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注目されるスマートシティとは?構想の背景や課題と事例を紹介!

date2023年05月15日
注目されるスマートシティとは?構想の背景や課題と事例を紹介!
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はじめに

昨今CMでもスマートシティについて見かけるようになりました。多くの人々の生活など社会における課題の解決に向け、ICT技術を活用したスマートシティ実現の動きは加速しつつあります。あなたの街のどこかで安全な地域づくりをするために、IoT技術によって、多くの人々が便利で豊かな生活を実現できるなどの恩恵を受けているのです。

本記事では社会が抱えるさまざまな課題をどのように解決し、スマートシティの取り組みが成り立つのかについて解説していきます。

スマートシティとは

スマートシティとは「ICTなどの先端的な技術を活用し、地球の環境に配慮した社会におけるサービス向上に向けて経済に発展を目指していく都市」のことを指します。今や、世界中では各都市における環境問題などの課題が深刻であり、解決策のひとつとしてスマートシティの取り組みが注目されています。

内閣府のガイドブックで定義されているSociety5.0は「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」として位置づけられており、さらなるスマートシティの実現を目指しているのです。
参考:内閣府|スマートシティ ガイドブック

スマートシティにおける意味や定義

スマートシティの考え方は、ウィーン工科大学で開発されたモデルの「6つのスマート」というスマート・シティ・モデルによって構成されています。エネルギー問題など環境に配慮しつつ、大勢の人々の生活をより豊かなものにできると期待されています。

また、国土交通省では「都市が抱える諸問題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画・整備・管理・運営)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義づけられています。
参考:国土交通省│スマートシティに関する取り組み

スマートシティー/6つの項目
スマートリビング(生活) ICT技術発達によりさまざまな変化をもたらし、生活の質(QOL)を高められる
スマートラーニング(教育) ICT技術を活用された学習を特徴としており、電子黒板やタブレットの導入が普及され、全ての人により学びの場をひろげることが可能になる
スマートエネルギー(環境) 太陽光発電、風力発電といった再生可能エネルギーなどを活用し、環境問題に配慮した取り組みをしている
スマートモビリティ(交通) IoTやAI技術によって交通渋滞や事故を緩和させ、さまざまな交通による課題を解決している
スマートエコノミー(経済活動) 生産年齢人口減少の問題により、IoTなどのイノベーションをIT導入することで生産性向上につなげていく
スマートガバナンス(行政) “従来型政府”に続き“デジタルガバメント”の後に 形成される政府のあり方のことを指す
人件費コスト削減を目指し、ICT導入によって利便性向上を促していく

スマートシティ構想とその背景

スマートシティ構想とその背景

ICT技術を活用し、マネジメントすることで持続可能な都市や地方づくりを目指すことがスマートシティ構想の取り組みです。その背景には、地球上における人口が2050年までに97億人に上るという予想があります。都市部への人口一極集中が進むことにより膨大なエネルギーが必要になるばかりか、環境への悪影響が出るなどの課題が挙げられます。

都市部や地方全体における交通や行政、すべてのインフラ整備の効率化にIoTなどの技術が必須であり、その取り組みにスマートシティ構想が期待されています。

スーパーシティ構想との違い

スマートシティとは別に「スーパーシティ構想」という言葉があります。内閣府国家戦略特区のサイトによると、「地域の「困った」を最先端のJ-Tech(Japan Technologyの略で日本が展開している技術のこと)が、世界に先駆けて解決する。「スーパーシティ」構想はこうした「まるごと未来都市」の実現を、地域と事業者と国が一体となって目指す取り組みです。」と定義されています。

すなわち、スマートシティが先端技術の活用によって、都市部の機能が効率化していくのに対し、スーパーシティ構想は住民からの目線で競争力のある事業者や国と手を取り合い、AIやIoT、ビッグデータなどの先端技術を駆使して快適な未来都市を目指そうといった取り組みです。
参考:内閣府 地方創生推進事務局 国家戦略特区│スーパーシティ

スマートシティにまつわるメリット

スマートシティにまつわるメリット

街のあちこちにスマート化したものが増えつつあり、わたしたちの生活も便利かつ豊かなものになりました。環境に配慮した取り組みのもと、持続可能な都市や地方づくりを目指すスマート化にはどのようなメリットがあり、どのように実装ができるかについて以下の2つを解説していきます。

1.ICT活用で様々な課題の解決

たとえば、さまざまな交通手段における移動の手配を簡単に、MaaS(Mobility as a Service) というひとつのシステムで完結できるといった例です。

自動車を複数人がアプリで共有する「カーシェアリング」や、相乗りして同じ目的地に行く「ライドシェア」も注目されています。特に障がい者や高齢者、子どもなど交通弱者にとってより安全な交通システムの幅広い普及を目指しています。都市・地方各面での機能の効率化を図るため、ICTやビッグデータなどの先端技術を活用することで、交通における移動だけでなく省エネルギーや環境問題などの課題を解決に導いているのです。

2.ニーズに合った提供と生活の質向上

都市や地方によって課題やニーズはさまざまですが、わたしたちのライフスタイルに合わせてICT技術を柔軟に取り入れることで、生活の質(QOL)の向上が見込めます。オンライン注文で手軽に購入する、またはテレワークなどのデジタル技術を導入したことで働き方改革も進み、オフィススペースの削減をするところも増えています。コロナ禍においては持続可能な取り組みの例です。

こうした取り組みは自治体や民間企業との連携が不可欠であり、世界各地の技術力向上やインフラ整備が期待され、高齢者の増加など社会が抱えている問題の解決につながります。

どのような課題があるのかを知ろう

どのような課題があるのかを知ろう

スマートシティの構築を進める上では、手順が確認できるスマートシティリファレンスアーキテクチャを方針とし、課題の解決に活用しています。上でスマートシティにまつわるメリットについて述べましたが、都市部や地方においてICT技術の活用などの利便性が高まっていく一方で、どのような課題が残されているのでしょうか。以下の4つを具体的に見ていきましょう。
参考:内閣府|スマートシティ リファレンスアーキテクチャのつかい方

1.災害時の故障やサイバー攻撃などの被害

天候や震災などの災害によって都市部のインフラ機能が停止した際に故障してしまったり、サイバー攻撃に遭遇したりするなどの原因により、IoT端末やAIの自動制御が破壊される恐れもあります。
スマート化していくなかでICTに依存してしまうことにより、わたしたちの生活に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。

そういったトラブルを予知し、未然に防ぐためのサイバーセキュリティ対策によって被害のリスクを軽減する必要があります。

2.プライバシー保護に対する不安

スマートシティを構築する上ではIoTなどの先端技術を活用して、都市部や地方、多くの住民から収集したデータを分析する必要があります。

そのため、都市部や地方のあらゆるところにセンサーが設置され、生活上における情報が集められることによりプライバシーが侵害され、さらにはプライバシー保護に対する不安を与えてしまいかねません。行動可視化によって社会が最適化していく一方で、こうした懸念をなくすためにプライバシーに配慮した対策が必要なのです。

3.データ独占によるリスク管理の困難

わたしたちがネット上で検索や購入をする行動が履歴に残り、一部の企業が個人のニーズを割り出し、利益を得るために利用されることがあります。

その際に万が一情報やデータが一極集中した場合に、外部により情報を悪用されるリスクや、自分の情報がいつどこで悪用されるか分からないという不安による弊害が生じます。

4.膨大コスト負担と費用対効果

スマートシティ構想の持続した実現には、システム維持や課題の対処のみならず、改善のために新技術を取り入れる新しい試みが不可欠であり、なおかつ膨大なコストをかけてしまうことがあります。しかし、新しい試みに挑戦しても、必ずしもよい成果が得られる保証はありません。

結果として「スマートシティは費用対効果がない」と受け取られる可能性があり、社会からの理解が難しくなるばかりか、スマートシティ構想への参画に関してネガティブになるなどの懸念があります。

暮らしが変わるスマートシティの事例

海外をはじめとしたスマートシティの取り組みが開始され、徐々に日本国内でも認知されるようになりました。2010年には横浜で日本初の取り組みが始動し、現在では世界中から注目されるようになっています。スマートシティ構想を実現した具体的な事例を日本と海外とでそれぞれ紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

日本進出のスマートシティ事例4選

さまざまな社会課題に対し、どのようにスマートシティの取り組みが進んでいるのでしょうか。まずは、日本が進出したスマートシティの事例を4つに分けて紹介しますので、見ていきましょう。

1.柏の葉スマートシティ

千葉県柏市を拠点とし、「1.環境共生」「2.新産業創造」「3.健康長寿」の3つのテーマをもとに「世界の未来像」を構築し、公・民・学が団結して「柏の葉スマートシティ」という街づくりを目指しています。高齢化社会などの問題を解決するべく柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)を開設し、街全体がオープンイノベーションフィールドとして多方面で機能しています。2022年11月にはがん患者の睡眠をサポートする見守り「Tellus」というホテルが初導入されました。

このように公共・民間・大学が新規参画を募集する企業があらゆるプレイヤーへの架け橋となり、共創プラットフォームにおける役割を果たしていると言えます。
参考:柏の葉スマートシティ

2.トヨタ/ウーブン・シティ

静岡県裾野市を拠点とし、トヨタ従業員をはじめプロジェクトの関係者など2000人程の住民が暮らすための「ウーブン・シティ」という開発都市づくりが行われています。
「ウーブン・シティ」のwoven(織り込まれた)は街中に張り巡らされた道が網の目のようなデザインであることに由来します。

東京ドーム約15個分の広さの土地があり、建築設計の匠として有名な、デンマーク出身のビャクケ・インゲルス氏が率いる、建築事務所『ビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)』が都市設計をしています。Well-Being(幸福感)の実現を目標とした事例のひとつに、食料面の取り組みとして、トヨタと日清食品が共同開発した「完全栄養食メニュー」を展開しました。その提供をもとに、人々の食に対しての選択肢拡充と健康の増進を進めています。

未完成の街として知られている「ウーブン・シティ」は人々の「声」をもとにモビリティの拡張に取り組み、持続可能な街づくりが現在進行中です。
参考:ウーブン・シティ

3.スマートシティAiCT

福島県会津若松市を拠点とし、新たな雇用を増やすことで若年層における地元への定着や地域発展の維持を目指すため「つなぎ続くまちへ」をテーマとした取り組みをしています。

その中のひとつがスマートシティAiCTです。1つのオフィスビルに世界中の各企業が在籍し、地元の企業間で新たなサービスやプロジェクトなどがコラボレーションされ、さらにはオリジナリティーに富んだアイデアを生み出します。オフィス棟01~03が連結した施設で、中にはセキュリティゲートを設置したエントランス、プライベートを確保した空間や企業間のためのオープンスペースとして、活用できるフロアなどが充実しています。
参考:スマートシティAiCT

4.一般社団法人スマートシティ・インスティテュート

一般社団法人スマートシティ・インスティテュートは、スマートシティ拡大と高度化の実現を推進する産官学連携のプラットフォームとして、2019年10月に設立された民間主導の非営利型一般社団法人です。政府が掲げている「デジタル田園都市国家構想」のもと社会における課題に向けて取り組んでいます。高度化の推進に多くの企業や機関などが参画して、スマートシティにおける最新情報や推進ノウハウなどを企業間で収集・分析・共有しているのです。それによって、スマートシティの拡大・高度化に向けてさまざまな事業が展開されています。

言い換えれば、スマートシティ実現のための『影の立役者』のような存在です。

参考:一般社団法人スマートシティ・インスティテュート

海外進出のスマートシティ事例3選

日本進出のスマートシティ事例をあげましたが、海外では最先端技術によって持続可能な社会の実現に向けてどのような取り組みをしているのでしょうか。以下の3つを紹介しますので、見ていきましょう。

1.アムステルダム・スマートシティ・プログラム(アムステルダム)

オランダ・アムステルダムのスマートシティ構想は早い段階から始まっています。エネルギー関連企業でもあるAllianderとともに、エネルギー問題の解決に向けて動き始めたことが発端となりました。

2009年には「アムステルダム スマートシティ プログラム」というシェアリングシティを目指す取り組みが正式に策定しました。
その取り組みとして、パーキングの空き情報をアプリで探すといったシステムや、一般家庭を中心としたスマートメーター設置導入などの取り組みでCO2排出を削減し、さまざまな消費電力の可視化に貢献しています。

2016年には「シェアリング シティ アムステルダム」というシェアリングサービスを開始しました。たとえば、「Thuisafgehaald」といった近所同士で調理した料理をシェアできるサービスや、オランダきっての独自サービス「Barqo」というアムステルダム川をクルーズするためのボートの貸し出しなどのビジネスが幅広く展開されています。

2.ハドソン・ヤード再開発プロジェクト(ニューヨーク)

2016年にニューヨーク州は世界でも最大級のイベント「Smart City Expo World Congress」でベスト・スマートシティに輝いたことで話題になりました。

アメリカのニューヨーク州を拠点とし、マンハッタンでも大規模的な開発で都市ビルと新施設をネットワークでつなげた「ハドソン・ヤード再開発プロジェクト」という取り組みをしています。ハドソン・ヤード再開発ではオフィスビル、学校、商業施設などさまざまな要素を含んだ融合型施設で、施設エリアごとのニーズや動向を分析するためにITプラットフォームによってモニタリングをしています。継続的にビッグデータの活用をすることで、交通や歩行者の状況、ニーズの変動に応じて管理しているのです。

すでに2019年にはフェーズ1「ハドソン・ヤード」の施設が完成していますが、すべての開発が完了するのは2024年以降になり、その取り組みは継続中です。

3.Smart Nation Initiative(シンガポール)

スマートシティの先進国とも知られているシンガポールの政府では、都市部が抱えたさまざまな課題を解決していくため、2014年から「Smart Nation Initiative」を立ち上げました。

交通状況や住環境などの影響をもとに「バーチャル・シンガポール」の取り組みをしています。地形や駅、施設など国土の全てを3Dバーチャル化し、あらゆる視野をひろげてシミュレーションが可能です。

また日本と同じようにシンガポールでも高齢化問題が深刻化しています。高齢化問題を解決するための取り組みとして2018年には「Moments of Life」という若年層の親をサポートする電子政府サービスが始まりました。出生申請や誕生した際のベビーボーナスの受給申請などがスマートフォンひとつで完結できるようになり、わざわざ自治体に出向く必要がなくなりました。こうした取り組みによって、現在もさらなるスマート国家への発展を目指しているのです。

まとめ

都市部への人口一極集中によって発生する環境・エネルギー・高齢化問題などの課題を解決していくために、スマートシティ構想による開発が必要です。持続可能な都市づくりをしていくには、先端技術であるICTやIoT、ビッグデータの活用が不可欠です。住民の生活様式や個性に合わせた都市機能が経済循環の促進につながり、世界中の各地で今もなお、人々のニーズに寄り添ったスマートシティ開発が進んでいます。

最後のチェックポイント

  • スマートシティとは「先端技術で環境配慮と経済発展を目指していく都市」である
  • スマートシティはSDGs実現の達成に効果的である
  • 都市開発にはICTやIoTなどの先端技術が不可欠である
  • スマートシティ構想が社会や環境における課題の解決に役立つ
  • ICT技術によってQOL向上やニーズに合った提供ができる
  • スマートシティの成果で得られる保証がなく膨大コストの負担がある
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