コラム

2024.07.18

36協定とは?時間外労働に関する法規制の基礎や管理のポイントを解説

36協定とは?時間外労働に関する法規制の基礎や管理のポイントを解説

はじめに

2018年に成立した働き方改革によって労働法が改正され、時間外労働に関する時間的な上限や、上限を超えた際の懲役や罰金といった罰則が定められました。この法改正に対応して、36(サブロク)協定と呼ばれる労使協定で定める項目が変わり、時間外労働の管理が以前よりも複雑化しています。勤怠データをアナログ管理している、レガシーシステムを利用しており法改正にあわせたアップデートが難しいといった場合には、勤怠管理システム刷新を検討した方がよいケースも少なくありません。
そこで本記事では、時間外労働に関する法規制の基礎や管理のポイントについて解説します。

36(サブロク)協定とは

「36(サブロク)協定」は、労働基準法の第36条で定められている「時間外労働・休日労働に関する協定届」の略称です。法定労働時間を超える時間外労働(残業)や法定休日の労働に関して結ぶ労使協定の1つであり、36協定を締結しない状態での時間外労働や休日労働は労働基準法違反となってしまいます。
「特別条項」で定めておくことで、想定外の⼤幅な業務量増加といった特別な場合に36協定の原則を超える労働が許可されます。この特別条項は、恒常的な⻑時間労働の原因にならないように、条件をできる限り具体的に設定しなければなりません。

36協定は、雇用者と労働者の過半数で組織する労働組合、または雇用者と労働者の代表が書面で協定を締結し、労働基準監督署へ届け出ることで効果を発揮します。
36協定を締結していない状態で時間外労働や休日労働をする、36協定やその特別条項の上限を超過すると労働基準法違反です。違反の際には、事業主や労務管理責任者を対象として懲役や罰金刑が科されます。

働き方改革前の36協定

働き方改革の前から労働基準法の第36条には、時間外労働に関する記述がありましたが、時間外労働の上限は厚⽣労働⼤臣の告示によって定められていただけで、法律上の強制力がありませんでした。また36条の特別条項に上限時間や罰則がなかったため、無制限に時間外労働できる状態になってしまっていました。

36協定を守るために把握したい主なデータ

36協定に沿って労働時間を管理するためには、さまざまなデータが必要です。勤怠管理システムだけでは把握しにくい項目もあるため、自社がどのように各データを管理しているか確認しておきましょう。
計算や管理が煩雑な場合は、人事データの管理方法自体を見直すことも視野に入れた方がトータルコストを抑えられる可能性もあります。

勤怠管理に関わるデータ

勤怠管理で扱う労動時間や日数は、上限に対するリアルタイム値の差を小まめに確認しておきたいデータです。

・1日の労働時間
労働基本法では原則として、1日の労働時間が8時間を超えてはいけないと定められています。1日8時間より多い労働には、事前に36協定の締結と届出が必要です。

・1週間の労働時間
労働基本法では原則として、1週間の労働時間は40時間を超えてはいけないと定められています。この1日ごと、1週間ごとの労働時間の上限が「法定労働時間」です。
週40時間を超えた労働には、事前に36協定の締結と届出が必要です。

・1月の労働時間
36協定の締結と届出が完了していても、無制限の労働が許容されるわけではありません。1月あたりの時間外労働には原則45時間までという上限があります。特別条項を定めた場合でも、時間外労働は月100時間までにおさめる必要があります。

・数ヶ月の平均労働時間
1月あたりだけでなく、数ヶ月の平均労働時間にも上限があります。特別条項付きでも、「2ヶ⽉平均」から「6ヶ⽉平均」まですべての時間外労働と休⽇労働の合計を80時間以内に抑える必要があります。また、1月あたりの時間外労働が45時間までという原則を超過してよいのは、1年のうち6ヶ月までです。

・1年あたりの労働時間
36協定における時間外労働の1年あたりの上限は、原則として360時間までです。特別条項が適用される場合には、1年あたり720時間まで許容されます。

・休日数
労働基準法で休⽇は、原則として毎週1日もしくは4週間で4日以上必要だと規定されています。

従業員の個人情報に関わるデータ

時間外労働が認められるか、36協定が適用されるかといった点は、従業員ごとに異なります。そのため、従業員の個人情報を随時把握する必要もあります。

・従業員の立場
36協定の対象は、従業員すべてではないことに注意しましょう。
36協定はすべての「労働者」に適用されますが、事業主や企業から一定の権限を与えられた一部の従業員は、労働基準法上は労働者ではなく「管理監督者」とみなされます。労働者が「管理監督者」と判断されるかどうかについては、労働基準法で定められている要件にしたがって判断するため、部長職のような役職についているかどうかは関係ありません。

また、満18歳未満の年少者の時間外労働は認められていないため、36協定が適用されません。

・従業員の家族の介護や育児
小学校就学の始期に達するまでの子供を養育する場合や要介護状態にある対象家族を介護する場合など、育児や家族の介護といった事情により従業員が希望する場合には、時間外労働が制限される場合があります。
継続して雇用された期間や1週間の所定労働日数などによっては制度が適用されない場合もありますが、パートタイマーやアルバイトといった働き方であっても、時間外労働の制限の権利は認められています。

・従業員の携わる業務内容
新技術や新商品の研究開発業務に携わる労働者は、36協定の適用対象になりません。ただし時間外労働が月に100時間を超えた場合、事業者は労働者に医師の面接指導を受けさせる義務があります。必要に応じて、医師の意⾒を参考にしつつ就業場所や業務内容の変更、有給休暇の付与といった措置を講じなければなりません。

時間外労働時間を計算する際に気を付けたいポイント

時間外労働の計算は複雑なため、ポイントに気を付けて適法に管理したいものです。
法規制で許可された範囲であっても、時間外労働や休日労働は推奨されません。雇用者は時間外労働や休⽇労働を必要最小限にとどめて、労働者の安全に配慮する義務があることに留意しましょう。

企業ごとの就業規則と法律の違い

各社がそれぞれ就業規則で定めている勤務時間を所定労働時間といいますが、この所定労働時間は必ずしも法定労働時間と一致しません。36協定は「所定外労働時間」ではなく「法定外労働時間」で計算するため、所定労働時間と法定労働時間が異なる場合は、就業規則上の残業と法律上の時間外労働も異なる点には注意が必要です。

たとえば、所定労働時間が7時間の労働者が8時間労働した場合について考えてみましょう。企業の就業規則上は1時間の残業が発生していますが、法的に考えた際には時間外労働にあたりません。

休⽇労働についても、時間外労働と同じように注意が必要です。
労働基準法では原則として、使用者は労働者に対して毎週少なくとも1回休⽇を与えなければならないとされており、これを法定休日と呼びます。休⽇労働は、労働基準法で定められた「法定休⽇」にする労働です。
多くの企業が週休2日制を採用しており、就業規則における休日は週に2日存在しますが、就業規則上の休日であり、法定休日ではない日を法定外休日と呼びます。法定外休日に労働した場合、休日労働としては扱いません。

たとえば繁忙期の法定外休日に出勤した場合は、法定休日は満たしているため、休日労働とは扱われません。しかし1週間40時間を超えた労働時間は時間外労働として扱う、といったようにほかの労働時間に関するルールによって扱いが変わる点に注意が必要です。

計算の対象が異なる箇所に注意する

労働基準法では時間外労働と休⽇労働を分けて考えますが、時間外労働だけを合算する項目と休日労働を足しあわせる項目があります。
時間外労働とは法定労働時間(1⽇8時間、1週40時間)を超えた労働、休⽇労働とは法定休⽇(1週あたり1⽇、または4週間で4⽇)にする労働です。それぞれ別の上限があり、時間と日数でそれぞれ管理します。
⼀方で時間外労働と休⽇労働を合計した実際の労働時間については、1ヶ⽉の上限(⽉100時間未満)、2〜6ヶ⽉の上限(平均80時間以内)以内に抑える必要があるため、合算して管理する必要があります。休日労働が発生した場合には、日数と時間それぞれについて整理して管理するよう気を付けましょう。

労働時間の管理には人事ERPや人事システムが効果的

「基本的に残業や休日労働はないため、急いで36協定を結ばなくても問題無い」と考える企業もありますが、不測の事態への対応で残業や休日労働が発生した場合にも、労働基準法違反になってしまうため注意が必要です。残業や休日労働が必要になってから労使協定を結び、同時に人事システムを刷新するというのは簡単ではないため、36協定を結び、余裕をもって人事データ管理方法の変更を進めた方がよいでしょう。
タイムカードを利用しているといった理由で人事データの一部をアナログ管理している場合は、手間がかかりケアレスミスの恐れがある労働時間の人力計算が必要です。データをデジタル化していてもデータを複数システムでそれぞれ管理している場合は、データの統合方法や計算方法などさまざまな課題があります。そのため、やはり36協定に対応している人事ERPや人事システムの導入が望まれます。

勤怠や給与、従業員の個人情報といったさまざまなデータを一元管理して計算を自動化できる、36協定に対応した人事ERPや人事システムの導入効果は単純な効率化に留まりません。36協定には複数月の平均値や1年間の合計値にも上限がありますが、それぞれの上限までのマージンをできるだけリアルタイムで把握したいといったニーズにも対応できます。
また人事データは、経営判断の指針にするといったように戦略的に活用できます。

まとめ

働き方改革によって、36協定で取り扱う時間外労働の上限制限だけでなく、年次有給休暇の時季指定や同一労働同一賃金に関する法律が改正されました。こういった労働に関する法律は企業の規模や業種業態、労働者の年齢や立場などさまざまな要因で、原則は一緒でも細かい部分が異なる場合もあります。そのため、適法に運用するためには法律の専門家の知見が欠かせません。また最新の法律に対応したシステム運用にも専門の知見が必要です。「36協定の運用に向いている勤怠管理システムを知りたい」、「労働時間の管理や給与計算といった人事業務をシステム導入で効率化したい」とお悩みの際はぜひご相談ください。セラクグループは統合人事ERP『COMPANY(R)』の導入・定着をサポートしています。

あわせて読みたい記事

  • Salesforce コンサル派遣なら選ばれるセラクCCC
  • クラウド導入・運用はプロにお任せ!
  • 統合人事システム COMPANY支援
  • 法人・活用サポートまで充実NewtonX