コラム
2025.01.15

男性の育休推進はなぜ必要?企業側のメリットや取得しやすい環境整備の方法を解説

男性の育休推進はなぜ必要?企業側のメリットや取得しやすい環境整備の方法を解説

はじめに

2021年の育児介護休業法改正によって、多くの企業で男性従業員の育休取得を促す環境作りが進んでいます。
そこで本記事では、「男性従業員の育休取得推進に取り組みたいけれども、どこから手をつければいいのかわからない」と悩む企業担当者に向けて、男性の育休推進による企業側のメリットや、男性従業員が取得しやすい環境整備の方法などについて解説します。さらに、男性従業員が育休申請を行う際に企業側が注意すべきことについて詳しくご紹介します。

2021年改正の育児介護休業法における男性の育休推進

1991年に制定された育児休業法(現:育児介護休業法)によって、日本では性別を問わず子どもの養育のために、育児休業を取得できるようになりました。しかし、育児休業を取得する大半が女性であり、男性の育児休業取得率は女性に比べ、低くなっています。
このような状況は、女性の働き方に制約を設け、キャリア形成の妨げにつながりかねません。また、男性にとっても育児参加の機会を奪うことにつながるおそれがあります。そこで行われたのが、2021年の育児介護休業法の改正です。この改正法では、男性の育児休業取得を促進すべく、新しい制度が盛り込まれました。
主な改正点は、まず従業員が事業主に対して(本人または配偶者の)妊娠・出産を申し出た場合、事業主は個別に育児休業制度について説明し、休業取得の意向を確認することが義務付けられました。従来、とくに男性従業員に対して育児休業制度の十分な説明は行われておらず、これが育休取得率低迷の要因のひとつと想定されたため、事業主が育休取得を促進できるよう改正されています。
また、従業員が育児休業を申請・取得しやすい環境の整備も事業主の義務となりました。具体的には、「育児休業に関する研修の実施」「育児休業に関する相談窓口の設置」「自社従業員の育児休業取得の事例収集および提供」「従業員に対して育児休業取得促進に関する方針の周知」のいずれかを実施しなければなりません。
さらに男性従業員のための「出生時育児休業(産後パパ育休)」の創設と、改正前は原則として分割取得不可だった育児休業が、男女ともに2回までの分割取得が可能になったこともこの改正法の大きなポイントです。「出生時育児休業(産後パパ育休)」とは、産後8週間以内に最大4週間取得できる休業のことで、通常の育児休業とは別に男性が取得できます。これによりニーズの高い出生直後の時期に男性でも育児参加が可能となり、ライフワークバランスの向上が期待できます。

育休と産休の違い

「育児休業制度(育休)」と「産前産後休業制度(産休)」は、どちらも休業制度ですが、大きな違いがあります。
育休とは、子どもを育てるために休業する制度です。子どもが満1歳を迎える前日まで認められ、男女ともに原則2回まで分割での取得が可能です。
一方、産休とは労働基準法で定められた母体保護のための休業制度で、出産準備のために休む「産前休業」と、産後の体を回復させる目的の「産後休業」に分けられます。休業日数は、産前は出産予定日の6週間(双子以上なら14週間)以内、産後は産後8週間以内です。なお、産後休業は労働基準法によって本人の申請の有無に関わらず、6週間は必ず取得しなければなりません。

男性の育休推進による企業側のメリット

男性の育児休業取得は、従業員だけでなく企業にとっても大きなメリットをもたらします。ここでは、男性の育休推進が企業にもたらす具体的なメリットを解説します。

業務負担の軽減・属人化を防止できる

強い就労意欲を持っている女性であっても、「子育てや家事は女性がするもの」という根強い社会的価値観や子育てによる負担増から、しかたなく仕事や働き方を変える方も少なくありません。男性の育休取得率の推進・向上させることで業務見直しのきっかけになり、それぞれの業務負担を分散させることが可能です。また、育休当事者の業務を洗い出し、同僚や部下のなかで引き継げる人材を検討することで、属人化解消にもつなげられます。

社員の定着率を向上できる

誰もが育休を取得できる環境の構築には、働き方や制度改革だけでなく、周囲の理解と風土改善が必要不可欠といえます。また、今まで育休当事者や上司だけが理解しておけばよかった制度について、全社員・管理職・経営陣にまで周知させることも理解と協力を広げることが重要です。
育児当事者だけでなく、時間的制約のある社員も問題なく就業を続けられるワークライフバランスを重視した環境構築は心理的安全性確保につながり、社員の定着率向上に期待できます。

企業のイメージアップにつながる

育休取得の推進・取得率の向上は、「柔軟な働き方ができる企業」というイメージに直結する指標です。たとえば、積水ハウス株式会社が2021年に行った調査では、就活層のおよそ73.8%が「男性の育休制度注力企業を(入社企業として)選びたい」と回答しています。このような社会からの好印象・高評価は、優秀な人材の確保につながる可能性があると考えられます。
とくに子育てサポート企業として厚生労働大臣から認証を受けた「くるみん認定」取得の企業は、社内外へ子育て支援について積極的に取り組んでいることを示せる重要な要素です。

助成金が支給される

男性従業員の育休取得に貢献した中小企業には、国から「両立支援等助成金」が支給されるのもメリットのひとつです。
両立支援等助成金には以下の6つのコースが用意されています。

  • ・出生時両立支援コース
  • ・介護離職防止支援コース
  • ・育児休業等支援コース
  • ・育休中等業務代替支援コース
  • ・柔軟な働き方選択制度等支援コース
  • ・不妊治療両立支援コース

たとえば、「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」なら、男性従業員が育休取得しやすい環境を整え、実際に育休取得した場合に助成金が支給されます。さらにその男性従業員の業務をカバーするために代替要員を確保するほか、育児休業の取得状況を公表することで支給額が増額されます。
また、「育児休業等支援コース」であれば、従業員の円滑な育休の取得と育休後の職場復帰を支援するための措置を定めた「育児復帰支援プラン」を作成し、このプランにのっとって従業員が育児休業を取得して職場復帰した場合に助成金が支給されます。

育休取得によって男性従業員が得られる主なメリット

男性従業員の育休取得は、企業にとってだけではなく、従業員自身やその家族にも大きなメリットをもたらします。具体的なメリットについて詳しく解説します。

パートナーの産後うつ防止

男性の育休取得は、パートナーの心身の負担を軽減し、産後うつ予防につながります。妊娠・出産後の女性は、ホルモンバランスが崩れやすく、育児による寝不足や不安などがともなって 「産後うつ」になりやすい状態です。
しかし、育休取得によって男性が育児や家事を積極的に行えば、パートナーは体力と精神面の回復に専念できるため、産後うつ予防に大きく貢献します。また、職場・家庭の両立にともなうプレッシャーとストレスにより、男性にも発生しうる精神的・身体的な不調の予防にも役立ちます。

給付金の取得や税負担の軽減

育休中は、経済的な負担を軽減できる制度が充実しています。まず、雇用保険に加入して一定の要件を満たしていれば、育休中に「育児休業給付金」が支給されます。これは、休業前の賃金の一定割合が支払われるもので、非課税のため所得税と翌年度の住民税がかかりません。加えて、社会保険料も免除されるため、経済的な負担を大幅に軽減できます。
さらに、「出生時育児休業(産後パパ育休)」を取得した場合には、雇用保険から「出生時育児休業給付金」が支払われます。これらの制度を利用することで、経済的不安が解消され、より育児に専念できるでしょう。

男性従業員が育休を取得しやすい環境整備の方法

前述したように男性従業員の育休取得率向上は、企業にとっても多くのメリットがあります。ここでは、男性従業員が安心して育休を取得するために、企業が構築すべき職場環境についてご紹介します。

育休を取得しやすい空気を作る

男性の育児参加への意識が年々高くなっているため、育児休業を取得しやすい環境作りは、企業の急務です。しかし、実際の職場では、制度があってもなかなか取得しづらい状況の場合があります。
このような状況を改善するためには、経営陣や、その従業員よりも上席の社員が率先して育児休業を取得したことを共有し、姿勢を示すことが大切です。また、育休取得に関する相談窓口の設置や自社の育休制度に関する情報開示などの整備も有効です。

誰が育休を取得しても問題ない環境を作る

誰もが安心して育休取得できる環境にするためには、業務の属人化を防ぎ、チームで業務を遂行できるように体制を整えることが重要です。具体的には、複数のメンバーが同じ業務を担当できるようにクロス研修を実施し、業務マニュアルを作成することで、誰が担当しても問題ないような体制を構築できます。
また、育休取得者が発生した場合は、スムーズに業務を引き継げるよう、事前に代替要員を確保し、計画的な引き継ぎを行うことも欠かせません。このとき、業務を洗い出し、業務フローを見なおすことも必要です。たとえば、定型的な業務はデジタルツールを活用することで自動化し、人的リソースをより創造的な業務に集中させることで、業務の効率化が図れます。
これらの取り組みを通じて、誰もが安心して育児休業を取得できる、働きやすい職場を実現しましょう。

男性従業員が育休申請を行う際に企業が注意すべきこと

スムーズな育休申請は、男性の育休取得率向上につながります。ここでは、男性従業員が育休申請を行う際に、企業が注意すべき点を詳しく解説します。

社会保険料免除の項目の確認

育休中の社会保険料は、一定の要件を満たせば免除されます。一般的に「育児休業開始月から終了する日の翌日が属する月の前月まで」の保険料が免除されますが、2022年10月以降、免除の対象となる期間が拡大されました。
具体的には、育児休業開始日と終了日の翌日が同月で、なおかつその月に14日以上育児休業を取得した場合も、その月の保険料が免除されるようになりました。また、賞与に関する保険料は、賞与を支払った月の末日を含む、連続した1か月を超える育児休業を取得した場合に免除されます。
このように社会保険料免除項目は細かいため、企業側は手続きミスのないように対応することが求められます。

従業員が育休を分割で取得した場合の給付金申請方法の周知

出生後8週間以内が対象の「出⽣時育児休業(産後パパ育休)」は、2回に分割して取得できるため、利用者にとっては便利な制度です。しかし、申請は1回にまとめる必要があり、多くの書類を求められます。たとえば、申請期限内に「育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書」「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」「育児休業取扱通知書」などを提出しなければなりません。
従業員が原則1歳未満の子どもを養育するための「育児休業」を取得する場合、一定の要件をクリアすると「育児休業給付金」が受け取れます。育児休業給付金の手続きも原則として事業主が行いますが、育児休業給付金の支給要件は細かく、法改正も頻繁で制度の変更が多いため、注意が必要です。
企業がこのような給付金申請の手続きを滞りなく行い、従業員がスムーズに育児休業給付金を受け取るためには、給付金制度の仕組みをしっかりと把握し、従業員と企業がこまめに情報共有を行うことが大切です。

従業員が休暇中のリソース不足対策

男性の育休取得を促進するためには、企業が業務の効率化を図ることも重要です。たとえば、自動化ツールを導入することで、育休によるリソース不足対策にも役立ちます。このようなDXの推進は、育休のサポートにつながるだけでなく、通常時の業務効率化や多様な働き方の実現にも効果的です。
もちろん、自動化ツール導入には、初期費用やシステム導入にかかる時間など、課題の存在も無視できません。しかし、長期的な視点で見れば、人件費や作業時間などを削減でき、企業の持続的な成長につながります。

まとめ

2021年の育児介護休業法改正では、男性の育休取得を促進するための新たな措置が導入されました。これには、事業主による育児休業制度の説明義務の強化、育児休業の申請・取得しやすい環境の整備義務、出生時育児休業(産後パパ育休)の創設、育児休業の2回までの分割取得が可能になることなどが含まれます。これらの改正は、男性が育児に参加しやすい環境を提供し、女性のキャリア継続を支援することが目的です。
男性の育休取得を促進するためには、企業がデジタルツールや自動化ツールを導入して業務の効率化を図ることも重要です。育休によるリソース不足を補うだけでなく、DX推進による業務効率化や多様な働き方の実現に寄与します。
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