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「労災」とは?仕組みと補償内容、申請方法を解説!

date2025年01月20日
「労災」とは?仕組みと補償内容、申請方法を解説!
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はじめに

  • 労働災害(労災)とは、労働中の災害のこと
  • 労災保険とは、労災認定された事案に対して補償する国の制度のこと
  • 労災保険の加入対象者は、パート・アルバイトを含むすべての労働者
  • 労災の治療に健康保険は使えない
  • 企業が労災を認めてくれない場合でも、労災申請手続きは行える

労災(労働災害)とは

労働災害(労災)とは、労働中の災害のことです。
主に、業務災害(業務中の災害)と通勤災害(通勤中の災害)に大別され、労働者が労働中や通勤中に負傷・病気・死亡などの被害に遭う状態を指します。

近年では、身体的な被害だけでなく、心理的な被害に対しても労災認定されるケースが増えています。

労災保険とは

労災保険とは、労災と認められた事案に対して、国が労働者や遺族に保険給付を行う制度です。
医療機関では、労災保険と健康保険を併用できませんので覚えておきましょう。

労災保険の給付は労災申請を行えば受け取れます。
また、必ずしも企業の同意や承認を得る必要はありません。

労災保険の適用条件

一部の例外を除き、労災保険はほぼすべての企業が加入するように義務付けられています。
以下から、労災保険が労働者に適用される条件について解説します。

加入条件や対象者

労災保険は企業が加入する保険です。
原則として従業員を1人でも雇えば、企業側に加入義務が発生します。
労災保険の保険料負担は全額事業主ですが、事業主が労災保険に加入していなかったり労災保険料を滞納していたりした場合でも、労働者は補償を受けられます。

また、労災保険は、パート・アルバイトを含むすべての労働者に適用されて年齢制限もありません。

特別加入対象者

労災保険の「保険給付対象者」は事業主に雇われた労働者のみです。
ただし、以下の方は業務の実態や災害の発生状況などから、労災保険の特別加入対象となります。
以下から一例をご紹介します。

  • 中小企業の経営者・役員
  • 一人親方
  • 特定作業従事者(特定農作業従事者・アニメーション制作作業従事者など)
  • 個人事業主・フリーランス

労災保険が適用されないケース

労災が適用されにくい・認められないケースも存在します。
以下から一例をご紹介します。

  • 就業中の私的行為・業務と無関係の行為などにより、被害に遭った場合
  • 故意に災害を発生させた場合
  • 個人的な恨みやケンカにより、第三者から暴行を受けた場合(業務との関連性がない場合)
  • 地震・台風など天災地変によって被災した場合(職場の立地条件や作業条件・作業環境などに起因しない場合)

また、就業時間外の災害(昼休み・休憩時間・就業時間前後・職場の忘年会)などで発生した災害も、業務と無関係のため労災は認められにくいです。
しかし、事業場の施設の設備・管理状況などが原因で災害が発生した場合は業務災害と認められるケースがあります。

なお、生理的行為にあたるトイレや出張中の災害に関しては業務に付随する行為とみなされますので、就業中の災害と同様に扱われます。

労災保険の補償内容

労災保険の補償の種類について以下から解説します。

療養(補償)等給付

療養(補償)等給付とは、労災認定されて療養が必要なときに傷病が治癒するまで支給される補償のことです。
ここでの「治癒」は心身ともに健康状態まで回復した状態だけでなく、傷病の症状が安定して、医療を継続しても効果が期待できなくなった状態も含みます。

また、療養(補償)等給付の請求権は療養費を支出した日ごとに発生し、その翌日から2年経つと時効になります。

休業(補償)等給付

休業(補償)等給付とは、労災で療養する間に労働ができない(賃金を受け取れない)期間に支給される補償のことです。病気やケガが治り、職場に復帰できるまで適用されます。

単一事業労働者(勤務先が1か所である労働者)の場合、休業4日目から「休業補償給付」と「休業特別支給金」を合わせた80%が支給されます。

裏を返せば、休業初日から3日までの「待期期間中」は、国から補償が出ません。
ただし、業務災害の場合は待期期間中でも事業主が休業補償を行う義務がありますので、事業主へ請求することが可能です。

また、休業(補償)等給付は、賃金を受給しない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年経つと時効になります。
たとえば、2025年1月1日に休業した分の給付金が請求できるのは、2027年1月2日までです。

傷病(補償)等年金

傷病(補償)等年金とは、労災で療養を開始してから1年6か月を経過した日、またはその日以後以下の要件に該当する場合において支給される補償のことです。

  1. 労災の原因となった病気やケガが治っていないこと
  2. 1の障害の程度が厚生労働省の発表している傷病等級表の傷病等級に該当すること

傷病(補償)等年金が支給される場合は、休業(補償)等給付の支給は行われません。
一方、療養(補償)等給付は引き続き支給されます。

また、傷病(補償)等年金の支給・不支給の決定は、所轄の労働基準監督署長の職権によって行われますので、請求手続きも時効もありません。

障害(補償)等給付

障害(補償)等給付とは、労災で治療を受けたケガや病気が治ったものの、身体に一定の障害が残った場合に支給される補償のことです。
障害の程度に応じて1級から14級までの等級があり、給付金額が異なります。
ケースごとに支給される障害(補償)等給付の種類が異なりますので、以下をご参考になさってください。

  • 業務災害の場合

    障害補償給付が支給される

  • 複数業務要因災害の場合

    複数事業労働者障害給付が支給される

  • 通勤災害の場合

    障害給付が支給される

また、障害(補償)等給付の時効は、傷病が治癒した日の翌日から5年です。

遺族(補償)等給付・葬祭料等(葬祭給付)

遺族(補償)等給付・葬祭料等(葬祭給付)とは、労災で亡くなった労働者の遺族に対して支給される補償や葬祭料のことです。

遺族(補償)等給付の受給資格者となるのは、被災労働者の死亡当時、死亡された方の収入で生計を立てていた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です。ただし、妻以外の遺族に関しては、年齢や障害の有無などが受給条件に影響します。

また、遺族(補償)等給付の時効は被災労働者が亡くなった日の翌日から5年、葬祭料等(葬祭給付)は被災労働者が亡くなった日の翌日から2年です。

介護(補償)等給付

介護(補償)等給付とは、障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金の受給者のうち、障害等級・傷病等級が第1級のすべての方と第2級の一部の方に支給される補償のことです。

常時介護を受けている場合は81,290円から177,950円が、随時介護を受けている場合は40,600円から88,980円が支給されます(令和6年4月1日現在)。

また、介護(補償)等給付の時効は介護を受けた月の翌月1日から2年です。

二次健康診断等給付

二次健康診断等給付には、二次健康診断と特定保健指導があります。
まず、二次健康診断等給付とは、労働安全衛生法に基づいて行われる定期健康診断(一次健康診断)で、以下の4つの検査項目に「異常の所見」があると診断された場合に受けられます。

  1. 血圧検査
  2. 血中脂質検査
  3. 血糖検査
  4. 腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定

また、上記に加えて、「脳・心臓疾患の症状を有していないこと」「労災保険の特別加入者でないこと」が給付の条件です。

一方、特定保健指導では二次健康診断の結果に基づき、保健指導を行ってくれます。
具体的には、脳・心臓疾患の発症予防に向けて医師や保健師から、「栄養指導」「運動指導」「生活指導」の3つの指導が受けられます。

二次健康診断等給付の時効は、一次健康診断の受診日から3か月以内です。

労災保険の申請方法

労災保険の申請手続きについて以下から解説します。

療養の給付請求書

療養の給付請求書を申請する際の手続きについてご説明します。

  1. ケガや病気になった際に、被災労働者が指定病院等で診察を受ける
  2. 事業主が療養の給付請求書に証明(証明する欄に記名・押印)する
  3. 2を労働者が病院へ提出する
  4. 3を病院から都道府県労働局へ提出する
  5. 4を都道府県労働局が労働基準監督署へ提出する
  6. 都道府県労働局から厚生労働本省を経て病院に支払いが行われる

二次健康診断等給付請求書

二次健康診断等給付請求書の申請手続きについて流れをご説明します。

  1. 事業主が請求書に証明する
  2. 健診給付病院に二次健康診断等給付請求書を提出して、二次健康診断を受ける
  3. 健診給付病院が2の結果を労働者に返して、二次健康診断等給付請求書・費用請求書を都道府県労働局へ提出する
  4. 都道府県労働局から厚生労働本省を経て病院に支払いが行われる。また、労働者は事業主へ二次健康診断の結果を提出する

その他の請求書

「療養の費用」「休業(補償)等給付・障害(補償)等給付」「遺族(補償)等給付」「葬祭料等(葬祭給付)」など、各請求書の申請手続きについて流れをご説明します。

  1. 事業主または医療機関が請求書に証明する
  2. 被災労働者または遺族が労働基準監督署に請求書を提出する
  3. 厚生労働本省または労働基準監督署が被災労働者または遺族に対して、支給決定通知や支払いを行う

労災保険に関して知っておきたいこと

労災保険の注意点について以下から解説します。

審査請求をする場合

労災の請求をしたものの不支給となった場合や給付内容に不服がある場合は、不服申し立て(審査請求)ができます。
審査請求できる期間は、不支給となったことを知った日や給付内容を知った日から起算して3か月以内です。

審査請求の手続きは書面または口頭で行います。審査請求書の用紙は、労働基準監督署や労働局、または厚生労働省のホームページからもダウンロードが可能です。
記入後は、都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に提出しましょう。

医療機関に健康保険証を使って受診した場合

労災の治療に健康保険は使えません。もし、健康保険証を使って医療機関を受診してしまった場合は、労災保険への切り替え手続きが必要です。
医療機関によっては切り替えができるケースとできないケースがあります。受診した病院に問い合わせてください。
切り替えができる場合は、労災保険の「様式第5号」または「様式第16号の3」の請求書を、受診した医療機関に提出することで、病院の窓口で支払った金額(一部負担金)が返還されます。

一方、切り替えができない場合は以下のように手続きを行いましょう。
2パターンご紹介します。

1.一時的に、医療費の全額を自己負担する場合

  1. 加入している健康保険組合・協会けんぽへ、労災事故で健康保険を使ってしまった旨を報告する
  2. 医療費返還通知・診療報酬明細書・納付書が届いてから返還額を支払う
  3. 労災保険の「様式第7号」または「様式第16号の5」を記入する
  4. 3と、返還額の領収書と病院の窓口で支払った金額(一部負担金)の領収書を労働基準監督署へ請求する

2.一時的に医療費の全額を自己負担するのが難しい場合

  1. 労働基準監督署へ、全額自己負担できない旨を報告する
  2. 労働基準監督署と保険者(医療保険の運営主体)で調整を行い、保険者への返還額を決める
  3. 保険者から返還通知書等が届いたら、労災保険の「様式第7号」または「様式第16号の5」を記入の上、返還通知書等を添えて労働基準監督署へ請求する

企業が労災を認めてくれない場合

労災か否かの判断は労働基準監督署が判断するため、企業が労災を認めてくれない場合でも労災申請は可能です。
また、その際は、事業主から証明されなかった旨を添えるとスムーズです。

労災を隠すことは「労災隠し」という犯罪行為ですので、ためらわずに手続きを行いましょう。

まとめ

業務中・通勤中にケガや病気を負った場合は労災保険を申請しましょう。
「申請の方法がわからない」「申請することで職場に迷惑がかかるかもしれない」と悩むかもしれませんが、申請を怠ると「労災隠し」になってしまい、かえって職場に迷惑がかかります。

また、労災かどうか判断に迷った際は専門家に相談するのが有効です。

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