はじめに
クラウドサービスは導入コストや拡張性など多くの面で魅力があり、さまざまな企業で導入の取り組みが進められています。しかし、アナログシステムやレガシーシステムからの移行時に「どのクラウドサービスを使えばいいのか?」と迷う企業は少なくありません。そこで、本記事ではクラウドサービスの比較が難しい理由から選び方のポイントまで、トップシェアのサービス紹介を交えながら解説します。
クラウドサービスの選び方が難しい理由
クラウドサービスの選び方が難しいと感じる大きな理由は2つあります。
1つは、クラウドサービスの活用はあくまで手段であり、先に目的を明確化しなければ選びようがない点です。適切なクラウドサービスの選び方には、検討前の「課題設定」や、導入後の「効果測定」が欠かせません。クラウドサービスについての知識を備えるだけでなく、経営的視点で考えることが必要です。
もう1つは、クラウドサービスの選び方にはクラウドサービスだけでなく、アプリケーションやネットワーク、サイバーセキュリティに関する技術的な基礎知識が不可欠だという点です。現在利用しているシステムやアプリケーションをクラウド化するのか、それともまったく新しいシステム開発が必要なのか。具体的に課題解決の方法を模索してクラウドサービスを比較・選定するためには、技術的な内容への理解を深めて既存サービスや導入候補のサービスの特徴を掴み、エンジニア視点で考えることが必要です。
クラウドサービスの導入責任者には、経営層とエンジニアの2つの視点を理解して社内で目的や手段に関する意識を共有する、ハブとしての役割を果たすことが期待されます。そのためにも、多少は技術的内容についても経営層に分かりやすく説明できるように、クラウドサービスの基礎知識を覚えておきましょう。
クラウドサービスの種類
クラウドサービスにはさまざまな種類がありますが、サービス内容とサーバ管理の2つのポイントに注目して大きく分類できます。
サービス内容による分類
クラウドサービスは、提供されるサービス内容によってIaaSとPaaS、SaaSの3種類に分けられます。
IaaSは『Infrastructure as a Service』の略で、ITインフラを利用するサービスです。サーバやストレージなどのITインフラはさまざまな使い方が可能なためカスタマイズ性は高いですが、PaaSやSaaSに比べると運用負荷も高くなります。
PaaSは『Platform as a Service』の略で、プラットフォームを利用してアプリケーション開発を行えるサービスです。開発環境を構築する手間は省けますが、開発環境を自由にカスタムすることはできません。
SaaSは『Software as a Service』の略で、インターネット上でアプリケーションを利用できるサービスです。IaaSやPaaSに比べてユーザ側の運用負荷を格段に低減できますが、カスタマイズ性も低くなります。
サーバ管理とセキュリティによる分類
クラウドサービスはサーバの管理方法に注目して分類することもできます。
パブリッククラウドは他のユーザとクラウド環境を一緒に利用するクラウドサービスです。利用開始が比較的容易であり、拡張性が高い点で優れていますが、サイバー攻撃やシステム障害の際に社内対応が難しい点には注意が必要です。一方、プライベートクラウドは自社専用の環境を構築して利用するサービスです。また、プライベートクラウドは2つに分けられます。1つがベンダーのサービスを利用して自社専用のクラウド環境を構築するホスティング型プライベートクラウド。もう1つが、社内サーバや自社のデータセンターを活用して構築・運用を内製するオンプレミス型プライベートクラウドです。どちらも、パブリッククラウドに比べて高度なセキュリティコントロールが可能であり、企業の業務に合わせて自由にカスタマイズができる点で優れています。しかしリソースの追加や縮小などの拡張の自由度が低く、環境構築にかかる費用が割高になってしまうのがネックです。
プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせて利用することを「ハイブリッドクラウド」と呼びます。利用するクラウドサービスすべてをどちらか片方に決める必要はありません。
トップシェアのクラウドサービス『Microsoft Azure』と『AWS』の違い
『Microsoft Azure(マイクロソフト アジュール)』と『AWS』はどちらも世界的な企業が提供している業界トップのサービスです。『Microsoft Azure』は、マイクロソフトの提供するクラウドサービスの総称であり、他のマイクロソフト製品との連携は他社製品に真似できません。『AWS(Amazon Web Services)』はアマゾンの提供するクラウドサービスの総称であり、利用できるOSやミドルウェアの種類、バージョンに関する制限の少なさが強みです。
クラウドサービスの選定ポイントは「優先順位」にある
クラウドサービスの選定ポイントは、単純に競合サービスのスペックをすべて比較しないことです。なぜならMicrosoft AzureとAWSはどちらも200以上のサービスで構成されているため、すべての機能を比較するのは非効率的だからです。また、Microsoft AzureとAWSの運用に関する差は徐々に減っているため、比較は難しくなっています。
そこで、ベンダーを探す前に、自社の優先順位を明確化しておきましょう。優先するのはコストでしょうか、納期でしょうか。それとも、ほかの既存アプリケーションとの連携でしょうか。たとえば、「専用システムを構築する必要があり、セキュリティ強度の要求は高く、コストと納期については融通が利く」といった場合は、オンプレミスパブリッククラウドでPaaSを利用する方法が候補になるでしょう。このように、優先順位に合わせてサービス内容やサーバ管理方式といった分類で候補を絞り込めます。分類をある程度絞りこめたら、クラウドベンダーが提供する具体的なサービスについてエンジニアに相談することで、効率的にクラウドサービスを選べます。
マルチクラウドも選択肢に
1社が提供するクラウドサービスだけを利用するのではなく、用途によって複数ベンダーのサービスを併用する「マルチクラウド」という使い方も視野に入れておきましょう。
1社が提供するサービスでは実現が難しい要件も、複数のクラウドベンダーが提供するサービスを組み合わせて利用することで実現できる場合があります。また、特定のクラウドベンダーを利用することにより、連携などの観点から特定のOSやプログラミング言語などが使いづらくなることを回避できます。複数のベンダーが提供する中から常に最適なサービスを選択できるため、変化するビジネスの要求に沿ったサービスに乗り換えるなど、柔軟な対応を取れるのも強みです。
さらにリスク対策の観点でもマルチクラウドは優秀です。複数のクラウドを利用することで、1つのクラウドサービスで障害が発生した際のリスク分散、軽減効果が期待できます。
ただし、マルチクラウドは「カスタマイズやリスク分散」に優れる一方で、運用コストが嵩む、セキュリティ強度が低下するといったマイナス面もあるため、利用にはメリットとデメリット両面からの検討が欠かせません。検討にはサイバーセキュリティをはじめとしたクラウドサービス以外の知識も必要になるため、社内人材だけで対応が難しい場合は社外のプロへの相談も視野に入れましょう。
まとめ
クラウドサービスにはさまざまな種類があり、検討には多くの技術的な知見が必要なため、自社に最適なサービスの選択は簡単ではありません。一方で、検討をできるだけ早く済ませて導入・活用をスタートしたい、という企業も多いでしょう。そういった場合はクラウドサービスやDXの定着支援に実績のあるプロに相談することも効果的です。
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