コラム
2025.01.16

建設業の働き方改革が2024年4月から開始!無理だと言われる理由や成功事例を解説

建設業の働き方改革が2024年4月から開始!無理だと言われる理由や成功事例を解説

はじめに

現在、さまざまな業界において働き方改革が推進されています。建設業界においても、働き方改革を実現しようと取り組みをはじめる企業が少なくありません。ただ、建設業で働き方改革を実現するのは無理だとも言われています。そこで本記事では、建設業において働き方改革を実現するのが困難と言われる理由や、取り組みに成功した企業の具体的な事例などを詳しく解説します。

建設業における2024年問題とは

建設業における2024年問題とは、働き方改革関連法の適用にともない発生する労働環境の変化です。働き方改革関連法の実施によって、建設業にかかわる企業は2024年4月から時間外労働に上限規制が適用されることになりました。働き方改革関連法の適用そのものがはじまったのは、2019年の4月です。しかしながら、建設業は従業員の高齢化や労働力不足、慢性的な長時間労働など労働環境に関するさまざまな問題が発生していたこともあり、適用には5年の猶予期間が設けられました。2024年4月からは適用がはじまるため、企業には適切な対応が求められます。なお、同法の施行にともない、2024年4月からは時間外労働の上限規制に違反した場合、罰則が与えられる点に注意が必要です。

建設業における「働き方改革」実施による変化

働き方改革の実施によって、時間外労働時間に上限規制が設けられました。また、割増賃金の引き上げや合計5日の年次有給休暇取得が義務化されています。

時間外労働時間の上限規制

時間外労働時間に上限規制が設けられ、原則1か月あたり45時間、年間では360時間までしか認められません。1日あたりの残業時間に換算すると2時間程度です。特別条項が適用された場合あっても、年間で720時間を超えてはならず、月に45時間を超える時間外労働は年に6回までしか認められません。また時間外労働と休日労働をあわせて1か月100時間未満、2~6か月間で平均して80時間以内である必要があります。なお、これらのルールに違反するとペナルティの対象となるおそれがあります。

割増賃金の引き上げ

2023年に改正された労働基準法によって、60時間を超える残業への割増賃金率が50%に引き上げられました。中小企業は猶予措置により25%であったため、従来と比較して倍の数値となるため、事業を営む企業にとっては頭の痛い問題です。ただ、時間外労働に対する割増賃金率の引き上げは、今にはじまった話ではありません。もともと、50%の割増賃金率は2010年から適用されていました。建設業においても同様に適用の対象であったものの、さまざまな理由から中小企業は適用外でした。
2023年4月からは、企業の規模を問わず50%の割増賃金率の対象です。そのため、従業員の時間外労働時間がひと月に60時間を超える場合、50%で計算した割増賃金を支払わねばなりません。

合計5日の年次有給休暇取得が義務化

2019年4月から、年5日の有給休暇取得が義務づけられました。従来、従業員が有給休暇を取得する場合、自ら申請するのが一般的でしたが、現場が忙しいことを理由に有給休暇の取得を企業側が拒否することや、上司や同僚に迷惑をかけたくないと従業員が遠慮するケースも多々ありました。しかし、現在では年5日の有給休暇取得が義務づけられたため、企業は対象となる従業員に対し有給休暇を取得させなくてはなりません。対象となるのは、正社員だけでなく派遣社員、パートやアルバイトなども含む、年10日以上の有給休暇を付与された者です。

建設業の働き方改革が無理だと言われる理由

さまざまな業界において働き方改革が推進されているものの、建設業では実現が困難だと言われ続けてきました。その理由について詳しく解説します。

深刻な人手不足

少子高齢化にともなう労働人口の減少で、さまざまな業界が人手不足に頭を悩ませています。とくに、建設業は深刻な人手不足と言われており、実際に最小限の人員で現場をまわしているケースも珍しくありません。深刻な人手不足の状態で労働時間に上限を設け、制限するのは現実的ではないとする考えが根強くあります。人手が足りない場合、従業員1人あたりの労働時間を増やして対処するしかないためです。こうした慢性的な人手不足は、建設業にとってよい状況とは言えません。従業員に対する負担の増加や健康を損なうといったリスクが生じるためです。

工期・納期の問題

建設事業を営む企業は、事前に工期や納期について顧客と話しあい、契約にもその旨が盛り込まれています。工期・納期への遅れは違約金が発生することも多いため、企業は期限までに工事を終わらせねばなりません。ただ、屋外で行う建設工事の場合は天候の影響を少なからず受けるため、大雨や強風などで予定した作業ができないことがあります。そのような場合に、従業員の残業で遅れを取り戻そうとするケースは珍しくありません。働き方改革に取り組み、時間外労働時間を減らそうとした場合、工期や納期の変更が必要となるケースも出てきます。自社の顧客にも理解を求める必要がありますが、容易ではありません。

給料減少のおそれ

建設現場で労働する従業員の中には、残業手当が支給されることを前提に働いている方もいます。時間外労働時間に上限が設けられた場合、今までのように残業代で稼げなくなる従業員が増えることが想定されます。現場で働く従業員にとって、収入の減少は大きな問題です。時間外労働時間の上限規制にともない残業が減り、収入が大幅に減少すると、生活に困窮する従業員が出るだけでなく、別の働き口を求めて従業員が退職することも起こり得ます。このような事態を避ける対策としては、時間内労働の賃金アップがあげられます。

建設業が参考にすべき「建設業働き方改革加速化プログラム」とは

建設業働き方改革加速化プログラムとは、建設業界における働き方の課題を解決しようと、国土交通省が策定したプログラムです。このプログラムには、長時間労働の防止や生産性向上、待遇改善などの内容が盛り込まれており、建設業を営む企業が働き方改革を実現するうえで参考にすべきコンテンツです。

長時間労働の防止

長時間労働はさまざまな業界で発生している問題であるものの、建設業においてはとくに顕著です。このプログラムでは、長時間労働こそ建設業に若者離れを生じさせる原因であると指摘しています。そこで、このプログラムでは長時間労働を防止するアイデアとして、週休二日制の導入を提案しています。また、無理のある工期を設定せず、限られた人員で余裕をもって完遂できる工期設定を心がけるのも重要なポイントであると述べています。

給与や社会保険などの待遇の見直し

人材の確保や離職の防止に、給与や社会保険などの待遇の見直しが効果的であることは言うまでもありません。このプログラムでは、従業員の技術や業務内容にあわせた、適切な給与設定を推奨しています。技術に見あった給与の支給は、従業員のモチベーション向上に効果的です。モチベーションを高めた従業員は、より意欲的に業務へ取り組んでくれるため、企業全体の生産性向上にもつながります。また、職場への愛着や満足度が高まることで離職防止の効果が期待できる点も魅力です。また、このプログラムでは社会保険への加入を取り組みとして推奨しています。建設業における従業員の社会保険加入率の低さは、大きな問題のひとつです。社会保険加入への取り組みによって、従業員は安心して働けるため、職場に定着しやすくなるだけでなく、人材の流出も防げます。

生産性向上のための積極的な取り組み

企業が利益の拡大を目指すうえで、生産性向上への取り組みは欠かせません。建設業においても同様であり、生産性向上の取り組みを進めることで、人手不足や労働時間の減少などに対応できます。具体的な取り組みのひとつが、最新のデジタル技術やITツール導入、ICTの活用です。ITツールやICTの導入によって、今まで手作業で行ってきた作業を自動化・効率化でき、限られた人員でより大きな成果を得られる状況を作れます。

建設業の働き方改革を実現した6つの成功事例

働き方改革を成功させるには、すでに取り組みで成果を得ている企業の事例を参考にするのが一番です。ここでは、建設業の働き方改革を実現した成功事例を6つ解説します。

ドローンを活用した測量と施工管理

近年、さまざまな業界でドローンの活用が進んでいます。たとえば、エンタメ業界では空からの映像を撮影するためにドローンを活用しているほか、農業では空中からの農薬散布、エネルギー業界では設備の点検業務に活かしています。建設業界でも同様に、ドローンを活用するシーンが増加してきました。具体例としてあげられるのが、建設現場の測量や施工管理です。従来は、技士が測量場所まで直接足を運び、専用の機械を用いて測量を行っていましたが、カメラを搭載したドローンを活用することで、空中から容易に測量を行えます。また、広い建設現場では、監督が現場の状況を正確に把握するのは困難ですが、ドローンを用いれば、カメラからの映像を通じて遠く離れた場所の状況を把握できるため、監督が現場を歩きまわる必要もありません。

専用ソフトウェア導入によって業務を共有

これまで従業員がExcelで行っていたバックオフィス業務について、専用ソフトウェア導入により効率化を実現した事例です。専用ソフトウェアの導入によって業務を従業員間での共有ができ、従来の担当者はコア業務への専念が可能になりました。優れた工事現場管理ソフトがいくつもリリースされているため、こうしたツールを導入するのもオススメです。工事現場管理ソフトでは、工程管理や実行予算管理、発注管理、請求管理などができ、業務効率化にともなう生産性向上に役立ちます。

「土日閉所」で週休二日を実現

オフィスを土日閉所し、休日に業務を行えないようにした取り組み事例です。事例の企業は、組織的な省力化や効率化に取り組むことで、休日業務の削減と週休二日制導入に成功しました。取り組みのひとつが、パソコンの強制シャットアウトです。あらかじめ定めた時間になると、パソコンが強制シャットアウトされるため、業務を継続できません。また、ICT化やペーパーレス化、使用ソフトの統一といった取り組みも積極的に進め、結果として週休二日を実現できました。

連絡ツールの導入でコミュニケーション促進

連絡ツールのビジネスチャットツールを導入し、コミュニケーションの促進に成功した事例です。ビジネスチャットツールはリアルタイムにやり取りを行えるだけでなく、画像も共有できることから、建設業界でも活用が進んでいます。工事の進捗状況を管理するには、担当者が現場まで足を運び、オフィスに戻ってから書面で報告することが一般的でした。連絡ツールの導入により、スマートフォンのカメラで撮影した現場の写真を従業員間や取引先と共有できるため、業務効率化につながります。

オンライン事務代行導入でリソース確保

規模の大きな工事であれば、現場事務所に専任の事務員が配属されるケースもあります。しかし、多くの現場では、現場担当者が自ら請求書や見積書の作成、電話・メール対応といった事務業務を行わなければなりません。これでは現場担当者が本来取り組むべきコア業務に注力できないため、非効率的です。ある企業では、オンライン事務代行を導入することで、コア業務への専念に成功しました。オンライン事務代行とは、事務仕事の専門家にオンラインで事務業務を代行できるサービスです。事務の専門家に業務を任せられるため安心でき、コア業務への注力や人件費の削減など、さまざまなメリットを得られます。近年では、建設企業を対象とするオンライン事務代行サービスも登場しました。建設業の場合、工事写真の整理や検査データの入力、資材管理など、一般事務にはない業務も多々あります。建設業向けオンライン事務代行サービスであれば、こうした建設業特有の事務業務にも対応してもらえる点がメリットです。

勤怠管理ソフトの導入で労働時間を管理

ある企業では、従業員の働きすぎを防止するため勤怠管理ソフトを導入しました。この企業は年間を通して業務量が多く、従業員の残業が常態化していましたが、それを改善する目的でクラウド型の勤怠管理システムを導入したとのことです。勤怠管理システムの導入によって、従来のタイムカードによる打刻を廃止しました。従業員は、出勤と退勤時にオフィスへ顔を出す必要がなくなり、直行直帰が可能になりました。また、設定した月の残業時間をオーバーしそうになると、管理者のもとへアラートが通知されるため、労働時間の管理にも大きく役立っています。勤怠管理システムは、従業員の直行直帰実現や労働時間の正確な管理など、さまざまなメリットをもたらします。また、システムのなかには自動で最新バージョンにアップデートされ、法改正に柔軟に対応できる製品もあります。

建設業の働き方改革の鍵はDX化

建設業を営む企業が働き方改革を成功させるには、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが不可欠です。ただ、DX推進にはいくつか注意点もあるため、それらを踏まえた取り組みが求められます。

生産性向上と納期遵守を叶えるためにDX化が急務

建設企業が働き方改革を実現し、これからの時代に対応するには、生産性の向上と納期遵守の双方を実現しなくてはなりません。その鍵となるのがDXです。DXとは、デジタル技術を活かしてビジネスに革新を起こすことです。ITツールやシステムをただ導入するだけではなく、これらを活かしてビジネスモデルやビジネスプロセスなどを変革します。生産性向上と納期遵守を両立するには、DXを前提としたITツール、システムの導入が欠かせません。たとえば、工事現場管理ソフトを導入すれば、工程や予算を適切に管理でき、なおかつ納期遅れのリスクも軽減できます。

建設業におけるDX化の注意点

急速なDX推進は、従業員たちの反発を招くおそれがあります。デジタルツールに馴染みがない従業員から不満噴出することや、これまでと異なる業務の進め方を受け入れてもらえず、反発を受けることも想定されます。このような事態を避けるべく、取り組みをはじめる前に従業員たちの理解を得られるよう努めましょう。いきなり大掛かりなDXに取り組むのではなく、現場の課題を解決できる施策からはじめるのがオススメです。また、システムを選定する際には、機能だけでなく操作性のよさも重視しましょう。

まとめ

2024年4月からの働き方改革により、建設業でも時間外労働時間の上限規制や割増賃金の値上げ、年5日の年次有給休暇の取得の義務化が行われるようになりました。一方で人手不足や工期・納期の都合などで働き方改革が困難と言われる場合もあります。これらの課題を解決するため、勤怠管理ソフトの導入による残業時間を減少させる、連絡を円滑に行うためにチャットツールの導入などを行い、働き方改革を実現させた企業も存在します。「従業員の勤怠管理をスムーズに行えるシステムを探している」「給与計算や労働時間の管理などの人事業務を効率化したい」などのお悩みがある場合は、ぜひご相談ください。セラクグループは統合人事ERP『COMPANY(R)』の導入・定着をサポートしています。

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