コラム

2023.04.23

オンプレミス回帰が進む要因と、今後の企業ITインフラの展望

オンプレミス回帰が進む要因と、今後の企業ITインフラの展望

はじめに

近年は日本全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が叫ばれた影響もあり、多くの企業がクラウドを利用するようになりました。しかしそれと相反するように、オンプレミス回帰の動きをみせる企業も少なくありません。わざわざ時間とコストをかけクラウドへ移行したにもかかわらず、なぜまたオンプレミスへ戻そうとする企業がでてくるのでしょう。
本記事では一部企業がオンプレミス回帰に至る要因を考えながら、今後の企業ITインフラ環境はどうなっていくのかについて解説していきます。

オンプレミス回帰の動きとは

オンプレミス回帰とは、一度クラウド環境(パブリッククラウド)へ移行させた自社システムの一部を、再びオンプレミス環境へ戻す現象を指します。つまりクラウドベンダーへ委託していた運用の一部を再び自社運用に戻すということです。
日本より先にクラウド活用が進んでいたアメリカをはじめとする海外や、日本の大手企業の一部でオンプレミス回帰への動きが広がっています。

誤解してはいけない「オンプレミス回帰」の真意

オンプレミス回帰の傾向をみて、その動きに追随する企業や、クラウドへの移行計画を白紙に戻そうとする企業もあるでしょう。しかしオンプレミス回帰の理由は企業によってさまざまであり、すべての企業がオンプレミスに回帰することが正しいというわけではありません。
たとえば、「多くの企業がクラウドを利用することになった結果、いち早くクラウドを取り入れていた企業のクラウド環境に問題が生じた」ことでオンプレミス回帰を選択する例もあれば、「DX推進の流れに取り残されまいと慌ててクラウドを導入した企業が、うまく活用できず」オンプレミスに戻したという例もあるわけです。
オンプレミス回帰が功を成す企業もありますが、すべての企業においてオンプレミス回帰が最適解であるとは限らないため注意が必要です。

オンプレミス回帰の要因となるクラウドの課題

ここではクラウドの課題に直面した企業が、オンプレミス回帰へ動くきっかけとなった要因をあげていきましょう。

セキュリティ面に不安がある

クラウドを活用する場合、セキュリティ面はクラウドベンダーが提供するものを利用する形となります。もちろん、安全な利用のためにベンダー側でも厳重なセキュリティ対策を施しているはずです。しかし、取り扱うデータの機密度に応じ、さらなるセキュリティの強化を図りたい、といったような自社の要望すべてを叶えることは難しいのが実情です。そのため官公庁や金融機関といった機密度の高いデータを取り扱う組織や企業では、オンプレミスを利用する方がセキュリティリスク管理の点で優れている、という見方もあります。

パフォーマンスが低下する

クラウドはサーバを複数のユーザと共有で利用します。多くのユーザが同時にアクセスすることで、ベンダーに想定以上の負荷がかかり、処理パフォーマンスが低下することもあります。そうなれば業務効率の面にも影響をおよぼしかねません。
安定したパフォーマンス維持のために、オンプレミスへ戻すということも考えられます。

障害時の対応面に不満がある

クラウドはインフラの運用管理をクラウドベンダーに一任することになります。何らかの問題や障害発生時にはベンダー側が対応してくれる点では魅力がある反面、企業側で原因を掴んだり改善につなげたりといったことができず、ノウハウがたまらないという面もあります。また長時間にわたってサービス停止といった事態になれば、自社の業務の一部も停止せざるをえなくなります。
このようにクラウドへ依存することに危機感を覚えた企業が、依存リスク回避のためにオンプレミスへ戻そうとするケースもみられます。

想定金額を大きく上回るコスト

フレキシブルなサイジングはクラウドのメリットです。しかしそれを鵜吞みにし、事業拡大に合わせクラウド利用規模をどんどん大きくした結果、クラウドの利用コストがオンプレミス利用時よりも膨らんでいたというケースもあります。
コスト面でのメリットをクラウドに求めていたユーザにとっては、コストの増加はオンプレミス回帰を考える大きな原因となりえます。

今後のインフラ環境はどう選べばいい?

DX推進のためにも企業のクラウド化は必須です。しかしすべてをクラウド化することはセキュリティ面やクラウドベンダーへの依存リスク面において不安な部分もあります。
現在クラウドに悩みを抱える企業や、クラウド化を迷う企業は今後、どうしていくべきか。オンプレミス回帰への動きから今後のインフラ環境を考えた場合、オンプレミス・クラウド双方のメリットを鑑み、うまく使い分けながら活用する方法が主流となっていくでしょう。

今後はハイブリッドクラウドも視野に

セキュリティ面やカスタマイズ性に優れたオンプレミス、コスト面や運用面で優秀なクラウド、双方のメリットをうまく組み合わせ活用する方法が「ハイブリッドクラウド」です。
ハイブリッドクラウドとは、オンプレミスやパブリッククラウド、プライベートクラウド(オンプレミスとパブリッククラウドのちょうど中間の特性を持つ)など、異なるサービスを統合し一つのシステムを構築する環境を指します。

上の図のようにそれぞれが持つメリットをうまく組み合わせ活用することで、デメリットを補完しながら運用できるという仕組みです。
ハイブリッドクラウドは単一のクラウドへの依存リスクを回避し、セキュリティリスクの分散にもなり、またコストやパフォーマンス面においても課題解決の糸口となるでしょう。

まとめ

本記事ではなぜオンプレミス回帰の動きが広がっているのか、その要因となるクラウドの課題とはどういったものか、さらにその課題解決の糸口となるハイブリッドクラウドについて解説しました。
利用場所を選ばず情報共有が簡単になり、組織の柔軟性を高めことができるクラウドはDXにおいて欠かすことのできない要素ですが、単一のクラウドに依存することは多くのリスクをはらんでいます。今後の展望としてはクラウドからオンプレミスへ戻すという単純なものではなく、オンプレミス・クラウド双方のメリットを組み合わせるハイブリッドクラウドが主流となっていくでしょう。ただしこの組み合わせは容易なものではありません。複数のサービスを組み合わせるということは、単一のクラウドよりシステム構成も運用も当然複雑になります。コスト算出もさらに複雑になるため、事前にしっかり試算と準備を行わなければなりません。
こういった難解なことはクラウドの仕組みや構成に詳しい専門家にお任せください。
セラクでは高度な専門知識を持つエンジニアが、お客様の潜在的なリスクや課題解決に向けて、プロアクティブに改善提案を実施しております。
現在のインフラ環境に課題を抱えるお客様は、オンプレミス・クラウド双方のメリットを活かしたハイブリッドクラウドの導入活用を検討されてみてはいかがでしょうか。

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