業務委託とは?契約の種類・メリット・注意点を徹底解説


はじめに
- 業務委託とは、雇用関係のない企業から業務を受託して報酬を得る働き方のこと
- 民法上の「請負契約」「委任契約」「準委任契約」を総称して「業務委託契約」と呼ぶ
- 働き方の自由度が高く、スキルの熟練度を伸ばしやすい点が、業務委託のメリット
- 営業・業務・事務・会計のすべてに自身で責任を負う必要がある
- トラブル回避のため、業務委託契約書の項目は細かくチェックすることが重要
近年では副業や兼業、フリーランスなど、企業に所属する働き方以外の選択肢が増えています。選択肢の一つとして注目が集まる業務委託とはどういった働き方なのか、正社員や派遣社員と比べて何が違うのか、疑問点も多いでしょう。
この記事では業務委託とは何か、他の契約形態と何が違うのか、メリット・デメリットと併せてご紹介します。
業務委託とは
業務委託とは、雇用関係のない企業から業務の委託を受け、特定の業務や成果物を提供することで報酬が支払われる働き方です。法的に業務委託という名称の契約は存在しませんが、民法上には「請負契約」「委任契約」「準委任契約」という三種の契約があり、これらを総称して「業務委託契約」と呼ばれています。
業務委託の種類
業務委託は、前述したように三つの種類があります。「請負契約」は、成果物の完成を約束し、その対価に報酬を約束する契約です。「委任契約」と「準委任契約」は、どちらも業務の履行自体に報酬が支払われる契約です。ただし、委託された業務が法律行為を伴う場合は「委任契約」と、法律行為を伴わない場合は「準委任契約」と呼ばれます。
委託される内容 | 特徴 | 主な職種例 | |
---|---|---|---|
請負契約 | 仕事の完成を約束し、その対価に報酬を約束する契約 | 完成した成果物に不備がないか、問題なく納品されたかどうかのみ問われる | ・Webデザイナー ・ライター ・プログラマー |
委任契約 | 業務の履行自体に報酬が支払われる契約で、法律行為を委託する契約 | 法律行為を扱う業務の遂行のみ求められる | ・弁護士 ・税理士 ・社会保険労務士 |
準委任契約 | 業務の履行自体に報酬が支払われる契約で、法律行為以外の業務を委託する契約 | 法律行為を扱わない業務の遂行を求められる | ・ITエンジニア ・コンサルタント ・ドライバー |
業務委託と他の契約形態との違い
業務委託は「業務委託契約」を取り交わす契約の一つで、企業に雇用される関係ではありません。一方、雇用契約や派遣契約は、企業に雇用される関係です。
ここからは、他の契約形態との違いについて、個人事業主・フリーランスも併せてご紹介していきます。
雇用契約・派遣契約との違い
業務委託は企業側と雇用関係になく、成果物の納品または成果を上げることで報酬を得ます。業務時間や順番・方法などの指示を受けない点が特徴です。雇用契約とは雇用関係の有無に、派遣契約とは業務指示の有無や報酬の評価対象に大きな違いがあります。
特徴 | 業務委託との違い | |
---|---|---|
雇用契約 | 企業と結んだ雇用契約に従って業務にあたり、報酬を得る | 業務委託は、企業と雇用関係にならない |
派遣契約 | 人材派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業で業務に就く 業務時間で報酬が支払われるが、業務指示や社内ルールの遵守を求められる | 業務委託は、業務時間や順番・方法などの指示を受けず、成果物の納品または成果を上げることで報酬を得る |
個人事業主・フリーランスとの違い
業務委託は、雇用契約を結ばずに業務の全体または一部を、フリーランスや外部企業へ委託する契約方法のことです。働く時間や業務方法は受託者の裁量に一任されており、成果物の完成度または上げた成果の結果にのみ責任を負います。個人事業主とは契約形態や責任範囲に、フリーランスとは定義されている働き方に違いがあります。
特徴 | 業務委託との違い | |
---|---|---|
個人事業主 | 個人として事業を営む、法的には自営業者のことを指す 提供する商品やサービスに対して全面的な責任を負う | 業務委託は、成果物の完成度または上げた成果にのみ責任を負う |
フリーランス | 働き方の定義・概念の名称 企業に属さず、個人で案件・業務を請け負う働き方と定義されている | 業務委託は、業務の全体または一部をフリーランスや外部企業へ委託する際の契約方法のことを指す |
業務委託のメリット・デメリット
業務委託を受けて働く場合、さまざまなメリット・デメリットが存在します。ここからは、メリット・デメリットを併せて五つ、ご紹介します。
働き方の自由度が高い
業務委託は、企業側から業務時間や進める順番・方法などを指示されることがないため、受託した業務内容に合わせて、自分に適した時間や場所を選んで働くことが可能です。勤務地や勤務時間などの定めがある正社員と比べると、働き方の自由度が高いと言えます。受託した成果物を完成・提出が問題なくできれば、家庭や趣味と両立しやすいでしょう。
得意分野のスキルが伸ばせる
業務委託では自身で仕事を探すため、受注する案件を得意分野や専門スキルの活かせる仕事のみに絞ることが可能です。スキルの熟練度を上げたい、興味のある分野に挑戦したいなど、自身が理想とする働き方に合わせて契約先を選択できます。
収入が不安定になりやすい
業務委託で収入を得るには営業活動を行って案件を獲得し、業務を完遂させて報酬を受け取るまでの流れを、すべて自分でこなさなければなりません。営業がうまくいかずに契約が十分に取れなかった場合は、収入激減や収入ゼロになる可能性があり、この点は業務委託の大きなデメリットです。
経験やスキルをうまくアピールするためには、得意分野や受注したい案件に適したスキルがあるかを整理し、売り込み方を工夫していく必要があるでしょう。
雇用保険や労災保険に加入できない
業務委託で働く場合、企業と雇用関係になく、委託・受託の関係性です。雇用保険や労災保険は雇用契約を結んだ者を対象に適用される法律であるため、雇用契約を結ばない業務委託には適用されず、加入できません。また、業務委託で働くと個人事業主に該当するため、労働基準法も適用外となります。
営業・事務・会計などを自力で行う必要がある
前述したように、業務委託で収入を得るには営業から報酬を受け取るまでの流れすべてを自分でこなす必要があります。その他、契約関連の事務作業や、保険料・確定申告などの税務処理も自分で行わなければなりません。自身の裁量で自由に仕事を進められるメリットがある反面、企業に雇用される場合よりも責任が増大することを念頭に置きましょう。
業務委託で働く際の注意点
業務委託で働く場合に必要となるのは、契約書の内容や提出物・申請ごとの確認です。それぞれに注意しておくべきポイントを見ていきましょう。
業務委託契約書の内容をチェックしよう
業務委託のトラブルを避けるためには、業務委託契約書の内容が合意通りに明記されているかを確認してから、業務を受託することが重要です。チェックしておくべき項目は以下の七点です。
- 委託の業務範囲
- 求められる成果物の内容
- 契約期間と更新の有無
- 契約解除の条件
- 報酬額や支払方法
- 成果物の権利
- 業務の秘密保持義務
上記の項目がチェックできないまま契約を取り交わしてしまうと、成果物を納品しても報酬が得られない、といったトラブルが起きやすくなります。事前に十分な合意形成を行うことはもちろん、契約書の内容に間違いがないかチェックを怠らないことが、契約時の重要なポイントです。
開業届を提出して確定申告(青色申告)に備えておこう
業務委託で働いている場合、以下の条件に当てはまる人は自身で確定申告を行う必要があります。
- 年間の「事業所得」が48万円を超える
- 年間の「雑所得」が20万円を超える
事業所得と雑所得に明確な線引きはありません。一般的な括りとして、事業所得は「長期的に継続収入・利益が得られること」とされ、雑所得は「単発的な原稿料や講師依頼の謝礼金など事業と言いがたい収入・利益のこと」とされています。
また、業務委託で働く際には、所得税法第229条に定められている開業届を提出する必要があります。提出期限もありますので、忘れずに提出を行いましょう。
第二百二十九条 居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。
参照元:所得税法 | e-Gov 法令検索
開業届が提出できていれば、確定申告時に「青色申告」を届け出て「青色申告特別控除(最大65万円までの特別控除)」を受けられるようになります。開業届を提出していない場合は控除が受けられないため、本業として業務委託で働く人は、開業届の提出忘れに注意しましょう。
まとめ
業務委託とは、雇用関係がない企業から業務を受け、成果物の納品・提供で報酬を得る働き方です。法的には業務委託という契約は存在せず、請負契約・委任契約・準委任契約の三種を総称した「業務委託契約」が名称の由来です。企業からの指揮や命令を受けないため、働き方の自由度が高いことや得意分野を活かせるメリットがある反面、収入が不安定で労働基準法の適用外といったデメリットもあります。営業はもちろん事務・会計なども自身で行わなければならないため、契約書の確認や開業届の提出などをしっかりと行い、トラブルを避けることが重要です。