コラム
2024.12.12

タレントマネジメントシステムとは?導入のメリットや比較ポイントを解説

タレントマネジメントシステムとは?導入のメリットや比較ポイントを解説

はじめに

タレントマネジメントシステムの導入を検討していて、「導入による具体的なメリットや、どの製品を選べばいいのかがわからない」と頭を悩ませる企業の担当者は少なくありません。タレントマネジメントシステムは優れたシステムではありますが、万能なシステムではないため、導入前に機能や活用方法などを把握しておくことが大切です。本記事では、タレントマネジメントシステムの概要や機能、導入で得られるメリット、製品の選び方などについて解説します。

タレントマネジメントシステムとは

タレントマネジメントとは、従業員のスキルや経験を活かし、組織のパフォーマンスを最大化するための人材マネジメントです。タレントマネジメントを行えば、経営目標を達成するための戦略的な人事を実現でき、公正な人事評価や適材適所な人材配置にもつながります。
タレントマネジメントシステムは、それらを効率的に実行するためのシステムです。従業員のスキル・経験・適性・資質など、さまざまな情報をデータベース化して管理できるほか、レポート・分析・育成計画・目標管理などの機能を有します。

タレントマネジメントシステムと人事システムの違い

タレントマネジメントシステムと人事システムを比べたとき、組織のリソースたる人材情報を管理するシステムである点には違いがありません。ただし、この2つを比べた場合、有する機能や目的に違いがあります。
タレントマネジメントシステムは、従業員のスキルや働く人材のスキルや経験、資質などを可視化し、経営戦略に活かす目的で運用されます。そして、それを実現するためのデータベースやシミュレーション・人事評価・分析などに関する機能を有する点が特徴です。
一方、人事システムは従業員の基本情報管理や、勤怠管理などを主な目的としています。製品によって実装されている機能は異なるものの、給与計算や勤怠・労務管理などが可能です。システムの導入は、多岐にわたる人事業務の効率化だけでなく、正確な業務処理にもつながります。

タレントマネジメントシステムの重要性

従業員が有するスキル・経験の正確な把握は、適材適所な人材配置と、それによる組織のパフォーマンスの最大化に結び付きます。従業員数が多い場合、煩雑な作業になりますが、2023年3月期から上場企業を対象とした情報開示が求められているほか、求職者においても企業の人的資本情報を確認する傾向が増えています。また、従業員の数に応じて従業員情報の管理は煩雑になるため、効率化するにはシステムの導入が有効です。

従業員の情報管理効率化が必要

組織の規模が大きくなるほど、従業員情報の管理には多大な労力を要します。しかし、従業員情報を整理・管理していないと必要なとき速やかに取り出せず、経営に役立てられません。
企業が経営目標を達成するには、今後必要となるスキルや経験の分析が必須です。そのうえで、そうしたスキルや経験を備える人材の採用や育成に取り組む必要があります。
これらの情報管理や分析などを、すべて手作業で行うのは困難です。人材管理の効率化および組織強化のためにも、タレントマネジメントシステムの導入は欠かせません。

人的資本の情報開示が必要

2023年3月期から上場企業を対象に人的資本の情報開示が義務化されました。有価証券を発行している大手企業が対象であり、人事・育成や従業員エンゲージメントに関連する開示事項、ダイバーシティ、コンプライアンスなどの分野における情報を有価証券報告書に記載しなくてはなりません。
開示が必要となる従業員データの抽出および分析は、タレントマネジメントシステムの導入によって効率的に進められます。
また、近年では求職者が就職・転職先を探すにあたり、企業の人的資本情報を確認する傾向が増えています。さらに、Z世代と呼ばれる世代の方たちは、給与の高さや福利厚生の充実度などもさることながら、成長ややりがい、貢献といった内発的動機を重視する傾向です。
パーソル総合研究所が実施した調査によると、優秀人材が転職先の検討にあたり重視する要素として、「新しいことにチャレンジできる」「フレックスタイム制で働く時間を選べる」などの回答が上位を占めていました。また、優秀人材は転職先を検討する際に、企業のSNSや有価証券報告書・決算書を情報源とすることが多いことも調査で判明しています。
このように、人的資本情報の開示業務を効率化するだけでなく、優秀な人材を確保するためにも、企業にはマネジメントシステムの導入が求められます。

タレントマネジメントシステムの主な機能一覧

タレントマネジメントシステムに実装されている機能は製品によって異なります。ここでは、代表的な機能を整理しました。

人材データベース/業員のスキルや経歴、適性などの登録と検索
人事評価機能/システム上での評価シートの作成や集計
レポート・分析機能/従業員のスキルや経歴などの抽出・分析および配置シミュレーション
育成計画機能/人材の育成計画立案や運用管理の補助
社員アンケート/システムを通じた従業員へのアンケート調査
採用情報管理/さまざまな求人媒体から寄せられた応募の一括管理

ここで取り上げたもの以外の機能を備えた製品も少なくありません。導入において大切なのは、自社の課題や達成したい目標などを整理し、自社に必要な機能が実装されているかどうかです。

タレントマネジメントシステム導入のメリット

人材採用や育成の効率化を図れるほか、人材配置の最適化や従業員の離職防止、公平な評価につながるなどのメリットがあります。

人材採用・育成の効率化

システムの導入によって、自社に在籍する人材が有するスキルを可視化できます。そのため、自社に現在不足している人材も把握でき、採用活動に役立てられます。
一人ひとりの従業員にマッチした育成を行えるのもメリットです。従業員の能力は個々で異なるため、全員に同じ育成プログラムを課しても高い効果は期待できません。システムを導入すれば、従業員個々の能力に応じた適切な育成を行えます。
後継者不足に悩む企業にも、タレントマネジメントシステムは適しています。企業が成長と発展を続け、今後も事業を継続していくためには能力の高い後継者が不可欠です。システムを通じて後継者に相応しい人材をピックアップすれば、適切な育成プログラムも作成できます。

人材配置の最適化

組織のパフォーマンスを最大化するには、適材適所への人材配置が欠かせません。従業員個々の能力や適性は異なるため、各人の力を最大限発揮できるポジションに配置することが重要です。
従業員の能力はタレントマネジメントシステムを通じて容易に把握でき、たとえばコミュニケーション能力が極めて高い人材を見つけて営業部門へ転属させるといったことも可能です。
製品のなかには、人材配置のシミュレーション機能を実装したシステムもあります。これはシステム上で従業員を異動させ、どのような結果になるのか予測できる機能です。

従業員の離職防止

タレントマネジメントシステムでは従業員一人ひとりの強みや弱みを把握し、従業員の成長に活かせます。従業員は自分に不足している能力を知り、目標に向かう道筋を把握できることから、モチベーションアップにつながります。
従業員のモチベーションアップは、離職防止に有効です。企業にとって従業員に離職されると組織の戦力がダウンするのはもちろん、新たな人材を確保するための採用コストもかかります。システムの導入はこれらのリスクを軽減できます。
また、アンケート機能が実装されたシステムであれば、従業員のストレスチェックや満足度調査も可能です。従業員のストレス度合いや満足度を把握することで、企業はそのときどきで適切な対策を行えます。

公平・効率的な評価

多くのタレントマネジメントシステムには人事評価機能が実装されているため、公平かつ効率的な評価が可能です。評価基準の明確化だけでなく、従業員の比較評価もしやすくなり、透明性の高い評価を行えます。
基準が不明確な評価には、上司の主観や先入観が入りこむ余地があり、不公平ともなりかねません。結果、不満を高めた従業員が離職することも起こり得ます。
タレントマネジメントシステムで公平な評価を行えば、従業員は自分の頑張りを正しく評価してもらっていると感じ、モチベーションアップにつながります。エンゲージメントの高まりに応じて、生産性の向上が期待できる点もメリットです。

タレントマネジメントシステム導入のデメリット

システムの導入や運用には一定のコストがかかるため、費用対効果の判断や検証が重要です。

導入コストがかかる

タレントマネジメントシステムは、原則として有償のシステムであり、導入にはコストがかかります。製品によって価格は異なるものの、自社のサーバにインストールするオンプレミスタイプでは、数百万円から数千万円かかるケースも少なくありません。
導入コストを少しでも抑えたいのであれば、クラウド型がオススメです。オンラインでスムーズに導入でき、一般的にオンプレミスよりも低価格で利用できます。
また、運用体制やメンテナンスなども導入コストに関わってきます。システムを最大限活かすためにも、従業員のデータ収集を含めた導入の準備が整っているかを確認しましょう。なお、クラウド型の製品は、ベンダによってシステムは常に最新のバージョンが保持されるほか、メンテナンスも行ってくれる利点があります。

運用コストがかかる

クラウド型のタレントマネジメントシステムは、月々の利用料金というランニングコストがかかります。クラウド型の製品を導入する際には、その点を考慮しなくてはなりません。
また、システムを活用するための適切な運用体制を整えるコストもかかります。システムの利用にはルールやマニュアルの策定が必要であり、その作業に人員を割くことになります。システムの導入によって得られた効果について、定期的な検証と改善をサイクルとして行っていく工程も大切です。
従業員のデータは収集して終わりにするのではなく、定期的な更新によって常に最新の情報に保持する必要があります。これらにもコストがかかる点に留意しましょう。

タレントマネジメントシステム導入前にやっておくべきこと

タレントマネジメントシステムを導入する前に、自社が抱えている課題を整理しておきましょう。それによって、選ぶべき製品が変わってきます。自社に必要な機能を把握したうえで、製品を絞り込んでいくことが大切です。

自社課題の洗い出し

自社が抱えている課題を抽出・整理し、従業員のどのようなデータを取得、管理すべきかを考えましょう。課題を明確化すれば、製品に求める機能が見えてきて、課題解決に向けた適切な導入が可能です。
また、企業が経営目標を達成するため、どのような職務や役割が求められるのかも整理します。これらを整理していないと、せっかく従業員のスキルや資質などを把握できていても、適材適所への配置が困難です。

使いやすいシステムの選定

タレントマネジメントシステムの使いやすさは、製品によって異なります。現場の従業員が使いこなせない製品を導入してしまうと、活用が進みません。結果、従業員がシステムの利用を敬遠し、いつの間にかまったく使われなくなる、といったことも起こり得ます。
こうしたリスクを避けるべく、現場の従業員が問題なく利用できる、使いやすいシステムを導入しましょう。従業員のITリテラシーのチェックはもちろん、トライアル利用で実際に使ってもらうとよいかもしれません。トライアル利用ができない場合は、事前に管理画面だけでも確認してもらうことが大事です。
また、製品によっては他システムとの連携が可能なものもあります。自社システムとの連携を考えている場合、それが可能かどうかもチェックしたうえで導入を進めてください。

従業員への周知・説明

タレントマネジメントシステムを活用するには、従業員からのデータ提供が欠かせません。従業員から十分な理解を得ていないと、適切な情報提供を受けられない可能性があるため、事前の周知や説明は必須です。
システムを導入する事実だけでなく、なぜ導入が必要なのか、どういったメリットがあるのかを伝えましょう。従業員一人ひとりにあわせた育成ができる、公平な評価につながるなど、現場の従業員がメリットだと感じられる内容を伝えることが大切です。

タレントマネジメントシステム導入を検討する際の比較ポイント

タレントマネジメントシステムは、さまざまな企業から製品がリリースされているため、選定に頭を悩ますケースは珍しくありません。導入を検討する際には、人材データベースの使いやすさや、自社システムとの連携・互換性・サポート体制・セキュリティ対策などを軸に比較しましょう。

人材データベースの使いやすさ

人材データベース機能は、タレントマネジメントシステムの核となる機能といっても過言ではありません。そのため、この機能が使いにくいと活用が進まなくなる可能性もあります。
オススメなのは、従業員のスキルや経験などの情報と顔写真を紐付けられる製品です。システム上に顔写真とデータを表示できる製品なら管理や運用もしやすくなります。さらに、フリーワードで検索できる製品なら、スムーズに目的のデータを抽出可能です。
システムによっては、自社が使いやすいようにカスタマイズできる製品もあります。ただ、管理者の運用負担が大きくなりかねない点には注意しましょう。

自社の人事系システムとの連携や互換性

自社の人事系システムと連携できるかどうかもチェックしなければなりません。多くのタレントマネジメントシステムはシステム連携に対応していますが、データの自動反映や整合性維持が可能かどうかは製品によって異なります。既存システムとの互換性がない場合、データ移行の手間やコストが大きくなるため、注意が必要です。

サポート体制

タレントマネジメントシステムをはじめて利用するケースでは、さまざまなトラブルに直面することも考えられます。このようなとき、スムーズに解決できるよう、サポート体制が充実しているかどうかを確認しておきましょう。
トラブル発生時の対応可能時間や問い合わせ方法なども、システムによって異なります。自社の業務時間内に問い合わせやトラブル対応が可能か、要チェックです。製品のなかには、専任コンサルタントによるさまざまなサポートを受けられるシステムもあります。

人事評価・育成制度との相性

MBO(目標管理制度)やコンピテンシー評価など、企業によって評価制度は異なります。自社の評価制度にシステムが対応できるかを導入前に確認しておいてください。
カスタマイズ性に優れているかどうかも要チェックです。自社で運用している人事評価制度へ対応するよう柔軟にカスタマイズできれば、使い勝手がさらによくなります。具体的にどの程度設定やデザインなどを変更できるか、また導入後の再現性もチェックしておきましょう。

セキュリティ対策の充実度

タレントマネジメントシステムでは、従業員に関するさまざまな情報を管理します。ほぼすべてが従業員に関する重要な個人情報のであるため、セキュリティ対策の充実度の確認は必須です。
具体的なセキュリティ対策としては、たとえばIPアドレス制限や二段階認証などがあげられます。万が一、従業員の個人情報が外部に流出してしまうと、企業としての信用を失い、従業員の離職にもつながりかねません。こうしたリスクを回避するためにも、強力なセキュリティ対策が施された製品を導入すべきです。

まとめ

タレントマネジメントシステムは、従業員のスキルや経験を活かして、組織のパフォーマンスを最大化するための人材マネジメントを効率化できるシステムです。タレントマネジメントシステムの導入で、多岐に渡って人事業務を効率化し、正確な業務処理を実現します。従業員のスキルや技術を可視化し適材適所な人材配置のサポート、人事評価や育成計画などの機能を備えていますが、導入や運用にはコストがかかるため費用対効果の判断や検証が重要です。また、導入前にやるべきことは多く、社内だけで最適なシステムの選定は困難なため、製品選択から導入・運用の定着までに際しては社外の専門家の力を借りるのも効果的です。
セラクグループは統合人事システム「COMPANY(R)」の導入・定着サポートから、運用人材の継続的な派遣まで、さまざまな支援を行っています。お悩みがございましたらぜひご相談ください。

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