業界/資格

進化する男性育休!通達・取得促進の義務化と助成金や法改正について解説

date2024年01月30日
進化する男性育休!通達・取得促進の義務化と助成金や法改正について解説
タグ:

はじめに

妊娠による産休を経て、子が1歳になるまでの育児休業という制度は女性だけの特権という強いイメージがありますが、女性だけでなく男性も取得することができる制度でもあります。男性が育休取得を考えるにあたって、どのようなタイミングでとればいいのか? そもそも育休とは何であるのか? について思い悩む人も少なくないでしょう。

男性育休に関する法改正が2022年から段階的に行われています。本記事を通して、助成金や法改正について理解するとともに夫婦が協力しあい、男性の育休取得を考える機会にしてください。

男性育休とは?

男性育休とは?

これまで、男性の育児参加促進を目的とした「パパ育休」の制度が存在していました。しかし、令和4年9月末をもって廃止し、令和4年10月から創設された子が誕生し、8週間までに取得する「出生時育児休業(別名:産後パパ育休)」の制度が開始しました。それに伴い、産後パパ育休とは別に現在の「育児休業」制度も法改正されています。

「男性育休」とは、生まれた子どもを育てていく男性の労働者を対象とし、育休取得する制度のことを指します。厚生労働省において策定した育児・介護休業法に基づき、定められた期間で取得できます。いわゆる「仕事と子育てを両立」していく労働者を支援する制度です。
また「育児休業」は基本的に男女問わず、夫婦ともに取得ができます。

参考:厚生労働省|育児・介護休業法について

育休に対する考え方

子どもを育てていくための育休に対する考え方として次のような背景があります。女性の離職理由のひとつに、育児と仕事が思うように両立できず、復職しても継続することが困難であることが挙げられます。

国として、こうした離職問題を解決していくために男性も育児に参加することで、夫婦ともに帰属意識を高め、出産・育児を理由とする女性の離職率を減らそうといった考え方です。男性はもちろん、女性にとっても出産や育児への意欲につながり、なおかつ職場における働き方改革に貢献できると非常に期待されています。

育休と産休の違い

子が生まれてから取得する育休とは別に産休という制度があります。「産休」とは正式名で産前産後休業と呼ばれ、女性が妊娠し、出産前6週間から出産後8週間までの期間で休業することを指します。
厚生労働省が策定した労働基準法65条に基づき、出産に臨む女性のための休業です。また双子などの妊娠(多胎妊娠)の場合、ハイリスクを考慮して出産前14週間から出産後8週間までと決められています。

男性育休取得率と法改正

男性育休取得率と法改正

企業から従業員への通達・取得促進の義務化が2022年10月よりスタートしましたが、現在の男性による育休取得率がどれくらいなのかについて気になる人も少なくないでしょう。女性の産休・育休取得が増えていく中で、男性育休における取得率とともに育休制度がどのように法改正されたのかについても併せて、説明していきます。

男性育休取得率の実態

2021年に厚生労働省が発表した「令和3年度雇用均等基本調査」の結果によれば、女性の育休取得率が85.1%と高い数値であることに対し、男性の育休取得率が13.97%と低い数値が示されています。男性の育休取得率が女性よりも低い理由として、「自分が休業することで他の社員に業務のしわ寄せが行くのでは……」という不安と申し訳なさで躊躇してしまう背景があります。こうした問題を解決していくために企業が積極的に取り上げていく必要性があると言えるでしょう。

政府は令和7年までに男性の育休取得率を30%に上げることを目標としているのです。

参考:厚生労働省|育児・介護休業法の改正について

法改正された内容

2022年10月より出生時育児休業(別名:産後パパ育休)へ法改正されて以降、2020年度当時の男性の育休取得率12.65%と比較して1.32%増加しました。取得率の伸びが緩やかではあるものの今後の取得率向上が見込まれており、多くの企業でも育休取得の制度への取り組みに力を入れています。では、育休制度のどの部分が法改正されたのかについて、以下の5つの項目を表にしましたので参考にしてください。

法改正における内容概要施行期日
1. 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設(育児・介護休業法)出生時育児休業(産後パパ育休)の新設
1. 休業の申し出期限は原則休業の2週間前まで
2. 分割して取得可能な回数は2回まで
3.労働者と事業主の個別合意により事前調整した上で休業中に就業することを可能とする(労使協定を締結している場合)
令和4年10月1日~
2. 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け 1. 育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置
2. 事業主が妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対して個別の制度周知及び休業の取得意向の確認義務
令和4年4月1日~
3. 育児休業の分割取得 育児休業期間は分割して2回まで取得可能 令和4年10月1日~
4. 育児休業の取得の状況の公表の義務付け 雇用する労働者数が1,000人を超える事業主に対し、育児休業取得状況の公表義務づけ 令和5年4月1日~
5. 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和 有期雇用労働者の育児休業および介護休業「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件を廃止。労使協定を締結した場合、無期雇用労働者と同様に事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外可能とする 令和4年4月1日~

参考:厚生労働省|令和3年改正法の概要

育休取得の平均期間は?いつから取得できる?

育休取得の平均期間は?いつから取得できる?

育休取得する際のタイミングは? いつから取得できるのか? どのタイミングで言うのかについては気になるポイントです。夫婦の環境状況に合わせて、育休取得のスタイルをそれぞれ選択することも可能です。以下より育休の平均期間と併せて男女別に説明しますので、参考にしてください。

出産予定日が前後するパターン

基本、出産予定日を「育休開始日」として申請します。しかし、妊娠期間は十月十日(とつきとおか)とされていますが、予定日ぴったりに生まれてくるケースはごくまれです。多くの出産は予想だにしないタイミングで始まるため、予定通りに生まれてくるとは限りません。こういったケースもあることから、予定日よりも早く生まれたら? もしくは予定日よりも遅く生まれたら? など、どのように申請したらいいのかわからないケースがあります。以下では出産予定日前後の状況に分けて、見ていきましょう。

予定日よりも早く生まれた場合

出産予定日よりも早く生まれた場合は育休開始日繰り上げの変更が可能ですが、育休開始日の1週間前に申請する必要があります。実際の休業は、育休を申請した日から1週間後にスタートすることを知っておきましょう。例を挙げると、出産予定日が4/1で実際には3/22に生まれた場合は子が誕生した日(3/22)に申請し、その1週間後の3/27から育休を取得できます。企業にもよりますが、子の誕生後すぐ休業に入りたい場合や第二子出産の際に上の子を見なければならない場合は、勤務先企業と相談もしくは有給休暇を利用する方法があります。

予定日よりも遅く生まれた場合

育休開始日を遅らせるといった規定がもともとないため、出産予定日より遅く生まれた場合は予定日からスタートします。予定日を過ぎてしまった場合でも子が1歳の誕生日前日までが育休期間です。例を挙げると出産予定日が4/1で、実際には4/8に生まれた場合でもそのまま予定日(4/1)からスタートになるということです。また法律上、育休開始日を遅らせる規定がないため、遅らせたい場合は勤務先企業と相談する必要があります。

育休取得のおすすめパターン別

従来のパパ育休制度では1回しか取得できませんでしたが、産後パパ育休制度へ法改正されてから2回に分割取得できるなど、さまざまなパターン別で取得できるようになりました。また産後パパ育休制度と併用して育児休業制度も2回分割取得ができ、最大で4回の分割取得が可能です。以下では、それぞれおすすめの取得パターンごとに説明していきますので参考にしてください。

1.一括で取得する場合

夫婦ともに子の誕生日の前日までの最大1年間の期間で取得するパターンです。女性の場合は産休8週間の終了後からスタートし、男性の場合は子の出産予定日から育休がスタートします。夫婦ともに、誕生直後から1歳までの子の成長をじっくりと見ておきたい場合などにはおすすめのスタイルでしょう。

育休を一括で取得する場合の図

2.片方だけ分割で取得する場合

男性もしくは女性のどちらかが、子が誕生後から1年間育休を取得し、もう片方が必要な時期だけそれぞれ2回分割取得するというパターンです。たとえば、男性が仕事上、長期的に育休取得するのが難しい場合に、計画を立てて下記の図のように産後パパ育休と併用して育児休業を分割取得(最大4回)することが可能です。

育休を片方だけ分割で取得する場合の図

3.夫婦交互で分割取得する場合

夫婦が計画を立てて、2回交互で分割取得するパターンです。例えば、どうしてもお互いが仕事を長期的に休むのは困難、もしくは子の予防接種や1歳までの細やかな健診が立て込んでいて、夫婦間で分担、協力しあう必要がある場合に分割取得することが可能です。一時的に復職しなければならない事情がある場合にも有効な取得方法と言えるでしょう。

育休を夫婦交互で分割取得する場合の図

育休制度におけるメリット

育休制度におけるメリット

産後パパ育休という制度へ法改正したことで、男性側(取得者)と企業側(経営者)にどのようなメリットがあるのかについて気になるところです。パートナーに偏りがちな育児や家事の負担をお互いが分担し合うことで、将来に対するビジョンが見えてくるのではないでしょうか。男性育休における通達・取得の義務化によってどのような変化が見られるのか、男性側(取得者)・企業側(経営者)それぞれのメリットについて見ていきましょう。

男性側(取得者)の場合

男性も育休参加に意欲を高めることで女性ももちろんお互いが復職しやすくなり、キャリアアップに向け、仕事へのパフォーマンス向上につながります。育休を経て、復職することで将来的にも家計が潤うだけでなく、他にもいくつかのメリットがあります。以下の3点について説明していきましょう。

1.家族と触れ合う時間が増える

子育てに対する不安や心配を共有しながら解決していくことで、家族と触れ合う時間が増えるメリットがあります。育休取得することでお互いに協力し合え、信頼関係を築くだけでなく相乗効果により復職やキャリアアップに向けてのモチベーションも向上します。何より、子の成長をお互い共有しあえて笑顔も増えるなど、良いことづくめでしょう。

2.育児への負担軽減と父親としての自覚

女性がすべての家事をこなしながら、育児をするといった「ワンオペ育児問題」は体調や体力に限界を感じたり、復職へのモチベーションが下がったりするなどさまざまな悪循環を生みます。こうした問題から男性も育休取得することで、育児や家事への負担軽減ができるのです。

また、これまで育休取得しなかった男性の多くは、子に関われる時間が少ない理由で子どもへの愛情表現がうまくできない、もしくは父親としてどのように向き合えばよいか分からないといった課題がありました。育休取得することでリアルタイムに誕生時から子育てに参加できるほか、夫婦や子どもとの間で信頼感が生まれるなどのメリットが得られます。相乗効果として父親としての自信や自覚も同時に育まれるなど、育児参加はプラスに働くでしょう。

3.キャリア形成や帰属意識向上

現状、男性の育休取得率が低く意識改革も進んでいないため、育休取得は敬遠されがちです。しかし、産後パパ育休や育児休業の制度を活用することは、自身の業務整理ができる上に職場における属人化を防ぐこともできます。離れた視点で自分の業務内容を振り返ることでマニュアル化を浸透できるなどの利点があります。

また、お互いが育休制度を取得しやすくなれば離職せざるを得ない状況が避けられ、帰属意識が向上します。夫婦ともに育休期間中に資格取得への時間に費やすなどキャリアアップにつなげられ、より家計も潤い世帯収入も安定するといったうれしいメリットを得られるでしょう。

企業側(経営者)の場合

男性側(取得者)が得られるメリットについて話しましたが、企業側(経営者)が従業員へ育休の通達・取得をさせることでいくつかのメリットが得られます。以下でどのようなメリットがあるのかについて説明していきます。

1.ワークライフバランス重視による若手人材の確保

仕事も育児も両立することを重視としたワークライフバランスを取り入れている企業であれば、この会社で働きたいと意欲をもつ若手人材の確保にもつながります。ワークライフバランスを重視した育休推進のひとつに、子育て中の短時間勤務や残業免除への配慮などが義務づけされており、男性における職場環境の整備に力を入れるといった例が挙げられます。企業側においても採用時にプラスに働き非常にメリットがあるでしょう。

2.柔軟な働き方改革と企業イメージ向上

社内・社外問わず、「男性も育休取得ができる企業」として、イメージアップにつながるメリットがあります。2022年10月から「育児休業の取得の状況の公表の義務付け」が法改正されたことで、従業員が1000人を超える企業では育休制度を積極的に取り入れています。ワークライフバランスを重視とした柔軟な働き方で、仕事をしたいという若手人材の企業選びにおける指標とすることができるのです。

企業全体のイメージアップを図ることは新しい働き方改革のひとつとして重要なことなのです。

3.助成金による給付が受けられる

中小事業主を対象とし、令和4年度よりスタートした育児休業等支援コース(子育てパパ支援助成金)の給付を受けられます。「子育てパパ支援助成金」とは従業員が育休取得し、休業期間を経て職場復帰した際に国から対象とする企業へ支給される助成金のことです。厚生労働省のリーフレットによると、5日間以上の育休を取得する従業員がいる場合に、事業主に対して合計57万円(休業取得時28.5万円、職場復帰時28.5万円)を受け取れるとされています。

ただし、職場復帰時の助成金については、最初の育休取得時に受給していない場合は申請が不可能となっているため注意が必要です。

参考:厚生労働省|令和4年度両立支援等助成金の概要

給料がもらえない時の助成金給付

給料がもらえない時の助成金給付

育休期間中は基本的に給料をもらえません。しかし、育児休業制度を賢く利用することで、社会保険料の免除を受けられる上に休業前の給料(手取り)のおおよそ8割が補える助成金給付という保障があります。 以下で育児休業給付金について説明していきますので、育休・復職計画をもとに、育児休業給付金を正しく受け取れるようにしてください。

育児休業給付金

「育児休業給付金」とは育休を取得した人に対して、受給資格条件を満たしていれば給付が受けられる制度のことです。子が1~2歳になるまで養育する人(雇用保険の被保険者)
を対象としています。日本でも問題とされている少子化という課題を解決していくために労働者が育休を取得したのち、復職を支援するための給付金でもあるのです。

給付金額は夫婦ともに違いはありませんが、支給期間が夫婦ともに異なります。女性の場合は産後休業期間(産後8週間)を経て、翌日から子が1歳になる前日までの育児休業期間に給付を受けられるのに対し、男性の場合は子が誕生した日から1歳になる前日までが支給期間です。注意ポイントのひとつとして、休業期間中の就業日数一支給単位において、10日(就業時間80時間以下)以下であるという条件を満たす必要があります。その他の注意事項については下記、参考URLをご覧ください。また支給金額については、以下の通りで計算されます。

育児休業給付金の支給金額

  • 休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育休開始日から6カ月後は50%)

    ※ただし、賃金日額には上限額があります。
    ※休業開始時賃金日額…育児休業開始前の賃金6カ月分を180で除した額

参考:厚生労働省|育児休業給付についてのパンフレット

所得税・社会保険料の免除

日本年金機構では2022年10月から施行された「育児休業期間中における所得税や社会保険料の免除」の要件についてルールを変更しました。「育児・介護休業法による満3歳の子を養育するための育児休業等期間について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者が育児休業の期間中に事業主が年金事務所に申し出ることにより被保険者・事業主の両方の負担が免除されます」と見直しされています。

ただし、法改正後の免除における条件として1か月のうち14日以上、3歳未満の子を養育している場合に限られます。

まとめ

育休(産後パパ育休)の制度について理解いただけましたでしょうか。男性育休は女性の離職率を減らすだけでなく、企業全体としても復職や若手人材確保ができ、新しい働き方改革が進むなどの利点があります。相乗効果として、女性の育児・家事の負担を軽減することで家族全体や家計に余裕と潤いをもたらします。国が掲げる男性育休取得率30%の目標を達成するために、2022年10月から法改正された内容とともに育休取得への重要性を理解していきましょう。育休制度を積極的に取得し、復職後の帰属意識やキャリアアップを目指してください。

最後のチェックポイント

  • 男性育休とは子が1歳になる前日まで養育する男性の労働者が育休取得する制度である
  • 企業は働く男性従業員へ育休における通達・取得の促進が義務化されている
  • 男性育休は女性の帰属意識やキャリアアップ形成を支援するための制度でもある
  • 企業側にもイメージ向上とともに若手人材の確保につなげられる
  • 条件を満たしていれば、育児休業給付金の給付が受けられる
IT業界に挑戦したい23年卒の方、私たちの仲間になりませんか?
【会社選びは、仲間探しだ】IT業界に挑戦したい23年卒の方、私たちの仲間になりませんか?
株式会社セラク 開く