生成AIの法人利用|悩み・手段別の方法とおすすめツール紹介
はじめに
- 生成AIの法人利用には、自社に合ったツール・サービスの導入が重要
- 導入にあたって問題や悩みがある場合は、まず問題の解決を図ろう
- 正しい知識を共有するために、生成AIに関するセミナーを実施するのも有効
- 導入するツール・サービスの選択は、自社の環境と業務内容に合わせよう
- 法人・企業向けプランは費用対効果が見合うか、コスト面の検討が重要
- 問題解決が難しい場合は、専門的な知識があるところへ相談してみるのも有効
生成AIとは、入力したテキストやデータから文章・画像を生成するAIのことで、有名なアプリケーションにChatGPTがあります。新たなデータの入力、パターンや関係性などから学習できる点が特徴です。
こういった生成AIは社内業務の効率化に役立ちます。しかし、生成AIを法人利用する方法がわからない、という場合もあるでしょう。この記事では、生成AIを法人利用するにあたって、悩み別・手段別の方法やおすすめツールをご紹介します。
【悩み別】生成AIを法人利用する方法
生成AIを法人利用するために重要なことは、AIツールやサービスの導入と、導入に関連する問題・悩みの解決です。
ここからは、法人利用を実現するにあたって弊害となる、問題・悩みの解決方法を悩み別にご紹介していきます。
社内の業務に生成AIをどう使えばいいかわからない
社内業務に対し、どのようにAIが活用できるのかわからない、といった場合があります。そういった場合は、他社の活用事例を調べてみるといいでしょう。他社の事例と自社の状況を照らし合わせて、どの業務にどういったAIが適しているのか確認・検討することをおすすめします。該当する事例がわかったら、AIサービスを開発している企業へ機能の詳細について問い合わせることも有効でしょう。
生成AIのツールやサービスの安全性がわからない
生成AIを使用できるツールやサービスは数多くあります。その中から選ぶ際に「どのAIツールやAIサービスが安全なのかわからない」といった点に悩むこともあるでしょう。そういった場合は、それぞれのツール・サービスが紹介されている記事を確認して、安全性を見極めることが大切です。記事だけではわからない場合、AIツール・サービスに詳しい企業などに相談することも一つの手段です。また、不明点を直接問い合わせることも有効と言えるでしょう。
生成AIに社内の機密情報を学習されそうで不安
OpenAI社が提供している「ChatGPT」などの学習機能について、何かと話題になっています。そのことから「生成AIに社内の機密情報を学習されてしまわないか不安だ」と感じることもあるでしょう。その場合、APIを経由した生成AIの利用といった方法があります。
OpenAI社は「API経由の利用では、現時点ではモデルの学習に利用しない」としています。APIを経由した生成AIの法人利用であれば、個人情報や機密情報の漏えいのリスクを低減できるでしょう。この他にも、入力したデータを学習しない設定に変更して利用する、といった手段もあります。
上司が生成AIの法人利用を許可してくれない
上記で挙げたような3点の懸念事項や、AIなどの機能に明るくないことなどを理由に、上司が許可してくれないケースもあるでしょう。そういった場合、社内における生成AIの認知度や知識がない、もしくは知識が偏っている可能性などが考えられます。社内全体で正しい知識を共有するためには、生成AIに関するセミナーを社内で実施することが重要です。生成AIができることや、社内の課題解決に活かせる技術などの理解を深めることで、生成AIの導入利用へつなげられるでしょう。
【手段別】生成AIを法人利用する方法
生成AIを導入したい業務などが確定したら、自社に合った導入方法を選ぶ段階です。生成AIは、広く知られるChatGPTをはじめとして、多様なツール・サービスが存在します。自社が必要とするものに合致したツール・サービス、利用方法を選ぶことが重要です。
ここからは、法人利用する方法を手段別にご紹介していきます。
提供されている生成AIをそのまま利用する
導入・利用が容易な方法として、提供されている生成AIをそのまま利用する方法があります。例を挙げると、ChatGPTやGoogle Bardは、無料アカウントを作成するだけで導入が可能です。しかし、利用する際には著作権侵害や情報漏えいのリスクがあるため、注意が必要です。インターネット上の情報をもとに回答が生成されていることを念頭に置き、著作権や情報漏えいなどを避けるため、問題がないか確認を行うことが重要と言えるでしょう。
生成AIが組み込まれたSaaSを利用する
SaaSとはサービスとしてのソフトウェアのことで、正式名称は「Software as a Service」です。多くの企業が取り入れている、ERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客関係管理)などは業務系SaaSにあたります。同様のシステムを利用している場合は、生成AIをベースに構築されたSaaS、またはシステムにAIが組み込まれたSaaSを法人利用する方法があります。
この手段を選んだ場合は「他社が提供するサービス利用」「自社でSaaS開発してから導入」のどちらかを選択する必要があります。どちらを選んでもメリット・デメリットはありますので、自社の環境に合わせて選びましょう。
APIを経由して生成AIのサービスを利用する
情報漏えいのリスクを減らしながら法人利用する方法として、API(Application Programming Interface/アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を経由して、AIサービスを利用する方法があります。APIを経由して入力されたテキストデータなどの入力内容は、AIの学習に利用されません。その点を活用すれば、社内外からの問い合わせに自動応答できるシステムの構築が可能です。
デメリットとして、APIの利用料金は入力・出力トークン数に基づいて計算される従量課金制です。API経由で利用する場合は、工数とコストの面に注意しましょう。
OpenAIのPlaygroundを利用する
ChatGPTと似たAIツールに「OpenAI Playground」というツールがあります。どちらも同じOpen AIが開発したAIツールであり、文章生成以外にもテキスト分類や言語翻訳など、多岐にわたる用途に活用が可能なツールです。Open AIのアカウントを登録していれば利用可能なため、法人としても個人としても導入しやすいツールと言えるでしょう。
しかし、セキュリティ面の保障が完全ではないため、安全面に不安が残ります。また、ChatGPT同様に自然言語処理タスクに特化したAIツールではありますが、自社向けのカスタマイズができないため、導入前にじっくりと検討する必要があるでしょう。
AIサービスの法人プランを利用する
生成AIを法人利用する最終的な方法として、企業向けのサービスや法人を対象としたプランを選択する方法があります。たとえば「ChatGPT Enterprise」「NewtonX」などが挙げられるでしょう。法人向けのサービスやプランを選んだ場合、使用回数の制限がなくなったり、他プランの倍近い動作速度で利用できたりと、利用するサービスによってさまざまな機能が使用できるようになります。ただし、機能分のコストがかかる点はデメリットとなるため要注意です。企業によっては費用対効果が見合わない場合もありますので、導入を決める前にしっかりと検討することが重要です。
【おすすめ4選】生成AIを法人利用するためのツール
生成AIのツールやサービスは、文章の生成に特化または画像生成に特化していたり、どちらの生成も行えたりと、多様な種類が提供されています。新機能の追加や新サービスの提供なども続いているため、これからも増えていく可能性があるでしょう。生成AIのツール・サービスには似た機能でも違いがあり、それぞれに特徴があります。法人利用するためには、そういった特徴から業務に適したものを選ぶことが重要になるでしょう。
ここからは、法人利用におすすめの生成AIツールを4つ紹介していきます。
1.ChatGPT
2022年11月にOpenAIからリリースされて以来、さまざまな機能が追加され続けている、話題の対話型AIツールです。無料・有料版はもちろん法人向け機能などもあり、文章の作成や要約、業務に必要な情報収集など、幅広い用途に活用できます。
ChatGPTを法人利用する際の注意点は、法人向けプランである「ChatGPT Enterprise」は、すべての企業が必ず使えるとは限らないことです。OpenAIから承認を受けた企業でなければ使用できず、料金が高額かどうかも問い合わせてみないとわかりません。そのため、現状でChatGPTを利用する場合は法人向けプランではなく、先にご紹介したような手段を選ぶと利用しやすいでしょう。
ChatGPTの有料版と無料版の違いについて、詳しく知りたい方はChatGPT Plusとは?有料版と無料版の違いを解説の記事も併せてご覧ください。有料版で使える機能やアップグレード方法について詳しくご紹介しています。
2.Google Bard
検索エンジン大手のGoogle社が提供している、対話型AIツールです。文章を生成するだけでなくプログラミングも得意なため、文章の生成・要約や言語翻訳といったビジネス面の他、ソースコードの生成などIT分野でも活用が可能です。
回答内容はGoogle検索の内容が反映されるため、リアルタイムの回答が得られます。しかし、回答で得られた内容は必ずしも正しいとは限りません。これは対話型AIツール全般に言えることですが、得た回答内容を頭から信じ込まずに、正確性を確認する必要があります。ネットワーク上の誤った情報や、AIによる回答の捏造といった可能性があるためです。利用する際は、その点を念頭に置いた利用が重要です。
Google BardとChatGPTにどのような違いがあるのか興味がある方は、Google Bardとは?ChatGPTとの違いの記事もご一読ください。Google Bardの利用方法や注意点、ChatGPTとの違う点をご紹介しています。
3.Bing AI
Microsoftが提供する検索エンジン「Bing」とOpenAI社の最新言語モデル「GPT-4」を組み合わせて開発された対話型AIチャットツールです。Microsoftアカウントを持っていれば誰でも利用が可能で、Web検索結果の情報や情報元のリンクとともに回答が得られます。画像入力に対して文章で回答でき、画像の生成も可能といった点が特徴です。
ビジネス向けに提供されている「Bing Chat Enterprise」では、ユーザおよびビジネスデータなどの入力および出力された情報は、外部に流出しないよう暗号化され厳重に守られます。しかし、得られる回答はネットワーク上の情報がもととなるため、利用する際は正確性の確認が重要となるでしょう。
Bing AIの他に、どのような画像生成AIがあるのか知りたい方は画像生成AIとは?無料で使える?おすすめサイト5選の記事をご覧ください。おすすめツールと特徴、商用利用は可能かといった点も詳しくご紹介しています。
4.NewtonX
「NewtonX」とは、株式会社セラクから2023年8月にリリースされた、法人向けChatGPTサービスです。ChatGPT利用の課題とされる、セキュリティ・コンプライアンス面のリスク回避機能が標準搭載されています。Microsoftアカウントなどのアカウントからログインでき、多要素認証などの企業で使用している認証ルールをそのまま適用可能です。機能面では、誤回答の抑制や履歴の保存・閲覧、プロンプト作成補助やユーザ間のチャット共有などの特徴があります。
また、どのような企業でも利用できるよう、サービスの導入・活用定着支援を行っています。不安がぬぐえない、または問題解決が難しい場合なども、相談や支援が受けられるツールと言えるでしょう。
AIの導入や法人利用が不安な場合は
生成AIに限らず、AIツールの導入や法人利用に対して、セキュリティ面やコスト面を不安に感じる場合もあるでしょう。その場合は、自社の悩みや問題に沿った他社の活用事例などの調査をおすすめします。また、前述したように社内で生成AIに関するセミナーを開き、社内全体で正しい知識を共有することも大切です。それでも不安がぬぐえない場合は、専門的な知識を持つ外部企業などに導入支援を受ける方法があります。業務に合わせた使用用途から対処法を考え、適切な方法を見つけましょう。
まとめ
生成AIを法人利用するために必要なこと、重要なことをご紹介してきました。導入する前に必要な機能やツールの選択が重要となり、選択するためには生成AIに関する正しい知識が必要不可欠です。加えて、生成AIの技術はまだまだ発展途上で、現在リリースされているサービスも進化拡大していく可能性があります。多様な現行サービスの中から適したツールを見つけられれば、業務の効率化とさらなる利便性の拡大が期待できるかもしれません。