コラム
2025.02.17

業務効率化だけじゃない、ERPの魅力とは?

業務効率化だけじゃない、ERPの魅力とは?

はじめに

多くの企業では基幹業務を効率化するために「ERP」と呼ばれるツールを導入していますが、その魅力とは何でしょうか。本記事では、基幹業務の効率化に何が求められてきたのか、ニーズの変遷を交えながらERPの魅力や価値について解説します。

ERPとは

ERP(Enterprise Resources Planning)とは、「企業資源計画」と訳される考え方です。製造業の分野で生まれたMRP(Material Requirements Planning)を基にしており、経営資源を効率的に管理しようという考え方や、それを実践するためのシステムを指します。
人事給与をはじめ、在庫や会計や販売など基幹業務に関わるデータを一元管理し、管理業務の効率化だけでなく、データ分析にも役立ちます。

ERPと基幹システムの違い

ERPとよく比較されるのが、基幹システムです。2つのシステムは、カバーする業務範囲が異なります。

基幹システムとは、基幹業務を効率化する独立したシステムです。営業や販売、人事などさまざまな業務に対応した製品があり、それぞれの製品は業務1つに対応しているのが一般的です。たとえば営業部門では営業専用の基幹システムを利用し、人事部では人事機能に対応した別の基幹システムを利用するといった形で、システム間のデータの連携までは考えられていませんでした。
データを活用しようとした際には、それぞれの基幹システムからフォーマットの異なるデータをエクスポートして整理する必要があり、どうしても手間と時間がかかってしまっていました。ERPでデータを一元管理することで、1つのデータベースで管理する統一されたフォーマットのデータを利用できます。2つのシステムの大きな違いは、データ分析といった社内に蓄積したデータを活用する際に大きく影響します。

基幹業務の個別管理からERPでの一元管理へ

昔は、基幹業務を効率化するために、業務ごとにそれぞれ別の基幹システムを導入するといった方法が主流でした。そこからERPのような一元管理が主流になった経緯を、技術の進歩とニーズの変化に着目して整理します。

基幹業務のデジタル化のはじまり

ビジネスシーンでコンピュータが利用されるようになったのは、1960年代から1970年代にかけてのことです。
当時のコンピュータは非常に大型であり、導入を進めたのは大企業が中心でした。受発注業務や販売管理、在庫管理、財務会計といった基幹業務で定型的な処理をコンピュータが担当するようになり、業務効率は飛躍的に向上しました。

しかし、システムはそれぞれの部門ごと、業務内容ごとに異なる理念に基づいて最適化して設計されていたため、システム同士を連携させることやデータを統合することが困難でした。基幹システムは負荷が高い業務から導入されたため、部門や業務内容ごとに異なる設計になってしまっていたケースが多かったためです。
たとえば、販売データと在庫データが別に管理されており、販売の際に両方のシステムでデータ入力する必要がありました。そのため入力作業が増えるだけでなく、管理するデータはリアルタイム性に乏しく、入力ミスの発生リスクが増加するといった複数の問題原因となっていたのです。

またIBM社や日本電気株式会社、富士通株式会社といった大手ベンダが中心となり、基盤となるシステムをユーザの要望にあわせてカスタマイズするといった工数のかかる導入方法が主流であり、費用も時間もかかるといった状態でした。

個別システムから統合へ

全社的な最適化を目指して開発されたERPは、それまでの個別管理しているデータの項目や形式が異なる、利用している技術が異なるために連携できない場合があるといった基幹システムの問題を解決しました。また、データの一元管理はデータ利用という新しいニーズにもマッチしていました。

しかし、1970年代にドイツのSAP社によって開発された世界最初のERPは、すぐに普及した訳ではありません。1990年代にアメリカで生まれ、世界中に広まったBPR(Business Process Re-engineering)という考え方の登場を待つ必要があります。
BPRとは、既存の業務プロセスを改善するのではなく、現在のプロセスを一度壊して再設計するという考え方です。業務改善と似ていますが、BPRは全社的な活動のために規模が大きく異なります。BPRは自然とERP導入に際して必要な業務フローや細かな作業手順の見直しにつながるため、ERPはBPRの実践方法として最適でした。

日本での普及タイミング

日本でもBPRに注目が集まり、ERP導入がトレンドになりましたが、海外と日本の商習慣は異なるため、多くの海外産ERPは使いにくいというのが実態でした。日本の商習慣にあわせるにはERPをアドオンによってカスタマイズしなければならず、海外に比べてERPの普及は進まないまま時が過ぎます。

転機となったのは、クラウドサービスの普及です。
2010年代になると、国産ERPをはじめ、日本の商習慣にマッチしたERPがリリースされるようになります。カスタマイズの必要性が減り、少しずつ対費用効果が向上したことにより、中小企業にもERPが普及していきます。そして2010年代後半に、クラウドサービス型のERPが登場しました。クラウド化によって、ERP導入にオンプレミス環境を用意する必要はなくなり、低コストでスピーディーにERPを導入できる時代になっています。

2020年代初頭に世界的に流行した感染症の影響で、企業の規模を問わず、オフィス以外の環境から安全にクラウドサービスを利用できる環境構築が求められるようになりました。その結果、多くの企業がクラウドサービス利用を進め、クラウド型のERP導入のハードルはますます下がっています。

DXの観点から見るERPの価値

ERPは、企業全体の資産の効率的な運用を目的として生まれました。しかしその機能は、効率化だけでなく、DX(Digital Transformation)の観点から見ても有用です。この点に注目した際のERPの価値について整理します。

データ分析に利用するデータベースとしての価値

ビジネスにおけるデータ活用が進み、近年ではERPで管理するデータを経営判断のための指標として利用するようになっています。そのためERPは、従来の基幹業務の効率化だけでなく、データに基づいた経営を進めるといった観点での価値もあるといえるでしょう。
またデータ分析に利用するBIツールとの連携機能を持つERPもあるため、選択の際にはこのような機能にも注意が必要だといえます。

AI登場により高まるERPの価値

最近ではさまざまな分野でAI技術がトレンドになっており、ERPで管理しているデータを活用し、まだ現在は担当者の判断が必要な業務を自動化するといったAI技術開発も進められています。将来的には、全社のデータを一元管理するERPを活用し、AIによる現状把握とインサイト発見のサポートを利用しつつ人間がさまざまなKPIを分析する、といったようにAIが担う業務は増えるでしょう。
ERPはAI技術を活用する対象であると共に、AIに学習させるデータの管理を担います。データの質や量はAIの判断に大きな影響を及ぼすため、今後さらにERPの価値は高まると考えられます。

ERP導入で失敗しないためのポイント

ERPは、業務ごとの最適化を求めてデザインされた基幹システムが全社的な最適化に結びつかないとして、全社的な視点で企業のヒト・モノ・カネという資産を効率的に管理しようというコンセプトで生み出されました。そのため、必然的にERPは多くの部署の業務に関わる機能を持ち、それぞれの現場視点より全社的な視点を軸にデザインされています。
しかし、ERPを実際に業務に利用するのはそれぞれの現場担当者です。全社的な最善を目指しつつも、それぞれの現場担当者への負荷を抑え、既存の基幹システムよりもそれぞれの業務を効率化する、というのが目指す理想になります。この粒度の異なる全社視点と現場担当者視点、両方を意識するのがERP導入を成功させるポイントです。

導入目的に優先順位をつける

ERPは基幹業務に関するデータを一元管理します。そのため、導入はさまざまな業務の効率化をはじめ、複数の効果が期待されます。しかし、導入直後にすべての面で効果を発揮するというのは難しいものです。運用するのが人間である以上、どうしても目の届かない部分もできてしまいます。
そこで、ERPの導入目的にしっかりと優先順位をつけて、重要な目的に関連する部分からスモールスタートしましょう。スモールスタートして現場の声に対応して改善を続けながら、既存システムから移行する期間をしっかりと設けることで、ERP導入を推進するコアメンバーの負荷も抑えられます。

既存の業務フローを見直す

昔は基幹システム導入時にユーザ企業の業務フローにあわせて細かくカスタマイズするのが主流でしたが、クラウドサービスのERPが増え、システム導入の際の考え方も大きく変化しました。

クラウドサービス型のオンプレミス型との違いは、安価であること、そしてユーザ企業ごとに異なる業務フローに沿った細かなカスタマイズが難しい場合があることです。クラウドサービス型のERP導入の際に、既存の業務フローをそのまま利用するのではなく、フロー自体を見直して効率化を図ることで、ERP導入の効果を高められます。データのデジタル化や一元管理を進める過程で、申請や承認の方法自体を変えざる得ない部分もあるため、既存の業務フローに囚われない意識が重要です。

まとめ

ERPは人事給与をはじめ、在庫や会計や販売といった基幹業務のデータを一元管理し、業務効率化だけでなくデータ活用にも寄与します。しかし、導入を成功させるのは困難です。課題は、適切な製品選びや導入タイミングにあわせた既存の業務フロー見直し、目的意識の共有、操作方法に関する学習だけではありません。場合によっては、基幹業務データを活用したデータ分析の実行に関しても同時に取り組む必要があります。そのため導入から定着までの一番大変な期間には、専門家に頼るのも効果的です。
ERPの導入や活用、ERPに蓄積したデータ活用などについて、お悩みがございましたらぜひご相談ください。セラクグループでは統合人事ERP『COMPANY(R)』の導入・定着支援を行っています。

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