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確定申告の税額の算出方法|税率・控除も徹底解説

date2025年02月03日
確定申告の税額の算出方法|税率・控除も徹底解説
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はじめに

  • 確定申告の税額は納税者が算出するため、算出方法や税率、控除の種類等を理解する必要がある
  • 確定申告では、個人の所得にかかる所得税を申告・納税する
  • 所得税額の算出方法を手順にそって確認しながら理解できる
  • 所得税額の算出に必要な所得の種類と課税対象の所得や控除方法がわかる
  • 申告漏れを無くし、所得税の負担を軽減する方法が理解できる

確定申告で税額を算出する際は、多くの規定や要件を理解し適用する必要があります。この記事では、算出の手順にそって重要なポイントを解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

確定申告の期間と対象者

確定申告は個人事業主やフリーランス、給与年収が2,000万円を超える人などが実施します。その年の1月1日から12月31日までに得た収入に対して、翌年の2月16日から3月15日の間に申告と納税を行います。
以下の表は、納税者区分ごとの申請と納税方法です。

納税者区分申告・納税方法
事業所得者確定申告
給与所得者(年収2,000万円以下)源泉徴収
給与所得者+事業所得orその他所得有源泉徴収+確定申告

確定申告における税額の算出とは

税額は、1年間に得た収入から経費や控除額を差し引いた所得に対して税率を適用して計算します。日本では申告納税制度が採用されており、納税者自身が税額の計算と申告を行う必要があります。このプロセスは複雑であり、正確な計算が求められるため、税率の適用や適切な控除の理解が不可欠です。

所得税とは

所得税は、個人の所得に対して課される直接税です。年間総収入から各種控除を引いた課税所得に基づき課税されます。

所得税のかかる所得

所得はその性質によって10種類に分類され、それぞれ異なる収入や必要経費、計算方法があるため、細かな区分を理解することが重要です。

所得の種類と課税方法
種類概要課税方法
事業所得
(営業等・農業)
商・工業や漁業、農業、自由職業などの自営業から生ずる所得総合
事業規模で行う、株式等を譲渡したことによる所得や先物取引に係る所得申告分離
不動産所得土地や建物、船舶や航空機などの貸付から生ずる所得総合
利子所得国外で支払われる預金等の利子などの所得総合
特定公社債の利子などの所得 「確定申告不要制度」があります。申告分離
預貯金の利子などの所得源泉分離
配当所得法人から受ける剰余金の配当、公募株式等証券投資信託の収益の分配などの所得
※上場株式等の配当等について、申告分離課税を選択(※)したものを除く。
確定申告不要制度があります。
総合
上場株式等に係る配当等、公募株式等証券投資信託の収益の分配などで申告分離課税を選択(※)したものの所得申告分離
特定目的信託(私募のものに限る。)の社債的受益権の収益の分配などの所得源泉分離
給与所得俸給や給料、賃金、賞与、歳費などの所得総合
雑所得公的年金等国民年金、厚生年金、確定給付企業年金、確定拠出年金、恩給、一定の外国年金などの所得総合
業務原稿料、講演料、シルバー人材センターやシェアリングエコノミーなどの副収入による所得
その他生命保険の年金、暗号資産取引による所得など他の所得に当てはまらない所得総合
先物取引に係る所得申告分離
譲渡所得ゴルフ会員権や金地金、機械などを譲渡したことによる所得総合
土地や建物、借地権、株式等を譲渡したことによる所得
※ 株式等の譲渡については事業所得、雑所得となるものを除く。
申告分離
一時所得生命保険の一時金、賞金や懸賞当せん金などの所得総合
保険・共済期間が5年以下の一定の一時払養老保険や一時払損害保険の所得など源泉分離
山林所得所有期間が5年を超える山林(立木)を伐採して譲渡したことなどによる所得申告分離
退職所得退職金、一時恩給、確定給付企業年金法および確定拠出年金法による一時払の老齢給付金などの所得申告分離
※大口株主等が支払を受ける上場株式等の配当等については、申告分離課税を選択することはできませんのでご注意ください。

引用:国税庁|所得の種類と課税方法

所得税と源泉所得税の違い

所得税は年間を通じて得た総所得に対して計算され、納税者本人が申告・納税するのに対し、源泉所得税は給与所得者に適用され、毎月の給与や報酬から差し引かれる税です。年末調整で再計算が行われ、必要に応じて追加納税または還付が行われます。申告・納税も給与支給企業が代行します。

所得税の「税額」算出手順

所得税の納税額の算出は、所得金額の算出から始まり、課税所得金額、所得税額、そして最終的な納税額に至るまでの複数のステップが含まれます。

納税額の算出方法(所得税の計算)
1)所得金額   = 収入金額 - 経費
2)課税所得金額   = 所得金額 - 所得控除額
3)所得税額   = 課税所得金額 × 税率 - 控除額
4)復興特別所得税  = 所得税額 × 2.1%
5)申告納税額  = 所得税額 + 復興特別所得税 + 申告分離課税額
※源泉徴収税額がある場合は5)より差し引く

引用:国税庁|所得税のしくみ

1)所得金額の算出

所得金額は、1年間に得た収入をすべて計算し、必要経費を差し引いた金額です。基礎控除はこの合計所得金額に応じて差し引くことが可能です。この金額は税率が適用される基礎となります。

例:年間に得た収入が¥12,628,400で経費が¥6,728,500の場合

12,628,400-6,728,500=¥5,899,900(この金額が所得金額)
所得が2,400万円以下の場合、基礎控除額は48万円になるため
5,899,900-480,000=¥5,419,900

基礎控除の金額
納税者本人の合計所得金額控除額
2,400万円以下48万円
2,400~2,450万円以下32万円
2,450~2,500万円以下16万円
2,500万円超0円

引用:国税庁|No.1199 基礎控除

2)課税所得金額の算出(所得控除の計算)

課税所得金額は、所得金額から基礎控除を含む各種所得控除の合計金額を差し引いて算出します。所得控除は、納税者の状況に応じて異なるため、適応される控除があるか確認が必要です。
また、給与所得者の医療費控除や寄附金控除・雑損控除・初年度の住宅ローン控除は、年末調整で控除できないので確定申告を行います。

例:所得金額から基礎控除を引いた¥5,419,900より各種控除金額の合計を差し引きます。

各種所得控除の合計が¥2,216,320と仮定
5,419,900-2,216,320=¥3,203,580(この金額が課税所得金額)

以下は、所得控除の種類と内容を記載しました。

所得控除の種類
所得控除概要
基礎控除納税者本人の合計所得金額に応じて定められた金額が控除される
配偶者控除納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、納税者本人の合計所得金額および控除対象配偶者の年齢に応じて定められた金額が控除される
配偶者特別控除配偶者控除の適用がなく、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下、かつ配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下(2024年11月現在)である場合、納税者本人の合計所得金額および配偶者の合計所得金額に応じて控除される
扶養控除納税者に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合、一定の金額の所得控除が受けられる
社会保険料控除納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合に、その支払った金額について所得控除を受けられる
小規模企業共済等掛金控除納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に、その支払った金額について所得控除が受けられる
生命保険料控除納税者が生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けられる
地震保険料控除納税者が特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料または掛金を支払った場合は、一定の金額の所得控除を受けられる
寡婦控除納税者自身が寡婦(夫と離婚または死別した後婚姻をしておらず扶養親族がいる)であるときは、一定の金額の所得控除を受けられる
ひとり親控除納税者がひとり親(婚姻していない・配偶者の生死不明・事実上婚姻関係を認められる人がいない)で生計を一にする子がいるときは、一定の金額の所得控除を受けられる
勤労学生控除納税者自身が勤労学生(就労による合計所得金額が75万円以下他所得10万円以下)であるときは、一定の金額の所得控除を受けられる
障害者控除納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合には、一定の金額の所得控除を受けられる。障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合においても適用
医療費控除その年の1月1日から12月31日までの間に自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合、その支払った医療費が一定額(10万円)を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けられる
寄附金控除納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」(一定の条件を満たす寄付)を支出した場合に、所得控除を受けられる
雑損控除災害または盗難もしくは横領によって、「雑損控除の対象になる資産の要件」に当てはまる資産について損害を受けた場合に、一定の金額の所得控除を受けられる

引用:国税庁|No.1100 所得控除のあらまし

3)所得税額の算出

所得税額は、課税所得金額に応じて税率が定められており、所得の増加に応じて段階的に上がる累進課税が適用されます。課税所得金額の千円未満の端数金額は切り捨てて算出します。

例:課税所得金額¥3,203,580の場合、税率10%、控除額97,500円になるため

3,203,000×0.1-97,500=222,800

所得税の税率と控除額
課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

引用:国税庁|No.2260 所得税の税率

4)復興特別所得税の算出

復興特別所得税は、所得税額に2.1%を掛けて算出します。この復興特別所得税は、東日本大震災からの復興に必要な財源の確保を目的として、平成23年に公布された「復興に必要な財源の確保を目的とする特別措置法(平成23年法律第117号)」に基づいて導入されました。

例:所得税額¥222,800に復興特別所得税率の2.1%をかけるため

222,800×0.021=¥4,678(この金額が復興特別所得税)

参考:国税庁|個人の方に係る復興特別所得税のあらまし

5)申告納税額の算出

実際に納付する申告納税額の算出は、所得税額と復興特別所得税額の合計になります。また、申告分離課税制度等による納税額がある場合は合算し、源泉徴収された納税額は差し引きます。

例:申告納税額は所得税額¥222,800と復興特別所得税額¥4,678の合計になるため

222,800+4,678=¥227,478(この金額が申告納税額)

このような収入の申告漏れに注意

所得の中には、課税対象となる所得と非課税所得があります。これらを正しく理解し、申告漏れがないように注意しましょう。誤った申告は追徴税の対象となる可能性があります。

課税対象の所得

以下の表に記載される所得は課税対象の所得です。確定申告や源泉徴収・年末調整などにより、適切な申告と納税が求められます。

課税対象になる所得
所得具体例
給与所得従業員や役員等が支払を受ける俸給・給料・賃金・歳費・賞与のほか、これらの性質を有する給与
退職所得・勤務先から受け取る退職手当や社会保険制度による一時金
・生命保険会社等から受け取る退職一時金
事業所得農業・漁業・製造業・小売業・卸売業・サービス業、その他の事業で得る所得
不動産所得・土地や建物などの不動産の貸付や船舶や航空機の貸付
・地上権などの不動産上に在する権利の設定と貸付
山林所得山林を伐採または立木のままで譲渡することで得る所得
※取得から5年以内に伐採または譲渡した場合は事業所得か雑所得になる
利子所得預貯金および公社債の利子ならびに合同運用信託、公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得
配当所得株主や出資者が法人から受ける剰余金や利益の配当、剰余金の分配、基金利息、投資法人からの金銭の分配または投資信託および特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得
譲渡所得土地・建物・株式等・ゴルフ会員権・金地金などの資産を譲渡することによって生ずる所得
一時所得・懸賞や宝くじなどの賞金品・競馬や競輪の払戻金
・生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金
・法人から贈与された金品
・遺失物拾得者や埋蔵物発見者が受ける報労金
・資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その目的に充てられなかった分
雑所得上記9種類に当てはまらない所得
公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)

引用:国税庁|No.2011 課税される所得と非課税所得

非課税対象の所得

以下の表は非課税対象の所得とその具体例の一覧です。
定められた条件下の利子や配当・業務遂行にあたって必要な経費・生活の中で生じた損害に対する保障や、扶養や子育てに関わる助成金や給付金などが対象になります。目的や条件によって非課税にならないものとの確認が必要です。

非課税所得
所得具体例
利子・配当所得関連・勤労者財産形成(住宅・年金)貯蓄の利子
・小額投資非課税制度に係る配当(NISAなど)
・納税準備預金の利子
・オープン型証券投資信託の特別分配金
給与所得・公的年金関連・傷病や遺族などが受け取る恩給・年金
・給与所得者に支給される一定の出張費・限度額内の通勤手当・業務上必要な現物給与
・国外勤務する人が受ける一定の在外手当
譲渡所得・山林所得関連・生活に通常必要な動産の譲渡による所得
・小額投資非課税制度に係る譲渡所得(NISAなど)
・国や地方公共団体等に財産を寄付した場合の譲渡所得など
その他・学資金と扶養義務の履行のために受け取る金品
・国または地方公共団体が提供する保育・子育て助成事業により、施設・サービスの利用に充てるために給付される金品
・相続・遺贈または個人からの贈与により取得するもの
・心身や資産に加えられた損害に対して得る保険金や損害賠償金・慰謝料
・都道府県や市区町村から支払われる一定の給付金

引用:国税庁|No.2011 課税される所得と非課税所得

年収がいくらだと所得税がかかる?

1年間にどのくらいの収入を得たら所得税がかかるのかを見ていきます。扶養になっている学生や主婦・高齢の親族や、少額の事業所得のある方はぜひ参考にしてください。

会社員やパート・アルバイトの場合(給与所得者)

給与所得者の場合は、基礎控除額(48万円)と給与所得控除額(55万円)の合計(103万円)よりも、所得が少なければ所得税は生じません。
2024年12月現在、この103万円の金額に対し国会で議論されており、所得税のみでなく多方面に影響を及ぼす可能性があるため、慎重な対応が求められます。

個人事業主やフリーランスなどの場合(事業所得者)

事業所得者の場合は、事業年収から必要経費を差し引いた所得金額が、基礎控除の48万円(合計所得金額2,400万円以下の場合の基礎控除額)よりも少なければ所得税はかかりません。
また、主職で年末調整を行ったほかに、副業による少額の事業所得がある場合、所得金額が20万円を超えると確定申告が必要となり所得税が生じます。
参考:国税庁|No.1199 基礎控除

所得税の節税対策

所得税を効果的に節税するための方法を紹介します。これらの対策を適切に利用することで、税負担を軽減できます。

各種控除を利用する

所得控除にはさまざまな種類があり、納税者本人だけでなく生計を一にする家族等も対象の場合があります。自身は対象になるのか必要書類はあるのかなどを確認して、利用可能な控除は漏れなく受けるようにしましょう。
また、給与所得者の場合、医療費控除や住宅控除・雑損控除などの対象となっているときは申請漏れに注意が必要です。申請を行うことで還付金額を受けられる可能性があります。
参考:国税庁|No.1100 所得控除のあらまし

青色申告を利用する

青色申告は事業所得、不動産所得、山林所得等のある方を対象にした申告方法です。納税地の税務署長の認可を受け、複式簿記の採用や優良な電子帳簿の保存、または、e-Taxによる申告により最大65万円の特別控除を受けることができます。他にも、事業損失(赤字)の繰越計上など、節税対策に効果的な施策があります。
参考:国税庁|No.2070 青色申告制度

経費を漏れなく申告する

所得の種類に応じて差し引ける経費は異なります。事業所得者は、事業に必要な経費を正確に申告することが重要です。事業に必要な備品(パソコンやコピー機など)によっては、一括で経費を計上できる(青色申告)場合と分割計上する場合があります。購入したものやリース契約・自宅兼事務所の光熱費の分割など、細かい経費も申告漏れのないようにすることで、税負担の軽減につながります。
参考:国税庁|所得の種類・収入・必要経費の範囲等

iDeCoに加入する

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、公的年金に上乗せして任意に加入できる私的年金制度です。確定拠出年金の掛金が全額控除対象になり、課税所得金額から差し引かれ、税金が軽減されます。また、受け取り時は、「公的年金等控除」または「退職所得控除」の対象となるため、将来の資産形成と節税が同時に行えます。
参考:iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】|よくあるご質問

小規模企業共済等を利用する

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などが加入できる共済制度です。掛金が全額所得控除の対象となるため、節税効果があります。また、退職や廃業したときに積立金額に応じた退職金を受け取ることができ、受け取り時には「退職所得控除」または「公的年金等控除」の対象となるため、税制メリットもあります。
参考:国税庁|No.1135 小規模企業共済等掛金控除

まとめ

確定申告における所得税の税額計算は、複雑で面倒と思われる方もいるでしょう。基本を押さえ漏れなく控除を申請することで、税額を抑えることも可能です。この記事を、正しい申告と有効な節税対策にお役立ていただけると幸いです。

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