今さら聞けない企業研究の基本:上場企業編
就活中の皆さんは、「上場企業」という言葉をよく目にするのではないでしょうか。「上場企業は安定している」「大手企業は必ずプライム市場」といったイメージを持っている方も多いはず。
しかし、実際はそれほど単純ではありません。
今回は、上場企業の基本的な仕組みから、意外と知られていないメリット・デメリットまで、詳しく解説します。
そもそも上場って何?
実際に「上場とは何か」と聞かれると、明確に説明できる人は少ないのではないでしょうか。まずは上場の基本的な仕組みを理解しましょう。
上場企業になるための条件とは
上場とは、企業の株式を証券取引所に公開し、不特定多数の投資家が自由に売買できるようにすることです。ただし、企業が「上場したい」と思えば簡単にできるというわけではありません。
上場するためには、厳しい審査基準をクリアする必要があります。
- 純資産が一定額以上であること
- 安定した収益力があること
- 事業の継続性と収益性
- 健全な企業統治体制の整備
- 法令遵守の体制が整っていること
つまり、上場企業になるということは、社会から認められる企業になるということでもあるのです。
株式の基本的な仕組み
株式とは、企業が事業資金を集めるために発行する証券です。分かりやすく例えると、「会社の一部を所有できる権利」といえます。
株式を購入した人(株主)には、主に2つのメリットがあります。
- 配当金を受け取れる
企業が利益を上げた際、その一部が株主に分配されます。これを「配当金」と呼びます - 株価が上がれば売却益が得られる
購入時よりも高い価格で株を売ることができれば、その差額が利益になります。これを「キャピタルゲイン」と呼びます
このように、企業は株式を発行することで事業資金を調達し、投資家は株主として企業の成長による利益を得られる可能性があります。
こうした株式の売買を行う場所が「証券取引所」です。有名な東京証券取引所(東証)は、日本最大の証券取引所です。
3つの市場の違いを知ろう
2022年4月、東京証券取引所は大きな改革を行い、市場区分を「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つに再編しました。ホームページなどで「この企業はプライム市場上場!」といったフレーズを目にすることも多いと思いますが、それぞれの市場にはどんな特徴があるのでしょうか。
プライム市場
プライム市場は、いわば「一流企業」が集まる市場です。時価総額(企業の現在の市場価値)や流動性(株式の売買のしやすさ)が高い企業が上場しています。
プライム市場の主な上場基準:
- 流通株式時価総額:100億円以上
- 株主数:800人以上
- 流通株式比率:35%以上
ただし、プライム市場に上場している企業が「いちばん優れている」というわけではありません。各市場にはそれぞれの役割があり、企業は特徴や戦略に合わせて市場を選択しているのです。
スタンダード市場
スタンダード市場は、日本の上場企業の大半が属する市場です。安定した事業基盤を持ち、一定の時価総額と流動性を備えた企業が上場しています。
スタンダード市場の主な上場基準:
- 流通株式時価総額:10億円以上
- 株主数:400人以上
- 流通株式比率:25%以上
多くの優良企業がこの市場に属しており、着実な成長を遂げている企業が数多く存在します。就活生の皆さんにとって、実は最も注目すべき市場かもしれません。
グロース市場
グロース市場は、高い成長可能性を秘めた企業が集まる市場です。いわゆる「ベンチャー企業」の多くがここに属しています。
グロース市場の主な上場基準:
- 流通株式時価総額:5億円以上
- 株主数:150人以上
- 流通株式比率:25%以上
この市場に上場する企業の多くは、既存の枠組みにとらわれない革新的なサービスや製品を提供しています。チャレンジ精神あふれる社風も特徴的です。
上場企業=安定企業?という誤解
「上場企業なら安定している」。就活生の多くがこのように考えているのではないでしょうか。確かに、上場企業になるためには一定の基準をクリアする必要があり、社会的信用も高いと言えます。しかし、上場企業であることは、必ずしも「安定」を意味するわけではありません。
上場企業が直面する課題
上場企業には、一般企業にはない独自の課題やコストが存在します。
まず、上場維持にかかる費用は決して小さくありません。
- 四半期ごとの決算報告書作成費用
- 監査法人への報酬(年間数千万円規模)
- 株主総会の運営費用
- IR活動(投資家向け広報)の費用
- 情報開示のための人件費
さらに、コーポレートガバナンス・コードへの対応など、様々な規制や基準を満たし続ける必要があります。
経営面での制約
上場企業の経営者は、株主の意向を無視することができません。これは時として、企業の成長を妨げる要因になることもあります。
- 四半期ごとの業績を重視せざるを得ない
- 短期的な利益を求める株主の圧力
- 新規事業への投資に慎重にならざるを得ない
- 柔軟な意思決定が難しい場面がある
- 情報開示義務による競争上の不利
上場企業の経営の自由度が下がる理由は、主に「株主」の存在にあります。上場すると、企業は株主に対して大きな責任を負うことになるからです。
例えば、将来性のある新規事業に投資したくても、短期的な業績悪化を懸念する株主の反対により、思い切った投資ができないケースもあります。
企業買収のリスク
上場企業には、予期せぬ企業買収の危険性が常に存在します。
- 敵対的買収の可能性
- 投資ファンドによる株式の大量取得
- 経営権の争奪
- 買収防衛策の必要性
- 株主構成の急激な変化
これらのリスクに備えるため、多くの上場企業は様々な防衛策を講じています。しかし、その対策自体にもコストがかかり、経営の負担となることがあります。
なぜ企業は上場を目指すのか
ここまで上場企業が抱える課題やリスクについて見てきましたが、それでも多くの企業が上場を目指すのはなぜでしょうか。実は、上場にはさまざまなメリットがあります。企業側と従業員側、それぞれの視点から見ていきましょう。
企業にとってのメリット
上場することで、企業は大きく3つのメリットを得ることができます。
- 資金調達力の向上
株式市場からの直接的な資金調達が可能になるだけでなく、銀行からの融資も受けやすくなります。 - 社会的信用の向上
取引先からの信頼度が上がり、優秀な人材の採用もしやすくなります。企業ブランドの確立にもつながり、ビジネスチャンスの拡大が期待できます。 - 経営基盤の強化
経営の透明性が求められることで、社内管理体制やコンプライアンス体制が整備され、結果として企業としての成長を加速させることができます。
従業員にとってのメリット
上場企業で働く従業員にも、様々なメリットがあります。
- 待遇・キャリア面
待遇面では、給与水準が比較的高く、福利厚生も充実しています。また、幅広い経験を積める機会が多く、専門的なスキルを身につけやすい環境が整っています。 - 生活面での特典
生活面でも、意外と知られていない特典があります。例えば、住宅ローンやクレジットカードの審査で有利になることが多く、様々な契約でも信用力が評価されます。 - 従業員持株会
従業員持株会は、上場企業ならではの魅力的な制度の一つです。特徴としてまず、購入時の手数料が無料か、一般より低く抑えられていることが多いです。また、多くの企業では奨励金(補助金)を支給しており、積立額の一定割合が会社から上乗せされます。さらに、定期的に少額から投資できるため、無理のない資産形成が可能です。
このように、上場は企業の成長と従業員の安定した生活の両方を支える重要な基盤となっています。
まとめ
上場企業について、基本的な仕組みからメリット・デメリットまで詳しく見てきました。上場とは単なる資金調達の手段ではなく、企業の成長における重要なステップであり、従業員のキャリアや生活にも大きく影響する選択肢です。
注目すべきは、「上場企業=安定企業」という図式が必ずしも正しくないということです。確かに上場企業には様々なメリットがありますが、同時に独自の課題やリスクも抱えています。大切なのは、その企業がこれらの課題にどう向き合い、どのような未来を描いているかを見極めることです。
セラクの場合、スタンダード市場に上場していながら、ベンチャー企業のような革新性も併せ持っています。「みどりクラウド」に代表される新規事業への挑戦は、上場企業としての安定基盤があってこそ実現できるものです。
セラクの会社としての特徴に興味がある方は、以下のページで詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。