VUCA(ブーカ)時代とは?VUCAの意味や必須スキルを解説
はじめに
- VUCAとは「未来の予測が難しい」状況
- VUCA時代を生き抜くためには小さな変化に気づく力が必要
- VUCA時代ではさまざまな考え方や価値観の人々を受け入れることが大切
- 何事に対しても迅速かつ的確な判断および行動が求められる
- 情報収集スキルやITスキルがある方ほど重宝される
昨今、世界中でパンデミックや自然災害など、事前に予測できないようなことが頻発しています。また、以前と比べて、IT技術や個人の価値観の多様化などが大きく変化したため戸惑う方も多いでしょう。
このように、将来の予測がつかない「VUCA時代」に適応するためにはどのようにすればいいでしょうか。本記事では、VUCA時代を生き抜くためのヒントをご紹介します。
VUCA(ブーカ)、VUCA時代とは
以下からは「VUCA(ブーカ)」とは何か、どのようなシーンで使うのかをご紹介します。
VUCAの利用シーン
「VUCA(ブーカ)」とは「未来の予測が難しい」状況を指すときに使用する言葉で、以下4つの頭文字を取った言葉です。
- V:Volatility(変動性)
- U:Uncertainty(不確実性)
- C:Complexity(複雑性)
- A:Ambiguity(曖昧性)
元々、VUCAはアメリカで軍事用語として使われていましたが、近年では社会生活やビジネスシーンにおいても使用されるようになりました。
V:Volatility(変動性)
「Volatility(変動性)」とは、物事が大きく速く変化することです。たとえば、IT技術やインターネットの情報などは、日々大きな変化を伴いながら速く進んでいくため、変動性が高いと言えます。
ビジネスシーンでも、状況に合わせて素早く判断・行動できる機敏さを身につけたり、日々知識をアップデートしようと努めたりする姿勢が大切です。また、最新技術を業務に取り入れることや経営計画を見なおすなど、一人ひとりの意識と行動が重要といえます。
U:Uncertainty(不確実性)
「Uncertainty(不確実性)」とは、将来何が起こるか予測できない(不確実な)状況を指します。
近年は新型コロナウイルスの流行やロシア・ウクライナ戦争など、数年前まではまったく予測できなかったことが現実に起きており、日常生活でも戸惑うことが増えました。予測不能なことは今後も起こり得ますので、日々判断力や洞察力を養い、状況ごとに適切な対応を取っていく必要があります。
C:Complexity(複雑性)
「Complexity(複雑性)」とは、ヒトの性質やモノの要素などが複雑に絡み合っている状況を指します。
昨今は、個人の考え方や価値観が多様化しています。異なる立場を尊重しつつ共存するには、お互いを認めることが大切です。そのため、ビジネスシーンでも幅広いニーズに合わせて柔軟に対応していく必要があります。
A:Ambiguity(曖昧性)
「Ambiguity(曖昧性)」とは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」が絡み合った状況を指します。
たとえば、日々インターネットで膨大な情報が更新される現代(変動性)は、ヒトの好みや価値観も変動しやすく(複雑性)、画一的な商品やサービスでは対応できません。また、ヒット商品を産み出してもいつまで売れるか予測がつきません(不確実性)。
従って、1つだけに特化するのではなく、V・U・C・Aそれぞれに力を入れて対策を行いましょう。
VUCA時代が訪れた背景
なぜ、現代はVUCA時代と呼ばれるのでしょうか。以下から詳しく解説します。
未来の予測が難しくなってきたから
先述したとおり、VUCAという言葉が浸透してきた背景には、社会生活やビジネスシーンにおいて未来の予測が難しくなってきたためです。
たとえば、今まで多くの企業は「5年後・10年後を見据えながら経営計画を立てる」傾向にありましたが、昨今は5年前に立てた計画でさえ時代遅れになることが多いといわれています。VUCAに対応した経営計画を立てるために、進歩の速いIT部門と企業経営に関わるコンサルティング部門が連携する企業も増えています。
D&Iが注目されてきたから
近年は、ビジネスのグローバル化が進み、D&Iが注目されています。D&Iとは「Diversity:ダイバーシティ」と「Inclusion:インクルージョン」を合わせた言葉です。「人種・性別・価値観を受け入れて異なるヒト同士が共存している社会(ダイバーシティ)」で、「一人ひとりが尊重されながら活躍できる状態(インクルージョン)」を表しています。
企業がD&Iを推進する大きな目的は、事業の先行きが不透明なVUCA時代において、組織内にイノベーションを起こすことです。そのため、昨今では多様な人材や意見を受け入れる企業が増えています。
たとえば、さまざまな考え方や価値観を持つ人々は今までになかった視点や発想を企業に与えてくれるため、企業は既存の枠組みにとらわれない商品開発や多様な働き方の提案などを顧客や従業員に行えます。
VUCA時代における日本の変化
VUCA時代では、今後日本はどのように変化していくのでしょうか。
近年、政府は「DX推奨ガイドライン」や「Society 5.0」を発表しました。VUCAとも関連が深いので、以下からご説明します。
DX推奨ガイドラインを発表
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略称で、デジタル技術を活用しながら業務プロセスを改善し、企業内に「新しい価値」を産み出すことで競争上の優位性を確立することです。
国内では、2018年に「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推奨ガイドライン)」を経済産業省が発表しました(現在では「デジタルガバナンス・コード2.0」と統合)。
DX推奨ガイドラインでは、「各企業が優位性を確率するためにデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズに応える」ことの重要性を説いています。とくに、IT技術の進歩が著しいVUCA時代では、企業にとってDXの推進は避けて通れません。
しかし、現状は多くの企業でデジタル人材が不足しており、日本のDXが遅れていることを裏付ける調査もあります。たとえば、ITをビジネス・政府・社会の変革にどれくらい活用できるかを国ごとに競い合う「世界デジタル競争力ランキング」では、2023年度の日本の順位は低く、64か国中32位と過去最低でした。競争力が激しいVUCA時代に対応するためにも企業のDX化は必須であり、DXを推し進めていくために今後もデジタル人材は重宝されるでしょう。
参考:経済産業省:デジタルガバナンス・コード2.0
参考:IMD News:【日本版】 2023年世界デジタル競争力ランキング
Society 5.0を提唱
2016年に政府が発表した「第5期科学技術基本計画」の中で「Society(ソサエティ) 5.0」が提唱されました。Society 5.0は「サイバー(仮想)空間とフィジカル(現実)空間を融合させたシステムにより経済発展と社会的な課題の解決を両立させる人間中心社会」のことです。
また、2021年には「第6期科学技術・イノベーション基本計画」が発表されました。その中では、Society 5.0の未来社会像を「国民の安全・安心を確保できる強靭でかつ持続可能な社会」、「一人ひとりが多様な価値観を持ちながらそれぞれの幸せを実現できる社会」と表現しています。
Society 5.0の考え方はVUCA時代にも適用できますので、新しく複雑な社会に対応するためにも、スキルや知識を身につけることが大切です。
VUCA時代に必要な考え方とスキル
変化が著しいVUCA時代では、迅速かつ的確な判断・行動が求められます。
そこで、以下からはOODA(ウーダ)ループと呼ばれる変化に適応するためのフレームワークや、VUCA時代を生き抜くための必須スキルをご紹介します。
OODA(ウーダ)ループ手法
OODA(ウーダ)ループとは、危機的な状況下でも最適な選択を下すためのフレームワークです。VUCAと同じくOODAループも造語であり、元々はアメリカの軍事用語として使われていました。
現在、業務効率を改善するフレームワークとしてPDCAを取り入れている企業も多いですが、今後は「PDCAサイクル」に代わり「OODA(ウーダ)ループ」手法が浸透していくといわれています。
なぜなら、VUCA時代では「すでに起きた問題を解決できる能力」よりも、「将来起こる可能性がある問題(潜在的な問題)を自分で探し出す能力」が必要だからです。PDCAは実際の数値やデータを基に判断するため、「すでに起きた問題を解決できる」点は優れていますが、「将来起こる可能性がある問題(潜在的な問題)」には気づきにくいのがデメリットです。
そこで、代替策としてOODAループが注目されています。OODAループは、都度周囲の状況を観察して判断を下す手法ですので、「現状」と「あるべき姿/ありたい姿」の間にあるギャップに気づきやすく、潜在的な問題を見つけやすいといわれています。
OODAループについては以下の画像にまとめましたので、ご参考ください。
情報収集スキル
日頃から、情報の収集・分析を怠らないようにして、ビジネスシーンでも活用できるように準備しておきましょう。とくに、同業他社の情報は参考になるケースが多いです。
また、海外市場のニーズや世界情勢を把握しておくと、今後自社で商品開発や顧客対応などを行う際に活かせることがあるかもしれません。
企業の将来像を把握するためのスキル
決算書へ目を通すことで、自社の将来像を予測することができます。
通常、決算書には成長領域・主力事業・年度別売上などが掲載されており、自社の強みや今後の成長領域が予測しやすいからです。そのうえで、力を入れられそうな分野やアプローチ方法などを考えると、より自社の将来像が明るくなるでしょう。
クリティカルシンキングスキル
クリティカルシンキングとは日本語に訳すと「批判的思考」です。うまくいっているように見えることでも批判的に考えて、問題がないかどうかを考えます。
クリティカルシンキングでは、客観的視点から論理的に考えることが大切です。たとえば、仮説を立てて検証したり事実と意見を区別したりするなど、偏見や決めつけがないか注意する必要があります。
ITスキル
デジタル人材になるためにはITスキルを身につけることが重要です。ITスキルは資格取得や研修への参加などを通じて身につけられます。
デジタル人材を目指すには、リスキリング(変化が著しい時代に対応するために必要な技術・スキルを学びなおすこと)が有効です。
コミュニケーションスキル
同僚や顧客など、ビジネスシーンではさまざまな境遇・考え方の人々と関わります。業務トラブルやクレームなどを未然に防ぐためにも、相手の立場や状況に合わせてコミュニケーションを取ることが大切です。
たとえば、相手が話しているときは集中して聞き、意見が食い違っても否定しないように気をつけましょう。自分の気持ちを相手に伝えるときは、相手の考えを尊重しつつ論理的に伝えます。また、その際には結論から話すと相手も理解しやすいです。
まとめ
VUCA時代を生き抜くためには小さな変化に気づく力が必要です。自分の置かれている状況を把握するためにも、情報収集をしたり客観的視点から物事を捉えたりする習慣を身につけましょう。
また、現代は多様な価値観を受け入れられる人材やデジタル人材を求めている企業が多いので、ホスピタリティを高めたりITスキルを磨いたりしてもいいでしょう。
予測がつかない時代だからこそ、能動的に行動することが大切です。