プロボノとは? メリット・デメリットや支援活動の事例を解説
はじめに
- プロボノは「職業上におけるスキルや経験を活かして取り組む社会貢献活動」のことである
- 「職業におけるスキルと経験値」で社会における課題解決につなげている
- 自分の専門知識が広がり本業でも活かせる相乗効果がある
- プロボノ活動をする場合は本業に支障をきたさない程度に調整する
- NPO団体が必須とするスキルについて必ず確認しておく
東日本大震災が起こった際の復興支援がきっかけの一つとなり、多くの企業で社会貢献活動が広まりました。弁護士をはじめ、さまざまな業種でプロボノ活動が取り組まれたことで、広く認知されるようになっています。はじめて聞く人やなんとなく知っているという人も、ぜひプロボノ活動について知っておきましょう。
プロボノとは?
プロボノとは「職業上におけるスキルや経験を活かして取り組む社会貢献活動」のことを指し、ボランティアの一種でもあります。また、プロボノにおける活動では「支援を行う参加者」、「参加者を送り出す企業」、「支援を受ける非営利組織」の3つで構成されています。
参考:厚生労働省|副業・兼業の促進に関するガイドライン
語源は英語?
プロボノという語源は実は英語でなく、ラテン語の「Pro Bono Publico(公共善のために)」から取ったとされています。プロボノは、自身が得意とする専門スキルを活かして無償の社会貢献をすることから由来しているのです。
弁護士との関連性
プロボノ活動は、100年以上前にアメリカで始まったことがきっかけで世界中に知れ渡るようになりました。貧負の差が激しいアメリカでは低所得者が多く、弁護士費用を用意できません。そのため、その状況改善に向けて全米法曹協会(ABA)では、弁護士に年間で50時間のプロボノ活動を提供するようになったのです。
どのような業種が参加している?
NPO活動と聞いて、企業とはかけ離れた組織というイメージを持たれがちですが、実は企業と同様に営業を行ったり、事業計画や広報活動を実施したりすることもあります。主に営業、ITエンジニア、マーケティングや広報などさまざまな職種の方がプロボノ活動に参加しています。
活動に必要なスキル例
弁護士以外にもさまざまな専門職やスキルを持つ人が活動に参加しています。たとえば以下のようなスキルがプロボノ活動で活かされています。以下の図を参考にしてみてください。
必要とするスキル | 業務内容 |
---|---|
ITスキル | Webサイトの構築・運用/システムサポート/Webライターなど |
プロジェクトマネジメント | スケジュール管理/品質管理/コスト管理/スコープ管理など |
マーケティング・営業 | 法人営業/資料作成/寄付獲得など |
デザイン | Webデザイン/報告書/チラシ制作など |
プロボノとボランティアとの違い
報酬を得ずに社会貢献する活動のことをボランティアと呼びますが、プロボノも社会貢献するという意味では「ボランティア」の一種といえます。しかし、ボランティアとの大きな違いは「職業におけるスキルと経験値」が必要になってくるところにあります。必ずしも専門スキルを重視するとは限りませんが、プロボノは社会における課題解決につなげるための活動であるといえます。
種類 | 営利の有無 | |
---|---|---|
プロボノ | 専門的な知識や技術をもとにスキル活用 | 営利を目的としない (公共的・社会的な課題解決が目的) |
ボランティア | 参加方法は幅広く、職業におけるスキルは限定されない |
プロボノ活動による本業への相乗効果があるのか?
本業でしか知り得なかった情報やスキルをプロボノ活動によって自分の専門領域が広がり、いつの間にか本業でも活かせられるといった相乗効果があります。逆に企業側が従業員にプロボノ活動を経験させることで、新しい風をもたらされるといったシナジー効果もうまれるでしょう。
プロボノ活動におけるメリット・デメリット
そもそもプロボノ活動は「報酬を得ずに公益的に社会貢献する」という意味合いもありますが、多くの企業では「人材育成や本業のモチベーションアップ」を目的としているのです。そのことから、報酬を得ずに活動する上でメリット・デメリットがいくつかあります。以下、それぞれに分けて説明します。
メリット
プロボノ活動する人が得られるメリットについて3つに抜粋して紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.スキル向上しながら社会貢献につなげる
本業で培った専門スキルをプロボノ活動でも活かせられ、更なるスキルアップや知見の獲得などを目指せるといったメリットがあります。また、プロボノ活動で培った経験がより本業でも社会貢献につなげられ、企業や自分にとっても互いに良いこと尽くしともいえるでしょう。
2.自分の働き方を見つめ直せる
キャリアアップに向けて、自身のキャリアにおける棚卸しができることでは、プロボノ活動におけるメリットのひとつでもあります。働き方を見つめ直す良い機会となり、本業ではキャリアアップが望めるでしょう。さらには自分のやってみたい分野を見出すことも期待できます。
3.切磋琢磨できる人との出会い
自分のスキルと共通する人とのつながりが増え、より充実したプロボノ活動が期待できます。そういった人とつながることで新たなスキルの情報を得たり、教え合ったりするなど互いに切磋琢磨できるといったメリットが挙げられるでしょう。
デメリット
反対に、いくつかデメリットも存在します。プロボノ活動を考えていく上ではデメリットについても理解しておくとよいでしょう。
1.本業や日常生活に支障をきたす
一般的なボランティアとは違い、プロボノの場合、成果物の納期限があらかじめ決まっています。時間による拘束が発生するため、本業の遅延や遅滞あるいは疲弊によって日常生活にも支障をきたす恐れがあるのです。もしプロボノ活動する場合は、本業に支障をきたさない程度に調整するのが良いでしょう。
2.NPO団体とのミスマッチが起こる
自分と団体が「それぞれ求めるスキルが思っていたのと違った……」といったミスマッチがまれに起こることがあります。団体が必須としているスキルの内容をあらかじめ確認しておくことで、予期せぬミスマッチを防げるでしょう。
プロボノの支援活動事例
プロボノに取り組む支援団体の種類はさまざまです。ここでは、一般企業、NPO法人が実際に取り組んでいる活動事例について説明します。
認定NPO法人 全国こども食堂支援センター むすびえ
「全国こども食堂支援センター むすびえ」は認定NPO法人として、SDGsの推進・目標の達成に貢献している企業です。「こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会をつくる」というビジョンを掲げ、支援活動を行っています。「地域ネットワーク支援事業」、「企業・団体との協働事業」、「調査・研究事業」の3つを主軸とし、全国のこども食堂をサポートしているのです。現在は2024年に起きた能登半島地震において中間支援団体と連携し、被災地に向けて支援活動を行っているようです。
参考:認定NPO法人 全国こども食堂支援センター むすびえ|令和6年能登半島地震 こども食堂支援プロジェクト
アステラス製薬株式会社
「アステラス製薬株式会社」では人材育成の一環として、社員が社会貢献活動に参加することを推奨しています。本業で培ったスキルを余すところなく地域社会に貢献するための、全社を挙げたボランティア活動です。このボランティア活動は健康や環境をテーマとし、2023年には2,800名以上の全世界の社員が各地域で支援活動を行いました。
参考:アステラス製薬株式会社|社員による地域社会貢献活動
パナソニック株式会社
「パナソニック株式会社」では、2011年4月からNPO/NGOの更なる事業展開力強化を支援するため、情報発信支援や業務基盤構築支援に取り組む「Panasonic NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」を設立しました。これまでに約392名の社員が営業資料作成やWebサイトの再構築などを支援した事例が挙げられています。
参考:パナソニック株式会社|Panasonic NPO/NGOサポート プロボノ プログラム
まとめ
社会貢献の一つである「プロボノ」について理解いただけたでしょうか? 社会における課題解決を推進することで企業側だけでなく、自身にとっても本業や日常生活に活力をもたらします。同時にプロボノ活動を通じて、将来を見据えた自身のキャリアを構築できる可能性が高まります。今後もそうした支援活動がますます広がりを見せています。自分の働き方を見つめ直すこの機会にぜひ、プロボノ活動に参加してみてはいかがでしょうか。