ブラック企業の特徴|入社しないために見分ける方法【失敗しない会社選び】
はじめに
ブラック企業に入社しないよう、事前に見分ける方法はあるの?
自分の働いている会社はブラック企業かもしれない。どうすればいい?
などとお悩みでしょうか。
長時間労働や給料の未払い・パワーハラスメントが日常的に横行している職場は、一般的にブラック企業と呼ばれます。 本記事では、ブラック企業の特徴や事前に見分ける方法、ブラック企業に入社してしまった場合の対応策について解説します。
絶対にブラック企業に入社したくない、就職活動で選考中の企業がブラック企業かどうか知りたい、今まさにブラック企業で働いているという方の力になれる内容になっています。
ブラック企業とは
ブラック企業とは、長時間労働や給料の未払い・パワーハラスメントが日常的に横行している職場のことをいいます。
厚生労働省のWebサイトでは、ブラック企業について以下のように記載しています。
- 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す。
- 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い。
- 労働者に対し過度の選別を行う。
参考:厚生労働省|確かめよう労働条件
ブラック企業はなぜ生まれてしまうのでしょうか。
例えば飲食業や宿泊業、流通業などの業界は、多くの労働力が必要とされているにも関わらず、一人あたりの労働生産力が低いため全体的に長時間労働になりがちです。
また、旅行会社や出版社、ウエディング関連などの人気のある業種は、志望者の多いことを理由に人材を使いつぶす、いわゆる「やりがい搾取」を行う傾向が指摘されています。
これらの職種は、競争が厳しく利幅も少ないため賃金も上がりにくく、構造的にブラック企業になりやすいといえます。 ブラック企業が生まれる背景には、上記のような労働者と企業の関係性や業界の特徴などが深くかかわっています。
ブラック企業の特徴
ブラック企業の特徴を見ていきましょう。以下の特徴に当てはまるものが多いほど、より労働環境が悪い企業だといえるでしょう。
長時間労働
労働時間に関しては、法定労働時間について厚生労働省で以下のように定められています。
- 原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならない。また、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える必要がある。
- 36協定では1年間で360時間、月45時間の残業時間を超えてはならない
- 上記、法定労働時間を超えて労働(残業)を命じる場合、企業は労働基準法36条に基づく労使協定(通称サブロク協定)を届け出る必要がある。
- ただし、臨時で限度時間を越え時間外労働をする必要がある際は特別条項付き36協定を結ぶことが可能。
- 特別条項付き36協定により残業の上限を延長できるのは年6回。
- 特別条項付き36協定が適用されるには具体的に特別な理由を記載する必要がある。
参考:厚生労働省|労働時間・休日
あなたは1日に何時間働いていますか? 長時間労働をしている場合、勤務先企業は法律に違反しているかもしれません。まずは上記の条件と自分の働いている状況を照らし合わせてみましょう。
また、時間外労働の上限についても36協定により月45時間・年360時間までと定められています。基準を上回ると企業に罰則が与えられます。
休日が少ない・有給休暇が取りづらい
ブラック企業は基本的に休日が少なく、休暇も取りづらい環境にあるといえます。しかし、企業は労働基準法第35条1項と2項では、本来労働者に週に1回、もしくは4週間に4日以上の休みを与えなくてはならないと定められています。法律の内容として、労働基準法35条1項で定められているのが法定休日でそれ以外の休みは法定外休日です。
年次有給休暇(以下有休)に関しても、6ヵ月間勤務をすると10日分、6ヵ月以降は1年ごとに1日ずつ、3年6ヵ月以降は2日ずつ増加した日数(年間で最大20日)が与えられます。
有給休暇に対しては、時季変更権もトラブルになりやすいといえます。よくあるパターンとして「繁忙期だから有休はとれない」などがブラック企業の言い訳の一例です。企業は労働者が有給休暇を取得することで事業の正常な運営を妨げる時、他の時季に有休取得を与えることを前提に労働者の時季指定を拒否できます(労働法39条5項但書)。「繁忙期だから~」は、この権利を根拠にしているのでしょう。
しかし、法的には労働者の持つ「有給休暇を取得する権利」のほうが強いため、企業側が時季変更権を行使する場合には、労働者との合意が必要です。こちらの予定も聞かずに強引に休暇日を変更されるという場合には、労働組合や最寄りの労働基準監督署に相談しましょう。
とはいえ、「労働者の権利」を盾に自分の主張だけを通そうとするというのもトラブルの元です。有休取得をする際は社内の繁忙期と重ならないことや周囲の方との業務調整をしっかり行うようにしましょう。
給料が低い・残業代の不払い
ブラック企業では給料が低いだけではなく、残業代の不払いが頻繁に起こります。厚生労働省では「地域別最低賃金の全国一覧」を掲載しています。自分の労働時間と給料を見比べてみましょう。厚生労働省の「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」も参考にしてください。
また、残業代は基本給ではなく基礎賃金を元に計算されます。基本給をベースに残業代が計算されているなら、本来もらえる額の残業代をもらえていない可能性があるため注意しましょう。
また、変形労働時間制で勤務している方も要注意です。労働時間を1日単位ではなく、月・年単位で計算する働き方です。繁忙期・閑散期のある業界でよく取り入れられます。変形労働時間制を採用している企業の中には、就労時間をごまかしている企業もあるため、自身の法定時間が超えていないかを確認しましょう。
参考:厚生労働省|地域別最低賃金の全国一覧
参考:厚生労働省|最低賃金額以上かどうかを確認する方法
不明確な雇用契約(名ばかり管理職)
例えば社員を無理矢理管理職として扱い、負う必要のない責任を押し付けたり、残業代を支払わなかったりすることがあります。一般的に管理職は課長以上であるものの、企業によってどこからが管理職なのかは統一されていません。(管理職という名称は労働基準法第41条の管理監督者とは異なります)
この場合、会社の中で持っている肩書きと、法律上の管理職である「管理監督者」は重ならない可能性が高いです。いわゆる「名ばかり管理職」と呼ばれる状態です。「管理監督者」として認められるには、会社の経営陣と一体的に行動するといった厳しいルールがあり、課長などの役職がついているだけでは認められないケースが多いです。肩書きや待遇を利用して社員を不利な立場に追い込むのもブラック企業の特徴です。
過度なノルマと精神論
入社してすぐに行われる研修でも人格否定やグループ内での序列決めなどが横行している場合、それはブラック研修といわれるものです。即日退職もあり得ます。
また、達成困難なノルマを課され達成できないと理不尽に怒鳴られるなんてことありませんか?つまり、精神論を第一としている上司や社長がいる会社はブラック企業かもしれません。
精神論自体は一概に悪いというものでもありません。ただし、ブラック企業の場合、何をするにしても「精神力」「気合」「やる気」といった言葉が振りかざす傾向があります。
どんなに理不尽なことも感情的な言葉で正当化し、対応せざるを得ない状況に追い込まれるようならまさにブラック企業と言えるでしょう。
新卒社員の場合、社会人経験が浅いことにつけこんで、「うちの会社ではこれが当たり前」などと理不尽なルールを押し付けられる場合があります。少しでも「おかしいな」と感じたら、そのルールが法令違反でないかどうか確認してみましょう。厚生労働省が、全国各地に総合労働相談コーナーを設けています。最寄りの相談コーナーを利用してみるのも良いでしょう。
パワハラ・セクハラの横行
ブラック企業ではパワハラ・セクハラが頻繁に発生する傾向があります。会社におけるパワハラとは、上司から頻繁に暴言・嫌味などの言葉の攻撃や、大量の仕事を課されるといったいやがらせ、無視や連絡事項の遮断などです。
セクハラは性的な発言や行動によって、個人または企業全体に不快感を与えることです。セクハラに男性女性は関係ありません。
低いコンプライアンス意識
ブラック企業は経営陣のコンプライアンス意識が低い傾向にあります。コンプライアンスとは簡単にいうと法令順守のことですが、倫理観や社会規範のことも含まれます。
例えば、労働者の長時間労働を気にしないや休日がとれないといった問題は、経営陣の法令遵守の意識が低いことの表れです。有給休暇などに関しても、労働者の権利として定められている事項であるため、会社都合で認めないなどはコンプライアンスが低いといえます。
反対にホワイトといわれる企業とは
ブラック企業とは逆に、コンプライアンス意識が高く社員の声に耳を傾けている企業はホワイト企業と呼ばれます。
もちろん、ホワイト企業といわれる企業も人間が運営しているので、長時間勤務やパワハラがまったく起こらないわけではありません。ですが、それらが起こりにくい仕組みが社内に設けられており、もしもトラブルがあった場合にもしかるべき対応がとられるので、誰もが安心して働ける環境となっています。
詳しくは、ホワイト企業とは?主な特徴とホワイト企業を見分ける方法をご覧ください。
ブラック企業を見分ける方法
そもそもブラック企業には入社したくないですよね。
ここでは、ブラック企業を見分けるコツをご紹介します。 ただし、ご紹介する方法はあくまでも目安です。一つ当てはまったからといってブラック企業かどうかを見極めるのは難しいので、いくつもの方法で総合的に判断してください。
いつでも求人を出している
企業規模が大きくないにもかかわらず、求人サイトやハローワークなどで常に求人を見かける企業は要注意です。
人を雇っても長続きせずに辞めてしまうために、短期間で何度も求人を出している可能性があります。人が長続きしない職場というのは、言わずもがなブラック体質である可能性が高いです。 ただし、規模の大きな会社や急成長中の企業においては大量募集していても不思議ではないので、その限りではありません。求人情報を見る際には、「なぜ求人募集を出しているのか」という観点で、企業のWebサイトなどを確認するとよいでしょう。
みなし残業代の割合が多い
給与に「固定残業代を含む」と表記のある求人を見たことがあると思います。
固定残業代(みなし残業代)とは、毎月の給与にあらかじめ「何時間残業する」とみなした分の残業代を含めて支払う方法です。固定残業代という仕組み自体は違法ではありません。
この固定残業代の「何時間残業する」というみなし時間数が、「残業時間が多いか少ないか」を測る一つの指標になります。
例えば、固定残業時間が20時間の会社と30時間の会社があれば、より時間数の多いほうが月々の残業時間が長い可能性があります。
ちなみに、「45時間分の残業代を含む」と記載されていれば、残業をしてもしなくてもほぼ同じ給料ということになります。時間外労働の上限は原則として月45時間までと定められているからです。
「固定残業代を含む」と記載のある求人情報では、その対象となる時間数にも注目しましょう。
給与が高すぎる
特別な技能が必要ではないのに給与が高い求人は、「給与を高くしなければ人が集まらない」会社である可能性があります。
例えば、給料が高い分、残業や休日出勤をしなくてはならなかったり、長時間分のみなし残業代が含まれていたりと、想定外の条件が付いている場合があります。 求人内容をよく読み、わからない点は面接時に確認するなど、できるかぎり情報を集めましょう。
離職率が高い
離職率を知りたい場合は、会社四季報(東洋経済新報社)で知ることができます。「3年後離職率」の欄を確認してみましょう。
すべての企業のものを知れるわけではありませんが、株式上場している大手企業であれば掲載されています。 一部非公開になっている企業もありますが、こうした会社については、面接の機会に確認してみるとよいでしょう。
口コミサイトは客観的事実を見る
実際にその企業で働いている人や過去に働いていた人が書き込む「口コミサイト」も有効活用しましょう。
ただし、こういったサイトは、書き込みをする代わりに、他の会社の情報を見ることができる仕組みになっているものがほとんどです。つまり、すでに退職した人や転職を考えている人が、他の企業の口コミを見たいがために書き込んでいる場合が多いのです。
何らかの不満があり会社を辞める人も多いので、口コミも必然的にネガティブなものが多くなります。
ここで重要なのは、「客観的な事実かどうか」に注目すること。
例えば、「給料が安い」や「残業が多い」などは個人の感想です。「給料が5,000円上がった」や「残業時間は毎日2時間程度だった」など客観的な数字などがある書き込みに注目しましょう。
会社のエントランスや社内が汚い
面接などで会社を訪れた際には、エントランスや社内の「清潔感」にも注意を払いましょう。
特にエントランスは会社の「顔」ともいえる重要な場所です。人目に触れやすい場所が汚れているような会社は、「外部からどう見られるか」ということにも気を使う余裕のない会社、または社員から大事にされていない会社である可能性があります。
オフィスが清潔に保たれているかどうかを注意深く見るようにしましょう。
会社訪問時に社員があいさつしない
面接の際に社内を案内されることもあるでしょう。その際にすれ違う社員の表情や態度にも、会社の状態を見極めるヒントがあります。 外部の人に対して挨拶をしない会社は要注意です。理由は、社内が汚い場合と同様で、「外部からどう見られているか」に無関心な会社である可能性が高いからです。
電話対応が悪い
電話対応が悪い企業も、前述の「社内が汚い」「社員があいさつしない」と同様の理由で要注意です。
社外への対応について無関心な会社は、社員から大切に思われていない可能性があります。 また、電話応対の方法は入社時に必ず研修を受けるものです。対応が悪いということは、社員に十分な研修を受けさせていない可能性が考えられます。
深夜も窓に明かりが点いている
夜10時を過ぎてもオフィスに明かりが点いている企業にも気を付けましょう。深夜残業が常態化している可能性があります。
ただし、シフト勤務のある業界であれば、夜10時以降も通常勤務している場合がありますので、ケースバイケースになります。
面接時に選考とは関係のない質問をされる
面接時に、応募者の家族構成の話や政治の話をするような企業にも要注意です。
こうした話題は、面接時にたずねることとして「ふさわしくないもの」として厚生労働省が注意喚起しています。
こうした質問をする企業は、コンプライアンス(法令順守)意識の低い企業である可能性があります。
労働時間やハラスメントについても無頓着である可能性があるため要注意です。
面接官からこうした質問が出た際にも答える義務はありません。
参考:厚生労働省|公正な採用選考の基本
ブラック企業に入社してしまった場合の対処法
では、勤め先がブラック企業だった場合はどうすればよいのでしょうか。ここからは今ブラック企業で働いている方がとるべき行動について紹介します。
社内で改善を試みる
まず、対処法のひとつに、労働組合や社内にある相談機関に相談することが挙げられます。しかしブラック企業の場合、そもそも労働組合が存在しない、または機能していないことがほとんどです。そんな方のために「合同労組」というものがあります。
合同労組とは、ひとつの企業からではなく、複数の企業の従業員が集まり、結成された労働組合のことで、個人で加入することが可能です。会社を改善しようと考えている人々に相談することで、自社の労働環境の改善につなげます。
徐々に社内の賛同者を募り、最終的に会社に改善案を提示しましょう。従業員がひとりでは相手にされないことがほとんどですが、結束して改善を求めれば会社も対応をせざるを得ません。
社外の信頼できる相談機関に頼る
次の手段として、社外の信頼できる相談機関に頼るというものがあります。例えば、厚生労働省の「総合労働相談コーナー」や労基署の法テラスなら無料での相談が可能です。
総合労働相談コーナーは、職場のトラブルを解決するための情報提供を行っており、法テラスでは問題に応じて適切な法制度や相談窓口の紹介を行っています。社内の問題を社内だけで解決するのは困難です。積極的に外部の相談機関に頼りましょう。
参考:厚生労働省|総合労働相談コーナーのご案内
証拠を集める
会社から受けているブラックな扱いについては、証拠を取っておくようにしましょう。
主に、雇用契約書や就業規則、給与明細、タイムカードなどの文書類、送受信メールなども証拠になりえます。
例えば残業代の未払いがある場合、日々の勤務開始時間と終了時間を記録してあるタイムカードは有力な証拠となります。未払い残業代は、退職した後でも3年前までさかのぼって請求することが可能です。その際に、実際の勤務時間に基づいて、未払いとなっている差額分を取り返すことが可能です。もしもタイムカードがない場合は、パソコンのログイン情報やメールでの日報送信時間なども証拠となりえます。
ただし、証拠としてデータを持ち出す場合には注意が必要です。タイムカードなどの書類は会社の所有物ですので、そのものを持ち出すのは罪になります。スマートフォンのカメラで撮影するなど、持ち出し方に配慮しましょう。 業務メールも同様に、企業の機密情報を含んでいる場合があります。送受信メールの一覧画面をスマートフォンの画面で撮影するなど工夫しましょう。
退職する
日常的に法令違反を繰り返す企業に長く勤める必要はありません。可能な限り早めに退職を検討しましょう。
ただし、なるべくなら転職先を決めてから辞めることをおすすめします。職歴に空白期間があると、転職活動で不利になりますし、収入が途絶えてしまうので経済的にも苦しむことになります。
また、未払い残業代がある場合は、退職前に前述の証拠を集めておくことも忘れず行いましょう。 あなたが退職の意思を示せば、上司や先輩からの引き留めにあうでしょう。感情的に「根性がない」などとののしられてしまうこともあるかもしれません。しかし、ブラック企業を辞めるのに罪悪感を覚えたり卑屈になったりする必要はありません。あなた自身の人生を楽しむために、きっぱりと縁を切りましょう。
まとめ
本記事ではブラック企業の特徴、ブラック企業を見分ける方法、ブラック企業に入社してしまったときの対応策を解説してきました。
ブラック企業は、労働者に対して違法な行為を繰り返している可能性が高いです。まずはブラック企業に入社しないことが一番大切です。もしも今ブラック企業で働いている場合は、まずは相談機関に話してみましょう。 また、いつまでもブラック企業で働く必要はありません。逃げる場所は必ずあります。過酷な環境で無理して働いて、心や体を壊してしまっては元も子もありせんので、環境を変えることも真剣に考えてください。
最後のチェックポイント
- ブラック企業は長時間労働や休日が少ないなど、精神的・肉体的に従業員を追いつめる
- ブラック企業に入社しないために、いくつもの方法で企業の下調べをする
- ブラック企業から抜け出すには、まず外部機関への相談が必要
- 未払い残業代があるなら証拠を集めておく
- ブラック企業にいるなら、早めに退職を検討する