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ジョブ型雇用とは?これで理解できる!特徴・メリット・デメリット・メンバーシップ型雇用との違い

date2024年01月18日
ジョブ型雇用とは?これで理解できる!特徴・メリット・デメリット・メンバーシップ型雇用との違い
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はじめに

「ジョブ型雇用」という言葉をご存知でしょうか?働き方改革やテレワークの広がりなど労働環境に大きな変化が見られる昨今、企業の採用においてもさまざまな取り組みが始まっています。そのひとつがジョブ型雇用です。ジョブ型雇用とはどのような制度なのかしっかりと理解し、個々人がどう対処すべきか考えて行きましょう。

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用とは、企業が人材の採用に当たりあらかじめ従事する職務・勤務地・労働時間などの条件を明示し、取り決めた内容に沿って雇用契約を結ぶ形態です。ジョブ型採用制度とも呼ばれます。欧米の企業においては一般的な採用形態です。日本においては中途採用の場合概ねジョブ型採用が取られている企業も増えてきています。ジョブディスクリプション(職務記述書)に明記された職務内容に即した人材が採用され職務内容を満たした成果によって評価される制度になります。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い

ジョブ型雇用メンバーシップ型雇用
仕事内容職務記述書に沿った専門性の高い内容業務内容や範囲に明確な定めはない。
ジョブローテーションで総合的に多職種を経験
評価制度スキル重視:年齢・学歴に関係なくスキルのある人を評価する。年齢・勤続年数重視:年功序列が生じる
報酬スキルをもって、職務記述書に記載された内容に対する成果に支払われる。勤続年数・年齢・役割に応じて、判断される。
流動性転職・解雇は多い。 基本的に企業側からの解雇は少ない:終身雇用が多い。
スキル専門性が高い総合的に身につく。
教育採用時、求められるスキルは持っている。
スキルアップ・キャリアアップのために自主的に行う。
採用後、研修やジョブローテーションにより身につける。

メンバーシップ型雇用とは

メンバーシップ型雇用とは

ジョブ型雇用を語るうえで比較対象となる雇用形態が「メンバーシップ型雇用」です。日本における新卒一括採用がメンバーシップ型雇用の典型例です。総合職という呼び名で職種を限定せずに採用し、各種研修を通じて自社の求める人材に育て上げていきます。保有スキルよりもポテンシャルが重視される傾向にあります。
定期的にジョブローテーションも行われます。本人の希望や適性も考慮されますが、基本的には会社を長期に渡って支えてくれる人材を育てて行こうとするものです。
メンバーシップ型雇用が日本に根付いた理由は、新卒一括採用そして年功序列・終身雇用という形態が高度成長期の日本においては長期人材確保に有用だった点にあります。

なぜ今、注目されるのか

なぜ今、注目されるのか

日本でもジョブ型雇用が注目され、大手企業がジョブ型に舵を切り始めているのはなぜでしょうか。その要因をひとことで言えば社会や時代の大きな変化です。人々の意識が変わり働き方についても変革が求められるようになってきたことがジョブ型雇用を促進しています。以下ではその変化について詳しく説明します。

以下記事では、30代でキャリアプランを見直す選択肢の一つとしてジョブ型雇用を紹介しています。30代はキャリアプランを見直す絶好のチャンス?でジョブ型雇用を身近に感じていただけるでしょう。
続いて、ジョブ型雇用の詳しい説明も読み進めてください。

専門的な知識を持つ人材の不足

DX(デジタルトランスフォーメーション)がさまざまな業界で進展するなか、必ず話題に挙がるのがIT人材の不足です。技術は日々進化し企業はスピード感をもって対応していかなければ競争力を失いどんどん置いていかれます。重厚長大な産業が幅を利かせていた高度成長期には想像もつかなかったような世界です。従来の新卒一括採用からジョブローテーションを経るという過程を踏んでいるような時間はありません。最初から専門的な知識を持つ人材を確保しようとする動きは当然の帰結と言えます。

国際的な競争力をあげるため

ビジネスの世界では国境を越えモノやサービスが行き交います。国際化の波のなかで企業が生き残りをかけて戦っていくためには、世界で通用する人材の確保が必要不可欠です。昔ながらの新卒一括採用・年功序列の賃金体系では、優秀な人材はやってきてはくれません。国際的に競争の激しい分野でのスペシャリストの採用という点でもジョブ型雇用への流れは加速していくことでしょう。

働き方の変化

ワークライフバランスという考え方はここ何年かの間で世間にもかなり認知されてきました。仕事と生活の調和、その両方を充実させる働き方・生き方です。会社中心だった高度成長期から見ればこれは大きな変化ですが、そこに近年、政府の推奨する働き方改革やテレワークの普及も相まって、働き方自体にさらに大きな変化が起こっています。朝出社して夕方に退社し1日の大半を会社で過ごすような生活が一般的ではなくなりつつある時代だからこそ、ジョブ型雇用に光が当たっていると言えそうです。

ダイバーシティ観点の広がり

ダイバーシティとは一般的に多様性と訳されます。雇用においては多様な人材の登用による組織の生産性や競争力の向上を指します。多様な人材には年齢、性別、人種などが挙げられますが、例えば次のような場合もダイバーシティの事例と言えます。

  • 子育てと両立しながらの勤務
  • 家族の介護をしながらの勤務
  • 病気の治療を続けながらの勤務

多様性への理解が深まり多様な人材・多様な働き方へのシフトが進むなかで、ジョブ型雇用はその一翼を担う存在となりえるでしょう。

メリットとデメリットは何?

ジョブ型雇用・メンバーシップ型雇用について見てきましたが、以下ではそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。

就業者にとってのメリット・デメリット

まずは雇われる側である就業者の立場からジョブ型雇用のメリット・デメリットをご紹介します。

ジョブ型雇用のメリット・デメリット

メリットデメリット
仕事領域自分の専門分野で仕事ができる担当領域の仕事がなくなる可能性がある
スキル所有するスキル次第で高収入が見込めるスキルアップのための勉強は自分で行わなければならない
転勤意図せぬ転勤はないので、生活基盤の安定が図れる引越しを伴うなど自分に不利益を被らないためには、雇用契約時のジョブディスクリプションの内容が重要
異動会社都合による意図せぬ移動はないが、ジョブディスクリプションに記載された範囲で行われる専門外への移動はないが、スキルを利用できる別部署への移動はある。
解雇自分のスキルを活かせる新たな企業へと転職できるミスマッチや担当領域の仕事が無くなると解雇となる。
転職自分のスキルを高く評価してくれる企業への転職はしやすい転職・中途採用への環境・意識の変革が、現時点では不十分

メリット

次の3点がメリットと言えるでしょう。

  • 自身の得意な分野で仕事ができ、専門知識が活かせる
  • 若い年代でも求められる能力がある場合やスキルアップを図ることにより収入増が見込める
  • 会社都合による望まない転勤や配置換えなどが起こらず、生活基盤の安定が図れる

自分の力に自信があり若くして高い収入を目指す野心的な人はもとより、自分の住み慣れた場所で働き続けたいといった人にも最適な雇用形態と言えます。

デメリット

デメリットを3点挙げてみました。

  • ミスマッチや担当領域の仕事がなくなった場合に解雇される可能性がある
  • 自己研鑽による知識のアップデートや技能の向上が欠かせない
  • 転職やスキルアップなど自己責任による対処が求められる

新卒で入社すればレールに乗って定年まで、余程のことがない限りは解雇される心配のない、日本の古くからの雇用形態に心地良さを感じる人には少々厳しい制度かもしれません。

企業にとってのメリット・デメリット

続いて雇用する側の企業の立場からジョブ型雇用のメリット・デメリットをご紹介します。

メリット

まずメリット3点です。人事制度の改定などが必要になってきますが、健全な企業経営という観点で言えば、企業にベネフィットをもたらすものと言えます。

  • 専門分野に強いスペシャリストが確保できる
  • 若い世代が活躍できる企業として若年層に魅力的に映る
  • スキルアップが見込めない中高年の社員など余剰人員対策となる

デメリット

企業側のデメリットとしては、以下の通りメンバーシップ型の利点であった長期人材の確保が妨げられる点、および導入までのハードルが高い点が挙げられます。

  • 会社都合で人材の配置換えができない
  • より良い条件の会社へ転職されてしまう可能性がある
  • 企業文化の浸透が難しく会社への忠誠心を持った社員が少なくなる
  • 従来のメンバーシップ型から大きく制度改革をしなければならない

ジョブ型雇用の特徴から見える転職する際の注意点

ジョブ型雇用の特徴から見える転職する際の注意点

ジョブ型雇用のメリット・デメリットについて説明してきましたが、以下ではそうした「特徴」から見える就職する際の注意点について詳しく解説します。

ジョブディスクリプションとは

ジョブディスクリプションとは日本語に訳すと職務記述書となります。従事する職務内容や権限・責任、必要なスキルなどをまとめたドキュメントです。
ジョブ型雇用の根幹となるもので、これを拠り所に採用にあたって企業と個人が契約を結ぶ形となります。ジョブディスクリプションが存在しなければジョブ型雇用とは言えません。ジョブディスクリプションの作成において企業は、賃金制度から人員配置、仕事の仕方、組織編成などのルール作りを行う必要があります。そして求人にあたっては、次のような内容を明示します。

  • ポジション名
  • 職務の目的
  • 職務内容と範囲
  • 職務の責任
  • 求められる経験、知識・技能、資格など

なおジョブ型雇用を採用している会社に就職を考えている場合は、以下の点を面接などで確認しておくことが大切です。

仕事範囲はどこまで

ジョブディスクリプションに記載された内容が仕事の範囲になります。契約期間中は記載された仕事範囲のみを担当しますので、手が足りないからと言って範囲外の仕事を振るような行為は契約に反します。
昇給・降格、異動・転勤もジョブディスクリプションの記載に従い行われます。仕事内容と報酬は対になっていますので、同じ仕事を続けている場合は、権限や責任が変わらない限り給与も変わらない場合が多いです。

評価制度はあるの?

ジョブ型=成果主義ではありません。ただしジョブディスクリプションの範囲内で職務を遂行し成果を上げることを求められます。ジョブディスクリプションは求人時以外に人事評価の際に使用されます。ジョブディスクリプションをベースにおいた評価は職務等級制度と呼ばれます。定期的な評価・レビューにより、ジョブディスクリプションの内容をクリアできているかが確認されます。

給与形態は変わるのか

前述の職務等級制度では仕事内容に報酬が直結します。報酬の仕組みが分かりやすい制度と言えます。ジョブ型雇用にはメンバーシップ型のように社員やその家族の生活まで面倒を見るといった概念はありません。そのため例えば住宅手当などは無くなる可能性があります。勤務時間・残業代・通勤費などもジョブディスクリプションの内容に従います。
何よりスキルが重視されますので、若い年代でも高いスキルがあれば高収入が望める給与形態と言えます。

終身雇用は無くなる?

ジョブ型に終身雇用という概念はありません。ミスマッチや何らかの理由で職務範囲がなくなると解雇になる場合があります。
逆に雇われる側は自身のスキルを高く評価してくれる企業を求めて転職しやすくなるとも言えます。転職すること自体は一般的になってきましたが、社内制度に年功序列・終身雇用が色濃く見られる企業はいまだ多いです。ジョブ型の環境がまだまだ整っていない、いままさに過渡期にあると言えそうです。

ジョブ型雇用は日本に根付くのか

ジョブ型雇用は日本に根付くのか

旧態依然とした印象もあり昨今では批判の多いメンバーシップ型雇用ですが、元々は豊かなアメリカの生活に憧れその企業形態を模したところにその端を発しています。古来より日本人は海外の文化を取り入れ日本の文化と融合させ、日本独自の文化を生み出すことができる柔軟性に富んだ気質を持ち合わせています。メンバーシップ型雇用はいまの時代に合わず機能不全を起こしている状況です。ジョブ型雇用がそのメリット・デメリットも踏まえつつ徐々に根付いていくのも時間の問題かもしれません。

まとめ

ジョブ型雇用への移行は日本ではまだ動き出したばかりです。今後ジョブ型雇用が多くの会社で採用されるかについてはまだ結論は出せません。
ただ現在の社会情勢を見ると、専門分野の高度な知識が必要な分野についてはジョブ型雇用がデファクトスタンダードになり、その対象は広がっていくことが十分に想像できます。
自身のスキルに自信があり、その対価として高収入を望めるジョブ型雇用はスペシャリストにとっては有益な雇用制度と言えます。日頃から専門性を高めておくことで、今後進展するであろうジョブ型雇用に備えておくことが肝要と言えそうです。

最後のチェックポイント

  • ジョブ型雇用はあらかじめ従事する職務などを明確に取り決める雇用形態
  • メンバーシップ型雇用は日本の新卒一括採用に代表される職務などを定めない雇用形態
  • IT人材の不足、国際化、働き方の変化、ダイバーシティといった点からジョブ型雇用は注目されている
  • ジョブ型雇用で就職する場合は、仕事範囲/評価制度/給与形態などを面接で確認することが大切
  • ジョブ型雇用が今後増加することを念頭に専門性を高めておくことが肝要

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