ケース面接とは?事前の準備と柔軟で論理的な思考が重要!
はじめに
面接官からの課題に対して制限時間内に回答するケース面接は、論理的な思考力、コミュニケーション能力、思考の柔軟性などが試される対策必須の面接です。新卒の就活や転職時にも採用例が増えています。本記事ではこのケース面接について、課題のパターンや解き方、よくある失敗例について、事例を交えて解説します。
面接にまつわるノウハウや対策方法を完全網羅! 面接について困ったときはぜひ以下のリンク先記事を参考にしてみてください。
ケース面接って何?
ケース面接は外資系企業を中心に新卒・中途を問わず行われている面接形式です。現在では海外だけにとどまらず、日本でも普及しつつあります。このケース面接とは具体的にどのようなものでしょうか? 以下に詳しく解説します。
いろいろな業界で行われているケース面接
ケース面接とは、与えられた課題に対して制限時間内に解決方法を回答する面接です。この回答と質疑応答を通じて論理的な思考力(ロジカルシンキング)やコミュニケーション能力、思考の柔軟性など、複数の能力が試されます。
ケース面接は外資系の戦略コンサルティングファームを中心に新卒、転職者を問わず行われてきましたが、現在では国内外を問わず総合商社やIT業界など、コンサルティング業界以外にも導入する企業や業界が増えています。このためコンサル業界ではもちろん、他の業種や業界志望でも対応できるように準備しておきましょう。
ケース面接の流れや目安
ケース面接における時間の流れはさまざまですが、下記のように概ね30分ほどで完了します。
- 問題点やテーマの説明(1分程度)
売上や利益の拡大など、問題点や解決策を分析する必要があるテーマ(店舗売上を1.5倍にする方法を答えてくださいなど)が、課題として前提条件とともに出題されます。 - 課題分析・回答準備(15分程度)
課題を分析し、問題点を明らかにします。
面接官の前で考える場合や個室が与えられる場合もあります。 - 回答を面接官にプレゼン(5分程度)
分析してまとめた回答を面接官にプレゼンします。
口頭で行う場合や会議室のリソース(紙やホワイトボード)を使う場合などがあります。 - 質疑応答(10分程度)
面接官からの質問に対して応答します。
面接官によってはこの他にも、ケースはさまざまに考えられます。
どのような問題が出るのか?
ケース面接ではどのような問題が出されるのでしょうか? 以下ではケース面接に多く見られるパターンを例題とともに解説します。ケース面接には過去問題も多く存在しますので苦手な方もぜひ、これを機に対策してください。
1.売り上げを増やすには何をすればよいか?
例題:ベーカリーの売上を150%にする方法を考えてください
前提:1日の顧客数は300人、客単価は500円、購入頻度は1.5回とします
売上は、顧客数×客単価×購入頻度という単純な計算で算出できますので、売上拡大は一番ポピュラーな問題です。アメリカの著名な経営者でありマーケティングコンサルタントでもあるジェイ・エイブラハムの理論でも、この3つのうちいずれかをアップさせればよいと説いています。
これらを分析し、単に数字だけではなく実現可能な方法を考えて回答しましょう。
2.利益を増やすには何をすればよいか?
例題:ベーカリーの利益を120%にする方法を考えてください
前提:1日の顧客数は300人、客単価は500円とします
利益は、売上(顧客数×客単価)-コスト(固定費+変動費)で算出できます。利益拡大もポピュラーなテーマです。しかし、売上だけでなくコストも考える必要があり、前提条件にない要素や変動的な数字には推定も必要になるため、難易度も高くなります。
利益拡大は売上の増加だけでなく、コストの削減についても考え、現実的な解決策を提案してください。
3.プランAかプランBか?
ケース面接では、双方が並立不可能なプランA・Bの二者択一や、テーマに対して賛成・反対を選択し、その理由と意見を述べる課題も出題されます。例えば「優先すべきは高品質か低コストか」、「給与をデジタル払いに統一すべきか否か」といった課題です。
この課題では、どちらを選んだかに正解はありません。その選択肢を選んだ理由と根拠を明確にした意見が述べられるか、つまり論理的な思考力が試される課題です。回答は双方のメリットとデメリットを整理し、自分の選択に対する理由と、その重要性を明確に説明できるように考えをまとめましょう。
4.新規事業を始めるなら何にするか?
ケース面接では「クリエイター事業を独立して法人化する。黒字化するモデルを考えよ」あるいは「常時50万人以上がアクティブを保つアプリの企画を立案せよ」など、新規事業を検討する課題が出されることもあります。
このような課題では、事業の設立理由をはじめ、黒字化や成長の見通しなどを理論的に回答する必要があります。即答が難しい課題ですので、事前に志望する企業や業界を調査して対策し、いくつかの回答を用意しておきましょう。
5.社会全体の課題について質問される
例えば「選挙における若者の投票率向上の施策」や「現実的に考えられる少子高齢化の解決策」など、社会問題や公共的な課題解決を問われることもあります。
このような課題には、その困難さや深刻さなどの理解には背景知識が、規模や人数については仮定や推定が、それぞれ必要になります。またそこから導き出す答えを論理的に回答する能力も必要です。
幅広く対応できるよう、ニュースなどを通じて時事問題をチェックしておきましょう。
課題をどう解くか?
ケース面接のパターンや事例について理解したところで、課題の解き方に触れていきます。以下ではケース面接の代表的な対策方法をもとに、それぞれの課題に対する考え方を解説します。
- MECE(ミーシー)
MECEとは、漏れなく、重複なくという意味の造語です。物事を分析する際に要素を漏れなく重複なく切り分ける考え方で、論理的な思考力(ロジカルシンキング)の基本とされています。 - 対策本を熟読する
事前の学習は大変重要です。課題への考え方や体系的な解き方(MECEやフレームワーク)をはじめ、回答精度を高めるための知識に触れられる優れた本が数多く存在します。ぜひ、自分に合ったものを手に取ってください。 - いろいろな問題を解く
ケース面接には過去の事例や問題集も存在します。過去の出題例から考え方と解き方に触れ、繰り返し練習することで、本番での対応力を高められます。 - 模擬面接
知識と練習が伴ったのなら、ぜひケース面接の模擬面接に臨んでください。実際に人を前にすることで時間や質疑応答のプレッシャーにも対策できます。机上の勉強では気付けなかったことも発見できるでしょう。
フェルミ推定について
ケース面接の対策をする前にぜひフェルミ推定を理解してください。
フェルミ推定とは、不明なものを概算する方法論です。課題の前提条件など、いくつかの要素から論理的な思考力を頼りに規模や数字を概算として割り出します。
ごく簡単な例としてフェルミ推定で世界の女性人口を割り出てみましょう。ここでの要素は人口と性別です。
まず、世界人口を80億と推定し、女性はその半分と仮定することで、世界の女性人口を40億と推定できます。このようにある程度細かい数字は無視して、簡単な推定で概ねの数を算出するのがフェルミ推定の特徴です。
ケース面接の課題では、特に明記はなくても論理的な思考力を測るために、フェルミ推定を求められていることがよくあります。そのため、ケース面接の対策でも重要な考え方といえます。
4つのステップ(進め方)
ケース面接では、そもそも難しい課題に向き合いますので、対策不足や焦りからボロボロの結果になる例も珍しいことではありません。
ここでは課題に対する考え方を「目標と前提の整理→戦略立案→実行計画の策定→利益を概算し本命のプランを決める」までの4つのステップに分けて解説します。
1.達成目標、前提条件を整理
まずは下記の例題に対し、前提条件と達成目標をはっきりさせます。
例題:ベーカリーの利益を120%にする方法を考えてください
前提:1日の顧客数は300人、客単価は500円、購入頻度は1.5回、利益率は30%とします
達成すべき目標や数字、前提条件を明らかにし、以下のように例題を整理します。
- 顧客数300人×客単価500円×購入頻度1.5回=1日の売上は225,000円
- 利益率は30%なので、1日の利益は67,500円
- 目標は利益の120%なので、1日の利益を81,000円(売上270,000円)にすること
2.フレームワークや理論を利用して戦略を立案
前提条件を整理して目標を定めたら、フレームワークや理論を利用して戦略を立案します。
フレームワークとは目的に応じたMECEを実現するため、考えるべきポイントをパターン化して分析しやすくした方法論です。エイブラハムの理論をはじめ、3C分析・4P分析・SWOT分析・AIDMAなどの方法論があります。
前述の目標達成をエイブラハムの理論で考えると、以下の様な戦略が立てられます。
- 競合する周辺店舗より集客できる広報活動を行う(顧客数の拡大)
- ベーカリーの客単価を上げる(客単価の向上)
- 来店客の購入頻度を上げる(購入頻度の向上)
フレームワークには他に、どのような成果が得られる方法論があるのでしょうか? 顧客・競合他社・自社の3点から客観的事実をSWOT分析と併せて詳しく解説している3C分析とは、マーケティングの手技を磨く目的とやり方を学ぶについての記事に続き、3C分析で得たデータをもとにマーケティング戦略を立案するのに役立つこちらのマーケティング用語解説【4P分析とは?】の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
3.実行計画をいくつか考える
立案した戦略ごとに、前提条件を踏まえて実現可能な計画を考えます。
- 計画1:競合する周辺店舗より集客できる広報活動を行う
例:インストアイベント、ポスティング活動の強化、SNSの活用 - 計画2:ベーカリーの客単価を上げる
例:季節限定メニューによるセット販売で客単価を上げる - 計画3:来店客の購入頻度を上げる
例:ポイントカードや再来店〇%オフのキャンペーンを展開する
4.計画ごとの利益(予定)を算出して、本命プランを決める
計画が出そろったら、計画ごとに出る利益(予定)を推定し、最も合理的で適していると考えられる計画を選出します。
目標は利益の120%(1日の利益を81,000円にすること)ですので、今までの利益との差額13,500円を新たな利益として獲得することが達成目標です。
例題では前提条件に変動値がないのでいずれの計画の数字も+20%以上で達成が可能です。それぞれの計画の条件やリスクを比較検討し、目標達成を考えるうえで最も合理的といえる計画を本命のプランに定めましょう。
評価される3つのポイント
ケース面接では、課題の解き方から見られる評価のポイントがあります。論理的な思考力、コミュニケーション能力、思考の柔軟性、この3つのポイントについて以下で詳しく解説します。
1.論理的な思考力があるか?
論理的な思考力は、ケース面接を通じて最も重視される要素です。課題をよく整理して結論に導いているか、ブレることなく一貫した思考になっているかが評価の基準です。
前の項目で触れた思考の4ステップやフェルミ推定、理論やフレームワークなどを活用して、論理的に筋道を立てた矛盾のない結論を導き出してください。
2.コミュニケーション能力があるか?
ケース面接においても面接官との対話は重要なポイントです。特に回答に対する質疑応答では、面接官からの質問を聞き正確に答えることや、説明不足な点を補って解説することなど、コミュニケーション能力も評価の重要なポイントです。
面接官はこの対話を通じてコミュニケーション能力を測るとともに、円滑な業務遂行や信頼関係の構築に必要な能力があるかを評価しています。
3.思考の柔軟性があるか?
面接官からのフィードバックや思いがけない質問がなされることもあるのが、ケース面接の特徴のひとつです。そのような場面で面接官は、アドリブ力の高さや指摘に対する素直さを見ることで、思考の柔軟性があるかを評価しています。
とっさの場面でも思考の柔軟さを保つ考え方の例としてゼロベース思考についてご紹介します。ゼロベース思考とは前提知識や常識、固定観念を一旦ないものとして物事を考える思考法です。思い込みや立場に縛られることのない革新的で創造的なアイデアや、顧客視点での発想が得られるなどのメリットがあります。
失敗した例
回答方法や評価のポイントがわかったところで、ケース面接にありがちな失敗について対策とともに解説しますので、事前によく把握して本番に臨んでください。
1.ケース面接について対策してこなかった
事前の対策もないまま本番を迎えてしまっては、適切に回答することはできないでしょう。
その難しさについては前述のとおりですが、ケース面接にはパターンがあると同時にさまざまな本も出版されています。ぜひ、事前準備として、過去の出題傾向と合わせて学習し、知識を付けてから本番に臨んでください。
また学習と合わせて練習することも大切です。ケース面接には時間や人前での発表など、さまざまなプレッシャーが伴います。よりよい面接ができるよう、繰り返しの練習してください。
2.柔軟性を失う
ケース面接は対策をしっかり行ったとしても、完璧に回答することは困難です。特に対策通りの回答を意識しすぎては、回答の幅が狭くなってしまうなど、思考の柔軟性を失ってしまいます。
回答に問題があれば面接官から難点や訂正すべき箇所の指摘があるでしょう。そのような場面では指摘を素直に聞き入れて適切に返答できるかが重要です。
ケース面接はそもそも難易度の高い面接です。事前の想定にこだわることなく柔軟に対応してください。
3.時間切れで終了してしまう
正確な回答にこだわりすぎると、制限時間内に回答できなくなってしまいます。
前提の分析が間違っていたり、そもそもの論理に誤りがあったりしてはいけませんが、ケース面接は論理的な思考が重視される面接です。考え方が大きく間違っていなければ評価につながりますので、正確な数字よりも全体的に誤りや矛盾のない論理で、時間内に回答をまとめましょう。
もし、時間切れの場合でも、考えられた限りのところまでは必ず回答してください。
まとめ
ケース面接は、与えられた課題に対して制限時間内に解決方法を回答する面接です。課題にはいくつかのパターンがあり、解き方にも考え方と進め方があります。回答において評価される3つのポイントは論理的な思考力、コミュニケーション能力、思考の柔軟性です。難易度の高い面接のためよくある失敗例もありますので、学習と反復練習の両面でよく対策して本番に臨んでください。
最後のチェックポイント
- ケース面接の課題にはパターンがある
- 課題の解き方にも考え方と進め方がある
- 事前の学習と制限時間内に回答する反復練習が重要
- 評価のポイントは論理的な思考力、コミュニケーション能力、思考の柔軟性
- 細かい数字の正確さより大雑把でも論理に矛盾のない回答を優先する
- 時間切れになっても考えたところまでは回答すること