なことがクライアントとのヒアリングです。正確に要望を引き出すためのコミュニケーション能力が必要となります。特にクライアントがITに明るくない場合などは、自身の想像力も最大限に活用し、クライアントが求めていることは何か、イメージしているものは何かなどを、きちんと理解しあうことが大切です。
ドキュメント作成スキル
上流工程では、多くの文書を作成する必要があります。クライアントへの提案書や説明資料・使用マニュアルから、プロジェクト全体の設計書や計画書、各所への指示書などプロジェクトを進める上の重要な指針となるものです。専門性だけでなくビジネス力も身につけ、誰でも理解できるドキュメント作成を心がけましょう。
マネジメントスキル
上流工程では、チームを管理するなど、プロジェクト全体を統括する必要が出てきます。そのため、各メンバーの状況を把握してタスク管理を行い、課題管理や進行管理を行います。マネジメント力のあるリーダーのもとまとまったチームは、リスクやトラブル回避に優れ、スムーズなプロジェクトの成功が望めるでしょう。
運用監視から次のステップにあがるには?
運用監視はITインフラの重要な業務の入り口です。ここを経験したことですでにキャリアアップのチャンスを手にしていると言えます。以下のステップアップ・ポイントを参考に、ワンランク上を目指しましょう。
- 今の業務を丁寧にしっかりとこなし、経験を積む。
- 資格を取って知識の幅を広げる。
- コミュニケーション力、ドキュメント作成力を磨き、次のステップに備える。
- 社内公募へ積極的にチャレンジする、先輩の仕事を学ぶなど、勇気をもって自ら行動を起こす。
- 転職情報やコミュニティに参加するなどアンテナを広く持ち、情報を集め、タイミングを逃さない努力をする。
まとめ
日々進化を遂げるIT業界では、常にアンテナを張り学び続けることが必要です。スキルアップするためにも多くのことを学ぶ必要はありますが、まずは自分の得意分野をしっかり把握し、自身の進むべき道を見つけましょう。「石の上にも三年」と言う言葉がありますが、運用監視エンジニアにとっても3年目は分岐点となるようです。どんな変化を求められているのか、次で詳しく紹介していきます。