コラム
2024.12.13

戦略人事に役立つフレームワーク11選!活用のメリットやコツ

戦略人事に役立つフレームワーク11選!活用のメリットやコツ

はじめに

戦略人事とは、経営資源のひとつである「人」の価値最大化を目的とし、経営戦略に沿った人事戦略を策定・実行することです。本記事では、経営層や人事総務部の担当者に向けて、戦略人事を実行するために役立つフレームワーク11選を取り上げ、活用するメリットやコツを解説します。この記事を読むことで、戦略人事のフレームワークを網羅的に把握し、効果的に活用するためのポイントを理解できます。

戦略人事を行うために役立つフレームワーク

戦略人事に役立つフレームワークを、以下の3つに分けて紹介します。

  • ・問題分析や現状評価に役立つもの
  • ・経営資源分配に役立つもの
  • ・その他のオススメ

問題分析や現状評価に役立つフレームワーク5選

戦略人事を効果的に進めるためには、まず現状の課題を的確に把握することが重要です。そこで役立つのが以下のフレームワークです。

1.SWOT分析

「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの要素に分類して分析する手法です。

内部環境の評価
  • ・Strength(強み)
    自社の強みを明確にすることで、組織の優位性を最大限に発揮できる人材活用計画を立てられます。たとえば優秀なリーダー層が強みの場合、そのリーダーを中心とした育成プログラムや、リーダー育成の枠組みを整えます。
  • ・Weakness(弱み)
    自社の弱みを特定することで、リソースの不足やスキルギャップなどに対する人材育成や採用計画を立てることが可能です。たとえばIT人材が不足している場合には、IT関連の教育プログラムの導入や専門人材の採用を検討します。
外部環境の評価
  • ・Opportunity(機会)
    市場の機会を見つけ出すことは、人材獲得や育成方針の方向性を決めるのに役立ちます。たとえばDXの流れを機会と評価した場合に、DXに精通した人材の採用を強化する方針を立てます。
  • ・Threat(脅威)
    市場の脅威を早期に認識することで、外部要因に柔軟に対応可能な組織体制を整えられます。たとえば規制強化が脅威の場合、コンプライアンス研修の実施やリスク管理に精通した人材の採用などを検討します。

2.ロジックツリー分析

目標の達成に必要な要素を分解してツリー形式で展開し、真の要因や解決手段を特定する手法です。たとえば「組織の生産性向上」を目標とする場合には以下のように活用します。

要素分解

設定した目標を達成するための要素をツリー形式で分解します。生産性を向上させるには、たとえば「スキル向上」「プロセス改善」などが必要と考えられます。

詳細分解

各要素をさらに分解します。たとえば、「スキル向上」のためには「トレーニングプログラムの実施」「外部セミナーの参加」といった手段を考えます。

課題特定と対策立案

分解した要素をもとに課題を特定し、対応策を立案します。たとえば、「トレーニングプログラムの実施」において、現状の課題を洗い出し、必要なリソースやタイムラインを設定します。

3.CATWOE分析

6つの要素を整理することで複雑な問題や状況を掘り下げ、根本的な解決策の発見を目的としたフレームワークです。CATWOEの頭文字は以下の要素を指しています。

  • Customers(顧客)
  • Actors(実行者)
  • Transformation process(変革プロセス)
  • Worldview(組織の価値観)
  • Owner(責任者や意思決定者)
  • Environmental constraints(環境制約)
Customers(顧客)

顧客(従業員や採用候補者)のニーズや期待を理解します。たとえば、従業員満足度向上が目的の場合、従業員が何を求めているかを洗い出します。

Actors(実行者)

施策の実行に関与する人々の役割を明確にします。たとえば人事担当者や経営陣、外部コンサルタントなど、誰がどの部分を担当するのかを定義します。

Transformation process(変革プロセス)

問題解決のためにどのようなプロセスが必要かを定義します。新しい評価制度の導入や研修プログラムの設計など、具体的なアクションプランを立案します。

Worldview(組織の価値観)

組織全体の価値観やビジョンを共有し、戦略の方向性を一致させます。たとえば従業員エンゲージメントを重視する組織文化の場合、研修への強制参加ではなく、自発的な参加を促す方法が望ましいと判断します。

Owner(責任者や意思決定者)

責任者や意思決定者を明確にし、施策の実行に責任をもたせます。たとえばプロジェクトマネージャーを任命し、進捗状況を管理します。

Environmental constraints(環境制約)

外部の制約条件や影響を考慮し、現実的なプランを立てます。たとえば予算の制限や法的規制などを考慮して戦略を調整します。

4.ケプナー・トリゴー(Kepner Tregoe)分析

問題解決と意思決定のための強力な手法であり、以下にあげる4段階で構成されます。

  • ・状況把握(Situation Appraisal)
  • ・問題分析(Problem Analysis)
  • ・決定分析(Decision Analysis)
  • ・潜在的問題分析・潜在的好機分析(Potential Problem Analysis・Potential Opportunity Analysis)

状況把握(Situation Appraisal)

組織内の現状を評価し、どの課題に優先的に取り組むべきかを決定します。たとえば人材の不足やスキルギャップなどを識別します。

問題分析(Problem Analysis)

特定された課題の根本原因を分析します。たとえば高い離職率の原因を特定するために、従業員満足度調査や退職者インタビューを実施します。

決定分析(Decision Analysis)

可能な解決策を評価し、最適な戦略を決定します。たとえば、離職率を低下させるための新しい福利厚生の導入やキャリア開発プログラムの実施を検討します。

潜在的問題・潜在的好機分析(Potential Problem Analysis・Potential Opportunity Analysis)

解決策の実施にともなう潜在的なリスクや機会を評価し、対策を検討します。たとえば、新しい制度の導入にともなう従業員の不安を軽減するためのコミュニケーション計画を策定します。

5.根本原因分析

問題の発生要因を掘り下げて特定し、効果的な改善策を導き出すための手法です。たとえば離職率が高いという問題がある場合、以下のようなアプローチで原因と改善策を導き出します。

データ収集

問題の詳細な情報を収集します。退職者へのインタビューや従業員の意識調査などを行い、具体的な原因を洗い出します。

問題特定

収集したデータを分析し、根本的な原因を特定します。たとえば人間関係の問題が離職率の上昇に影響している場合、コミュニケーション不足やリーダーシップの問題が浮き彫りになることがあります。

原因の掘り下げ

特定した原因をさらに掘り下げて詳細に分析します。たとえば、「なぜコミュニケーションが不足しているのか?」という問いを繰り返し、分析します。このプロセスを通じて真の根本原因を明らかにします。

改善策の立案

具体的な改善策を立案します。定期的なミーティングの導入や、管理職へのリーダーシップトレーニングの実施などです。

実行とモニタリング

立案した改善策を実行し、離職率が改善しているか効果をモニタリングします。定期的に評価を行い、必要に応じて調整を行います。

経営資源分配に役立つフレームワーク2選

企業が持続的な成長を遂げるためには、限られた経営資源を効率的に分配することが不可欠です。しかし、どの資源に重点を置くべきかの判断は容易ではありません。そこで役立つフレームワークが「PPM分析」と「VRIO分析」です。

1.PPM分析

事業や製品群を評価し、最適な資源配分を行うためのフレームワークです。「花形(Star)」「金のなる木(Cash Cow)」「問題児(Problem Child)」「負け犬(Dog)」の4つに分類します。

花形(Star)

成長率が高く、市場シェアも高い事業や製品です。積極的な投資を行い、さらなる成長を促進します。戦略人事においては、優秀な人材の採用や育成、リーダーシップ開発プログラムを導入するなどして事業の成長をサポートします。

金のなる木(Cash Cow)

成長率は低いが、市場シェアが高い事業や製品です。安定した収益を生み出すため、資源を効率的に活用し、コスト削減や効率化を図ります。戦略人事では、既存の人材リソースを最大限に活用し、従業員のモチベーションを維持しながら業務プロセスの改善を図ります。

問題児(Problem Child)

成長率は高いものの、市場シェアが低い事業や製品です。将来の成長が見込まれるため、適切な投資や戦略的なサポートが必要です。戦略人事においては、ポテンシャルの高い人材を配置し、スキル開発やキャリアパスの提供を通じて事業の成功を支援します。

負け犬(Dog)

成長率も市場シェアも低い事業や製品です。リソースを投入しても効果が見込めない場合、事業の縮小や撤退を検討します。戦略人事では、該当事業から他の成長事業に人材を再配置し、リソースの再配分を行います。

2.VRIO分析

企業の競争優位性を評価するためのフレームワークです。社内リソースを「Valuable(価値がある)」「Rare(希少な)」「Inimitable(模倣困難な)」「Organization(組織として活用できる)」の4つに分類して評価します。

Valuable(価値がある)

自社が保有するリソースに価値があるかを評価します。たとえば、高度な技術や専門知識などが市場で競争力をもつなら、「価値がある」と判断し、これらの価値ある人材やスキルを特定、その育成や保持に注力します。

Rare(希少な)

リソースが希少なものであるかを評価します。同様のリソースを他の企業がもっていない場合、希少性が競争優位性の源泉となり、戦略人事においては希少なスキルセットや知識をもつ人材を特定し、優位性を確保します。

Inimitable(模倣困難な)

リソースが模倣困難であるかどうかを評価します。特定の技術やノウハウが他社に容易に真似されない場合、そのリソースは競争優位性があります。戦略人事では、独自の知識や経験のある人材を保持し、その価値を高めるための施策を講じることが可能です。

Organization(組織として活用できる)

リソースが組織として有効に活用できるかを評価します。効果的な組織構造やプロセスが整備されていれば、リソースの価値を最大化できます。

その他のオススメフレームワーク4選

ほかにも活用可能なフレームワークとして、「TOWS分析」「SCAMPER分析」「PEST分析」「ビジネスロードマップ」の4つがあります。

1.TOWS分析

先述したSWOT分析で明確になった要素を掛け合わせることで、より具体的な戦略を策定する手法です。まずはSWOT分析で明確になった自社の「強み」「弱み」「機会」「脅威」をリストアップします。
次に、TOWSマトリックスを用いて要素を組み合わせ、具体的な戦略を検討するために、以下の4つに分けて考えます。

  • ・SO戦略(強み×機会)
    自社の強みを活かして機会を最大限に活用する戦略です。たとえば、高度なITスキル人材が多いことを活用して、業務のデジタル化を推進する方法があります。
  • ・ST戦略(強み×脅威)
    自社の強みを活かして脅威に対処する戦略です。ブランド力を活かし、人材獲得競争が激化する中で人材の定着を図ることがあげられます 。
  • ・WO戦略(弱み×機会)
    自社の弱みを克服して機会を活用する戦略です。スキルギャップを埋めるためのトレーニングプログラムを導入するのもひとつの方法です。
  • ・WT戦略(弱み×脅威)
    自社の弱みを克服して脅威に対処する戦略です。たとえば経済が不安定化している場合、従業員のメンタルヘルスケアや福利厚生の充実によって離職リスクを低減させます。

2.SCAMPER分析

既存のアイデアやプロセスを改良・改善するための具体的な方法を検討できるフレームワークです。新たな製品・サービスを作り出す際に活用されていますが、戦略人事にあてはめることも可能です。SCAMPERの頭文字は、以下のアクションを示しています。

  • Substitute(代替する)
  • Combine(組み合わせる)
  • Adapt(適用させる)
  • Modify(修正する)
  • Put to another uses(別の用途に使う)
  • Eliminate(削除する)
  • Reverse(逆転させる)
Substitute(代替する)

現在の要素を他のもので代替することを考えます。たとえば既存の評価制度を新しい方法で代替することで、組織内での成長を促進できる可能性があります。

Combine(組み合わせる)

異なる要素を組み合わせて新しいアイデアを生み出します。たとえば、採用プロセスと研修プログラムを一体化させて、新入社員の早期の戦力化を図ることが可能です。

Adapt(適用させる)

他の分野や用途での成功事例を参考にし、自社のプロセスに適用させます。たとえば他業界における柔軟な働き方を参考に、業種の異なる自社でも時短勤務やフレックスタイム制度などの柔軟な働き方の導入を検討します。

Modify(修正する)

既存の要素を修正して改善します。たとえばテレワークの増加に対応できるよう、新入社員向けにオンラインでの研修プログラムを作成するという施策です。

Put to another use(別の用途に使う)

既存の要素を別の用途に転用します。採用活動で使用している適性検査を、既存従業員のキャリア開発や異動時の適性判断に用いる方法があります。

Eliminate(削除する)

不要な要素を排除してシンプル化します。たとえば煩雑な社内手続きの一部を削除することで、従業員の不満を解消できます。

Reverse(逆転させる)

要素の順序やプロセスを逆転させ、新しい視点を導入します。たとえば一般的な人事評価は上司が部下に対して行いますが、部下や同僚など多様な立場からの360度評価を導入する方法があります。

3.PEST分析

「政治(Political)」「経済(Economic)」「社会(Social)」「技術(Technological)」の各外部環境要因を評価する手法です。

政治(Political)

規制や法改正、貿易政策の変更などの政治的な要因を評価します。たとえば労働法の改正や雇用政策の変動が人材戦略に与える影響を分析し、適切な対応策を講じます。

経済(Economic)

経済成長率や失業率などの経済的な要因を評価します。たとえば経済状況に応じた給与制度や、新たな雇用機会の創出を検討します。

社会(Social)

人口動態の変化や消費者の価値観の変化といった社会的な要因を評価します。たとえば多様性を重視した人材採用や、ワークライフバランスを考慮した労働環境の整備などを行います。

技術(Technological)

新技術の導入、技術革新のスピード、研究開発の動向などの技術的な要因を評価します。たとえば新技術を活用した人事管理システムの導入で組織力を強化します。

4.ビジネスロードマップ

目標達成までにやるべきことを整理し、可視化することで目標管理に役立てる手法です。戦略人事では以下のような流れで活用します。

目標設定

たとえば、「3年以内に従業員のエンゲージメントスコアを20%向上させる」という目標を定めます。

マイルストーンの設定

主要なマイルストーン(中間目標)を設定します。たとえば、「1年目で従業員満足度調査を実施」「2年目で新しい福利厚生を導入」といったステップを設けます。

アクションプランの作成

各マイルストーンに対して必要なアクションプランを立案します。具体的なタスクや責任者、期限を設定し、実行可能な計画を作成します。

周知・実行

立案したアクションプランを全従業員に周知し、実行に移します。各メンバーが自分の役割を理解し、協力して目標に向かって進めます。

戦略人事にフレームワークを活用するメリット

フレームワークを用いることで、現状課題の把握・分析ができ、社内で共通認識を形成できます。

客観的に現状課題の把握・分析ができる

フレームワークを活用することで、さまざまな観点から自社の状況を客観的に把握できます。これにより、自社が置かれている環境やリソースを客観的に理解・分析し、どのような施策が必要かを明確にすることが可能です。
また、フレームワークで自社の強みを明らかにし、それを最大限に活かすための人事戦略を検討できます。同時に、新たな課題を見つけ出し、改善策を検討することも可能です。フレームワークの活用で戦略人事が果たすべき役割や方向性が明確になり、効果的な施策を実施するための基盤が整います。

社内で共通認識を持てる

社内で共通認識を形成できることもメリットです。フレームワークを使って明らかになった課題や分析結果を部門やチーム間で共有することで、共通の枠組みとして活用可能です。これにより、全員が同じ方向を向き、戦略に対する理解が深まります。
また、共通認識をもつことで議論がスムーズに進み、具体的なデータにもとづいた建設的な意見交換をしやすくなります。結果として、多様な視点を取り入れた効果的な施策の策定が可能です。

戦略人事にフレームワークを活用する際のコツ

戦略人事にフレームワークを使用する際には、本来の目的を見失わないこと、データの収集をしっかり行うことが大切です。

フレームワークはあくまでも手段として考える

フレームワークの使用自体が目的にならないように、常に戦略人事の目的を意識してください。以下のような工夫をすることで戦略人事における本来の目的を見失わずに済みます。

  • ・ワークシートの上段に、本来実現したいことを明記する
  • ・わかりやすいスローガンを作成し、組織全体で戦略の概要・目的を共有する

まずはデータの収集をしっかりと行う

従業員データを収集・分析することで、適切な人材の採用や配置、効果的な育成案の策定などにつながります。このとき、人事システムを活用することで必要なデータを迅速に収集でき、分析もスムーズになります。たとえば従業員のスキルや資格、プロジェクト経験、業績などのデータを集めましょう。各従業員の強みを最大限に活かし、最適な人事戦略を実行できます。

まとめ

戦略人事は、経営資源である「ヒト」の価値を最大化し、経営戦略に沿った人事戦略を策定・実行することです。戦略人事の実行に役立つフレームワークの活用で、現状の課題を客観的に把握・分析し、社内で共通認識を持てるようになります。これにより、全員が同じ方向を向き、効果的な施策を策定できます。ただしフレームワークはあくまで手段として考え、本来の目的を見失わないようにし、データをしっかり収集することが重要です。従業員データを集めて分析することで、最適な人材の配置や育成案を策定し、効果的な人事戦略を実現します。
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